【MTGアリーナ】ランク250位への挑戦に敗れた必然(LCIシーズン・スタンダードBO1赤単デッキ『灼熱のファイヤーダンス』(ミシック1200位内クラス)デッキ解説)
本稿は2023年12月期ランクマッチにおいて私が使用し続けた赤単アグロ『灼熱のファイヤーダンス』の解説を行い、その600戦以上に及ぶ試合の中で見えた、「勝てなかった理由」に関して記すものである。
若干中級者向け記事であるため、生粋の初心者の方にはわかりづらい内容になっていると思われるので留意されたい。
また、本稿には『値段』が表示されていると思うが、全文無料で読めるので、安心して読み進めてほしい。
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・『灼熱のファイヤーダンス』
スタンダードBO1用デッキ。
赤単アグロ。
ミシック250位以内達成を目標として作成された。
ミシック521位から使用。
最高到達順位207位
シーズン終了順位1095位
バージョン数20
試合数665
目標の250位以内は逃したものの、ウィザーズからの「プレイ・イン・ポイント授与」によって、LCI環境においてミシック1200位以内の実力を持つデッキであることが証明された。
・3週間の戦い
2023年12月9日、レア0赤単『ランク上げ太郎LCI』(https://note.com/planetgames/n/n59adb89aaf59)を駆り、ミシックへ到達。
この時ミシック521位。
『レア無し赤単』の出来に満足した私はこの順位を見て250位への挑戦を決意。
今の私にできるベストデッキである、レアを開放した『全力赤単』で挑む意向を固めた。
残りシーズンは3週間強。
対戦と調整を繰り返し、私は順調に順位を上げ、数日後には250位以内を維持するようになった。
しかし、それまで上昇傾向だったランクが膠着、200位を突破できない。
200~300位を上下しながらおよそ1週間が過ぎた。
そして『それ』は来た。
・2度の連敗期
私はマジックをやっていると不定期で、何をどう頑張っても勝てない『連敗期』が時折訪れる。(常に後手を引かされ毎試合ダブマリマナフラッドみたいな状況が数日間続く)
前兆無し、期間不明、自然回復以外の復調手段無し。
通常(体感にして)1~2か月に一回程度のそれが今シーズン中は2週間の間に2度起こった。
1度目の連敗期では2日間の間に300位台から一気に1000位以下へと急落。
それでも今シーズンだけはやり遂げて見せると決意を固めていた私はおよそ1週間かけて300位台まで順位を回復。
再び250位以内をその射程へ捉えようとしたところで2度目の連敗期が襲い掛かり、今度は900位以下まで順位を落とすことになった。
シーズン残り5日。
再びの返り咲きを狙う私に最後の刺客が現れる。
・挽回のチャンスは1度
コロナ。
40度の高熱に私は倒れた。
病床でも私はアリーナを起動し、順位だけは注視していた。
じわじわと下がる順位。
期末の追い込みに耐えられるか怪しい順位。
焦りを募らせた私は、熱が少し引いたタイミングを狙い、30分だけランクの補強を強行した。
惨敗。
ランクはついに1200を下回った。
そしてシーズン最終日、12月31日。
18時を過ぎたころ。
5日間の療養の末体調はかなり改善されていた。
ミシック1225位。
最低でも1200位内だけは死守したい。
30分なら回せる。
挽回のチャンスは1度。
初めて全力でマジックをプレイした、この3週間を無駄にしないために最後の戦いに挑んだ。
快勝!
勝率73%の快勝でミシック1000位につけた。
持てる力の全てを使い切った私は後を天に任せた。
結果は初めに述べた通りである。
・250位を達成できなかったのは『不運』だったか
結論から言えば『NO』である。
250位への挑戦が敗北に終わったことに関しては、その一切が実力の問題であったと考えている。
今シーズンにおける『連敗期』の大きな特徴として、『後攻の試合が極端に多かった』ことが挙げられる。
このデッキの最終的な総合勝率は57%であった、その内訳は先攻勝率70%、後攻勝率42%であった。
これは調子のいい時も含めた平均値のため、実際の下振れはもっと厳しい。
要するにこのデッキはあまりに『先攻の時にだけ強いデッキ』だったため後攻を固めて引かされると順当に負けてランクを落とすのだ。
無論、ポテンシャルはあるデッキだ。
後攻や不利マッチアップ、覆せないものではない。(実際に私はデッキの弱点を承知の上でプレイで覆す気でいた)
しかしそれは引きもプレイも冴えた『その試合』に限った話で、数百試合に渡って続く戦いのなかではそのデッキの(今回で言えば「先攻でしか強くない」という)『本質』は隠しきることはできない。
そして、それは『私自身』に対しても言えることだったのだ。
数百に及ぶ試合の中で、私は幾度となく絶体絶命のピンチから逆転勝利を勝ち取ってきた。
それは時に対戦相手のリーサル見逃しであったり、私がデッキの中に残された唯一の回答を引き当てたためであったりした。
しかし、私自身もまた、リーサル見逃しをしたこともあるし、呪文のプレイタイミングを誤り敗北した経験がある。
もし私がベストなプレイを維持し続けることができていたら、このデッキの勝率はもっと高かったのだ。(当初の目論見通りデッキの弱点をカバーするほどのプレイが可能だったかもしれない)
いくつかの試合で素晴らしいプレイをすることができたとしても、数百に及ぶ試合の中では私の『本当の実力』は隠しきることができない。
その結果が『勝率57%』なのである。
そして、当たり前だが重要なこと。
『体調の悪い時にプレイしないこと』
私の今回のランクマッチを窮地に追い込んだ最大の要因は『不調時のプレイ決行による連敗』である。(その時の試合数自体はわずか10試合程度だが、そのほとんどで負け、それによるランク下落が痛恨の悪手となった)
もし無理をせず12月31日を待って最後の仕上げを行っていれば、1200位内の維持にこれほどリスクを抱えることはなかっただろう。
マジックといえど基本は健康管理からなのだ。
これらのことから既に今回の私の敗北は、紛れもなく実力不足であったことは間違いないのだが、なぜ私がそこまで焦って試合に臨んでいたのか、決定的な理由を述べておかなければならない。
ミシック常連の先達にとっては当たり前のことであったと思うが、初めて本気でランクマッチを戦った私にとって大きな焦りを生んだ原因。
それは『ミシック順位帯は(放置が許されず)勝率50%だとランクが下がる』ということ。
実際ミシックの順位算定がどのようにして行われているのか分からないがとにかく50%だと下がるのだ。
これを読んでも難度の差がピンとこない人はよく思い出してほしいのだが、『ミシックに到達するまで』は、『勝率50%ならランクは上がる』のだ。
なぜならミシック未満のランクは放置してもランクが下がらず、勝利と敗北の価値が等価で、そして『ティアー』が上昇した直後は負けてもポイントが減らないため、勝率が50%を超えていればあとは試行回数だけの問題で、理屈上必ずミシックまでたどり着けるのである。
しかし、ミシック順位帯は違う。
ミシックは『対戦をしなければ順位が下がるが、戦ったとしても同ランク帯の者たちと互角だと順位が下がる』のだ。
負けこんでいるわけでもないのに『戦っても戦っても順位が上がらない』。
これが私を焦らせた。
私が先に述べた『200位を前にして順位が上がらなくなった』理由。
答えはシンプルだった。
『勝率が足りなかった』のだ。(こちらの記録によれば勝率54%まではランクが低下している。私の勝率「57%」は本当に「ランクが落ちないだけ」という値だったということだ)
つまり、私がプレイミスによって落としたいくつかの試合がデッキの勝率を下げ、そのために足踏みしている間に『下振れに弱い』というデッキの構造上の弱点が露見した結果が今回の敗北の原因だったのだ。
私が250位への挑戦に敗北したのは必然であった。
『多少勝率が落ちようが回転数を高め、試行回数によってランクを上げるという発想は(ミシック到達までは効果的であったとしても)ミシック順位帯のとりわけ上位では通用しない』
・デッキガイド
とはいえこのデッキはミシック1200位内を達成するには十分なポテンシャルを持つことは証明された。
LCI環境は今月も続く。
ここに簡単ながら赤単アグロ『灼熱のファイヤーダンス』の解説を記しておくことには今シーズンの攻略に一定の価値があるものと考える。
デッキは長い戦いの中で何度も調整が加えられており、そのバージョンは全部で20にも及ぶ。
それら全てを解説することはできないため、主要な2つの型についてだけ紹介を行う。
アリーナへのデッキのインポートは一度アリーナの言語設定を英語に変えて、英語版のリストから行ってもらいたい。(日本語だと正常にインポートされないため)
・前期型
デッキ
18 山 (MOM) 280
2 稲妻の一撃 (DMU) 137
4 僧院の速槍 (BRO) 144
4 血に飢えた敵対者 (MID) 129
3 火遊び (MID) 154
4 熊野と渇苛斬の対峙 (NEO) 152
2 反逆のるつぼ、霜剣山 (NEO) 276
4 フェニックスの雛 (DMU) 140
2 怪しげな統治者、スクイー (DMU) 146
1 ロノムの発掘家、フェルドン (BRO) 135
1 ミシュラの鋳造所 (BRO) 265
2 猛火の最高潮 (ONE) 123
3 タルキールへの侵攻 (MOM) 149
1 魅力的な悪漢 (WOE) 124
2 擬態する歓楽者、ゴドリック (WOE) 132
3 巨怪の怒り (WOE) 142
2 魔女跡追いの激情 (WOE) 159
2 イモデーンの徴募兵 (WOE) 229
Deck
18 Mountain (MOM) 280
2 Lightning Strike (DMU) 137
4 Monastery Swiftspear (BRO) 144
4 Bloodthirsty Adversary (MID) 129
3 Play with Fire (MID) 154
4 Kumano Faces Kakkazan (NEO) 152
2 Sokenzan, Crucible of Defiance (NEO) 276
4 Phoenix Chick (DMU) 140
2 Squee, Dubious Monarch (DMU) 146
1 Feldon, Ronom Excavator (BRO) 135
1 Mishra's Foundry (BRO) 265
2 Blazing Crescendo (ONE) 123
3 Invasion of Tarkir (MOM) 149
1 Charming Scoundrel (WOE) 124
2 Goddric, Cloaked Reveler (WOE) 132
3 Monstrous Rage (WOE) 142
2 Witchstalker Frenzy (WOE) 159
2 Imodane's Recruiter (WOE) 229
オーソドックスな赤単アグロ。
1,2,3ターンとマナカーブ通りに環境で最も質の高い速攻クリーチャーを並べて先行逃げ切りを行うデッキ。
ポイントは《タルキールへの侵攻》。
《タルキールへの侵攻》は最も多いマッチアップである赤単ミラー時、相手にとって対処困難な札である場合が多く、後攻を取らされても強制的に相手に防御態勢を取らせる強力な圧力だった。
また《タルキールへの侵攻》を3点(もしくは2点)の状態を維持し、火力呪文でいつでも(インスタントで)変身させられる状態を維持すると、不慣れな相手ならそのまま突っ込んできて戦場の主導権を失い、分かっている相手にも常時圧力をかけたまま戦うことができた。
1度目の連敗期を迎えるまではこの構成が中心だった。
・後期型
デッキ
17 山 (WOE) 273
3 稲妻の一撃 (DMU) 137
4 僧院の速槍 (BRO) 144
3 血に飢えた敵対者 (MID) 129
2 火遊び (MID) 154
4 熊野と渇苛斬の対峙 (NEO) 152
2 反逆のるつぼ、霜剣山 (NEO) 276
4 フェニックスの雛 (DMU) 140
2 怪しげな統治者、スクイー (DMU) 146
2 ロノムの発掘家、フェルドン (BRO) 135
1 ミシュラの鋳造所 (BRO) 265
2 猛火の最高潮 (ONE) 123
3 魅力的な悪漢 (WOE) 124
3 擬態する歓楽者、ゴドリック (WOE) 132
3 巨怪の怒り (WOE) 142
3 魔女跡追いの激情 (WOE) 159
2 イモデーンの徴募兵 (WOE) 229
Deck
17 Mountain (WOE) 273
3 Lightning Strike (DMU) 137
4 Monastery Swiftspear (BRO) 144
3 Bloodthirsty Adversary (MID) 129
2 Play with Fire (MID) 154
4 Kumano Faces Kakkazan (NEO) 152
2 Sokenzan, Crucible of Defiance (NEO) 276
4 Phoenix Chick (DMU) 140
2 Squee, Dubious Monarch (DMU) 146
2 Feldon, Ronom Excavator (BRO) 135
1 Mishra's Foundry (BRO) 265
2 Blazing Crescendo (ONE) 123
3 Charming Scoundrel (WOE) 124
3 Goddric, Cloaked Reveler (WOE) 132
3 Monstrous Rage (WOE) 142
3 Witchstalker Frenzy (WOE) 159
2 Imodane's Recruiter (WOE) 229
《擬態する歓楽者、ゴドリック》を強く使うための構成。
シーズン後半はこのリストを中核に最後まで戦った。
ここでは対戦数も多く、実際に1200位を決めた際に骨格となっていたこの『後期型』について解説する。
《タルキールへの侵攻》は1回目の連敗期の折にタフネス3~4のクリーチャーを対戦相手に出されすぎて「時期が悪い」と判断し抜けることになった。
肝心の赤単ミラーでも、《熊野と渇苛斬の対峙》でカウンターが乗ってタフネス3になった2マナクリーチャーを焼けない、変身後も《魔女跡追いの激情》があるため思ったより対処されるといった場面が目立ってきたため、流れが悪いと感じた。
・各カード解説
・1マナパーマネントたち
《熊野と渇苛斬の対峙》
《僧院の速槍》
《フェニックスの雛》
各4枚
計12枚
上記いずれかが1枚も含まれない手札は2,3ターン目の展開がよほど強力でない限りキープしない。
熊野と速槍はカードパワーに疑いないが、フェニックスの雛だけは単独の性能に不満がある。
雛のポテンシャルを最大限に引き出すために、雛はできる限り熊野や《巨怪の怒り》などで強化して使いたい。
パワー1と2の間にはカードパワーに2倍の差があるため対戦相手に対してかける圧力は段違いになる。
幸い雛の回避能力は強化のしがいがある。
現状、何らかのコンボやシナジーめいたものを考えなければ赤の1マナ域はこの3種類が最強であると私は考えている。
このデッキを組む際重視したのは『弱いカードを使わない』こと。(特定の状況でだけ強いカードは『弱いカード』と見なしている)
《フェニックスの雛》は正直に言って『弱いカード』と見なしていたが、1マナのパーマネントの数が足りず、残された1マナクリーチャーの中では最も強いと考えていたため採用されている。(ただ、今にして思えば単体性能に疑問のある雛だけは1~2枚減らす選択肢はあったかもしれない。当時は戦績がはっきりしていたデッキの基本骨格にできるだけ手をつけたくなかったのだ)
このデッキは早ければ4ターンで敵のライフを削り切る。
4ターン目までに順調に土地を伸ばした場合使用できる総マナ数は10。
その前提で行くと先攻の場合土地以外の使用可能な手札は6枚。
その場合唱える呪文の平均コストは約1.7マナ。
1枚のカードが対戦相手に与えなければならないダメージは3.3ということになる。(後攻なら手札が1枚増えて約2.9点)
今あげた数字は厳密な計算ではなく、私がカードを選択する際に何となく頭の片隅で抱いているイメージを可視化するための方便に過ぎず、つまるところ勘なのだが、このイメージを持っているか否かで私のカード選択基準に対する理解度は大幅に変わってくるであろうためあえてここに記した。
・なぜ《巨怪の怒り》は強くて《火遊び》は弱い判定なのか
1マナの呪文
《巨怪の怒り》3枚
《火遊び》2枚
まず前提として言っておくが普通《火遊び》は優秀。
『強いカード』である。
1マナで2マナのクリーチャーを除去して、テンポアドバンテージを狙えるし、どうしてもという場面では占術に頼ることもできる、その汎用性は圧倒的だ。
しかし、こと先行逃げ切り、リソースは可能な限り本体へということになると、《火遊び》は『1枚で2点のダメージを与えるカード』ということになる。
ここで先ほど述べたイメージ『1枚のカードで3点のダメージを与える』という基準と照らしてみると、《火遊び》の威力は足りていないのが分かる。
他方《巨怪の怒り》は通せばその時点で3点、トークンが残ってダメージを与え続ければ4点、5点と1枚でダメージを稼ぎ出したことになる。
『対戦相手のライフを狙う』1点だけで見れば、そのパワーに圧倒的な差があることが分かる。
故にこのデッキのような先行逃げ切りの戦いを想定する際には《火遊び》は他のカードの負担を増やす『弱いカード』と判定されたのである。
とはいえ、このデッキの苦手な《スレイベンの守護者、サリア》をテンポ損なく排除したり、緑白エンチャントのようなマスト除去クリーチャーを連打してくる相手に対してできるだけちゃんと除去を当てるために《火遊び》は2枚採用。
トークンがかぶると威力が減退する《巨怪の怒り》は3枚の採用となっている。
採用枚数は勘である。
以下採用枚数の何となくのイメージ。(厳密ではない)
4枚:ぜひ初手に引きたい、対戦中複数引いても構わないカード
3枚:1ゲーム中に1枚は引き込みたいが複数重ねて引くことには躊躇するカード
2枚:1ゲーム中必ずしも引けてなくてもよいが、ある程度ゲームへの影響(引ける可能性)を担保したいカード
1枚:採用の価値あるカードパワーだが1ゲームに2枚以上引きたくないカード
・2マナのクリーチャー
《血に飢えた敵対者》3枚
《魅力的な悪漢》3枚
《ロノムの発掘家、フェルドン》2枚
まず私はこの3枚の中で《血に飢えた敵対者》以外の2枚は高く評価していない。
《ロノムの発掘家、フェルドン》は典型的な『先攻でしか強くないカード』であるし、《魅力的な悪漢》はフェルドンと違い汎用性がある点は評価できるものの、普通に使うと超パワーカードである《巨怪の怒り》の対象として適さない。
しかし、フェルドンの先攻時の対戦相手への圧力の強さは確かなものであるし、このデッキではゴドリックを強く使いたい都合上、祝祭を達成させる《反逆のるつぼ、霜剣山》を2枚使用しており、伝説枠を増やしたかった。
強いカード同士のシナジーは歓迎するところである。
《魅力的な悪漢》は見たままである。
ゴドリックの祝祭を単体で達成できる。
また、手札入れ替えや、宝物の選択肢があることもフラッド(土地過多)とスクリュー(土地不足)の受けになり得る能力であり、火力ではやや見劣りするものの悪い選択肢ではなかった。
何より最低でも『2マナ2/2速攻』であることがこのデッキでは何より重要だった。
《血に飢えた敵対者》は私が現環境の赤の2マナクリーチャーで最も信頼を置く存在だ。
攻防に渡る安定した性能、フラッドに対する受け。
私の要求を完全に満たすクリーチャーでもともと4積みだったが、ゴドリックとシナジーする他のカードを増やしたこと、デッキ内の再利用可能な呪文が最初の型から減少し、それに加えて《墓地の侵入者》などにたびたびしてやられたことも相まって、能力が空振りになる場面が増えたことも考慮して3積みとした。
2マナのクリーチャーはキルターン4までの残り2ターンの間に3点のダメージを稼ぎ出さねばならない。
クロックが1ターン多く刻める『速攻』は必須である。
《熊野と渇苛斬の対峙》の第2の能力をきっちり相手の顔面に届けるためにも『速攻』がこのデッキのクリーチャーに求められる最も重要な能力となる。
・2マナの呪文
《稲妻の一撃》3枚
《猛火の最高潮》2枚
一方は分かりやすいだろう。
《稲妻の一撃》は安心と信頼の火力呪文で、場面によって除去に使うこともでき、単体でも『1枚3点』の火力を持っているため顔面にも投げつけやすい。
しかし、このデッキの主役はあくまでクリーチャーであり、クリーチャーがその真価を発揮すれば『1枚3点』を優に超える破壊力を出すことができる。
安定、万能ではあるがあくまで『サポート』のためクリーチャー(及びそれにシナジーするカード)に枠を譲り3枚の採用となった。
一方《猛火の最高潮》はもしかしたら少し珍しいカードかも知れない。
このカードは『土地をめくる/土地以外をめくる』ことによってフラッドとスクリューを両方受けられる可能性を持っている。それでいて『1枚3点』の火力を有している。
わずか1枚でこれらの要素を兼ね備えたカードを他に見つけられなかった。
とはいえ、カード自体はバットリなので過信は禁物の2枚採用。
《フェニックスの雛》はこのカードを安定運用するためにも重宝していた。
・エース、3マナクリーチャー
《擬態する歓楽者、ゴドリック》3枚
《怪しげな統治者、スクイー》2枚
《イモデーンの徴募兵》2枚
解説の初めで述べた通り、このデッキは《擬態する歓楽者、ゴドリック》を強く使うことを目標に構築されている。
3マナはデッキの最重量カードであり、最も強力な選ばれたものだけがその座に就くべきである。(キルターンは4であり、3マナの呪文を何度も唱えなければならない状況はデッキコンセプトに反する)
3マナの呪文がデッキに7枚入っていれば、3ターン目にはちょうど1枚ほど手札にカードが舞い込んでくるだろう。(あくまで期待値だが)
ゴドリックはこのデッキのコンセプトカードだ。
デッキの他のカードは、(単体性能を担保しつつ)『いかにゴドリックの祝祭を手助けするか』をその選定基準としている。
最低でも3/3/3速攻。
祝祭で3/4/4速攻。
クリーンヒットすれば『1枚7点』程度の破壊力で見ることができる。
エースにふさわしい火力といえる。(『1枚で7点の火力が出ている』ということは『敵の顔に入らないカードを1枚引いても受け入れられる』ということである)
しかし、3マナかつレジェンドのため手札でダブついた時のリスクはかなり大きい。
ゲーム中1枚引ければ十分なカードだが1枚は引きたいため3枚の採用となった。
スクイ―は単独でもおおよそ3/3/3速攻相当の火力と見ることができ、他の2枚のエースたち両方と相性がいい。(クリーンヒットすればこちらも『1枚7点』ほどとみて良い)
強いカード同士のシナジーは歓迎である。
墓地から帰ってくる能力によってデッキの継戦能力を高めることにも一役買っている。
《フェニックスの雛》や《反逆のるつぼ、霜剣山》とも相性が良い。
とはいえレジェンドかつ何枚も使うカードではないため2枚の採用。
《イモデーンの徴募兵》は他の2枚と比べると単独での性能は低い。(クリーンヒットで『1枚5点』程度の火力)
しかしこのデッキは12枚もの1マナクリーチャーを有しており、2ターン目も1マナ*2という動きをすることも多い。
3マナ圏にもスクイ―がいる。
徴募兵以外に2体のクリーチャーがいた場合クリーンヒットの火力は『1枚7点』相当であるし、最後の『4ターン目に引いてきた瞬間』だけで出る火力を見ればこのカードはゴドリックやスクイ―を上回る可能性を秘めている。
瞬間的に叩き出せる火力だけで言えばこのカードを上回るようなクリーチャーは他にいなかったように思う。
出来事部分も使いこなせる型も試してみたがそれは過剰であったしリターンよりリスクの方が大きかったように感じたためやめた。
安定感ではレジェンド2枚に劣るため2枚の採用。
・《魔女跡追いの激情》
《魔女跡追いの激情》3枚
このデッキは本当に《輝かしい聖戦士、エーデリン》や、《黙示録、シェオルドレッド》が厳しい。
敵本体へのダメージに直接寄与しないカードを採用してでも、これらのカードを許すわけにはいかなかった。
幸いデッキには1マナから展開できるクリーチャーたちが多数存在している。
大型クリーチャーだけでなく、最後のブロッカーや、どうしても許容できないシステムクリーチャーを、おおよそ1~2マナで処理できるこのカードは非常に有用であった。(敵の攻撃でもマナコストが下がるため、赤単ミラーで攻守逆転を図る際にも有益であった)
このカードを再利用できないために《血に飢えた敵対者》の枚数が1枚減ったという背景もある。
・土地
《山》17枚
《反逆のるつぼ、霜剣山》2枚
《ミシュラの鋳造所》1枚
3ターン目にちょうど3枚ほど土地が来る計算になる。
フラッドの受けはある程度設けてあるが基本的にそれだけ土地があればゲームに勝てる。
そのように作ってある。
BO1は割とカツカツでもなんとかなる。
ヘタな特殊地形はデッキの安定度を下げるだけなので基本的に山が一番良い。
霜剣山は1枚ならノーリスクだがゴドリックのサポートとして使える+フラッド時には呪文扱いできるため、デッキのレジェンドを増やし2枚の採用に。
そのリスクを踏む価値はあるカードだと思った。
ミシュラは色が出ないのが本当につらい(1マナ*2の動きが2ターン目にできない)ので、カード自体はきわめて強力ながら採用は1枚に。
・マリガン基準
まず初手の土地は2-3枚であること。
このデッキは土地の枚数がかなりギリギリである。
後攻ならまだしも先攻で土地1キープをしてしまうとほぼ確実に土地が詰まる。
土地1キープは基本的になし。
土地4の手札もマリガン。
このデッキは4枚目以上の土地を有効活用する術が少ない。
特定の場面を除いて4枚目以上の土地は邪魔だ。
手札の総火力が足りなくなるうえにその後のドローが3分の1の確率で死に札となるのでは到底キープできる手札とは言えない。
土地は2枚-3枚。
この上で1マナパーマネントが最低手札に1枚いることが条件となる。
1,2,3マナとマナカーブ通りに切りたい札が揃っていることがベストだが、『1マナ圏が3枚(2ターン目に1マナを2枚切る)、3マナ圏が1枚』などの手札も良い形だ。
そこに《火遊び》や《魔女跡追いの激情》のような除去が1枚入っている手札が理想的といえる。
1ターン目にパーマネントを出せない手札は2,3,4ターン目の流れがよほど強い手でない限りキープすべきでない。
また例え展開がスムーズでも手札の総火力が少ない手はマリガンした方が良い場合が多い。(例:山、山、雛、雛、火遊び、悪漢、魔女跡追い)
このデッキは完璧に回ればトリマリ(マリガン3回)でも勝てるデッキである。
手が精彩を欠くようならダブマリ程度までは強気に挑戦した方がいい場合が多い。
・ザックリプレイガイド
・プレイ時の大雑把な方針
リソースは可能な限り敵の顔にたたきつける。
除去は必要最低限しかしない。
不利な攻撃でも必要なら躊躇なく行う。
(例えば3体で攻撃し2体がブロックされて一方的に死んだとしてもそれで敵のライフを残り3に減らし、《稲妻の一撃》で仕留められるなら攻撃すべき。その時《稲妻の一撃》を実際に持っていなかったとしても、『次のドローで《稲妻の一撃》を引ければ勝ち』という意識をもって攻勢に出ることで打開できる状況は多い)
基本的にマナは毎ターン使い切る。
『構える』行為はただでさえ少ないマナを無駄にするリスクを伴う。
基本的には構える際にも最終的にマナを無駄なく使いきる算段は可能な限り立てておくことが望ましい。
各カードが持っている攻撃力を最大値で相手にたたきつけることを最優先に考える。
・1ターン目《熊野と渇苛斬の対峙》と《僧院の速槍》はどちらからプレイすべきか?
基本的に熊野。
英雄譚はその性能を100%発揮するためにターン数を要する。
またゴドリックを3ターン目に引き込んだ際最大の攻撃力を発揮するようにこのデッキは作られている。
3ターン目に熊野が変身する理想形は追求すべき。
熊野をプレイするタイミングが遅れると第2の能力の空振り率も上がる。
とはいえ、例外もあり、後攻で2ターン目に《稲妻の一撃》を構えたいときには熊野の第2の能力を使う機会を失うため、速槍から先にプレイする。
赤単ミラーでこの状況になることが多い。
速槍をアタックさせずに立て、《稲妻の一撃》を構え、相手が不用意に攻めてきたら呪文と2/3になった速槍で相手を打ち取れる。
・後攻での心構え
基本的には先攻の時と同じく『ベストを尽くす』のみなのだが、赤単ミラーで後攻の場合、デッキ、腕前が同レベルならほぼ必ず負ける。
こちらもデッキ的には『攻める時にしか強くないカード』があまりにも多すぎるため、ダメージレースを追いかけるしかないのだが、どこかで『攻守を逆転』させなければならない。
その時に鍵となるのが《火遊び》《稲妻の一撃》《魔女跡追いの激情》の3枚だ。
これら除去呪文で、可能な限り『相手より少ないマナでよりコストの高いカードを討ち取る(例:1マナの《火遊び》で3マナのスクイーを討ち取る)』『果敢などを絡めて一方的に敵のクリーチャーを討ち取る』これらの動きができれば『攻守を逆転』させることができる。
どのマッチアップでも3マナから相手の出してくるカードの危険度は劇的に高まる。
こちらの除去の枚数は決して多くないため、盤面の主導権が相手に移る前に大勢を決しておくことが理想である。
盤面など取れていなくても相手のライフさえ0になればよいのだ。
・本当に無理なカード
《墓地の侵入者》が本当にシェオルドレッドなど比較にならないほど、本当につらいカードなので、そのシェオルドレッドもオマケでついてくる黒単に出会ったら、相手が《墓地の侵入者》を引かないように祈りながらベストプレイを続けよう。
・デッキの弱点
BO1ではサイドボードはないしマッチアップも何も不利な相手には出会い頭に吹っ飛ばされて終わりなので、こちらが出合い頭に吹っ飛ばす側になろうというコンセプトでこのデッキは作られている。
それ故にカードの選定はこちらで計算できる部分、即ち『こちらが攻める時のプラン』を中心に行われている。
これによってこのデッキは基本的に『相手を踏み潰す』か『相手を追い抜き踏みつぶす』このどちらかのプランで戦うしかないものになっている。
つまり初めに述べたように『後攻に弱い』。
そしてBO1で最も遭遇するデッキは赤単である。
ミラーマッチをきっちり取れるかどうかが、このデッキの使い手の腕の見せ所である。
マッチアップとして明確に不利なのは黒単。
出会ったら覚悟を決めて最善を尽くすしかない。
こちらの記録に残っている頻出カラーベスト5の総ゲーム数とそれに対する勝率は以下の通り。
1位:赤単 154ゲーム(60%)
2位:白単 72ゲーム(56%)
3位:青白 66ゲーム(52%)
4位:黒単 57ゲーム(40%)
5位:赤白 50ゲーム(44%)
一応最も重要な赤単ミラーマッチを始めとした最頻出カラーベスト3に対しては頻度の高いカラーほど勝ち越せているのでとりあえずは悪くないと思われる。(不利マッチアップにあまりに不利すぎるので手放しに誉めることもできないが)
また、あまりにも雑多なので詳述しないが、ティアーリスト未満の雑多なデッキには滅法強いため、まさにミシック到達までのランク上げには快適そのもののデッキといえる。
しかし、初めに述べた通り、このデッキは『本質的に下振れに弱く、数百戦戦えば必ずその性質は露見する』ためこのデッキで本気で上位ランクを狙おうと思うのならば『負けるような引きでない時には絶対に負けてはならない』。
デッキの内容、各カードのシナジー、対戦相手とこちらのクロックの差、次のターンに撃たれるであろうカード、すべて頭に叩き込んで『ベストなプレイとベストな引き』を常に心掛けなければこのデッキで上位ランクに名を連ねることはできない。
・最後に
以上で私の2023年12月期のランクマッチのプレイレポートと使用デッキの解説を終了する。
思った以上に長文となってしまったが、ここまで読破してくれた読者諸君には感謝の念を禁じ得ない。
本稿で紹介したデッキは250位こそ逃したものの、ミシック1200位をしっかり達成し、私の構築とプレイに対してある程度の成果は示せたものと考えている。
私自身まだ未熟な身の上だが、これからミシックを目指す者、私と同じく上位ランキングを目指す者にとって本稿が何らかの参考になればこの上ない幸いである。
以上で本稿を終了する。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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