誰の意見も会議で平等に扱われる国へ
わたしは、身体的に女性であり、性的少数者であり、精神障害者です。現実の生活では普段から公言することはありませんが、最近のニュースなどを見ていて、匿名のWeb上ならばと、こうした立場の者として自分なりに考えたことをまとめました。
●公共のやさしさについて
思えば2018年、公園のベンチをふと見たときです。平らだったはずの長椅子が、肘置きのようなもので区切られて、横になれないようにしてありました。最初、わたしは見たままを捉えて、横になる人は迷惑という理由で、ホームレスの居場所を奪うためにこういうことが行われたのだと思いました。
しかし、2020年に大きく報道された二件のホームレス殺害事件を目の当たりにし、ただ「公園のベンチで寝かせてあげること」が本当にホームレスや急に具合の悪くなった人のためになるのか、という考えに変わりました。
さらに、こちらの記事では、東京都の「排除アート」の場合、都が「排除」にかけた公金の約100倍の予算が、ホームレスの支援に注がれている点を挙げて、こうしたパブリック・アートは、不衛生で危険な場所に滞在するホームレスを自立支援施設に誘導するための「保護アート」という呼称のほうがふさわしいのではないか、と提言されています。
確かに、ベンチの区切りやパブリック・アートに対して、「彼らの居場所を奪うなんて」と憤ったとしても、公共の場でホームレスや何らかの事情で横になっている人が、その状態を本意にしているはずがありません。本当の「守る」とは? 公共の「やさしさ」のあるべき形とは、と考えさせられました。
誰がいつホームレスになってもおかしくないこの世の中で、どうして彼らに対し冷酷になれるでしょう。困難を抱えた人たちを救える活動が、全国的にさらに推進されることを望みます。
●性別記載欄について
2019年は、セクシャルマイノリティの当事者として行政へ平等と自由を訴える活動家の雪齋さんと最後に会ってお話をした年でした。
その年、彼女は県選挙管理委員会に対して、投票入場券の性別記載欄削除を要請する活動をなさっていました。そのご尽力によって、この年の参院選挙からは、県内市町村のほとんどが、性別記載をやめています。(参考:岐阜新聞社「素描集 第258集」,2020)
このことによって、選挙という場で苦痛や屈辱を感じることなく大切な一票を投じることができるようになった方が大勢いらっしゃるでしょう。
また、履歴書、一般企業の社内アンケートや調査などでも、性別記載欄については、トライ・アンド・エラーが繰り返されているようです。まだまだ理解が及んでいないと感じますし、「そうじゃない」と訂正するのも大事ですが、無理解や誤解を揶揄するのではなく、まずは社会全体が、トランスジェンダーや性別違和の人々に対して関心を持つことが第一です。まずはここからなのだと思うことが重要だと思います。
●コロナ禍における不平等について
そして2020年、新型コロナウイルスがこれまでの社会を一変させた年です。新しい生活様式として注目されたリモートワーク・遠隔授業などは、聴覚障害の方、いじめなどで不登校状態の方、そしてわたしのように精神疾患をもつ人々などにとっては、メリットとなる一面もあります。
一方、国が定めた時短営業協力金は、店舗の規模や家賃など個別の事情にかからわず一律6万円で、その協力金給付の対象にすらならない業種の方々は、さらに大変な思いをされていると聞きます。
ここでも、平等とはいったい何を意味するのか考えさせられます。
●差別の根絶について
国は、県は、市は、行政は、貧しい人や困難を抱えている人に注目し、形だけではない、本当の救いの手を差し伸べてほしいと思います。配慮ややさしさは、バトンリレーのように連鎖します。もしもトップの人間が心から配慮の姿勢を示したとしたら、それはわれわれ一般市民にも伝わります。
しかしそれは、悪意やさげすみの心も同じです。したがって、影響力の強い人物の差別的・侮蔑的な言動は、強く非難されるべきです。この記事を書くきっかけとなった森氏の女性蔑視発言が国内外で問題視されていますが、こうした差別に対する抗議は、一過性の流行であってはならず、言い続けることが重要だと思います。Twitterで一回呟いて終わりではいけないのです。
なぜなら、どんなに気をつけているつもりでも、人はすぐ低きに流れてしまうものだから。そういった心が形をなして、公園のベンチに現れるのです。
貧しい人、孤独な人、子どもの人、女性の人、お年寄りの人、障害や病気のある人、妊婦の人、子ども連れの人、性的少数の人、外国の人……
理不尽や不平等をこうむる、あらゆる人々が、隠れるように過ごしたり、周りの目を気にしたり、そこに居るというだけで謝るようなことのない、自由な社会にしなければなりません。
すべての人の意見が会議で平等に扱われる国になってほしい。
#DontBeSilent の活動に賛同します。
最後に、画像はこちらのツイート主さんが掲載されていたものをお借りしました。
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