「くらやみに、馬といる」を読む
河田桟 「くらやみに、馬といる」(カディブックス)
できることならこのまま輪郭のないぼんやりしたものでいられたらいいな、と願った。せめて夜明けが来るまでは。
(p.14)
暗闇のなかに、次第に浮かび上がってくる木々と馬たちの輪郭を想像することから、カディと著者の世界に引き込まれていった。
著者とカディという、異種のともだちは、「言うこと」と「やること」を変えずに一緒にいることができる。
くらやみのなかで馬といる時、昼間の世界では単体である要素の境界が溶け合い、著者は輪郭のあいまいな生きものとなれる。
著者は、逃れようのない治療の時間を、くつろいで満ち足りた馬たちがいる草地を想像することで、耐えることができたという。
地面にくっきりと刻まれる馬たちの月影というのは、初めて言葉で読む風景でもあった。