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粉河町役場鞆渕支所:あの廃墟に関する謎について
VR役者をやっております、ともよろうと申します。メタバース旅行記ぽいものを書いていきますので、よろしければどうぞお付き合いください。
今回は廃墟のお話です。
「粉河町役場鞆渕支所 Abandoned Wooden Town Hall」 VRChat
ブラウザのワールド検索ではヒットしないので、ワールドリンクはこちらです。
写真画像から3Dモデルを生成する「フォトグラメトリ」を用いたワールドが、メタバースでは多数公開されています。
中でも実在の廃墟をテーマにしたところは、実際に現地に行くことが難しく、廃墟という特性から、いつ消滅などしてもおかしくない物件だけに、鮮明な記録をデジタル保存するという意味でも、価値があると思います。
粉河町は、2005年に近隣の町と合併して紀の川市の一部となっており、当時の役場支所が、今では廃墟化しているとのことです。
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ここは1911枚もの画像から生成されたフォトグラメトリワールドで、その再現性の高さに驚きます。
様々な廃墟ワールドがある中で、ここが特別に面白いところは残された品々の多彩さで、時間を忘れて見入ってしまいます。
内装をふくめて、全体に大きく壊れていないことや落書きなども無く、荒れ果てた感じがしないのは、いまだに市の管理物として出入りに制限があろうことが推察されます。
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さて。
これら残置物の数々には、一つ共通する点があります。
それは、いずれも余暇利用に関わる道具(自動車雑誌も趣味的要素が強いもの)なのですが、わりと長期間にわたって存在していた雰囲気があります。
試しに、これらを古いと思われる順にざっくり並べてみると、
①寄贈品のビリヤード得点台 年代不明
②「ギャラクシーX」 1979年稼働
③ポケットビリヤード台 1986年以降?
④車雑誌 1991年
(本施設の廃止・封鎖 2005年)
②「ギャラクシーX」は、1979年稼働のナムコ「ギャラクシアン」のコピー品で、本家と同時期に世に出たものの、すぐに裁判手続きにより販売差し止めになった製品です。当時のブームの影響で購入したか、中古品を入手したものと推測します。
④「車雑誌」は表紙日付で年代が確定しています。ここの蔵書?
そして、
①「得点台」は、立派なこしらえの左下に寄贈者の銘があるのですが……
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「訪問記念 在米 岩月千代子 旧姓 上」とありますが、由来を推測するのが難しいです。『米国在住の千代子さんがここを訪れた記念に贈ったものです』
……なぜ??
たとえば、こちらの岩月千代子さん/上千代子さんが著名なビリヤードプレイヤーなのかと考えましたが、ネットで調べた限り不明でした……。古くてネットに無いだけかもしれないです。
それに関連して不可解なのが③「ポケットビリヤード台」でして。
年代を1986年以降と推定した理由は、本邦において一大ビリヤードブームを生んだきっかけが映画「ハスラー2(1986)」で、これ以前のビリヤード場は、主にポケットが無いビリヤード台でのゲームが主流だったようです。
しかし、いかにも時代を感じさせる①「得点台」を見ると、さらに古い時期に置かれたものかもしれず、そうすると今度は「なぜ大流行する前の時期にここに?」と思えてきますが、やはり分かりません。
ここまで考えてきましたが、ところでここは何のための場所だったんでしょう。地域の集会場?
役場の支所ではあるけれど、その2階は当時公民館的な性質を持っていて、利用者に娯楽を提供していたと考えるのが、順当かつ自然なようです。年代により、ざっくり10年以上の間。
どの用具にも破損したところはなく、雑誌さえ綺麗な状態で、当時の利用者がこれらを丁寧に扱っていたことがしのばれます。
おそらくですが、
近隣に盛り場の無いローカルなこの町で、彼らはここにつどい、楽しく遊んだり交誼を深めていたのでしょう。
現在のメタバースでの我々のように。
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旧姓、上千代子さんが結婚される以前にここでの想い出が深く、のちに立派な寄贈品を贈った――のかもしれません。あるいは、粉河町の涼宮ハルヒみたいな方で、ノリで贈ってやったわよ!どう?感謝しなさい!
みたいなのもいいですね。
Platform本誌では他にも魅力的なフォトグラメトリワールドの特集をしていますので、ぜひご覧ください。
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