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夏休みのおすすめ本~ジャーナリスト村山祐介さんから世界の「今」を知ろう
昨年10月11日の国際ガールズ・デーにプラン・インターナショナルが開催したオンラインイベントにご登壇くださった、ジャーナリストの村山祐介さん。当日は、「ジャーナリスト村山祐介氏 取材報告『クロスボーダー』~国境を越え移動を強いられる女の子たちの声」と題し、自然災害や紛争、飢餓などにより国境を越えて移動する人々の姿を報告いただきました。
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そんな村山さんの最新取材レポート「移民・難民たちの新世界地図:ウクライナ発『地殻変動』一〇〇〇日の記録」が、この度新潮社より出版されました。
今回出版された書籍は、先のイベントでお話された内容を含む世界各地の難民・移民の「今」を、数えきれない現場の人々の声とともに描き出した圧巻の一冊となっています。ご自身が現地に赴き想像を絶する過酷な状況のなかで紡ぎ出した言葉は、圧倒的な説得力をもって心に染みわたります。
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イベントのために村山さんが提供くださった1枚の写真。これは、欧州を目指した密航船が漂流し、地中海の洋上で救助されようとする人たちの一瞬を切り取ったものです。この写真を最初に目にした時、穏やかな凪の洋上で救助を待つ人々の姿に安堵の念を抱いたものです。しかし、本の中には、ここに至るまでに救助する側、される側各々が抱いた葛藤と対立が克明に描かれています。
数百人規模の人々を収容可能な捜索救助船で救助に向かうスタッフは、事前訓練、そして洋上の荒波での激しい船酔いに耐え現場を目指します。一方で、母国から逃れ、なけなしの持ち金を支払って密航船に乗り命がけで移動する救助される側の人々は、出身国ごとに異なる複雑な事情を抱えており、強制送還などを恐れて救助されることを即座に受け入れられない場合もあることを知り、1枚の写真の背景にある壮大な物語に衝撃を受けました。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、新たに勃発した紛争や変化しながら続く紛争に加え、長期化した危機等により、避難を強いられ難民となっている人々は、2024年5月時点で1億2000万人に達したと発表しています。
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現場で入手した膨大な情報を冷静に捉える客観的な視点を常に忘れることなく、数字の束としてまとめられてしまっている、これら一人ひとりが歩んできた人生をあぶり出し、忠実に描き出すその筆力には、頭が下がります。
本書を読むと、世界はつながっていて、アフリカで起きている食料危機、ウクライナやガザで起きている紛争も他人事として無関心でいること事態が「危機」であることを実感します。アルゴリズムによって、自分が見たい情報が優先的に表示され、見たくない情報が遮断されるフィルターバブルにより、人々の視野が狭くなっていくのと並行して、社会の優しさや寛容性も失われてしまうのは残念です。
知って、関心を寄せ、共感することこそが、平和へ向けた歩みの第一歩なのではないかと強く思いました。
なかなかメディアには出てこない「世界の今」を捉え、ジャーナリスト魂の真髄に触れることができるこの貴重な一冊を、夏休みを利用して読んでみませんか。
国際NGOプラン・インターナショナル
平田 泉
※書籍の出版を記念して、2024年7月31日19:00~20:30 にアカデミーヒルズにて講演されるそうです。
World Report 第8回 ウクライナ発 by 村山祐介
移民・難民たちの新世界地図:ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録