ほっと一息、一杯の紅茶を皆で飲もう
「さてと」
全員が起きた直後。休みの朝。その言葉が合図。
我が家の三人は、よしきた、と全員自分専用のカップを用意する。
一人は、黙って、生暖かい目で三人の勢いを見守っている。
ベージュ色のペアのカップ&ソーサーは、母がピンクの花柄で、私が青い花柄。
弟のブラウンのマグカップは、コーヒー屋で「これぞ!!」と出会った運命の一品。
父は……本音は緑茶が一番好きだけど……昔からある白くかわいいカップ&ソーサーを用意。
朝の紅茶は決まっている。
私が、淹れるのだ。
葉っぱは何がいい? 休日にお約束の質問をする。
我が家に紅茶の葉っぱは2種類。
トワイニングのダージリンと、ルピシアのアールグレイグランドクラシック。
母は言う。これもお約束。
「朝だからねー、ダージリンがいいー」
よしきた、出番だぜ。
祖母が持っていた鉄瓶に水を入れる。水道水。
「酸素をたくさん含んでいたほうがおいしい」という嘘か本当かわからない俗説を耳にしてからは決まってこうしている。
実際、微妙に肥えた我々の舌にはミネラルウォーターだと合わない。
でも、振って空気を入れればいいという。また今度、死ぬ気で振ってみようか。
たっぷり、水を入れた鉄瓶を火にかける。
――弱火で、じっくり、時間をかけて。
合図は音。「ヒュー」と「シュー」の間。
鉄瓶の口から、湯気が一瞬だけ見える温度。
これを見極めるのは玄人の技(だと思い込んでいる)。
私と弟はすでに習得し、母はまだ修行至らず。
――鳴った! とりゃあ!!
すでに温めて、葉っぱを適量淹れたポットにお湯を入れる。
某刑事ドラマの紅茶好きの刑事のように、できるだけ(でも跳ねない程度に)高く。
気持ちを緩めてはいけない。
ここが、多分一番気持ちを入れるべき場面だと信じて、お湯を入れる。
そこから三分三十秒。すでにタイマーはセット済み。
コーゼをかけ、蒸らす。
ぴぴぴぴっ、「できたよー」
温めた各々のカップに紅茶を注ぐ。弟がよっしゃとばかりになみなみと注がれたカップを配る。
母も紅茶が好き、弟も紅茶が好き。私は紅茶がないと文字通り死ぬ。
父は単純にお茶が好き。
母と私は熱々を、父は適当なタイミング、弟は(せっかくの熱々なのに)ちょっと冷めてから。
それぞれ、朝の紅茶を一杯。
――さあ、召し上がれ。
私はひそかに呟きながら、華やかな香りとほどほどの苦みを、家族とともに味わう。
うん。今日も上手く淹れられた。
これが、日曜日の朝、我が家のいつものお約束。