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調整できるのはこちら側

『で、作戦なんだけど・・・』
「そうそう。作戦、どうする?!」

箱の外に出た主人を乗せて洋菓子店へ向かう道中。話始めは外にいる私からでは見えていない”主人の様子”を軽く聞きながら、こちらが想像・想定していたアタマの中を修正していった。

「こういう向きの動きは全然平気だけど、向きだよね。向きによっては痛かったりする…」

実際の動きを見せてくれて確認し、相変わらず調子の良さそうな表情で話す主人の、諸々の状態を頭に入れていった。

以前とはニコルの状態も変化している事。その事を中心に考えた作戦で、私がいつも通りに家に入り、荷物などを片付けてからワン達をケージから出す―――、興奮が収まってからのご対面じゃないと、みんながワチャワチャの状態に今のニコルが入って行くとすっ飛ばされたり転んでしまう、それを避けたいという話をした。

『あの子たちはママが帰ってきたとしか思わないだろうから。リビングの扉は閉めておくからパパはそこで待っててもらって、何気なく扉を開けてご対面、匂いで分かっちゃったらしょうがないね(笑)』

買い物した荷物を冷蔵庫に仕舞い、ワン達をいつも通りにケージから出した。ワン達の様子を見てリビングの扉を開けようと思っていたけど、、やはりすごい。以前のように扉の隙間にスンスンとミルクを筆頭に張り付いて向こうの匂いを嗅いでいる

⦅バ、バレてる(^-^;⦆

分かってしまっているならしょうがない、ニコルを抱えて扉の解放~、みんなとズラしてニコルもパパのところへ向かった。

こちらから見るその光景が。特にイメージしてきたものはないのだけど、「この瞬間」はワン達は本当に喜ぶだろうな…と思って来たからしっかり眺めてた。同時に、主人は感動して泣くんじゃないかと、ちょっと思ってたものだからしみじみ見てた。

パパにたかる様に集まっているワン達の姿に、もっと興奮するワン達の姿を、どこか想像していたような気がする、「みんな嬉しそうだけど結構落ち着いているもんなんだな…」と、尻尾プリプリの白い背中たちを見て笑ってた。

それを1人で相手にしている主人の嬉しそうな様子を見て、涙が滲んだのは、私だった。

『ワン達と久々に会って、あなたが感動して泣くんじゃないかと思ってたんだけど、私が涙出てきちゃったよ(笑)』

感動のこの瞬間を見ていた、私が一番嬉しかった。

・・・ ・・・ ・・・

洋菓子店でケーキを中心に買い物をし、昼を決めていなかった為、スーパーに寄った。私はこの時点でワン達の散歩もしていない事もあり、お腹が空いていなくて、残っているシチューをグラタンにする為にマカロニだけ買った。

「インスタントでも何でも、ラーメンが食べたい」

毎日かなり”頑張って”食事をしてきたという主人。日常の第一番目の食事に選んだのはラーメンだった。そして主人の馴染みのカップ麺をカゴに入れたのを見て、「好きなものってそうそう変わんないよね(笑)」と笑った。

『すごい久しぶりだし、目移りするくらい嬉しいだろうに…、あんまり嬉しそうな表情が出ないねぇ…?』

「え…?外からはそう見えるのかもしれないけど、”こん中”はキラキラしてるよ(笑)」

そういう事らしい(笑)子供ではないから口数が多くなるとか、動きが早くなるなどの見える動作に変化は全くないけども、主人の”内側”ではすっごく嬉しいんだ、という事は教えてくれた。

行院から買い物への道中も、自宅へ向かう道でも。ずっとどちらかが話していた。互いの環境、状況・状態を相手に知らせるために。主人は、「まぁ、家での俺の様子を見てみてよ」と言い、また私は、「私は私の調子でやっちゃうかもしれないから、状態はちゃんと言ってね」と伝えていた。買い物時も歩くペースなど、見るとなしにそこから感じるものを、「現在の主人の動き」として捉えていた。

「たくさん歩いてください、でもいきなりやっちゃダメですよ…」

そんな事も言われたと言う。素人の立場だと、やれと言われれば「やる事が良い」と極端へはしるのは目に見えている事だから言ってもらえてよかった。

病院内でのリハビリでは、筋力・体力の向上を目的としたトレーニングだったようで、トレーニングとしての「歩く」という事はあまりなかった様子。

「筋肉は、あぁゆう筋トレで鍛えることができるけど、骨は振動を与えることで鍛えられるんだって。だから歩いて地面からの刺激を受けてそれが骨を鍛えることになるんだって…」

”骨を鍛える”なんて、素人はあまり考えもしない事。それは非常にためになる話だった。

主人の話の内容、買い物時の歩き方などから私の中では決めていた。ワン達の散歩を一緒に行く予定だったけども、私が一人で行った方が良い…と。


本人の思いはとても元気がある状態だけど、やはり初日という事もあるのと、歩く感じはどうしても今までとは違うという事を、私は感じざるを得なかった。本人は言葉には出さなかったけども、多少の疲れもある様に感じた。

夕方。横になっている主人のそばで、興奮もやっと落ち着き静かに眠るワン達の姿に、良かった…とホッとしたのはやっぱり私だった。

あっという間にまたひと月が終わっていくように思う。

・・・

『久々で目が食べたくて仕方ないかもしれないけど…、あれだけ病院で”良い生活”してたから、一気に食べると下痢するよ(きっとあなたなら)(笑)』

「そう、それはオレもそう思った(笑)」

ケーキ屋に入る時、今まであれだけ(?)節制した食事になっていたものが、急に脂肪分の高いものばかり食べたら下すだろうな…そう思って会話していた。

「毎日頑張って毎食食べてきたんだけど。今朝の最後の食事は何となく期待してたんだけど…、最後はトドメみたいな最悪の食事で、最後の日に”全部食べた”っていう記入ができなかったよ( ;∀;)」

今まで何度か飲み込んできたけど、それほど我慢できない量だったらしい。

「同じ部屋の人が、前に退院した人が、“一生分のいんげんを食べた”って言っていたらしいよ」

どれだけ多かったのか(笑)話を聞いていて大笑いしてしまった。

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☆うみのみか☆
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