隣の偉人
派遣さんは精魂込めて全員が指導した後も、お仕事、自立してくれない。
「一人でやれなんて聞いてません。」← 50代。
誰かと同じ仕事をする人ばかりだとしたら、何人いても人員足らんでしょ?
***
そんなわけで、結局休みが取れず悩んだが、今日こそは!と、のんびり家で家事をしていたところ、ラインワークスがキンコンカンコン!とけたたましく鳴る。
どこぞの施設で何かあったのかな?と気軽に覗いてみたところ、げげっ!うちの施設やないかいっ!!!
ショートステイの杖歩行の方が、まさかの離設。
どこの施設でもよく聞くことかも知れないが、これは一大事。
施設の扉には全てロックがかかっているはずなのだけど、自立度が高い人の場合、面会人や業者と間違われてエレベーターに一緒に乗って、普通に出て行ってしまうこともある。
しかし、ほとんどが認知症の方なので、命の危険に関わる。
そのため、法人中の人々が一斉にわが施設を目掛けて捜索に向かうのだ。← これは、ご利用者様の安否の有無の次に恐ろしい事態。
慌てて家を飛び出して、まずは環八沿いを探し回る。
他の施設の例では、自立度が高すぎて電車に乗ってしまい、見つかったのが3日後というケースもある。その間、多くの人が徹夜して探す。
でも、歩いているならば、その辺に居るかも知れない。
捜索し始めてわずか10分後くらいに「いました!見つかりました!」という第一報が入る。その第一報の主は、なんと、我らがKちゃんだった。
施設から500メートルほど離れたところに広大な公園があるのだが、なんと、彼女は「そちらに向かった!」と思ったそうだ。
居ない、居なくなった!と言っても、方向も道も360度広がっているわけじゃないか。いったいどうしてその公園に的を絞ったのだろうか?
でも、とにかく見つかった。
施設に到着してからボディチェックしても外傷もなかったし、何よりお元気そうだった。
良かった!
とは言うものの、事態が好転しても、急に胃痛は治らない。
よく晴れた日の、悪いニュースと良いニュースだった。
でも、やっぱり、良かった。
もう出勤したついでだったから、丁度お風呂嫌いのお婆ちゃんが暴れているってのもあって、ついでに入浴介助して帰った。
***
Kちゃんは、施設を抜け出した齢80のSさんの気持ちになって歩き出したそうだ。
きっと、こういうふうに思って歩くだろうと言うことで、すっかりSさんになり切って、『わー、川沿いに花がいっぱい咲いている~。左へ行こう。』帆を進めたのだと言う。
そして、しばらく歩くと『綺麗な施設があるなあ。ここも老人ホームかな?でも、シーンとしているなー。』と、そこを通り過ぎ、次に『あら?何だか、子供たちの楽しそうな笑い声がする。いっぱい聞こえるー。』というふうにその公園に向かい、見事、Sさん本人と再会したのだとか。
全く持って見事としか言いようがない。Kちゃんが居なかったら、真夜中、いや、翌日も、何百人もの人々で捜索していたかも知れない。
先日の不穏を治める方法といい、
まるでゲシュタルト療法士のようだ。
圧巻だった。
と、彼女に感心している場合じゃない。まずはどうやって離設したのかを究明して再発防止に努めなくては。
いやあ、もう、ほんとに無事で良かった。