一人一人の命
インフルエンザ予防接種が終わった。健康診断も終わった。
そのずっと前から悩んでいることがあった。もしかしたら先週の体調不良は、そのストレスがドーン!と来たせいかも知れない。
理由は複数あると思い込んでいたし、いつぞやも書いた。
でも、核となる部分を無視していた。無視するしかなかった。
何故ならば、私は黒子であり、あくまで利用者さん・・・この場合は主に高齢者をご家族に持つ方々のご意向のことだ。
それには従わなければならない。私情は山ほどあっても横に置いておくべきだ。
が、いつものように業務を遂行しようとリストを作って配って周ろうとしたとき、『あー、嫌だなー。』と再び気持ちが悪くなった。
それでも黒子だからして、その思いを抑圧してまずはボスのところへ行ってリストのコピーを渡す。そしてこれから病院の方にも配りに行きますと告げたその時。
ボスが『・・・・・・・・。嫌なんでしょ?』と言うビックリした。黒子のくせに、最近時折ポロポロと私情を明かしていたからだ。
『それを施設の方針にしようよ』と言わんばかりに、『これをご希望するご家族の方々に今一度説明しようか?保留にしようか?』と言ってくれた。
『する。します。ダメ元で説明してみます。』
泣きたい気持ちだった。
4年前のあの時代とは状況が違うのだ。
それからボスは、一階で面会を終えたご家族様を医務室に案内してくれるようになった。
それで私は面談が増えたのだが、全然重くなかった。やるべきことをやっている。させて貰えるという感動に打ち震えていた。
黒子だったり反面教師でいなければならなかった。ご意向を傷つけてしまうのではないか?とも危惧した。
しかし、話した相手は『ありがとう!そういうことならお任せします!』とすがすがしい顔で席を立って行く。
心と頭と身体が一致して、『それで行こう』と言って貰えたこの日を、私は忘れない。
あたりさわりない優しい嘘を手放すことが出来たこの日。
『私もそう思う。やってみよう。』と言って貰ったこの日のことを。