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どんなモードあっても訊きたいことを尋ねるのはクレームではない

気難しいと言われているご家族様に実際にお会いすると、全然そんなことはないというのがよくある話。

前の施設でもそうだったのだけど、怒っているご家族、クレームを持って来るご家族様の対応を押し付けられる。

相談員さんやケアマネさんは大抵良い人なのだが、中には普段『俺が窓口なんだから勝手に家族と喋るな。』という態度の人もいる。またその上の施設長もしかり。

ところが一旦トラブルの匂いがするや否や、するりと逃げて「11時にAさんのご家族が来るから対応をお願い。自分は外出しなければならないので。」と言って消える手段の鮮やかさよ。

良いところ取り、手柄取り。何か身の危険を感じれば誰かに押し付ける。世の中で出世する人々の半数くらいに居るタイプ。

ところがこちとら、普段お会い出来ないし直接お話できないご家族様との面談は大好物。訊きたいことも山ほどあるし、ケアマネや相談員が報告してくれたんだか何だか分からない現状の話もしたい。

この日は二組のご家族様と別々の時間にお会いすることになった。

お一方目は10日ほど前に肺炎を起こして痰がガラガラだったお婆ちゃんの息子様。
『いや、あの時、お宅の施設長さんに『病院に入った方が良い』と言われて家族会議していたんだけど、こんなに日にちが経ってしまって。。。いったい母はどうなってるんですか。』

丁度良い!
結論から先に言うと、あれから10日後の昨日、再受診してレントゲンを撮ってみたところ、綺麗に肺炎が消えていたんですよ!さすがお母さまです!小さく細くとも、お強い。内服の抗生剤で治ったのは、普段からコツコツきちんとご飯を食べて下さっているせいもあります。薬もきちんとお飲みになっていました。

その他、入所する数年前から患っている大病についての現状など、事細かく説明していると、思いがけず素敵な思い出話をいただいたりする。
帰り際には『お忙しいと思いますが、また来て下さいね!』と手を振る仲になることも多い。まるでキャバ嬢・・・というよりは、年齢的に置屋のおかみのような状態。

もうお一方は『母にアイスクリームを食べさせたい!』というご要望を持って面会に来て下さった娘様。
良いですよ、良いですよ。食べていただいて下さい。嚥下状態は私が傍で見ています。

高齢者の方には珍しくないが沢山の疾患をお持ちの方なので、ご家族様は長年色んなことに心を砕いて来られたに違いない。
この逢瀬で声を大きくして言われたことは、たった一つ。

『母の頭皮!顔!腕!どうしてこんなに綺麗になっているんですか!?』ということ。

そうそう、約二年前、入職して来て初めてお会いした頃は、気の毒なアトピーの状態だった。いつも落屑がその人の周りを飛んで舞い、本人はバリバリと掻きむしり出血が絶えない状態。

沢山病気をお持ちだからいっぱい解説したいことがあるけど、そんな中でも、この話題。よくぞ訊いて下さいました!

お母さまは、施設によくある業務用のボディソープやシャンプーなどを使用するなど、もってのほか!
それで、私が愛用しているとある日本人の方が作った石鹸を使用します。洗い方は、ネットで泡立てて、職員が全身を素手で洗います。頭皮もそうして来ました。あとは、便秘の解消です。
出会い立ての頃、この方、本当はお綺麗なお婆ちゃまなんだろうなーと思っていたんですけど、皮膚が治ってみると想像以上でしたね。ほんとに綺麗な方。
病気も色々あるけれど、とにかくあとはもう、日々美味しいもの食べたり、夜はぐっすり眠ったり、気ままに過ごしていただきたいです。

娘さんの反応はさらに想像の斜め上を行っていて「なんという!そうだったんですか!?今までの分の石鹸代を支払わせて下さい。これからも請求して下さい!」と仰る。
いえ、こちらが好きで勝手に断りもなくやって来たことなので大丈夫です。
それより、アトピーがない女性にも使って欲しいくらいです。あ、娘様も是非。
サイトを紹介すると、一緒に同行している旦那様に『あなた!メモって!』

そのサイト名が、かつて流行ったブルーハーツの歌と少しだけ似ていたために、三人で『りんだ りんだ~♪ りんだりんだぁ~♪』と歌って、はもっていた面会室だった。

お忙しいとは思いますが、またいらして下さいね!と、この方々の時も置屋のおかみは名残惜しい気持ちで手を振るのだった。

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