お疲れさまでした
介護をするというのは難しいもので、お子さんが居ても後継人を立てなければならないケースというのが多々ある。
その方々が悪いのだろうか?そうじゃない。世の中が難しすぎるのだ。
何が最善かというのは分からないが、躓いた人にあまり優しくないのが世の中だ。手続き、手続き、手続きで追い立てられる。それを救おうとする方も時間と体力が居る。
そんなことを、しみじみ考えてしまったのは、施設に16時到着予定だった人が19時になったから。
お子さんもある程度年齢が行っているので、この猛暑の中受診に連れて行って薬を処方して貰い親御さんを施設へ連れて来るのは一苦労。まあ、もちろん本人も疲れるけれど。
私一人が残業すれば良い話かというとそうでもない。夜勤の介護職員さんも忙しいので「なんでこんな時間?」と腹も立てる。皆ギリギリなんだよなあ。
老いも若きも体力がギリギリ。
が、車を降りる時の、あのお婆ちゃんの笑顔。両手をブンブン振って再会を喜んで下さる。
そして私は、荷物の中に吸入器が無いことを知り愕然とする。喘息あるんだから、絶対これがないとダメ。
しばし頭の中が真っ白になる。しかし娘さんを責めたところで仕方ない。私の顔を観て「ど、どうしよう・・・」と途方にくれているのだ。
夜も更けて、これからタクシー飛ばしてデイサービスへ取りに行くなんてこの人には無理だ。第一デイサービスなら、もう閉まっているだろう。
でも、医務室に同じ種類の吸入薬があるということを思い出した。多分誰かに余分に処方されたものだろう。
『ちょっと待ってて!上(医務室)を観て来る!』
その時、このお婆ちゃんが走り去る私の背中に『ごめんねえ。。。』と言った。
思わず立ち止まって振り返ってしまう。あまり言葉を発することが無い人だからだ。
ごめんねえ。
なんで、この人が謝らなければならないのかなあ。
そのまん丸い顔を観ていて、こんなことは何でもないと思った。
頑張ろう。
かくして予想通り同じ種類の吸入器があった。
晩御飯を食べて、吸入して、冷房が適度に効いた部屋で眠って貰える。
福祉が行き届いているんだか届いていないんだか、よく分からない。
が、一人の人が今日、穏やかに床に就ける。
皆、ほんのちょっとづつ頑張れば良い。
私もちょっとだけ頑張って、今夜美味しいビールを飲んだ。
脚がパンパンだ。でも、これは寝れば治る。
世の中は難しい。でも、楽したりほんのちょっとずるしている人も、精一杯頑張った人でも、情緒的にとか能力的にとか、何かしらで限界を感じたりしつつも、間違いなく精一杯生きている。一人残らずだ。
ただ、自分が頑張っているということに気が付いていない人がいるというだけの話だ。人は、生きているだけで凄い。
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