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謎の質問

職場に漢字一文字の苗字の方がいる。中国出身の方なのかな?と思うのは、その漢字一文字が三国志に出て来る名前で、音も同じ。つまりは日本人には決して無いであろう苗字だからだ。

かな?と思うと書いたのは、その方自体はどう見てもコミュニケーションに長けた日本人青年にしか見えないから。
但し、いつも怒っているという印象がある。

怒っている内容がごもっとも!と思うことばかりだというのも手伝ってか、私はあまり嫌じゃない。もっとも、自分がまだ怒られたことがないせいかも知れないが。

とにかく、周りはいつも彼に謝っている。権威のせいなのか、内容が正しいからなのか?おそらく両方だろう。

で、私が彼の怒号が聞こえると、ついつい、いつも笑ってしまうので「なんで笑ってんの?」と訊かれた。
『ごめん、ごめん。バカにしているわけじゃないの。ただ、いつもよく色んなことに気が付くなあ~と感心しちゃって。』と正直な感想を述べた。

そうそう、よく気が付く人というのは、良いのか悪いのか、多くの仕事を請け負うことになる。
気が付かない人はほんとに気が付かないので。

例えば将棋というと何十手先まで考えて動いているのが彼なのだが、他の人が真っ逆さまのことをしてしまうので「何で?何でそういうことするの?俺、また最初からやり直さなきゃいけないじゃん!」と怒っているわけである。しかし、言われた方は何を言われているのか分からないということの繰り返し。

あと、いつも一生懸命過ぎて、物事を噛み砕いて言う時間も惜しいのか、それで周りに通じないという状況でもある。(何せ一人でやらないといけないと思っているもんだから。)

怒りとはスピードが速い悲しみのことだ。

で、昨日、彼に挨拶をした時に『あれ?どうしたの?日焼けした?いや、違う。何か顔色悪いよ。』という異変に気付く。

彼は『いやいや!今日は天気が良いから利用者さんたちを日向ぼっこさせてあげたいんだよ!』とちぐはぐな返事を返して来た。

いやいやじゃなくて。検温してみて。

『でも、今日は、いつにも増して人が少ないんだよ!熱なんか測っちゃいかん!』

・・・・・・・・・。

今度は私がこの施設で初めて怒号。強制的に検温したところ38℃あったし、血圧も高かった。仕事に向けてアドレナリンが出ていて元気だったのだろうけど。

抗原検査をして15分後の判定を待っている間、徐々に彼はぐったり。やっと本来の姿に戻って来たのだと思う。が、それでもまだ仕事のことを考えている様子だった。

結果は陰性だったものの、すぐにお帰りいただくことを説得。『無理しちゃダメなんです!普段の働き方も、このままだと倒れるよ。死ぬよ。』

大人しく応じてくれたものの、熱でぼけーっとした目で、私に言った。

『ありがとう。反省、反省。ところで前から訊きたかったんだけど、Ohzaさんって・・・』

はい?

『なにじん?』

・・・・・・・・・。それは私がもうちょっと親しくなったら彼に訊こうと思っていたことだったので絶句。

どう見ても日本人でしょ?

『あ、そうなんだ。じゃあ、地球人なんだ。』

そう言い残して、彼はフラフラと帰って行った。質問の意味が全く分からない。あと、こちらは何人か訊けなかった。
まあ、どうでも良いか、そんなことは。

働き過ぎは良くない。面倒でも一人で頑張るのは良くない。仲間の協力を仰がねば。
私は何だか彼に投影を起こしてしまい、一人反省をした。人に助けてと言える人間になろう。

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