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企業がSDGs/ESGに取り組む理由(業種編)

明けましておめでとうございます。

(昨年末から始めたnote。1週間に1本以上の投稿を目指して続けていきたいと思いますので、気長にお付き合いください。)

今回はSDGs/ESGに関する取組で、日本より先を行く、海外企業でどのような業種で取組が進んでいるのかと、その理由を整理します。

1.B2C業種で進む取組

まず、どういった業界でSDGs/ESGに関する取組が進んでいるのかを見てみましょう。

シンクタンクERM Companyによる企業の持続可能性に関するアンケートでは、ユニリーバ、パタゴニア、イケアといった企業が進んだ取り組みをしている会社としてランキングされています(下表参照)。

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(出典:https://www.erm.com/news/unilever-patagonia-and-ikea-are-the-most-recognized-leaders-2019-leaders-survey-results/)

このアンケートでは、投資家、政府関係者、消費者、NGO関係者に対して、持続可能な取組をしている企業はどこか、という質問をしています。概ね全方位からの意見を反映していると考えられるのではと思います。

上位企業を業種で整理してみると、以下のようになります。

ユニリーバ:トイレタリー(B2C)

パタゴニア:衣料品(B2C)

イケア:家具(B2C)

Interface:床建材(B2B)

それ以外も食品、自動車、化学といった業種の企業が並んでいます。これらの企業に共通しているのはB2Cに近い業種であること。そして消費財メーカーとして「モノ」が商材になっていることが挙がられます。(IT企業が一社も入っていないのも特徴的ですね)

これらの企業はビジネスモデル上、自然資源を加工して、商品にすることが必然となっています。別の言い方をすれば地球環境に負荷をかけなければ、存続できない事業を行っていることになります。

2.後押しするステイクホルダーの存在

B2C業種で、SDGs/ESGに関する取組が進むのは、ビジネスモデル上の必然性だけではない、と考えています。もしそれだけが理由なら、欧米とそれ以外の地域でこれだけの差が開いている理由になりません。

SDGs/ESGに関する取組は、社会による要請により活発化しています。それでは、社会とは具体的には誰でしょうか。

B2C業種における社会=ステイクホルダーの中で、特に重要なのが「消費者」です。取引先が特定されるB2B業種と比較して、マスの消費者を相手にするB2C業種では、社会における文化、トレンドの変容がそのまま顧客の変化に直結します。

以前の記事で紹介したように、消費者の行動は社会性重視に進んでいます。特に欧州ではこの傾向が顕著です。Global Data社の2017年の調査では、2011年から2016年で、社会性を意識した消費をとても重要と考える消費者の割合は12ポイント上昇しています。

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出典:https://www.globaldata.com/71-of-european-consumers-see-the-importance-of-living-an-ethical-or-sustainable-lifestyle/

上記の上位企業もユニリーバ、イケア、Interface、ネスレ、ダノン、BASFの6社が欧州企業です。人々の日々の消費に支えられている消費財メーカーにとって、このような消費者の変化に対応することは生存戦略の一環といえます。近々、代表的な企業のSDGs戦略を取り上げます。

参考:JETROがまとめた欧州のSDGs対応の先進事例は以下。https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2019/ddba09c2ec3c478a/euSdgs201903.pdf

3.B2Bでは投資家が後押し

ここまでB2C業種に触れてきましたが、B2B企業を後押しする存在はいないのでしょうか?

チューリッヒ大学は欧州企業がSDGsに関する情報=非財務情報の開示を強化する理由を調査しています。その結果として、機関投資家からの圧力が短期的には最も効いている、と実証しています。

出典:https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3411017

B2Bにおいて社会文化の変容を流し込む存在は、投資家になっていきそうです。日本企業のCSR関連部署との意見交換をすると、海外機関投資家を意識して取り組みを加速していると聞きます。

(ちなみに、B2C企業は消費者と投資家の2枚に挟まれている状態です。これで労働者が変容していくと流れは一気に加速していくのではないでしょうか。)

日本企業にとっても、自社のステイ九ホルダーのうち、どちらの優先度が高いのかを勘案する必要がありそうです。個人的には、短期的に最も意識すべきステークホルダーは投資家で、消費者・メディアは中期的にコミュニケーションしていく対象と考えます。

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