見出し画像

フジテレビ&中居正広氏の騒動に思うこと①:日本の性モラル

はじめに一言。僕は広告代理店に勤めた過去があり、今も小さな事務所を構えて仕事しています。ですが、メディアを担当したことはないので、テレビ局の内情に特に詳しいわけではありません。要は、ただの部外者です。
しかし、今進行中のこの問題には、1人の日本人として、とても興味深いというか、決して無視できない課題があると思っています。

僕が、この問題に関して「無視できない課題」だと強く思ったのは、下記の2点です。

1. 「性加害の撲滅」につながる意識変化は起きるのか?
2. 日本のメディアの“意識”と“あり方”は変わるのか?

なぜ、コンプライアンス推進室に任せなかったのか?

今回の騒動の原因は、中居正広氏による性加害(2023年6月発生)にあります。
これが、事実であるかどうかは議論の余地がなく、中居氏自身がトラブルのあったことを認めて、示談を交渉し、発覚後は記者会見を行うことなく、芸能界引退を表明しています。

性加害の詳細な内容や、被害者の氏名などは、公式には表明されていません(憶測に基づいて被害者を特定するのは、2次的な被害を生むだけの迷惑行為です)。

そしてもう一つの原因が「フジテレビの隠蔽(としか見えない対応)」にあります。自社の社員が中居氏から被害を受けた後も、バラエティ番組『まつもtoなかい』を継続。さらに2024年1月に松本人志が、これもやはり性加害(疑惑)で芸能活動を休止した際にも『だれかtoなかい』として番組を継続してきた経緯があります。

番組継続の理由について、港社長(当時)は突然の番組休止が憶測を呼んで、女性のプライバシーを守れなくなることを危惧していたという旨を、会見で語っています。

それもまぁ、一理あるでしょう。

中居氏のトラブルは、フジの幹部が把握していただけ。番組を支える現場のスタッフは一切知らず、中居氏とも仲良く番組を作っていたように想像します。また、そういうことを想起させる中居氏とスタッフのやりとりも、エピソードとして放送に乗っています。
そこへ突然、社長たちが現れて「この番組は終了!」と告げたらどうなるか。
結構な騒動になるでしょうね。

まぁそんな、他愛もない想像は横に置くとして……。

ここで重要なポイントは、「なぜ港社長たちは、社内のコンプライアンス推進室に話を持っていかなかったのか?」ってことなんですよ。

TBS NEWS DIG 2025/1/28 放送分より

これに対して会見では「少人数で対応して欲しい」という女性の要望に沿うためにコンプライアンス推進室には報告しなかった、と主張されていました。

要するに、コンプライアンス推進室を信じていなかったのでしょう。
「四角四面にかき回される」という風に想像していたのかもしれません。

でもね、真っ先にコンプライアンス推進室に相談して「隠密に」でも「穏当に」でも調査を進めていたら、ここまでの騒動にはならなかったと思います。
少なくとも「隠蔽」にはならなかった

この判断ミスは多分、テレビ局に限らず、日本全体に見られる「認識のゆるさ」に起因しているような気がします。

「嫌よ嫌よも好きのうち」 日本男児のファンタジー

そもそも、日本では(いや、アジアでは?)恋心を言葉にすることができず、酔った勢いで既成事実を作ろうとする人が多いように思います。

だから「無理矢理、ホテルに連れ込まれそうになった」
「やたらとボディタッチをしながら、強引に迫られた」
「深夜残業からのタクシー同乗で、ホテルの前に横付けされて迫られた」
「いきなりキスをされた」といった話が、あちこちにあります。

若い友達(男)から「その人を好き過ぎて、腕を引っ張ってホテルに連れ込んだんです。で、部屋でも拝み倒して…」と報告されたこともあります。
その時はきちんと叱りましたが、まぁ、事後報告なので無力な話。
「でも、それからちゃんと付き合ってます」って言ってたけど、ほどなくして別れていました。そりゃぁそうだよね、って話です。

昔から「嫌よ嫌よも好きのうち」なんて言葉が有名ですが、これは座敷遊びでの都々逸が発祥なのではないかと思います。
要するに、男女が「夜遊び」前提で唄った、洒落と遊興の世界。
日常生活、ならびに真剣な恋愛の中で通用する言葉ではありません

でも、少なからず「男女の駆け引きとは、そういうものだ」と信じて「男なら多少強引に迫ることが必要だ」と押し切って、暴挙に出る人がいるんです。

ひどい人は、劇画やアダルトビデオのレイプシーンを真に受けて
「身体は正直だ。そのうち気持ち良くなる」
なんてことを信じているのか、性被害にあった女性に心無い暴言を投げつけるという2次加害を行う人が、SNSには溢れています。

要するに、日本には女性に対して「攻撃的」または「侮蔑的」な態度を取る男性が少なくないということです。

テレビ “マン” の増長が招いた悲劇なのでは?

まして芸能界は、女性のルックスと性的魅力を売り物にしてきた世界。
僕がテレビっ子だった80〜90年代には、女性アナウンサーまでがアイドル並みの人気を獲得していました。今でも、各局に人気の女性アナウンサーがいますよね。

文春の記事で槍玉に挙げられていた、フジテレビのAプロデューサー(まだ疑惑段階)のほか、大手プロダクションや広告代理店などに在籍する「局内、または業界内で力を持った人間」の中には、モラルが歪んでしまった人もいるでしょう。

だって、自分のすぐ側に、誰もが憧れるような美貌の女性がいるんですよ。
そんな女性が、少しでも自分に媚を売るような仕草を見せたら、光の速さで勘違いするでしょうね。
女性にとっては仕事上の「相手に嫌われないようにする振る舞い」でも、勘違い男には「自分に向けた媚態」にしか見えなかったりします。

元々、女性に対するモラルが低い人間が勘違いから増長していて、そこにちょっとでも自分を正当化できるような刺激が加われば、簡単に性加害に及んでしまう可能性は高いでしょう。
実際、人伝てに聞いた噂などが存在します。

そして、テレビを見ていて「怖いな」「気持ち悪いな」と思った事例もあります。
1つは、たまたまリアタイ視聴していた『人志松本のすべらない話』で、千原ジュニアが披露した「木村祐一が連れ込んだ女性がさせてくれず、家から逃げるところに冷凍した鶏肉を投げつけた」という話。

スタジオでは松本人志がいつもの笑い声を上げていたと思いますが、これは正直いって何が面白いのか分かりませんでした。
ちょっと吉本の芸人世界は、常識が一般とかなりズレているのかな、と思った一例です。

そしてもう1つが『水曜日のダウンタウン』で放送された「100万円払ったヤツが実際に『水曜日のダウンタウン』に出演できる禁断のホントドッキリ…“怪しい”プロデューサーとの飲み会」という企画。あおぽんがブレイクしたキッカケの放送で、これも珍しくリアタイ視聴していました。
この企画で設定された「嘘の飲み会」が、まぁゲスでゲスで嫌でしたねぇ。
仕掛け人であるアレクサンダーと皇治の2人が、女の子にベタベタ触ったり、スカートのウエストに指を入れてパンツを覗き込んだり…。
このパーティーが「リアル」だっていうんだから、芸能界の性的なモラルは、そもそも緩いことが伝わってきます。

【特別公開】100万円払ったヤツが実際に『水曜日のダウンタウン』に出演できる禁断のホントドッキリ…“怪しい”プロデューサーとの飲み会を公開!12/20(水) 年末拡大90分SP!!【TBS】 TBS公式 YouTuboo より

そんな中で、中居正広氏がトラブルを起こし、フジテレビには「局全体で女子アナを上納する文化がある」という風聞が根付いてしまったわけです。

「局全体で女子アナを上納する文化」なんて話を信じる人が、あっという間に増えていったのも「そういうことって、絶対あるよね!」っていう認識があったからでしょ。で、何でそんな認識があったかといえば、大抵の人があんな乱れた飲み会とか、連れ込んだのにやらせてくれない女性に普通に怒ったりできるからでしょ。

マンガの世界にも、ご都合主義なハーレム設定が腐るほど存在してるし。

日本の男性諸氏の中には、バカみたいにご都合主義な性的ファンタジー世界が存在してるんです。
これが、日本社会の1つの現実。

だから「性被害」の報告が上がってきても、対応が1歩も2歩も遅れる。

フジテレビの対応は酷かったけど、一般企業でもまだまだ酷いところが多いんじゃないでしょうか。上司にセクハラされたと訴えて、まともなリアクションをもらえた事例はどれだけある? 大企業だとアクションが追いついてきたかもだけど、ワンマン体制な中小企業だと、自浄作用は働きにくいはず。

ま、そんな分析は今は追いつかないんですが、今回のスキャンダルは、日本社会にとって深刻に受け止めるべきケーススタディなのだと思っています。

先のジャニーズ問題も、早々に有耶無耶になってしまったこの社会。

認識が大きく変わるために、今回の問題が教訓として、どのように活かされていくか。かなり気になっている次第です。

兎にも角にも、3月末を予定されている第三者機関の報告に期待しています。

というわけで、気になる課題の2つ目 ↓ については、次回に譲ります。
2. 日本のメディアの“意識”と“あり方”は変わるのか?

【おまけの引用】

■2024年■
 ▽12月19日 「女性セブン」が中居との”女性トラブル”をスクープ
 ▽12月25日 「週刊文春」の第一報を女性スキャンダルをスクープ。その後、25年1月にも続報をスクープ
 ▽12月27日 フジテレビが公式サイトで関与を完全否定
■2025年■
 ▽1月7日 日本テレビ系「ザ!世界仰天ニュース」で、中居の出演シーンがカットされて放送
 ▽1月8日 フジテレビ系「だれかtoなかい」の当面の休止が発表。ニッポン放送「中居正広 ON&ON AIR」の11日分の放送休止が発表
 ▽1月9日 中居が自身の事務所の公式サイトで、謝罪文を掲載
 ▽1月10日 TBS系「中居正広の金曜日のスマイルたちへ 新春SP」が差し替え▽1月11日 テレビ朝日系「中居正広の土曜名会」が差し替え
 ▽1月13日 TBS系番組系Cが差し替え
 ▽1月14日 米投資ファンド「ダルトイン・インベストメンツ」がフジ側に書簡を送付
 ▽1月15日 「ザ!世界仰天ニュース」で中居の降板が発表された
 ▽1月17日 フジテレビが社長による定例会見
 ▽1月18日 トヨタ自動車ら大手企業のフジテレビCM差し止めが始まる
 ▽1月20日 「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」の打ち切り、「THE MC3」降板の発表 フジレテレビからのCM撤退が50社超となる 
 ▽1月21日 フジテレビの長寿番組「くいしん坊!万才」の放送休止 ラジオ番組「中居正広 ON&ON AIR」終了発表
 ▽1月22日 「だれかtoなかい」、「中居正広の土曜な会」の放送終了発表。中居正広の全レギュラー番組が消滅
 ▽1月23日 中居正広が芸能活動引退を発表
 ▽1月24日 フジテレビが27日に「リベンジ」会見を行うと発表。嘉納修治会長、遠藤龍之介副会長、港浩一社長、金光修フジ・メディア・ホールディングス社長が出席

【時系列で解説・最新版】フジテレビ、何があった? 27日『リベンジ』会見 中居さん「女性トラブル騒動」1カ月を振り返る(中日スポーツ 2025年1月23日 11時45分)

ここから先は

0字
50歳に至って、ようやく見えてきたモノゴトなど、肩の力を抜いて書いております。10記事まとめて、マガジンにまとめております(Vol.2は現在進行形です)。

今まで書く機会がなかった、いい話、すごい話、ダメな話から、仕事と人生のアレコレを書かせていただきます。

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?