![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60665293/rectangle_large_type_2_4be6e0d5aebf03cb3dafc005cf7d731e.png?width=1200)
ワンシーンが刺さった映画
昨日某所で『ドラキュラ都へ行く』を観ました。
映画館じゃありません。これは日本じゃDVDにもなっていないレア作品。
◆予告編
1979年。ドラキュラ伯爵(ジョージ・ハミルトン)はトランシルヴァニアの城で、従者レンフィールド(アート・ジョンソン)ともどもまったり暮らしていた。趣味といえばピアノを弾いたり雑誌を読むこと。とりわけファッション雑誌がお気に入りで、表紙を飾る美人モデルのシンディ(スーザン・セント・ジェームズ)が大好き。朝方棺桶に入るときには、くだんの雑誌を抱いて寝るほどの入れ込みよう。
ある夜、突然人民委員会の委員がやってきて「城をオリンピック強化選手用のスポーツ施設にするから、48時間以内に立ち退くべし」と。「いったい何を言っておるのだ。ここは700年来我が城である」、そう伯爵は抗議するも、当時ルーマニアは共産党政府。その命令はいかなドラキュラ伯爵であろうと絶対である。「ナディア・コマネチもここで練習するのよ」と。
やむなく伯爵はレンフィールドが仕立てた馬車に乗り、城を出る。村人たちに囲まれ「こいつ娘の血を吸いやがって。反日!」と、故郷から石もて追われる。
何と切ないことでしょう。
向かった先はニューヨーク。JFK空港に着いた荷物 ー 即ち伯爵が入った棺桶 ー はプラザホテルに行くはずが、黒人の遺体と間違えられてハーレムの教会へ。
お葬式。牧師は「死にたる者が復活することはない、ただ主イエスの御手がなければ」と説教する。突然お棺が開き、伯爵が出る。みんなギャーギャー、伯爵びっくり♪
ほうほうの体でプラザホテルにたどり着いた伯爵。レンフィールドに「このバカ野郎、シンディちゃんを探しといてね💕」と命令し、寝る。
レンフィールドはモデル事務所に赴き、女社長をコブラで脅し、シンディの居場所を吐かせる。伯爵、レンフィールドを褒める。
仕事終わりのシンディは、ディスコにいた。雑誌と違って彼女はまことにガサツな女。席に持ち込んだ電話で女友だちにガーガー愚痴を言っている。
現代のニューヨークで夜会服にケーブ姿の伯爵は浮きまくり。シンディのテーブルに近寄ると「さっき注文はしたわよ、ウェイター」とあしらわれる。
いや私はウェイターではないと伯爵、いきなり求婚。「こいつ頭おかしいんじゃね?」。そう冷淡なシンディの手を引いて、伯爵はダンスに誘う。
◆高校生当時、刺さった場面がまさにコレ
ダンス一発、彼女は伯爵に一目惚れ。
原題は〝Love at First Bite〝。一目惚れのことをLove at First Sightというが、SightとBite(噛む)を掛けた、映画そのものがシャレ。きちんと韻を踏んでます。
『サタデーナイト・フィーバー』の影響もあり当時ディスコが大流行。しかしドラキュラ伯爵は中世の人だから、ソーシャルダンスしか出来ない。
ディスコミュージックとソーシャルダンスの対比が高校生の俺に刺さった。
◆当該のミュージック、オリジナルはアリシア・ブリッジズ〝恋のナイトライフ〝。
しかしこのシーンって、後年の『カリートの道』に影響与えているような。設定年代も同じだし。
◆Rock Your Baby / Ed Terry
さてシンディちゃんには心理カウンセラーの恋人(リチャード・ベンジャミン)がある。そして彼はドラキュラの宿敵、ヴァン・ヘルシング教授の子孫である。
かくして恋の鞘当てが始まる。シンディは、彼と伯爵どちらを選ぶのか。
ルーマニアの共産党政府、エコノミック・アニマルと世界中から揶揄された日本人 ー 人民委員会は「伯爵、ウサギ小屋にでも住めば?」と言います ー 、そしてディスコ。79年当時の時勢をバックに恋物語が進む。
「三度噛まれたら、あなたは飛びます」。これは珠玉のコメディ映画。
*
もう一作は未見ながら、心惹かれるアクション映画。
◆スカイ・ハイ(香港・オーストラリア合作、1975年)。
ジグソーの〝スカイ・ハイ〝といえばミル・マスカラスを想起する向き多かろう。
でも違うんだよなあ。実はこの映画のために書いた曲であり、当時中坊だった自分に刺さったのもハングライダーで高層ビルに突っ込み、カンフーで敵を倒す場面。
俺自身、「スカイ・ハイ」という曲を知ったのは本作(の予告編)でした。もちろん大ヒット。
自分は香港映画に詳しくない。知っているのはブルース・リーにジャッキー・チェン。あとはユン・ピョウくらい。
が、ジミー・ウォングは別義。当然知ってました。彼ってグレイトよね。
いわば香港のダーティーハリーと言いますか、スティーブ・マックイーンとでも申しましょうか。至極凶暴♪
※実際彼は裏社会とのつながりを云々されていました。
ブルースリーが亡くなって、ジャッキー・チェンはまだパシリ。そんな時、ジミー・ウォングが香港映画を支えた。
低く分厚い声に、ビルの10階までするする登るアクション。ええ、もちろんスタントなしです。
ユン・ピョウなんか本作時点じゃ未だその他大勢。ジミーウォングに蹴られて、道場の隅っこまでフッ飛んでたんだじゃね?
製作は例のゴールデンハーベスト社。プロデューサーはもちろんレイモンド・チョウです。
あっ。敵役はショーン・コネリーに続くジェームズ・ボンドの2代目、ジョージ・レーゼンビーです。
70年代半ばといえば我が国は、『犬神家』(横溝正史)、『八甲田山』(新田次郎)、『復讐するは我にあり』(佐木隆三)、『砂の器』『鬼畜』(松本清張)と文芸作品ぞろい。
いっぽう香港は気宇壮大。「おバカ映画で世界を制覇してやるぞ!」と。
オイルショックですっかり自信を無くした日本はむしろ内向き。しかし香港はガハハハハ♪
世相が表れ面白い。
まあ物を考えてばかりもね。『ドラキュラ都へ行く』にせよ『香港から来た男』(スカイハイの原題)にせよ、おバカ映画でスッキリと。
コロナ禍を、笑い飛ばしてしまいましょう。