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壊疽性膿皮症とNPWT治療

The role of negative pressure wound therapy (NPWT) on the treatment of pyoderma gangrenosum: A systematic review and personal experience
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33772964/


2021月2月にAcceptedされたPyoderma Gangrenosum (壊疽性膿皮症) とNPWT のSystematic Reviewです.


Pyoderma gangrenosum (PG) とは

Pyoderma gangrenosum (PG) is a rare painful ulcerative inflammatory skin disease resulting from neutrophil dysfunction associated with systemic disorders like haematological, rheumatological, and inflammatory bowel diseases and a genetic predisposition.
壊疽性膿皮症は、血液疾患、リウマチ、炎症性腸疾患などの全身疾患や遺伝的素因に伴う好中球の機能障害が原因となる、まれな有痛性の潰瘍性炎症性皮膚疾患である.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33772964/

参考までにに下記に Harrison's Principles of Internal Medicine 19th Edition を引用,編集しています.

Harrison's Principles of Internal Medicine 19th Edition より
In pyoderma gangrenosum, the ulcers often begin as pustules that then expand rather rapidly to a size as large as 20 cm. Although these lesions are most commonly found on the lower extremities, they can arise anywhere on the surface of the body, including sites of trauma (pathergy). An estimated 30–50% of cases are idiopathic, and the most common associated disorders are ulcerative colitis and Crohn’s disease.  Because the histology of pyoderma gangrenosum may be nonspecific (dermal infiltrate of neutrophils when in untreated state), the diagnosis requires clinicopathologic correlation.
壊疽性膿皮症では、潰瘍はしばしば膿疱として始まり、その後急速に拡大して20cm程度の大きさになることもある。潰瘍は下肢に最も多く見られるが、外傷(パタージー)を含めて体表面のどこにでも発生する可能性がある。約30~50%が特発性であり、最も多い関連疾患は潰瘍性大腸炎およびクローン病である。壊疽性膿皮症の組織像は非特異的(未治療の場合は好中球の真皮浸潤)であるため、診断には臨床病理学的な相関関係が必要である.


Pathegy Phenomenonとは

この論文を読むことで,PGの治療おいて問題となるのが,この Pathegy Phenomenon であることがわかります.
外傷により新たに潰瘍形成を呈する,ということは生検や外科的治療でも症状が増悪するかもしれないということです.
実際に本文中で,生検後に潰瘍が増悪・拡大した症例が提示されています.

The surgical wound from this biopsy, however, showed dehiscence and progressive increase in left hemiface, associated with local pain, skin necrosis, and ulceration, reaching 10.0 × 7.5 cm (Figure 5, Left) when it was evaluated by our plastic surgery team.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33772964/


結論・考察

PG の診断は Biopsy で好中球の真皮浸潤程度であり,除外診断的に行われることが多いのかもしれない.
この論文内で優位な関連性を認めたのは,
・NPWTと免疫抑制療法の併用
・NPWTと皮膚移植の併用

            の2つ.

希少疾患であるため,確実な治療方法は controversial である.
しかし免疫抑制薬を使用している症例において,NPWTの使用は非常に有効と考えるという結論です.


免疫抑制薬の使用に関して

提示された症例では 

1. 29歳女性,乳房のPG
predonisone 0.5mg/kg/day で開始.UCを基礎疾患にもつ患者であり,術後60日,adalimumab 導入後に predonisone 終了し予後良好.
2.41歳女性,下顎PG
predonisone 1 mg /kg/day, colchicine 1mg/kg/day で開始するも2週間で改善認めず,cyclosporine 3mg/kg/day で開始.cyclosporine 使用開始4日後から症状改善.植皮術後3ヶ月で predonisone の減量を行ったところ再発を認め,predonisone, cyclosporine の増量に至った.術後18ヶ月で predonisone 20mg/day, cyclosporine 150mg/day使用し再発なし.今後 adalimumab の導入を検討.

いずれも使用量,薬剤に差はあるものの,免疫抑制薬によりPGの安定化を認め,NPWTとの併用により wound bed preparation を行い植皮術を施行している.


NPWTの使用に関して

陰圧125mmHg以上では疼痛が強くなるため125mmHg,もしくはそれ未満での使用を推奨
またポリウレタンフォームよりもアルコールポリビニルフォームの方が交換時の疼痛を軽減できる可能性がある


植皮術に関して

NPWTのみ使用症例とNPWT後に植皮術を行ったものとの比較試験では,植皮術も行ったもののほうが治癒までの期間が短かった.
NPWT単独:2ヶ月以上
NPWT+植皮術:2ヶ月未満
しかし,Pathergy を考慮すると免疫抑制薬によりPGのコントロールが得られている症例に関して植皮術を検討すべきである.


まとめ

壊疽性膿皮症は、好中球の機能障害が原因となる、まれな有痛性の潰瘍性炎症性皮膚疾患であり,外傷(パタージー)を含めて体表面のどこにでも発生する可能性がある。

診断に苦慮するケースが多く,鑑別としてPGを考慮しながら診断を行う必要がある.

診断された場合,もしくは診断的治療となる場合もあると考えるが,
免疫抑制薬・NPWTを開始する.
免疫抑制薬とNPWTのどちらを先に開始するかは controvesial であるが,NPWTによる pathergy のリスクは考慮する必要がある.

創部の wound bed preparation が十分となれば植皮術を行うことで治療期間の短縮が望めるが,この場合も pathergy を考慮し,免疫抑制薬を使用している状態での手術が望ましい.


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