ジャグ(ガバ)の話をしょう
とにかくジャグの話をします。
流れとしては前回のNOTEの続きになります。
前回のNOTE⇓
前回はジムを開業する際にどのようなホールドを揃えたらいいかについて書かせていただきました。いくらクライミング経験が豊富でもジム勤務経験があっても、ホールドをジム1軒分揃えることは初めての経験になると思います。そのお役立ちになればという内容となっています。
全体的な話をしていると細かい話を沢山書きたくなってしまいますので、今回はその続きとしてジャグについて書かせていただきます。基本的なことからできる限り考えつつ書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ジャグ(ガバ)とは
ジャグ(ガバ)とは、クライミングホールドの中でも持ちやすいホールドを指します。ジャグは(おそらく)英語でガバは日本語ですが、ガバ語源としてガバっと持てるからと言われています。
ジャグであるか否かに関しては、おおよそ主観です。持ちやすいか否かでジャグか否かが分かれるので、人によりジャグの範疇は変わります。しかしそれではコミュニケーションに齟齬が出てしまいますので、一般的にジャグとはだれにとっても持ちやすいホールドを指します。
ジャグの用途
ジャグには大まかに以下の用途があります。
①緩傾斜に初心者用課題を作る。
②強傾斜に課題を作る。
③各種課題のスタート・ゴール。
④各種コーディネーションの起点・終点。
用途によって求められるジャグが違うことがあります。どのような状況にでも対応できるシェイプもあれば、目的がはっきりとしたシェイプもあります。ジャグを揃えるときは用途を鑑みて揃える必要があります。ここではざっくりとどのようなシェイプが求められるかを記載し、細かいことはシェイプの話でしたいと思います。
①緩傾斜に初心者用課題を作るジャグ
このタイプのホールドは痛くなく持ち心地の良いホールドが求められます。また、緩傾斜でのみガバの範疇と判定できるホールドもあるので、バリエーションを増やす為にも多様なガバが必要です。
②強傾斜に課題を作るジャグ
強傾斜に易しい課題を作る際には、強傾斜でもガバとして使えるシェイプを使用する必要があります。シェイプによっては傾斜によりガバではなくなるものもあります。強傾斜に易しくない課題を作る場合は・・・ジャグは不要かな?
③各種課題のスタート・ゴール
スタート・ゴールは必ずしもジャグである必要はありませんが、えてしてジャグであることが多いです。理由として、気持ちよくスタートしてほしい。気持ちよくゴールしてほしいというジム・セッター気持ちがあると思われます。とはいえ、スタート・ゴールが悪いことでその課題が楽しくなる場合もありますので、その限りではありません。
気持ちよくスタート・ゴールするためには、両手でしっかり持てるジャグが好まれます。とはいえ両手ジャグを各種カラーで揃えるのは意外と大変なので、新規ジムのセットではセパレートスタートが多くなりがちなのはあるあるです。
④各種コーディネーションの起点・終点
課題の途中で派手なコーディネーション(ランジ含む)が出る場合、その起点と終点はある程度ガバであることが求められがちです。終点ホールドが痛いと課題の評価が下がるので、掴み心地の良いシェイプが求められます。
おおよそ①~③のホールドでフォローできるので、あまり気にしなくて大丈夫だとは思います。
ジャグのシェイプ
保持部の厚み
ガバの持ち心地に大いに関係する厚みについて。
図①はジャグの厚みを模した簡単な断面図です。
一番左の保持部が尖ったジャグですが、こういったガバを緩傾斜で上向きに設置するととても痛い保持感となって今います。尖ったようなシェイプは基本的に強傾斜の方が向いています。それでもこういったシェイプを緩傾斜につけたい場合、アンダー向きで設置するのをお勧めします。体重が掛からない分、痛くなりにくいです。図②のように、左の場合は尖った部分に荷重がかかってしまいますが、真ん中のようにルーフにつけたり右のようにアンダーにつけたりすれば、尖った部分に荷重がかかることはありません。
このようなホールドの例として他社ですがこのようなホールドがあります。このホールドはとても優秀で好まれて使われることが多いホールドですが、強傾斜やアンダーなどで使われることが多いです。初心者向け課題も作れないことは無いですが、とても痛いのでやめておいた方が賢明でしょう。
図①の一番右のジャグは小さな手だとスローパーになってしまう可能性があります。小さな手でもジャグとして使えるホールドは小ぶりか保持部が薄いジャグが良いでしょう。
保持部の傾き
傾斜に大いに関係する保持部の傾きについて。
図③はジャグの保持部の傾きを模した簡単な断面図です。
一番右のシェイプはルーフなどでもジャグと判断できるシェイプとなっています。対して一番左のシェイプは垂壁などではジャグと判断されますが、傾斜がきつくなるにつれガバと判断されない保持感となっていきます。
図④は図③のホールドを180度の傾斜につけた場合の図です。
右の図はまだガバと認識できますが、中の図はかなり持ちづらくなってしまいますので、広義の意味としてのジャグからははずれるかもしれません。左の図はもはやスローパーとしても悪く見えます。
なお、一般に商品としてジャグとして販売されているのは、真ん中と右になります。左はスローパー・エッジなどとして売られていることが多いです。しかし初心者向けの課題で緩傾斜につける場合には充分にガバとして使用することができるので、こういったホールドの準備も必要でしょう。また、一番右のホールドは「ルーフジャグ」という名前で売られることもあるので、そういったホールドが必要な場合はそのような名前の商品を選ぶと良いでしょう。ただルーフで使えるジャグが必ずしもルーフジャグという名前で売られているわけでもないのが難しいですね。。。
保持部の開放度
保持部の開放度という概念があまりないですが、稀にこの捉え方が必要になります。
左が解放、右が解放の対義語だと閉鎖とかになるのかと思いますが、わかりにくいので左が角状、右がポケット状とでもしておきましょう。
角状のデメリットは、洋服が引っ掛かりやすいということです。一般ジムの場合はそもそも登る服装で登ることが多いので問題になりにくいですが、出張壁や保育園への設置など、クライマーではない人が登る環境にセットする場合は注意が必要です。一般ジムでもそういったユーザーの多い緩傾斜ではある程度気を付けた方がいいかもしれません。
左用・右用
ジャグには限りませんが、ホールドには右手用・左手用があります。ただし、明記されているものではなくメーカーからもアナウンスがあるわけでは無いので、ユーザー側が「おそらくこれは右手用に作成されてのだろう」と想像して使っています。(例外としてSHOJIN HOLDがあります)
左右を判定する基準は「持ち心地が良い」という主観になりますが、ポイントは以下になります。
①親指のおさまりが良いか?
指で最も力が強いのが親指なので、親指が気持ちよく持ちやすい方で判別します。
②保持部分が深いか?
人差し指・中指あたりがしっかり深いほうが持ちやすいので、底で判別します。ホールディングによっては薬指・中指がしっかり保持でいる方が気持ちよく持てます。
左右の判定は人により変わることもありますし、右手用のホールドでもギャストンなら左手の方が持ちやすいということもあります。心地よく登れる課題を作成するときに頭の片隅に入れてセットすると良いでしょう。逆にあえて違和感を出したい時には左右を入れ替えることもあります。
ハンドルジャグ
いわゆる鉄棒のように掴めるタイプのホールドの事ですが、このタイプのホールドの呼称は定まっていない気がします。鉄棒ホールドとかハンドルジャグなどのように呼びます。おそらくもっとも持ちやすいホールドですので、強傾斜でも優しい課題が作りたい時などに重宝します。
保持部の厚みの項で「ホールドの厚みがあるとスローパーに感じる」と書きましたが、ハンドルも保持部の直径が大きくなると持ちづらく感じるようになります。
上の写真は弊社の商品です。どこでもガバのように持てると思いきや、ふくらみの部分は太くて持ちにくい為にくびれた部分を持つホールドです。ハンドルホールドに1アクセント入って非常に面白いホールドです。
こちらも弊社の商品で先に紹介したホールドのFRPバージョンですが、とんでもなく大きいサイズでして完全にスローパーの類になります。手で持つというより手や足を絡めて抱き着くように持った方が持ちやすいですが、距離が出しにくくなります。これもうまいこと課題を作れると楽しいのですが、安全な課題を作成するのが難しいのであんまりお勧めしません(⁉)
また、ハンドルジャグの中にも指が2本しか入らないような細いハンドルジャグもあります。指2本の場合はジャグというよりはポケットなので、初心者向け課題には使わない方がいいでしょう。あとスタックの危険もあるのでそれは次項で記載します。
安全と安心
スタックの危険について
触れるの忘れていたのでここで書いておきます。
壁とホールドの距離感が近く、しかも深い場合、足を滑らした際に指がスタックする可能性があります。
足を滑らして落ちた場合、手を深く入れているとすぐに指が抜けず痛い思いをすることがあります。ある程度実力があるとガバを持ったら足を滑らさないし滑らしても落ちないので問題ないのですが、初心者などではあり得ることですので、初心者向け課題を作るときは気を付けた方が良いでしょう。
ちなみにスタックしそうなジャグはアンダーやサイドで使う、強傾斜で使うなどすれば問題なく楽しく使えます。
終わりに
このあたりにしておきましょうか。4000文字超えましたし。
というわけで、ジャグについて脱線もしつつ書いてみました。
次はカチ…ピンチ…という流れかと思いきや、ガバを書いていたらガバを使った課題について書きたくなったので、次は「梯子課題の作り方」でも書こうかと思います。
忌み嫌われがちな梯子課題ですが、じゃあ適切な梯子課題を作るとなるとなかなか難しいです。ボルダリングは梯子課題に始まり梯子課題に終わるようなところもあるので、それなりの分量が書けるのではないかと思います。
こうご期待。
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