まさかの名乗りあげ
二週間ちょい前だったか。
相方Kちゃんの強い希望で保護猫さんの里親探しをしているカフェへ行った。自宅から自転車で10分くらいの場所だった。
KちゃんとKちゃんの娘さんと出向いたカフェには心震えるほど可愛い猫たちが居た。
二人ともうちで猫を飼いたい!と思っている。
しかし、とても可愛らしいことには違いないがビビッとは来なかった。現在のカフェの方が居心地が良さそうで連れ去るなんてかわいそう過ぎるという気持ちが勝ってしまった。
ところがその店を後にする際に、一緒に帰ろうとして捕まる猫多数。やはり猫というのは賢くて、かなり状況を把握しているのだろう。捉えられる度に『え?何で?可愛いって言ってたじゃん。ごーつーマイホームだろ!?』と皆抗議していたので笑った。
そして今日はやはり乗り気のKちゃんと山の手線の某所のシェルターへ出かけた。これも初体験。生涯で猫を飼ったのは、皆猫の方から訪ねて来たというケースばかりで選ぶなんておこがましい。私には出来ない!という心境。
会場に入るとゲージの中にも外にも猫が沢山。皆『にゃー!にゃー!』と叫びながら『俺だろ?』とか『あたしを連れて帰りなさい!』アピール。不謹慎だが、時代劇の吉原とかを思い出してしまった。せつないわ。皆連れて帰りたいわ。無理だけど。
しかし、そんな中に、一切アピールしない猫がたった一匹居た。小さい。月齢が5か月というわりにはとても小さい。
その子はハンモックの中からじっとこちらを見据えているだけだった。綺麗な子だった。しかし通り過ぎると「こらこら、待て」と僅かにクビを伸ばすのみ。一言も発しないけど。
その子が10年ほど前に別れた白ちゃんにそっくりだった。
白猫の顔というのは千差万別。そしてこの子は完璧な白猫でもなく、尻尾に横の縞々がある。
互いに見つめ合っていると店員さんが「この子は昨日手術を終えたばかりで警戒して怖がっています。」と解説してくれる。『今のところ、名前はシフォンと言います。』と。
シフォンか。ピッタリの名前だ。と思ったその時、頭の中に『ブランカ。ブランカだよ。前は白だったけど、ほとんど同じ意味だよ。』という声。
この店員さん、何言ってんだろ?!白ちゃんの話なんかしたっけ?!と驚愕したが、何と、店員さんは何も言葉を発していなかったので、ダブルでビックリした。
視線を戻すと一切鳴かず、一切アピールもしない小さな白猫がじっと私を見据えてるのみ。
その時Kちゃんが『この子が良いんだけど・・・』と私にお伺いを立てるように意思表示をする。
弱い子かも知れない。まだまだ怖がりだ。
でも、家に着いたら、好きにしていてもらおう。私たちはブランカを連れて帰った。
『名前なんだけどさ。シフォンも良いけど、さっき、頭の中に突然ブランカって浮かんだんだよ。』と言うと「よし、それで行こう。」とKちゃん。『なんか、それ以外は許して貰えなさそうだ。』
キャリーから出た後は、私たちがよく使う踏み台の下に潜り込んでこちらを観察している。
まだこんなレベルだ。
でも、うん、好きに過ごして貰おう。
うちに猫が居る。しかも自分から名を名乗って来た不思議な猫が。
この先は分からないがとにかく幸せに過ごして貰いたい。寒い冬の日の暖かなこの部屋で。
後からブランカの意味をググってみたら『白い少女』という意味だった。
よろしく。奇跡のように可愛いブランカちゃん。