餅は餅屋(でないとダメなことがある)
Kちゃんが10月から勤め始めた施設の話を聴いていて、度々首を傾げることがある。
聴いている方の私がこんなだから、賢いKちゃん本人は絶望の真っただ中。
互いに自分が勤め始めたそれぞれ違う施設の話をするのだが、共通点としては、とりあえず職員が一生懸命だということ。
が、Kちゃんの方の施設は、その一生懸命さが間違った方向へ進んでいる。原因は何か?というと、大本の親会社が高級リゾートホテルであるということ。
特養で好きなものが食べられない高齢者さんを観てきたので、そういうところに勤めてみたいとは思ったKちゃん。しかし、介護や医療・福祉に関してはとことん専門外の企業なのではないだろうか?
その危惧が当たってしまった。
話せば山ほどあるが、その理由の一つとしては、コロナの感染対策について聞いていると「それは食中毒防止の対策だろ?」ということばかり。
食中毒にも飛沫感染対策の要素はあるが、呼吸器感染そのものを防ぐにしては的外れな努力ばかり。つまりは食中毒関連しか見えていない。
「その専門外さ加減にも困ったね。」という話を、昨日していたばかりなのに、本日疲れ果てて帰って来たKちゃん曰く「・・・・。案の定、クラスターが発生した。」とのこと。
一番下っ端の新人だというのに、今日一日で現場を仕切って走り回ったとのことだった。何せ、誰も正しい対策を知らないのだから。
しかし、入職したてでは急に全てを正すのは不可能だ。そして少しづつでは間に合わないというこの惨状。
「そして、お客様のプライバシーを守ります」という理由で高齢者の見守りが出来ていない。プライバシーももちろん大切なのだが、介護や看護はどんどんその人の中に入って助けなければならない仕事。
距離的にも心理的にもだ。
だから、ホテルのノリでいては転倒事故が相次ぐのはあたりまえ。下手すると死ぬよという話。
それでも、その企業が重視するのは「お食事を温かいまま提供すること。」。
感染対策で余計に手が回らなくなった現場で介護職員に流れるインカムはそんなことばかり。
たまたま富裕層がお住まいの高齢者施設ではあるが、これは特養でもデイサービスでもグループホームでも、あらゆるところで共通して言えること。
街の至るところにある施設、病院、老人ホーム。
もしもご家族を入所させるのだとしたら、その前に是非とも知っておいた方が良いこと。
それは、その企業が、医療・介護の専門の機関であるかどうか?ということ。
「大本は芸能人がお忍びで泊まるようなホテルなのでプライバシー厳守です。」と言い、誰か一職員の携帯のWi-Fiがオンになったからと言って、半日以上も全システムが止まるようなところは絶対ダメ。
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クラスターはどんなに気を付けていても発生することがある。が、その中には、なるべくしてなった大惨事もあるだろう。
そして、そういうことが起こった後も、そこから学びを得るでもなく「よし。頑張ろう。もっと温かい食事を提供してプライバシーの尊厳を重視して良い施設にして行こう。」では、少なくともこの事に関しては、全くの無駄な努力になるわけだ。
世の中の至るところに、そういう独りよがり、かつ傍迷惑な「努力しています。」が存在している。