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#11Copenhagenize Index2019を読む5 東京は自転車にやさしい都市か

 Plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行っていきます。
 bicycle frendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

Plat Fukuoka cyclingの目次は下記よりリンクしていますので、ご覧ください。(随時更新)

0.Plat Fukuoka cyclingの描く未来
1.Copenhagenize Index2019を読む
2.Plat Fukuoka books&cycling guide
3.Plat Fukuoka cargobike style
4.Fecebook ページ

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「bicycle friendly」の指標として、Copenhagenize Indexというものがあります。Plat Fukuoka cyclingでは「Fukuoka books&cycling guide」と交互で最新版Copenhagenize Index2019の読解を通りして、福岡がbicycle friendlyな都市となるためのヒントを探っていきます。第5回は今週がカレンダー上の東京オリンピックの開催しているはず時期でもあるので、インデックスで唯一日本の都市でランクインした東京について、紹介します。

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(以下はリンクサイト:https://copenhagenizeindex.eu/cities/tokyoの内容を知人で国際経験豊富な横田美香さんの協力の上で意訳しております。転載等する場合は本サイトのプライポリシーを参照ください)

◆コペンハーゲナイズインデックス2019 第16位 東京
・トータルスコア 55.4%(90.2)
・ランキング履歴 2011年 5位
         2013年 12位(※東京以外に名古屋も15位で掲載)
         2015年 圏外
         2017年  9位
         2019年  16位
・ストリートスコア 2.5(4.0)
・文化スコア    2.7(3.8)
・野心スコア    1.9(4.0)
()は2019年1位コペンハーゲンのスコア

◇スコアについて
 東京の根強いサイクリング文化をもってしても、自転車モビリティ開発で新たなレベルに到達するには,住民がこの巨大都市の中で,より長い距離を自転車で移動できるよう地元自治体は自転車専用インフラに投資する必要がある。
Clotilde Imbert氏,Copenhagenize Franceディレクター

◇ 得点の裏付け
 東京は、長年サイクリストの街でした。それはインフラや都市計画の賜物というよりは,そこに暮らす人々によるものです。世界最大都市の1つである東京には、何百万もの自転車利用者が実用的なママチャリに子供や荷物を載せて店,学校や駅を往復します。

 2017年,再びトップ20に返り咲いた東京は、今でも世界最高のサイクリング都市群の一員です。今回他都市がより大きく躍進し,革新を遂げるなかで,いくつかのポイントを落としています。 ここ数年の公式な自転車のモーダルシェアは、13〜15%で推移しておりますが,東京の自転車文化は、その多くが短距離移動のために自転車を使用し,かつ都心部以外の地域で顕著に見受けられます。これは自転車利用と東京の公共交通機関の関係によるもので,鉄道利用者の18%が自転車で最寄り駅に到着してから,広大な大都市の中心へと電車で向かうためです。

 自転車は老若男女のすべての経歴の人に使われている。しかし、これまでのところ、東京での自転車利用は中長距離のものとはなっていません。

 自治体は2020年東京オリンピックに向けて新たな自転車レーンを整備する計画を策定しましたが、13キロの保護レーンしか整備されておらず、実用的なものにほど遠く、市民にとっても旅行者にとっても使うにはほど遠いです。

「東京では皆が自転車に乗る。彼らは健康や環境保護のために自転車に乗るわけではない。それが理にかなっているので、自転車に乗るのです。」
Byron Kidd氏 Tokyo By Bike 創設者兼編集者

◇補足
 東京で見て見ぬふりをしてきた問題(タブー)とは,自転車を交通手段として計画する政策のメリットを認識し、強く要望されている自転車専用道を整備してこなかったことである。必要な整備がされず,急増する需要‐東京23区や市を自転車で行き来するための最も潜在的な需要ではち切れんばかりの都市、それが東京です。

(意訳はここまで)
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得点の裏付けを書かれているByron Kidd氏は自身のサイトTokyo By Bikeのコラム(1)にて、2017年にTOP20から落ちたことから、2019年にTOP20に戻ってきたこと自体に驚いたと記しています。さらにこのインデックスでの16位は東京の都市計画や交通計画者に与えられるものではなく、あくまで東京で、危険な走行環境の中でも、自転車に乗っている人びとに与えられるものと言及しています。

〇東京のスコアについて
 Copenhagenize Indexにおける日本で唯一のランクイン都市・東京の各スコアについて、分析を試みてみます。
〈文化スコア2.7〉
 東京は文化スコアが2.7と高いです(第5位のストラスブールの同スコアは2.9)。その理由については、上記、得点の裏付けにもある通り、東京は鉄道網が高度に発達しています。特に山手線内では駅から職場は徒歩圏内のため、通勤者は自宅から最寄り駅まで行けば、そのまま職場まで到着できるようになっています。また、都内での食料品などの買い出しでは、一つのスーパーで買い物をするよりも、野菜は八百屋で、パンはパン屋で買うことがあり、小回りの利く自転車が圧倒的に有利です。これらの理由で自転車のモーダルシェアが高いこと。また幅広い利用者層が自転車を利用していることがポイントになっているのではと思います。

〈野心スコア1.9〉
 東京の野心スコア1.9とTOP20の中で最も低い(東京の下の第17位台北の野心スコアは2.8)スコアとなっています。これは上記の得点の裏付けにもある通り、他都市が力を入れて行っている自転車政策や都市計画は、ほとんど実行されておらず、実用性に大きな疑問が付くような危険な自転車レーンの整備が進んでいる状況を現しています。これらへの修正を含めた自転車政策や都市計画への根本的な考え方の改善がない限り、東京がTOP20 に残れることはまずないと思われます。
 一方で、東京ではシェアサイクルが着実に広まっています。東京では通信会社ドコモの関連会社ドコモ・バイクシェア社が事業者として、千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、目黒区、大田区、渋谷区の10区が導入、7月には中野区も加わり(2)、都内のシェアサイクルのネットワークが確立しつつあります。同社のシェアサイクルは小さい車輪で小回りもきき、かつ電動アシスト付き自転車のため、坂道の多い東京は大変便利です。今後も拡大が予想されます。

〈ストリートスコア2.5〉
 東京のストリートスコアの2.5となっており、第6位のフランスのボルドーと同じスコアであり、東京の一つ上のベルリン(ストリートスコア2.2)よりも高い値になっています。評価軸が明らかではないので、憶測になりますが、駐輪場の整備に関しては、放置自転車対策で駐輪場の整備を積極的に進めているところなどが評価されているのではと思われます。
 一方で走行環境に関するインフラ整備では、駐車需要があるところに自転車レーン(青色のペンキのみや矢羽根マーク)を物理的分離装置もなく整備したため、路上駐車でふさがれ、機能していないことなどが指摘されています(3)。

〇東京のスコアから見えるもの
 東京の特徴としては、自転車の利用距離が短距離がメインであり、徒歩・自転車での生活圏が成立しているということです。言い換えれば人びとは車を使わなくても、自転車で最寄りの鉄道駅にアクセスでき、商店街やスーパーなどでの必要な買い物ができるような環境ができているということになります(4)。東京は大都市ですが、職場以外の生活圏に関していえば、コンパクトシティとなっているとも言えます。
 
 COVID-19によりオリンピックは幻のものとなると予想されますが、オリンピックに関係なく人々の生活は続いており、どのような社会を今後構築していくかは、世界共通の課題です。欧米諸国ではすでに、都市における人々の移動手段としての自転車が大きな主役として、政策が推進されています。遅れながら日本の国土交通省が動き始めています(5)

 次回のコペンハーゲナイズインデックスは2021年上旬に発表されます。各国ではCOVID-19対策で、かなり大胆な道路政策の見直しが行われ、自転車インフラ整備が進んでいます。日本の都市がTOP20 に消えないためのにもPlat Fukuoka cyclingは包括的アプローチでもって、bicycle friendlyな都市となるためのヒントを探っていきます。

 次々回の「コペンハーゲナイズ・インデックス2019を読む」は第3位のユトレヒトとオランダの自転車政策がどのようにして現在の姿になったのか、ネーデルラントの自転車組織Dutch Cycling Embassyの戦略冊子から、紹介いたします。

 次回は「Plat Fukuoka books&cycling guide」の第5回として、ドイツのコンパクトシティに関する本とサイクリングに寄りたいパン屋さんを紹介いたします〇

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〈参考文献等〉
(1)Byron Kidd氏「Tokyo Ranked 16th Bicycle-friendly City in 2019」(TOKYO BY BIKE、2019.7.1)

(2)「中野区がシェアサイクル導入 渋谷区・新宿区など隣接区との相互移動可能に」(『中野経済新聞』2020.7.20)
すべての自転車が電動アシスト付き自転車のため、高低差のある都内では、非常に便利でした。筆者も東京で仕事をしていた時に、頻繁に使用していました。福岡ではチャリチャリ(旧称メルチャリ)の利用が拡大しています。こちらはまだミニサイクルのみですが、今後電動アシスト付き自転車の導入も検討されているようです。

(3)ろぜつ@自転車(著)「五輪事業としての自転車インフラ整備でロンドンの轍を踏む東京」『perfect comes from perfect』
にて、東京でオリンピックの合わせて整備された自転車レーンについて、分析されています。また東京の前にオリンピックを開催したロンドンについても「自転車利用環境の改善を加速するロンドンの今」『perfect comes from perfect(2020.2.8)』として、ロンドンで整備が進む自転車ネットワークについて、動画とともに実感できます。

(4)筆者の実家も東京の杉並でした。家族で自家用車をもっていたものの、買い物で自家用車を使用するということはほとんどなく、自転車や徒歩で近所のスーパーなどにいっていました。また、大学生時代は、サイクリングクラブに所属もしていたのと、交通費節約のため大学までの片道15キロを自転車で通学し、都心を走るときの危険察知能力や手信号をすることの大事さをなどを経験しました。
 自転車の有能さを認識したのは、東日本大震災の時でした。ちょうど大学から大学院への間の時期で、研究室で今後の研究内容を考えていた時でした。その日の都内の交通網はほとんど機能しなかったわけですが、自転車で来ていたため、いつも通り帰宅できました。あの後の東京では、一時期自転車ブームがあったと記憶しています。今回のCOVID-19で、再び自転車通勤に注目が集まっています。「2020年の通勤は自転車で Bike to Work 2020にみる自転車利用のこれから」(スポーツやワークアウトを始めたい、
続けたい人の“やる気を刺激する”新しいスポーツWEBメディア『onyourmark』2020.7.13)

(5)「「新しい生活様式」を踏まえた国の取組と、企業の皆様、自転車通勤をされる皆様へのお願い」(国土交通省自転車活用推進本部、2020.6.18)
にて、東京都内に新たに自転車専用通行帯等を整備する政策が報道発表されました。ただCOVID-19対策でたったの17キロしか整備されないこと、その17キロについても、専用通行帯で自転車道でないなど、小手先な対応しかできてきないとの指摘があります。福岡の整備状況については、別途特集して取り上げる予定です。

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