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サンアンドムーン

あらすじ
普通の女の子が恋をして変わっていく話

退屈だなー。
今は昼頃、午後14時くらい。まわりは同い年の女の子と男の子。学校なんだから当たり前だよね。私はるな。コスモ高校に通う高校二年生。みんなからちょっとかわってるねっていわれる。
午後からの授業は家庭科だった。どこでとれたかわからないオーロラ色に光る魚の鱗を一生懸命剥がしている。きらきらしててとっても綺麗。でも上に死んだ魚の目があって気持ち悪いな。死んでるのにこっち見てるみたいで気持ち悪い。目玉潰しちゃだめなのかな。
るな。またおこられるよ。
友達のななが話しかけてきた。私は魚の鱗に夢中になって先生の話を全く聞いていなかったからだ。
先生の方に目を向けると、いかにも家庭科教師らしいチェックのスーツを着たまみ先生が、この魚はじっくり蒸すと骨まで食べられますからねって説明してる。骨を食べるなんて気持ち悪い。聞かなかったことにしたい。
まみ先生の言った通りに魚を水を入れた鍋に入れて蒸し焼きにする。これで死んだ魚の目も蒸されて真っ白になっちゃうんだろうと思った。
授業が終わってななにはなしかけられる。
ねぇ。るな最近おかしくない?
なんでそんなこときくんだろう。少し嫌な気持ちになってどうして?と聞き返す。だってるな今日みんな蒸し焼きにしてる時にまで魚のうろことっててさ、ちょっとおかしいよ。
あああれは魚の鱗が綺麗でうっかりしたんだって答える。魚の鱗がきれいなわけないじゃん。やっぱりるなおかしいよ。ちがうの。よくみるとホログラムみたいにきらきら反射してきれいなのに。なんだかななと話が噛み合わなくなってきたので話を終えてななに今日一緒に水玉カフェいこうよって誘う。水玉カフェの水玉パフェは綺麗に透き通った青いゼリーにきらきらした白玉団子がのってエメラルドみたいなメロンシロップがかかってる。私たちはこれをふたりで食べたらすぐなかなおりできちゃうの。
水玉カフェはわたしたちみたいな女の子のお客さんがたくさんいてざわざわしてる。蛍光ピンクのケーキとかレモンイエローのゼリーとかがきらきらしてて私はこのお店がとても好き。
お店は小さいけど壁は薄いピンク色とオレンジ色のグラデーションになってて夕日みたい。そこにカラフルなステッカーとかフライヤーが貼り付けてあって私はここに来ると新しいフライヤーをすぐにみつけることができる。
新しいフライヤーはホログラム加工された紙にピンクの十字架にハートのマーク。私はかわいいって思ってそのフライヤーにピンクの文字で書いてあることを詳しく読んでいく。アルバイト募集。16歳以上の女性。看護師。資格経験不問そこまで読んで私は頭の中が?でいっぱいになる。看護師なのに資格経験不問ってなに?私はなんだか興味がでてきてその募集要項の続きを読んでいた。
場所はN地区の廃病院だった。廃病院で看護師のアルバイト??でも私は刺激が欲しかったからほんとに好奇心でこのアルバイトに応募してみることに決めた。
ななとおしゃべりしてる間も頭はアルバイトのことで頭がいっぱいでななの話はそんなに聞けていなかったからあんまり覚えてない。
でもななも水玉パフェを食べて機嫌もいいしきっと大丈夫。ななと別れたあとすぐにスマートフォンをとりだして書いてある番号にかける。何回かのコール音のあと女の人の声がした。相手は名乗らずにどなたですか?と聞かれたのでアルバイトの募集を見てと返した。相手は身分は?と聞いてきたのでコスモ高校に通う高校生だと答える。すると、すぐに面接に来てって言われた。
私は今までバイトとかしたことなかったし、こんな感じなのかなーって思ってすぐN地区の廃病院に向かうことにした。
N地区は家やいつもの学校からそんなに離れてないんだけどなんだか誰も話題にしないし行ったことあるって人もいなくて私も行ったことがないからどんなところなのかなあって思って向かっていった。水玉カフェを出て、いつもきれいなお花が売っているお花屋さんの角にちょっと薄暗い路地があってそこを進んでいく、お花屋さんはいつも季節の花が咲いていて今は星型の白い花びらの真ん中がピンクや水色になってるお花や、小さなたくさんの薄紅色の花が連なったシャワーみたいな大きな花、薄い黄色にピンクの水玉模様が入った珍しい花もある。私は花屋さんの店先を曲がって路地に入る。路地はいつもいく商店街と違ってちょっと薄暗くて怖い感じ。同じ学校の子はたぶん路地を曲がったりしないんじゃないかな。入った子の話なんてきいたことないし。こんなに近くにあるのにみんながはいったことのない道に入るなんてちょっとドキドキする。このことをななに話したらまた心配されちゃうからだまっていよう。剥き出しの配線や室外機やなにかわからないパイプみたいなのが剥き出しで道もでこぼこで気をつけて歩かないと転んじゃいそう。ゆっくり気をつけて路地を進み、指定された廃病院に向かう。はじめて来るけどここに本当に人なんているのかな?だれもいないのかもってちょっと不安になったけど病院の入り口はちゃんと電気がついてるし、建物も想像してたよりボロボロじゃなくて出入りしてる人や車も停まっていて安心した。でも先生やママもここはずっと昔に廃病院になってもう使われてないって言ってたと思ったけどふしぎ。まあいっかと思って少しドキドキしながら中に入る。すぐに受付があってそこの女の人にどなたですか?と聞かれる。私はさっきアルバイトのことで電話したものですっていうと身分証を出してください。と言われた。私はコスモ高校の学生証を出すと少し預かりますと言われ学生証を奥の部屋に持って行った。そこからしばらく待っていると面接をするのでこちらにどうぞって言われて違う部屋に案内される。病院の中には看護師さんや患者さんみたいな人もいて廃病院って聞いてたのにちゃんと病院として使われてるみたい。指定された部屋に入ると渡された紙に住所とか連絡先とか志望動機とか書かされて写真を撮られたりした。それでなんでこのアルバイトを知ったの?と聞かれて水玉カフェの応募用紙を見てきましたと答える。それじゃあ今日から働いてもらうからこれを着てって制服が渡された。渡された制服はぴったりした白いワンピースの胸のところに刺繍されたピンクのハートがあって真ん中に白い十字架がくり抜かれていて結構かわいい。制服とお揃いの白いキャップにピンクのハートと十字架がついていてほんとの看護師さんになったみたいでうれしくなった。サンダルも真っ白。制服がかわいいとすごくうれしい。制服に着替えるとこれから仕事を教える先輩のところに連れて行くから覚えてねって言われた。
そういえば私は大切なことを言ってなかったので慌てて私看護師の経験も免許もないんですっていうとそういうのは大丈夫だから、その代わりアルバイトのことは学校や親や友達の誰にも話しちゃダメっていわれた。なんだか変だなあって思ったけどとりあえず言われるままに先輩のところについていくことにした。ナース待合室って書いてある部屋に通されて先輩を紹介された。先輩は私はまりん。あなたには色々教えるからとりあえずここに座って、と言われた。その部屋はそんなに広くなかったけど薄いピンクの壁にアイボリーのふかふかのカーペットが敷いてあっていくつかのキャンディカラーの小さいテーブルやクッションがあってテーブルの上にはメイクポーチとか鏡とか食べかけのお菓子とかがいっぱい置いてあった。私はまりん先輩からキーホルダーにハートに十字架模様の中に607と書かれた小さな鍵を渡され、これあそこのロッカーの鍵だから、着替えとかはあそこに入れてねと言われた。なくさないようにねっていわれる。私は持っていたコスモ高校の制服やスクールバッグをロッカーにしまうとまりん先輩からとりあえず仕事を覚えてもらうんだけどそんなに教えることないんだよねって言われた。とりあえず病院を案内するからって言われて病院の中を見学させてもらうことにした。病室を案内されて不思議に思ったのはどこの病室もベッドはだれかが使っている感じはするのに寝ている人がほとんどいなかった。リハビリ室って書かれたところには患者さんらしき私服の人はいるけどリハビリしているって感じじゃなく患者さん同士で真剣に何かを話し合ってる感じだったし待合室もかもそんな感じ。病院ってこんな感じだったかな?とか少し不思議になった。私の仕事はベッドメイキングや掃除、荷物を運んだりいわゆる雑用?みたいなものらしくほんとに覚えることなんてほとんどなかった。お医者さんみたいな白衣を着た人もいたので新人のるなですって挨拶するとああ、まあ頑張ってねと言われる。なんだか変な病院だけどちょっと楽しそうだしまあいいかと思い今日からここで働くことにした。まりん先輩にこれからよろしくお願いしますというとアルバイトのことは親にも先生にも友達にも内緒にしてねと面接の時のように厳しめに念を押された。シフト表を出す時遅く帰ることになるけど親になんていうの?と聞かれたので部活に入ったっていうと答えたらそれなら大丈夫と言われた。コスモ高校はアルバイト禁止かどうかは知らないけどあんまりアルバイトしてる子っていないんじゃないかな。私はみんなには言えないちいさな秘密ができたような気がして少し嬉しくなった。その日は病院の大まかな案内と掃除とかのやり方とか食堂の場所とか先輩の紹介とかされて終わった。明日も来てねと言われてナース待合室で白い看護師の制服からコスモ高校の制服に着替える。病院を帰り際に出入りする時は誰にも見られないようにねって厳しめに言われた。そして明日から受付でこのカードを見せてねって言われて透明に病院のハートと十字架のマークが印刷されているプラスチックのカードを渡された。
家に帰るとママに今日少し遅かったわねって聞かれたから部活に入ったのと答えた。ママに嘘なんてついたことなかったからドキドキしたけどママは疑ってないみたいでそうなの頑張ってねと返してきた。ちょっと悪いことしてるみたい?でもなんだかそれより自分だけの秘密がもてたことが嬉しくてお風呂の中でも自分の部屋に戻ったときもすこしドキドキしていた。エメラルドグリーンのペンキで塗られたフレームにまっ白いシーツ。ハート型の水色やピンク色のクッションがたくさんおいてある自分の部屋のベッドに腰掛けて制服からミントグリーンにピンクのレースがついたキャミソールと白地に熱帯魚がたくさんプリントされたショートパンツに着替える。これは私のお気に入りの部屋着。いつもの商店街のランジェリーショップでななとお揃いで買った。ななのは薄いピンクのキャミソールにミントグリーンのレースでショートパンツには色とりどりのお花がプリントされている。これを見つけた時ななもわたしもすごくかわいくてお揃いにしようってふたりですぐに決めた。そんなななにもひみつができちゃったと思うとなんだか不思議な気持ち。でもきっとななならわかってくれる。そんな気もする。ベッドに入るとすぐに眠たくなる。宿題とかあったかな?とか思ったけど眠気に負けて朝まで寝てしまう。
そして朝起きて白地に青緑色の襟と胸当てのところに二本の青緑色のラインと薄い黄色の糸でコスモ高校の星のマークが刺繍してあって襟のところに桃色のリボンがついてて襟と同じ色のプリーツスカートのセーラー服の制服に着替えてコスモ高校に向かう。朝の道はすごくきらきらしてて大好き。空も知らない家の花壇のお花も朝露が朝日に反射してきらきらしてる。学校は白い校舎に広い運動場、床は淡いグリーンで壁はクリーム色。お昼休みには屋上でおしゃべりするのが好き。そしてその後たまに寄り道したりして家に帰るだけだったけど今日からちょっと不思議なアルバイトがあると思うとたのしみ。授業中も自分だけの秘密があることがうれしくてちょっと先生の話を聞いてなくて怒られたりしたけどいいよねって思った。
放課後になったら私は誰にもきがつかれないように急いで学校を出てお花屋さんの角を曲がる。そして受付でまりん先輩から渡された透明なカードを渡すと機械でカードをチェックされて通された。そしてナース待合室に向かい看護師の制服に着替える。まりん先輩はもうきていて待合室でお菓子を食べていた。まりん先輩に挨拶するとピンク色の紙を渡されてシフト書いてって言われた。シフトを書いているとまりん先輩がいまちょっと暇なんだよね。と言っていた。周りを見渡すと同じ制服姿の子がお菓子を食べたりスマートフォンをいじったりメイクをなおしたりしている。まりん先輩が掃除前のシフトの子がやっちゃったしあとは制服で病院の中を適当に見回りしてくれたらいいんだけど…今日はそんなに必要ないしと言っていたので私はどうしようかなっておもうとまりん先輩が食べていたお菓子を勧めてくれたのでそれを口に運ぶ。透明のキャンディの中にいろんな色のラメやスパンコールの入った柔らかいキャンディでそれぞれ味が違う。私はミント味とチェリー味をふたつ同時に口に含むとまりん先輩に私きょう何をしたらいいですか?と聞いた。まりん先輩はまだ初日だもんね。だんだんわかってくるんだけどとりあえずしばらくは私についてきてよって言われた。お菓子を食べてるだけでいいのかなーって思いながらお菓子を食べているとまりん先輩が立ち上がり、透明なバインダーを私に持たせて廊下に向かった。私はとりあえずまりん先輩についていった。
病院の中は昨日と同じで看護師の制服の人や患者らしき私服の人と入院着みたいな人がいるけどあんまり病気って感じじゃない。
ベッドもこの時間は誰も使ってなくて変な感じ。まりん先輩は何か緑色の機械を持っていて天井や壁の隅やコンセントにあててバインダーに何かを書いている。なにをしてるんですか?ってきいたらこれはあとで覚えてもらうからいまはいいっていわれた。私はなんだかほんとに歩いてるだけで変なアルバイトだなーって思いながら歩いてる。患者さんがこっちに向かってきた。私と同い年くらいの男の子、青いTシャツにデニムのズボンに白いスニーカー。私と目が合う。なんだか感じたことがないみたいな気持ちがして顔が赤くなる。あの人ここの患者さんなのかなって思って目で追ってしまう。その人は隣の緑のシャツを着た男の人と何か話しながらリハビリ室に入っていった。また会えるといいなって私はその男の子のことをずっと考えていた。
アルバイトが終わって家に帰って学校に行ってもなぜかその男の子のことが忘れられなくて私はママの話も授業も上の空だった。
いまは歴史の授業で教科書には年表とか知らない誰かの写真とかがごちゃごちゃ貼ってあるけど私の頭の中は昨日あった男の子のことしか考えられなくなっていた。なんていう名前なのかな。病院でなにしてたんだろう。こんな気持ちになったのは初めてでななにもこの気持ちは話せなかった。この気持ちってなんていうのかなあって思いながら今日はアルバイトのシフトを入れてなかったのがすごく残念、でも明日はお休みで一日アルバイトのシフト入れちゃったからすごく楽しみ。まっすぐ家に帰らないで私の大好きな洋服屋さんに向かう。
その洋服屋さんは私の大好きなデザインの洋服がいっぱいあってすごくすき。ショーウィンドウには裾がふわっと広がって肩の紐のところに赤いリボンがついて裾にむかって模様のさくらんぼが雨みたいに降っていて裾に向かってだんだん白色から赤色に変わっていくかわいいワンピースと薄紫とオレンジのレースを複雑に組み合わせたキャミソールと透明なラメの中に星とかハート型とかのスパンコールを閉じ込めたサンダルとかが飾ってあって入る前からわくわくする。私はアルバイトでお給料をもらったらここですごくすてきなドレスを買うんだって決めてた。
お店の中には真っ白のいろんな模様のレースとたっぷりのシフォンでできた溶けかけのアイスクリームみたいな繊細なドレスや真っ青な生地にピンクやオレンジや緑のグリッターやスパンコールでできた大輪のダリアの花がギラギラした妖しげなドレス。淡いピンク色に薄いラベンダーとレモンイエローとミントグリーンの糸で小さなつるばらを全体に刺繍していてキャミソールの紐は薄紅色。そんな素敵なドレスがたくさんある。私は無意識にきのうきた男の子ともしどこかにでかけるならどんなドレスにしようかなって考えていた。お店にあるいろいろなドレスの中で私はパフスリーブの少しキラキラした淡いオレンジ色の生地にエメラルドグリーンのレースとラベンダー色のリボンがついたサンセットの空みたいなドレスがすごく気に入った。これを着てあの男の子と海岸で夕陽を見ながらアイスクリームを食べるところを想像するとすごくうれしくなってアルバイトの給料をもらったら絶対これを買うって決めた。そのことをおみせのお姉さんのみかさんに話すとじゃあこのドレスはるなちゃんのために売らないでおくわっていわれてすごくうれしかった。みかさんはふわふわの白いレースのキャミソールとデニムにグリッターやスタッドが打ち込んであるミニスカートにラメがたっぷりのスニーカーで今日もすごくかわいかった。
家にかえっていつもの部屋着に着替えて明日は一日アルバイトだからあの男の子にあえるっておもうとなかなか寝付けなかった。
次の日は休みだったから私は起きていつもの高校の制服じゃなくて赤いギンガムチェックのブラウスとデニムのショートパンツに着替えてにママにはななと遊ぶってうそをついて朝からアルバイトに病院に出かけた。
病院の入り口で透明のカードを出して急いで制服に着替える。あの男の子今日もいるかなって思うとそれだけで楽しみでドキドキする。私はポケットから鏡を取り出してメイクや前髪をチェックしたりを頻繁にしてたのでまりん先輩にどうしたの?ってきかれちゃってあわてた。まりん先輩は昨日と同じバインダーを持って私と病室の掃除をする。病室は白一色でベッドもカーテンも床も全部白。ベッドの上にはリュックとか本とかパソコンとか色々なものが物置みたいにおいてあって雑然としている。ベッドの持ち主がベッドにいることはほとんどなくて不思議な感じ、私はあの男の子にあえないかなぁってことで頭がいっぱいでそんなこと疑問に思ってなかったけど、私がゴミとかを掃除している間にまりん先輩は機械でなにかを調べてバインダーに書いていた。あの男の子どこにいるのかなあって思うと私は上の空でほとんど人がいない病室に入るたびにドキドキしていた。やっぱり病室は使われていないみたいでほとんど人がいなかった。わたしはまりん先輩に患者さんはふだんはどこにいるんですか?と聞くとリハビリ室とか手術室とかで集まってると思うよって言われた。少しまりん先輩は厳しい顔になってどうして聞くの?って聞かれて私は少し答えに詰まった。そしたらまりん先輩が何か隠してるの?ってすごく問い詰めてきて私は仕方なくあの男の子のことを話した。そしたらまりん先輩はなんだかほっとした顔をしてそういうことならあの男の子はいつもA館のリハビリ室にいるんじゃないかな。部屋はA棟の607号室だよって教えてくれた。あの人の部屋はA館の607号室なんだ。そしてここはA館の五階、エレベーターに乗って次は六階の掃除をすることになっている。601号室、602号室とあの男の子の部屋の607号室が近付いてくることにドキドキする。その前の606号室の時はもう胸がドキドキして掃除どころじゃなかった。でも606号室のベッド下は黒い煤がたくさん溜まってて掃除がとても大変だった。ベッドのうえにもなんだかよくわからない機械がごちゃごちゃ置いてあってシーツを取り替えるのもすごく大変。まりん先輩は何回も緑色の機械を色々なところにあててなにかを書いている。そしてとうとう607号室に入った。他の病室と変わらないけどどれがあの男の子のベッドなんだろうっておもってドキドキしながら部屋の中のベッドを見渡した。各部屋のベッドは四個。白いボードで仕切りになっていてそれぞれ荷物を置いたりしてその人の部屋みたいになってる。一つ目のベッドは周りにいくつかの段ボール箱の上に本がたくさん置いてあった。二つ目のベッドは隣の部屋にあったみたいな黒い煤とごちゃごちゃした機械のパーツみたいなのが乱雑にプラスチックの箱に入れてあって着替えとかもごちゃごちゃにそこに入っていた。その着替えの中に見覚えのある青いTシャツを見つけてここがあの男の子の部屋だってわかった。
私は嬉しくなってそこは念入りに掃除しなくちゃって思ってベッドの下に潜ったりして掃除する。手書きのノートとかが置いてあって絶対ダメだけど読みたくなる衝動に駆られて開こうとするとまりん先輩に怒られた。そしてその部屋の掃除を終わらせると私はあの男の子どこにいるのかなあって思ってベッドの上の感じとかを思い出して勝手にドキドキしてた。
なんて名前なのかなとかどんな性格なのかなとかかんがえる。そもそもなんでこの病院にいるんだろう?っていうかこの病院はなんなんだ、う?っていう疑問に突き当たる。掃除が終わってお昼休憩の時間になる。病院の食堂でご飯をみんな食べるみたい。私はまりん先輩と一緒に食べようかなと思ったけどもしかしたら食堂にあの男の子がいるかもしれないとおもって一人でトレイをもって食堂の列に並んだ。この病院の食堂はトレイの上のお皿にカウンターの上にあるお惣菜を選んでいくタイプだった。私の持っている薄水色のラメ入りのトレイの上にカラフルなプラスチックのお皿が置かれていく、私はふわふわの卵のスープと魚のフライとごはんとサラダの組み合わせにした。あの男の子いるかなって列の中から辺りを探す。もしもいたらぜったいにみつけられる不思議な自信がどこかにある。この自信はなんだろう。私は壁際の隅の席にあの男の子がいるのを見つけた。私はまっすぐにトレイをもってその男の子の隣の席に座る。私はドキドキしながらその男の子にここに座ってもいいですか?と話しかける。男の子はどうぞ、と言って私を座らせてくれた。男の子は八宝菜みたいなあんかけの野菜や肉が入ったお皿とごはんと卵のスープを選んでいた。私は男の子になんて話しかけようか考える。ドキドキして言葉が出てこない。どうしようって思う。心臓が爆発しそう。こんな気持ちどうしたらいいんだろうって顔が真っ赤になってやっと言葉になったのが、あのわたしるなっていうのあなたの名前は?だった。男の子は一瞬ぽかんとした顔になったけど俺?俺の名前は太陽と答えてくれた。男の子は私にここで働いてるの?と聞く、私はそうって答えてあなたは?と聞き返す。太陽は少し考えてここのことどのくらい知ってるの?と聞く。私はおとといアルバイトではいったばっかりでそんなになにもしらないと答える。太陽は困った感じでそれならどうしようかなあどこまではなしていいのかなあとかひとりごとを言いながら私についてきてと言って食堂から立ち上がりリハビリ室に私を入れてくれた。
リハビリ室には太陽みたいな私服の男の人や女の人がたくさんいてなにかをしきりに話し合ったり何かを組み立てたりパソコンに何かを打ち込んだりしていた。太陽はこれは俺たちの仲間なんだと私に言う。私は仲間?と聞く?その中の一人がこの子新入りなの?と話す。私はよくわからないけどはいそうですと答える。太陽は私のことをみんなに紹介すると、このグループのリーダーだという男の人が出てきて私にどこまで知ってるの?と聞いてきた。私はなんのことかよくわからないけどあまりしらなかったら太陽たちの仲間に入れてもらえないかもしれないと思ってどうしようと考えていた。グループのリーダーみたいな男の人は私は大地いう名前だといって、その様子じゃなにも知らないみたいだなと言う。私は素直にそうですと答える。知りたいか?と大地に聞かれて知りたいですって答えると大地はじゃあといって話し始めた。
はじめは二人の遭難した男女から作られた星だ。それは私も知っている。だって歴史の教科書で習ったから、そうそしてその男女はどうやって子孫を増やしたか知っているかと聞かれて私はその男女がそれぞれのクローンを作って増えていったって答えた。私は学校の授業でクローン工場を見学に行ったことがある。透明のカプセルの中で皮膚の色をした小さなかけらが培養されてどんどん人の形になっていく、それが赤ちゃんの大きさまで出来上がると指定された家庭に送られてそれで子供ができる。そう習ったから。うんよく知ってるねと大地は私を褒める。そして大地はそしてエラーのことは知ってる?と私に聞く、私はエラーは病院でなおしてもらえるからと答えた。大地はきみはエラーをいくつ修正したの?と聞く。私はエラーは目の色とか髪の太さや内臓の位置とか結構あって小さな頃は頻繁に病院で手術を受けていたと答えた。
そのエラーってなんのことかわかる?と大地が私に聞く、太陽も私を見ている。私は太陽にいいところを見せたくて必死で考える。エラーってもともとの男女の形から違ってる箇所のこと、そこが違うと色々大変だから病院に行ってなおさないといけない。私はエラーだらけでたくさん手術を受けた。もとの男女から違う箇所と私が答えると大地はそうと答えた。ここのメンバーをよくみてごらん。私は言われた通りメンバーを見る。よく見たらエラーだらけだ。目が大きすぎたり身長が違ったり髪の色が違ってたりなぜ病院に行かないのだろう?と思う。大地はエラーについてどう思う?と私に聞いた。えっエラーってなおさないといけないもので…とここで考えが詰まった。なんで治さないといけないと思うの?大地にきかれて社会に適応できなくなるから?と学校でならった通りのことを答える。
規格外の体だと服のサイズや家具のサイズや食べ物の量だってみんなバラバラになる。そしたら洋服屋さんは違ったサイズの洋服を作らないといけなくなるし家具屋さんだってそう。それにレストランだって人の体の大きさが違ってたら残したり足りなかったりですごく大変。私は思いつく限りのことを答えた。大地はそうだね。よく勉強してる。それなら頭の中は?と聞かれた。たしか頭や性格ももともとの男女と同じになるように定期的に病院で検査してチェックがあるはずだ。頭の中が違ってたら違う人が全然意見が合わなかったり…多分今みたいに平和ではなくなるはずだ。意見がばらばらになむて最後はみんなけんかになっちゃう。私はそう答えた。すると大地はそうだね。もともとこの星を作った男女もそう考えたみたいだ。その男女がもといた星はみんな違うのが当たり前だった。まったく同じ人間なんて一人もいなかった。そしたら争いがいつも絶えなくて結局その星からその男女は逃げ出すしかなかった。そしてもといた星と同じ過ちを犯さないように苦労してこのクローンシステムをつくったんだ。と言われた。私はそのことを知ってびっくりした。そうだったんだ。大地はさらに話を続けた。でも世代を追うごとになぜかクローンは同じ形じゃなくなった。だから君が受けてるみたいな病院に行ってエラーの手術をしないといけないと言われた。そうだ、私も検査でエラーがたくさん出ていっぱい手術してる。大地はまた続けた。もしエラーの手術をしなければ君はどんな女の子だったんだろうね?私はそんなこと考えたことはなかったので驚く。もしエラーの手術をしなかったら?私の髪の色はみんなと同じ薄い金色だ。でも私はエラーの手術を受ける前の髪は違う色でキャンディみたいな水色だった。私は実はその色が好きだったからエラーの手術を受けるのはほんとは嫌だったことを思い出した。私は太陽がこっちを見ているのに気がついてドキドキする。すると大地は顔が赤いけどどうしたの?と聞く、太陽にきこえちゃうじゃん。恥ずかしい。やめてよ。男の人はあの男の子のことさっきから気にしてるの?と私に尋ねる。私は真っ赤になって否定する。すると太陽がなぜか私の方を見て少し悲しそうな顔をした気がした。すると大地は君恋って知ってる?と言うので私は国語で習いましたと答えた。恋を題材にした物語はたくさんある。ロミオとジュリエットとか竹取物語とかいろんな物語で恋が題材になっている。でもそれはお話のなかのもので現実には存在しないはず。パパとママだって市役所が番号から家族になるようにって決めたんだから。でも私の太陽への気持ちって?もしかして?知らなかった気持ち。太陽のことを考えるとドキドキしてたまらなくなってどうしようもなくなる。もしかしてこの気持ちが恋なのかな。私が黙ってると君もしかして恋してない?と聞かれた。私の心の中を顕微鏡で覗いたみたい。太陽は私の方を見ている。太陽の目の色はみんなと違う私の元々の髪の毛やアイスクリームのソーダ味みたいな水色だ。恋してる?もしかしたらそうかも。太陽が私を見ていると思うと胸の中にたくさんのいちごが詰め込まれたみたいに甘酸っぱくて苦しい気持ち。これが恋?私は太陽に恋してるのかな。それなら太陽も私に恋してる?どうなんだろう。国語の授業で習った物語の中では恋をした女の子の相手の男の子もその女の子にたいてい恋をしている。でもそうじゃない場合もあって、人魚姫だったかな。そうしたらその女の子はどうしようもなくかなしくなって人魚姫がそうしたみたいにその女の子はもう涙といっしょに海の中のきらきらしたあわになってきえてしまうんじゃなかったっけ。私の恋はどっちなんだろう?太陽の様子からはよくわからない。もしこれが恋なら私は人魚姫みたいに泡になって消えてしまうかもしれないってこと?そんなのやだ。
大地が、はじまりはここの病院だったんだよ。と話し始めた。私はこの病院の院長だった。エラーの手術を毎日のようにこの大きな病院でしていくうちにどうしてエラーを治さないといけないんだろう。と思い始めた。これも私の思考のエラーだ。私は自分にその治療をする必要があるとはわかっていたがなぜかためらわれた。なぜだろう?この考えをやめてしまってみんなと同じになったら私は私でなくなってしまうのではないか?そんなふうに怖くなったんだ。そうしたらエラーの治療をすることが健全でない気がしてきたんだ。どうして生まれたままの自分でいたらいけないんだろう?どうしてうまれたままの自分を世界に合わせて作り替えないといけないのか?そうした考えは私の中でどんどん膨らんでいった。そして私はそのことを周りの医者や看護師に話すようになった。私の考えを拒否して出ていく人もいたし私の考えに賛同して残ってくれる人もいた。その行動の違いがどこから出てきたかもわからない。ほんとうならみんな同じ選択をするはずなのに。クローンは代を重ねるごとにもうずっと前からみんな同じじゃいられなくなったのかもしれない。
そして私はエラーの手術をやめることにした。そして事実上病院は封鎖したが病院として成り立っているようにみせるために私も同じ考えを持った人を患者として、病院に見せかけるためにたまに何人か君みたいに看護師のアルバイトを雇うこともあると教えてくれた。
アルバイト募集のフライヤーは特殊な印刷でエラーが出てる人にしか読めないからね。ほんとうにエラーがない普通の人間がみたらあのフライヤーはきらきらしたただの白紙なんだよといわれた。
私はこの病院のアルバイトはそういうことだったんだとわかった。だから病室に誰もいないのも看護師の資格がなくてもアルバイトできることもわかって疑問は解けた。
大地はここまで君は知ってしまったんだから私たちの仲間にならないといけないよと言う。仲間?なんの?この病院はなんのために集まっているんだろう?私はわからないことだらけだったが仲間ってことは太陽とも一緒にいられるってことかなっておもって思わず頷いてしまった。
よかった。るなこれで君も私たちの仲間だ、ここでの詳しい活動はそうだな。太陽、彼の補佐の仕事もしてもらおうかと言われた。
えっ私はびっくりする。うそみたい。太陽と一緒の仕事ができるなんて、そしたら太陽と話したりもしかしたら手が触れたりするのかもしれない。私は考えるだけで心臓が爆発しそうになる。こっそり太陽の方を見るとあの水色の目と目があって私は心臓がドキドキしてドロドロのアイスクリームみたいに全身が溶けてしまいそうになった。それから、と大地は言った。恋もエラーなんだよ。恋もたくさんの悲劇を生むからね。みんな恋できないように治療するんだ。と私の気持ちを見透かしたように言った。この気持ちがエラーなの?太陽のことを思ってドキドキしたり胸がいっぱいになったりするこの気持ちがエラーで病院で治療したら消えてしまうものなんて信じられない。この気持ちはただの病気なんがじゃない。絶対そうだ。人魚姫がどうしようもなくなって泡になっちゃったみたいに私の全身を支配してるこの気持ちがただのエラーなんかのわけない。私はそんなことを思った。
そしたら太陽が私に近づいてきてこれから補佐してもらうことになるからよろしく。と言った。私は太陽がはじめてわたしにむかってはなしてくれたことがすごくうれしくて太陽にどうしても名前を呼んでほしくなった。わたしはるなっていいます。よろしくお願いします。わたしはなにも考えずにこの言葉がきがついたら口から出ていた。太陽はすこし笑ってよろしくね。るな。と言った。私は太陽に名前を呼んでもらったことがすごくうれしくて顔が真っ赤になった。太陽の声が私の名前を呼ぶ。なんてすてきなんだろう。その瞬間大地も、リハビリ室にいた他の人もみんないなくなって世界が私と太陽の二人だけになったみたいだった。
太陽は俺は結構重要な計画を任されてるんだ。と話した。ついてこれる?と聞く私は太陽とならどこだっていける気がして頷く。
そのあとまりん先輩に呼び出されて病室の掃除をしていたけどこれから太陽と一緒に仕事ができるんだとおもうと胸がいっぱいで嬉しくて踊り出しそうだった。
ナース待合室で自分のスマートフォンを見るとななからメッセージがきていた。こんど一緒にみなと遊園地にいこうよって書いてあった。私はアルバイトのシフト表をみながら行ける日を確かめてななに返信する。ななとみなと遊園地。すごくたのしみ。でも太陽と行きたいかもってちょっとおもってしまってななにちょっぴり悪い気持ちになってしまった。
ななとみなと遊園地にいく約束の日、私はいつもより早起きして服を選ぶ。何を着ようかな。こうやって制服じゃない自分の好きな服を選ぶ時はいつもすごく楽しい。淡いピンク色のフリルがたっぷりで水色の貝でできたボタンがついたブラウスを鏡の前で合わせてみたり、白地に水彩画みたいなひまわりの模様のがプリントされたワンピースを合わせてみたりしたけど黒いコットンレースにエメラルドグリーンで繊細な花の刺繍がしてあるキャミソールに淡いオレンジ色のショートパンツを合わせることにした。待ち合わせ場所につくとななはラベンダー色の魚の模様のTシャツにスカイブルーのミニスカートにキラキラした透明のビニールに金色のラメがたっぷりはいったサンダルを履いてビーズで編み上げたバッグを持っていた。私は透明なピンク色でラメをたっぷり使ったキラキラしたサンダルを履いていたので少しななとサンダルのキラキラがお揃いみたいで嬉しくなる。みなと遊園地は海の近くにあって私たちはプラスチックのシャボン玉で作ったみたいな遊園地のアーケードを高校生のチケットを買って入る。みなと遊園地には大きな観覧車があって街のシンボルにもなっている。大きな観覧車の鉄枠が空に丸いレースみたいな模様を描いてるのがとても綺麗。観覧車は最後に乗ることにしてななと遊園地のマップを見ながらどこを回るか話し合う。とりあえずななと回るティーカップに乗ることにした。みなと遊園地のティーカップは本物の陶器のカップみたいに繊細なアラベスクの花模様がどのカップにも付いていてすごく好き。私たちは淡いピンク色のカップに乗るとベルが鳴ってカップが回り始めた。ななとぐるぐる回っていると本当に世界がぐるぐるして病院で言われたことも学校のことも太陽のことも全部ぐるぐるになってティーカップの中のお砂糖みたいに一緒になっちゃえばいいのにっておもった。そのあとななとジェットコースターに乗ろうっていった。ななはちょっと怖いって言ってたけどほんとは乗りたそう。私たちはジェットコースターの入り口に向かう。ジェットコースターの順番待ちをしている時ななとやっぱりこわいよ、やめる?そんなことしないよねとか話しててほんとはここまで来ちゃったら誰も戻ったりしないのにって思うんだどちょっぴり怖くなってななの手をぎゅって握る。私たちの順番がきてジェットコースター用の大きな椅子に座る。私たちはちょうどゴンドラの一番前でラッキーだった。遊園地の人の手で厳重にシートベルトが嵌められた。私は一瞬やめればよかったって気持ちと楽しみな気持ちがまざって変な気持ちになる。ななもそうみたいでドキドキするねーってわたしにむかって言っている。私はななの手をぎゅっと握るとブザーが鳴ってガタガタとゴンドラが動き出した。ジェットコースターはガタガタいいながらレールの上を登っていく、いまはまだゆっくりなんだけどこれからぐるぐるスピードが出ることがわかってるからこの瞬間が一番こわいのかも?そう思ってななの方を見るとななもそうみたいで不安そうに私をみてきた。ななの手をぎゅって握る。そして急降下、心臓がぎゅって苦しくなる。恋してるみたいに。ジェットコースターに乗ってる気持ちは恋してる気持ちみたい。ドキドキが止まらなくて急降下したり垂直に登ったりすごいスピードで自分じゃどうしようもできない。顔にすごい風がかかる。すごい高さからガタガタ落ちててゴンドラははじめのところになにもなかったみたいに元通りに停まった。
ひとやすみしてななと遊園地のレストランのテラス席でおしゃべりする。ななは最近テレビでやってるドラマにはまってるからその話をしてる。そのドラマは恋愛ドラマでヒロインが好きな男の子とお話ししたりすれ違ったりしてつぎはどうなるのかたのしみになる。ななはそのドラマのヒロインがすきなんだって。でもななは恋はテレビやお話の中のフィクションだと思ってる。ほんとにそんなことあるわけないけどお話を盛り上げるために使われてる概念だって思ってる。恋ってほんとにあるのにっていいたくなる。私の太陽への気持ち。この気持ちがフィクションなわけがない。でもななにはひみつ。ななは恋したことないのかな。きいてみたい?でも恋はエラーなんだ。そしたら病院に行かなきゃいけなくなる。言えない。 
ななとわたしはみなと遊園地でパステルカラーのメリーゴーランドに乗ったりアイスハウスに入って氷みたいになったりした。ミラーハウスに入った時はななと私がごちゃごちゃになっちゃってわけわからなくなって二人で笑っちゃった。
最後に乗るって決めてたみなと遊園地で一番大きい観覧車に乗る。観覧車の近くにはアイスクリームショップがあって私とななはアイスクリームを買ってから観覧車に乗ることにした。ななはラズベリーの薄い赤色のアイスクリーム。私はサワーキャンディの白色のアイスクリームにカラフルなチョコレートのトッピングがついているやつにした。観覧車に乗り込むとなながこの観覧車街で一番高いんだって!と言う。それなら私たちの街を見下ろせるかなって思った。観覧車はどんどん上がっていって私たちの街と海が見える。コスモ高校も商店街も、アルバイト先の廃病院も見えるし、私が治療してもらった大きな総合病院も見える。街の真ん中にある教会のステンドグラスが光を反射してきらきらしていた。ななと景色を眺めてすごいよねってふたりで笑い合う。ちょうど観覧車が一番高いところ。12時のところに来た時雲が晴れて太陽が見えた。
私はアルバイトに廃病院に行く、今日からは太陽と仕事をする。そう考えるとすごくドキドキしてきて気持ちが落ち着かない。
ナース室で制服に着替えるとまりん先輩からいつもの通りの掃除と、上から聞いてるから補佐の仕事をしてねって言われた。補佐の仕事ってなにをするんだろう?私は掃除を終えると太陽がいた。あの補佐の仕事をするって聞いたんですけどなにをすればいいですか?と聞く、すると太陽は指示するからそれについてきてとだけちょっとぶっきらぼうな口調で言った。太陽は私と目を合わせるのを避けてるみたい。嫌われてるのかなとおもうと少し悲しくなる。太陽は私に書類の束を渡すとこれ、コンピューター室にコピー機があるから2枚ずつコピーしてまとめといてだけ言ってすぐに私から離れてしまった。私太陽になにかいやなことしたのかな。太陽は私の目を見ようとしない。私はコンピューター室に行くとよくわからない図面がぎっしり書かれた紙をコピーしてふたつにわけていく。なにかの設計図みたいだけどよくわからない。
私はコピーを太陽に渡すと太陽はコピーを受け取ってなぜか真っ黒な手をした男の人に渡す。私は太陽の後ろをついていった。廃病院の中のことはそんなにしらない。廃病院の薄暗い照明のなかを太陽とあるいていく。太陽はなにをしてるのかなって思ってきいてみる。太陽ってこの施設でなにをしてるの?太陽は知りたい?と私に尋ねる。私はうん。と答えた。太陽は念を押すように本当に知りたい?と聞く。私はもしかしてこれは重要なことで私はそれを知ることと知らないことでなにかがかわるのかなっておもったけど太陽の水色に透き通った瞳を見ていたらそんなことどうでもよくなってしりたい。っていった。そしたら太陽の水色の瞳が一瞬透明な海の中みたいにきらきらしてじゃあるなには俺の計画を教えるよ。と話してくれた。
太陽はこの星の中央の博物館に厳重に保管されてる私たちのクローンのもともとの体を壊したいんだっていった。どうして?と私が聞くと太陽は俺たちってみんな同じになるように作られてるだろって言う。私はそうって答えた。話してる時の太陽の水色の瞳が透き通ってすごくきれい。俺たちはほんとはもっとちがうはずなんだって太陽がいう。よくわからないけど私と違う太陽の水色の瞳はとてもすてき。俺たちの違いはエラーなんかじゃなくてもっと違っていたいんだって太陽が言う。どうしてってきくとおなじだとだめなんだよ。みんなおなじどったらみんなおなじことしかかんがえなくてそれで今みたいに平和かもしれないでもそれじゃだめなんだよちがわないとだめなんだよ。って太陽が言う。私はどうしてちがわないとだめなの?ときくと太陽の瞳はもう夕暮れの海の表面みたいにキラキラした水色になっておなじじゃだめなんだきみとぼくがおなじじゃだめなんだっていう。私はどうして?どうして?と聞く太陽は人は人と違わないといけない。他の人と他の人は同じだとだめなんだそれはまちがったことなんだっていう。どうして?私にはよくわからない。私は太陽が博物館にあるクローンのもとの体を破壊したいということを知った。太陽はみんなが同じじゃない世界を作ろうとしている。それはいままでとはぜんぜん変わってしまう世界。どうして?これじゃいけないの?みんな仲良しでこんなにも平和なのになぜ太陽はそれを壊そうとするの?私は太陽がわからなくなった。
家に帰ると私は太陽のちかくにいられたことでドキドキしたことを思い出した。体が太陽と一緒にいたときなんかふたりで溶けちゃうみたいな感覚。ふたりなのにひとりみたいな不思議な感じだったのを思い出した。太陽の水色の瞳がキラキラしててすごく綺麗だった。私の髪は病院の薬を飲まないと太陽の瞳と同じ色になっちゃうんだった。私は太陽と同じ色の髪になりたくて薬を飲むのをやめた。そしたら私の髪はキラキラした金色だったのがだんだん青っぽくなっていって病院の薬を飲まなくなったら私の髪の色は太陽と同じ海のような水色になった。そのまま学校にいったら先生にものすごく怒られて校則違反で一週間停学。その間に元に戻してくるようにっていわれた。ママにもすごく怒られてどうして薬を飲まないの!ってすごく怒られた。ママは私が薬を飲まなくなってからずっと怒ってるから家にかえりたくなくなってアルバイト先の廃病院に向かう。今日はシフト入れてなかったけどここならみずいろの髪もわかってくれる。みずいろのかみ。私は水色の私の髪が好きだったけど校則違反だしみんなとちがうから薬でみんなと同じ色にしてた。きらきらした朝焼けのお星さまみたいな金色の髪の毛はみんなと同じだけど私は本当は水色の髪でいたかった。水色の髪ならピンクの帽子と合わせてもかわいいし金色の髪だと似合わないドレスもたくさんある。私は自分の水色の髪が好き。それって悪いことなの?って思った。
髪が水色になったことに太陽はすぐ気がついてくれてあれ髪の色水色なんだね。って言われた。私は太陽にそうなの薬をやめて水色にしたのと答える。みんなとおなじじゃない色にしたんだねって太陽に言われて少し顔が赤くなった。太陽は私の髪を見てこうやって他の人とちがうから自分が自分だと思うとか考えたことはある?ときかれた。私はそんなこと考えたことはなかったからそんなことかんがえたことないよって答えた。そしたら太陽がじゃあ考えてみようよって言って私は色々かんがえる。髪の色ななのことをおもいだした。ななの金色の髪。ななの金色の髪と私の水色の髪で二人並んだらすごくかわいいんじゃないかなって、ななは金色の髪に似合う真っ白な天使みたいなワンピースで私は水色の髪に似合う真っ黒の悪魔みたいなワンピースを着て合わせ鏡みたいなふたりになって街をあるいたらおもしろいのかもって思った。太陽はそういうみんなが違う世界を作ろうとしてるんだよっていった。私はまだあまりわからなかったけどちがっていてもななのことは好きだしそうなのかも?と思った。
太陽は博物館に行かないか?と言った。私は博物館には何度か行ったことがあるけど太陽と行けるなら行きたいと思って行くと答えた。
博物館は白い建物で建物の壁がオーロラ色に光を反射するからとおくからでもとても目立つ。私は太陽と博物館に向かった。博物館の入り口は真っ白な扉、黒い仰々しい書体で博物館と書いたパネルが扉に貼り付けてあった。オーロラ色に光を反射するのはドアも同じみたいですごくきれい。博物館のドアを開けると受付のカウンターがありIDチェックをされた。博物館の中はこの星の歴史を収めていてはじめに着陸した宇宙船のかけらとか昔の遺跡とかそんなのが展示されている。そして一番の目玉は私たちの元になった二人の体。この星の全ての人はこの二人の体のデータからできてる。わたるとリカ元々はそういう名前だったらしい。
その二人の体は博物館に特別なものとして展示されている。リカの体は保存液に漬けられて何本ものチューブからDNAデータを取り出した痕跡がある。金色の髪に薄いピンク色の唇瞳は琥珀みたいな茶色できらきらして肩にリボンがついたピンク色のシフォン素材のふわふわしたドレスを着ている。わたるの体もおなじように保存されていている。わたるは童話の中の王子様みたいな紺色に金色の飾りがついたタキシードを着て、リカよりも少し濃い金色の髪に透き通った紅茶みたいな色の瞳で保存液に浮かんでいる。二人はこの星に辿り着いてクローンをたくさん残したこの星の全ての人たちのパパとママ、この星の人はみんなわたるとリカにそっくり。あらためてわたるとリカを見ると少し感動する。リカは私にもななにもまりんさんにも似ているしわたるは太陽にも学校の先生にもクラスメイトの男の子たちにもそっくりだった。目の前の太陽を見る。太陽の瞳はわたると違う透き通った水色。太陽はわたるじゃない。それと同じようにリカも私と違う星の光を集めたように煌めく金色の髪をしている。私の朝焼けの海みたいな水色じゃない。リカと私は違う。そんなことを考えた。太陽はこの二人を元にして今もクローンが作られている。そしてこの元祖の個体と一致しないDNAが発現した場合エラーとして病院で治療される。それはどうしても俺はおかしいと思うんだと言った。私はそうかもしれないと思う。だって私は太陽が好きだけど目の前のわたるは好きじゃない。それは私が太陽が太陽だから好きってこと。太陽は私にるなはどう思う?と問いかける。私は太陽にちがうことはまちがってないとおもうと答えた。そしたら太陽の水色の瞳が朝焼けの海に太陽が昇るみたいにきらきらして私にわかってくれたのと答えた。私は嬉しくて頷いた。
太陽はだからこの元のリカとわたるの体を博物館ごと破壊して元のデータをなくしてしまいたいんだと言う。違いがエラーだと言われないように。私は太陽の言っていることはとてもわかった。違いはエラーなんかじゃない。私たちはみんな違う。でも私たちの祖先。リカとわたる。彼らの体を破壊するのはまだ躊躇いがある。太陽は私に言った。君がスイッチを押すんだ。君がみんなが違っても本当にいいと思ったらこの爆弾のスイッチを押してほしいと言って小さな小箱を太陽は私に手渡した。それは濃い赤色に金の縁飾りがついた結婚式の指輪を入れるみたいな小箱。私はそれを受け取る。中には指輪じゃなくて赤色のボタンがあった。私はどうして私が押すの?とわたるに尋ねる。わたるはきみをはじめてみた時おもったんだ。君がこのボタンを押す人だってそうなぜかわからないけど確信したんだと言った。私は嬉しくなった。私はボタンを押した。太陽は爆弾が作動するからここを離れようと言って私の腰を引っ張り急いで歩き出した。これじゃあ本当の結婚式みたい。私はにげながら太陽と手を繋いでいることにドキドキしていた。ここまでくれば大丈夫だと太陽が言った。太陽はリカとわたるが消滅するところをふたりで見届けたいと言った。爆弾が作動するまであと十秒。一生のうちでこんなに長い十秒はなかったかもしれない。胸がドキドキする。私はわたるにとてもキスしたいと思った。童話のお姫様が悪い魔法から解ける特別なキスみたいなの。爆弾が爆発するまであと少し。私はリカの星の光を集めたような金色のキラキラした髪とピンクのシフォンのお姫様みたいなドレスに火がついて燃えていくのを想像する。爆発音がした。爆発はとても大きな音で驚いた。夜空に花火みたいにオレンジの炎と真っ黒な煙が燃え上がって真っ白でキラキラしていた博物館がオレンジの炎と黒の煙に包まれて違うものみたいに燃えている。オレンジの炎はどんどん広がってキラキラした博物館の壁全てに広がり黒い煙を上げた。太陽の透き通った透明の水色の瞳にオレンジの炎が反射していてとてもきれいだった。太陽は私の水色の髪にオレンジの炎が反射してるのがすごく綺麗だと言った。思わず私たちはキスをした。

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