Slow Neighborhood Bar      ~神田駅市場〜 とは?

2022年11月30日に神田駅構内に、Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜をオープンさせた。Slow Neighborhood Barとはなにか?改めて整理したことを2023年の年明けに書いてみよう。

Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は飲食店なのか?

もともと神田駅構内にある空き店舗を使ってもらえないか?9月に打診を受け、11月に入り実際準備を始めて1ヶ月。久しぶりに閉店していた店舗の扉が11月30日に開いた。Slow Neighborhood Bar〜神田駅市場〜である。
営業を始め、1ヶ月ほど経ったが、「ここは飲食店なのか?、何を売っているのか?わかりずらい。」という指摘を受ける。場所的には神田駅南口改札の目の前で、店の前には駅利用の往来が激しい。「ちゃんと飲食を提供すれば売り上げ上がるのに。。。」という助言も頂く。その指摘はもっともであるが、私のなかで腑に落ちない。それはなぜだろか?
私は、飲食営業の店舗をやりたいわけではない。

Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は何なのか?

Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は、飲食を提供している場所である。しかし飲食店ではない。何なのだろう?聞いているほうはよくわからないだろう。
Slow Neighborhoodは、コロナ禍のなかで顕在化した3つの分断からうまれたものである。乖離する異なる価値観の間をゆらぎながら、新たな価値を引き出すものである。 Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は、「異なる価値観の間のゆらぎ」を生み出す場所なのかもしれない。普段では会わない・異なる立場、価値間に身をおく人どうし、物、場所との出会いを、さらにデジタルとリアルの2つの環境と技術基盤をもとに持続かつ循環の交流へと導き、新しい可能性を形にするきっかけづくりの場所でありたい。それが私の想いである。
想いをカタチにする。そのためには、Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は、何なのか?という問いに対して、場所としての意味機能としての意味と2つの面から解いていく必要がある。

場所としての意味 ー 駅構内という場所

Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は、神田駅南口改札構内にある。電車に乗るために通る改札。この改札の存在を意識したことはなかった。あって当たり前だと思っていた。この改札の内と外。改札の存在による境界の形成。この意味は大きい。そもそも駅とはなんだろうか?
この意味を読み解くことで、Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜の場所の意味性がみえてくるのではないだろうか。
駅の一般的な理解は電車の乗降をする場所であろう。改札を通れば自然と、あとは電車にのるだけ。そう理解していた。
さらに新ためて、もともとの駅とは何か?整理したい。前は驛という字だったそうだ。「人類が馬をてなづけたとき、移動にあたって馬を休ませる場所が「驛」であり、人間にとっても宿や休憩所であった。」ということらしい。
駅を休む場所としての意味と、電車の乗降という意味と2つを分けて整理したほうがいいのではないだろうか。
かつてドイツに行ったとき、電車に乗る際、改札がなく迷った経験をしたことがある。ふと思えば路面電車やバスもそうである。改札がない。ふと乗車料金と入場料金は、まったく異なる性格のものではないか?。という考えが浮かんだ。今まで自分の電車代の理解が狭かったような気がする。
神田駅構内に構えるSlow Neighborhood Bar~神田駅市場〜を振り返ってみると、人々の電車の乗降の往来のなかで、ほっと駅で休む場所の意味が重要であると思える。駅のなかに生まれた余白のような場所である。いろいろな人の往来のなかで、世代や地域を超えた出会いが生み出される場所の意味が、この場所には求められている。

機能としての意味 ー異なる価値観をつなぐ場所ー

Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は飲食店として神田駅構内に出店。というのが一般的な理解である。周りから求められていることもそこにあるだろう。12月の運営もそのように進めてきた。しかし、私のなかではそこが腑におちないできた。この文章を書きながら、ようやく腑におちない理由がみえてきた。
あえて言おう。Slow Neighborhood Barは飲食店ではない。しかし飲食の提供は、この場所の機能として必要である。
正確にいえば、飲食の提供を通して、価値の異なる「人と人」、「人と地域」、「地域」と「地域」をつなぐ場所である。
そのためには、Slow Neighborhood Barではおいしい飲食を提供することをゴールに設定しない。食を通して生産者の想いを消費者に届けるだけでもない。食の提供を通して、生産者と消費者をつなぐこと。異なる地域と地域をつなぐこと。人と自分が住んではいない異なる地域とつなぐこと。が目指すところである。
これからSlow Neighborhood Barで展開するメニューは、おいしい先にある異なる価値観をつなぎ、新たな可能性を引き出す役割を目指していきたい。

場所と機能の分離 目指すは持続する循環経済の確立

コロナ前、場所と機能は、表裏一体であったかと思う。それがDX化とともに、どんどん分かれてきたように思える。今回の期間限定の神田駅での出店は、アフターコロナの社会のなかで、どのように地域経済を循環させるか、その試金石となる取り組み。と考えている。
2022年の年末に、2000年以降生まれの大学2年生の矢島さくらさんから、都市経済と都市計画の乖離されている状況を改善したい。という話を聞いた。都市計画に片足を置くものとして、都市経済と都市計画を融合させた都市づくりは長年取り組まれてきた。と思っていたからである。それがなにもまだ実現できていないと、彼女には見え、指摘し、それをテーマにこれから取り組んでいきたい。と。鋭い指摘と思いつつ、ある意味ショックであった。同時に可能性を感じた。
今までの用途地域コントロールで土地利用を進めてきた取り組み。人々の暮らしと乖離した大都市における都市開発により大きな経済を形成する取り組み。その取り組みを超え、小さくとも異なる価値間、小さな取り組みをつなぐことでうまれる経済循環は、今私たちが暮らす街もしくは関わる地域の持続性を見出し、確立できそうな機運を感じた。

Slow Neighborhood Bar~神田駅市場〜は、期間限定の小さな試みである。しかしここで行う試みは、次の世代を担う人たちが 自ら考え形にしようとする試みとなるであろう。その試みにある余白に多くの異なる世代、価値間の人たちが関わり始めた時、これからの未来に希望がもてる気がしている。2022年末に感じたこの可能性に道筋をつけることを、新しいミッションとして2023年の年明けとともに自らに課していきたい。

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