雪の日に
雪なんて喜ぶのは、子供ばかりだよ。仕事の行き帰り、どうすんの?と、疲労困憊な時は思うけど。
どこかで胸躍る自分がいる。
そうそう、小学校の頃は北海道は釧路に住んでいた。雪の恐ろしさも楽しさも知っている。
ついでに言えば、九州は熊本に居た頃も結構寒くて、ドカ雪が積もることもしょっちゅうだった。
けれども、やっぱり東京での雪は違った意味で、本当にしんどいのよね。何せ、建物も道路も、あらゆる交通機関が、何十年経っても雪に慣れていない。(学ばない。)人々の服装や靴も、てんで埒が明かない。
だから東京で雪が積もる日は、朝から晩まで、誰かがどこかで転倒したり車が衝突したりで、一日中、救急車の音が聞こえている。
往診に来てくれた先生は、東京生まれの東京育ちなのだけど、まだ全然積もっていない昼の段階からスタットレスタイヤでやって来た。よく長野とこちらを行き来されているので準備が良い。
それに引き換え、私は自転車での帰路をどうしようか?と迷っていた。転ぶよなあ。
すると、就業と同時にKちゃんが『迎えに来たよ!』と医務課に入って来たのでビックリ。迎えに来ると言っても、徒歩である。
せっかくお休みだったんだから、家でゆっくりしていていれば良いのに。
『Ohzaちゃんは、明日が休みだから、自転車は置いて帰れば良いよ。私が明日、歩いて出勤して乗って帰って来る。手ぇ繋いで帰ろう!』
え?
大丈夫。皆、自分の足元に必死で他人など気にしていられないだろう。
18時過ぎには、既に外が真っ暗だった。車が多い通りを避けて、しーーーんと静まり帰った裏道をゆっくりと歩いて帰った。
息を呑むほど美しかった。
川沿いの樹々も。
誰も居ない夜の公園も。
人んちの蜜柑も。
4年前も、こうして歩いたなあ。転びそうになりながら、この白い道を。この白いケーキみたいな街を。
ただ家に帰るだけ。それが、とても楽しかった。
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今日もお疲れさまでした。