ハロー、ハロー!(言語と非言語)
いつぞや、『責任者を呼べ!って言っています!』と血相を変えて走って来た新人ナースさん。
誰が?誰に?いつ?何で?というようなことをゆっくり訊いてみたろころ、持病の後遺症で足を痛がっている80代の女性が、『なんで、こんなに痛いんだ?!』と怒鳴り散らしているとのこと。
彼女の場合、足はいつも痺れるとか痛いとか言っているので、確か午前中に『たまにはお薬飲みますか?薬は毒ではないよ。地味な痛みでもずっと耐えているストレスの方が毒だよ。』なんて会話をしたばかりだった。
新人さんのやり取りも、彼女づてに聴くと似たようなやり取りだった。いったい何を怒っているのか分からない。
こういう時は、とりあえず本人のところへ行くのが一番ということで、一階の居室まで足を運んだ。
ハロー!Tさん。どうしたの?と。
するとキョトンとして人の顔を見つめている。『は、はろー。』
ハロー、ハロー♪ 元気そうだね。最近は、どうしてましたか?と言うと、今度は『午前中に会ったばかり。』と突っ込みを入れつつ裏拳ではたいて来るので、ダハハハ!と笑う。
それでも足について何も言わないので、じっと顔を見ていると、彼女が言った一言が『おなか・・・減った。』。
え?お腹減ったの?何食べたいの?肉?寿司?お菓子?
『唐揚げ食べたいー。』
よっしゃ、今自転車でひとっ走り行って来てあげる。
そうして、コンビニまで走って熱々の唐揚げを買って来て手渡したのだが、その顔の嬉しそうなこと。
で、足は?
『足はたいしたことない。雨降ってるからなのか、何だかイライラしちゃって。』
と言っている途中で『腹減ってるって気づいたんだね?』と突っ込みを入れると爆笑していた。そして『ありがとうね』と何度も言っていた。
自分でも何が気に入らないのか分からないことってあるよね。
『でも、あなたの顔見てたら、気が付いたんだよね。美味しいわあ、唐揚げ。モグモグ・・・。お腹減っていることも、何を食べたいのか?ということも。』
その一部始終を見ていた新人さんが『あのう・・・足は?』と横から入って来たのだが。
『足は何でもないって言ってるでしょおおおお!』とまた突然怒鳴り出した。(いや、痛いって言ってたんでしょ?)
口から肉飛ばさないで、肉。食べるか怒るかどっちかにして。と突っ込むとまた笑いが止まらなくなっていた。
これはいったいどういうことなのか?と新人さんに訊かれたが、説明すると長くなるなあ、どう言っていいのか分からないなあ・・・と思うものの。
怒っている時も理不尽な時も、とりあえず向かって行くことなのかなと思う。しかも、開いた姿勢で敬意を持って。自分に向き合うことと同じ姿勢で。
ハロー♪ハロー♪今日のあなた。そして、今日の私。