『クーリエ:最高機密の運び屋』 2021年9月26日(日)
自分のTwitterのタイムラインではかなり高評価が与えられているベネディクト・カンバーバッチ主演『クーリエ:最高機密の運び屋』を観に行く。
結論から言うと、その高評価は間違いがなく、見事なスパイ・スリラー映画として後世に残る作品だったと思う。
1960年代冷戦下、イギリスのビジネスマンがソ連の内通者からの情報を運ぶ役割を担う。リアルなスパイ活動、バレる、バレないのヒリヒリした緊張感がドラマを盛り立てる。ベネディクト・カンバーバッチとソ連の内通者役メラーブ・ニニッゼの演技が素晴らしい。
友情、あるいは(秘密を共有するという意味で)それ以上の感情を抱く二人の男の物語としても秀逸である。ソ連の宿、盗聴を恐れてラジオの音量を上げて二人が顔を近づけて話す場面など白眉で、その演出は少し関係性は違うが同じスパイ活動を描いた韓国映画の傑作『工作 金黒星と呼ばれた男』を彷彿とさせる。
終盤のカンバーバッチの演技は壮絶で、役者としてのカンバーバッチの評価がまた一つ上がった。魔法使いのイメージだけではない。
驚くことにこれが実話であり、実際本人の映像が最後に流れる。自分が生まれるわずか前に米ソがこのような核戦争一歩手前の緊張関係にあったことはなかなか想像しにくいのだが、もしこのスパイ活動がなければ核に汚染され、荒廃した地球で暮らしていたのかもと並行線の世界を考えてしまう。
世の中は人間の小さな積み重ねで成り立っているのだ。