フノリ(フクロフノリ)
【フクロフノリ】袋布海苔、袋布糊
学名:Gloiopeltis furcata (Postels et Ruprecht) J.Agardh
紅藻亜綱スギノリ目フノリ科フノリ属
主な分布:日本全国各地沿岸、千島列島、北太平洋沿岸
地域名:ノゲノリ(千葉県銚子市) など。
<基本情報>
「フノリ」は、フノリ属の総称。主に食用とされる種類はフクロフノリが主流で、他にはマフノリ(別名ホンフノリ、本州中部以南に分布、主に九州西岸)と、ハナフノリ(東北地方以南)がある。
潮間帯(ちょうかんたい、潮の干満によって陸の露出と水没を繰り返す場所)の岩の上に群生する。袋状の円柱で叉状分枝してのび、干潮時には膨張している。
刺身のツマや汁物など食用としては古くから利用され、平安時代には「布乃利」の名が登場している。
新潟県にはフノリをつなぎに使った「へぎそば」がある。(「へぎ」は木を剥いだ板を折敷(角盆)にしたもの)
<文化・歴史>
「布海苔」の由来は古くから「洗い張り」(和服を解き反物にして洗い、糊付で仕上げる)に利用されたことによるもの。
他に建材(漆喰)や文化財の修復、力士の下りなどに現在も利用されており、100年以上続く製法の糊剤「板ふのり」は現在も製造されている。
食用としての歴史も古いが、江戸時代にはうどん粉(小麦粉)と混ぜた洗髪料としても利用され、明治時代まで定番だったとされる。
『都風俗化粧伝 (みやこふうぞくけわいでん)』佐山半七丸著・速水恒章(春暁)画、1813年(画像は復刻1851年版)/大阪府立図書館蔵
<主な栄養成分・フィトケミカル>
ビタミン類はバランスよく含み、特にビタミンB1、B2、B6、ビタミンE、ビタミンKのほか、カリウム、マグネシウムなどミネラルが豊富。カロテノイドのβ-カロテンも含む。
フノリの成分で水溶性食物繊維「フノラン」は中性脂肪低下、高血圧等の予防に役立つ。
また、キシリトールとの相互作用により表層の再石灰化を促進するとされ、有効成分としてガムに使用されている。
<青森県では>
フノリの養殖法発祥とされる場所が、下北半島の風間浦村にある。(青森県下北郡風間浦村蛇浦)
明治初期、山から石材を切り出した捨石による護岸、防波堤工事を実施。翌年、捨石に多数着生しているフノリを発見したことをきっかけに、投石による養殖法を確立していった。今では全国に広がっている。