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29 July,29 years old
「29ってなんかいい数字だよね」
ケーキを頬張りながら微笑む。
「ふふ♡⃛なーんだ、もっとジタバタしてると思ってた。余裕だね♩」
「ちょっとナニソレ。あんた、あたしを祝ってくれてるんじゃないの?」
近況報告、と思って待ち合わせのカフェに来てみたら、可愛いお花とショートケーキが準備されていた。
こういうサプライズをさらっとしてくれる親友はやっぱり愛おしい。
「10年前の方がジタバタしてたかもね。ラストティーンだ、いよいよ成人だなんだって騒いでたなあ。」
あの頃の無邪気な自分を思い出すと、ちょっと恥ずかしい。オトナな女性に憧れて、夢を叶えたくて、毎日精一杯生きてたなって。ほんと、眩しくて直視できない。
この10年で私たちは何を積み重ねてきたのかな。キャリアって言えるほど立派なものではないかもしれないけれど、大人の階段をずいぶん先まで登ってきたのは確かだ。
「29 って確かにいいかもね。もう立派なオトナって感じ。もう”若いから”、”女だから"ってそんなことでジャッジされなくなるよ。嬉しいっ♡⃛」
そういう彼女はまだ28歳だ。
夏に誕生日を迎える私からみると、3月生まれの彼女は、まだ半分以上28歳の人生が残されていることになる。
ちょっと羨ましいような。たった1歳差なのに、急にその若さが尊く感じられるような。
そんな不思議な感覚に襲われる。
だけど私たちがいるのは経験がモノを言う世界だ。
年功序列の封建主義。
いつの時代の話だよって言いたくなる慣習がこれでもかと蔓延っている。
だから私たちは、早くオトナなりたかった。
いつか、若さや女だからって言う理由で、自分たちのやり方を否定されないように。
これだけのことができるって胸を張って言えるように、頑張ってきたつもり。
向上心の塊の彼女は、私以上に苦しみながら、そんなシステムと戦ってきた。
29 という数字に憧れているのは、私よりも彼女かもしれない。
「ありがとね。でも気持ちは自由にいこうよ。年齢、性別、キャリア。そんなのに縛られるなんかもったいない。楽しもうね、オトナ♡⃛」
「ふふ♡⃛そういうところ、ほんとに好き♩」
可愛くてしょうがない親友と過ごす、
29 歳の7月29 日ღ