日本文学史 近代・現代編1
"本書は、逍遥が願ったこの『西からの夜明け』が、いかに実現されていったかを述べたものである。"2011年に文庫化された本書は、日本文学研究の第一人者と評された著者が日本への深い愛情と客観的な視点でバランスよく描いた日本文学通史『近代・現代編』シリーズの始まりの一冊。
個人的には、理解力が低く【他の人と一緒に学べない】事もあり、必然的に多くを独学に頼らざるを得ない私にとって【自分だけの教科書選びはとても重要】なわけですが。そんな中、近代日本文学史を学ぶ補助線としては本書が私には適切と思って手にとりました。
さて、そんな本書は、1984年から92年まで発表された『日本文学史 近代・現代編1〜8』を参照にしたもので、序文にて【大まかな流れを説明した上で】第1巻の本書では、文明開化、いわゆる明治時代の近代化において西洋文化が受容される中での【文学や小説の混乱と変化】新しい概念としての【『恋愛や『個』の発見と定着】などを坪内逍遥と二葉亭四迷、紅露時代、樋口一様に泉鏡花といった作家を具体的に紹介しつつ、紹介しているわけですが。読み物として、まずとても面白い。
そして、特筆すべきは著者の博学はもちろん、国際人としての【客観性、視野の広さ】で。往々にして研究分野の熱烈ファン的研究者の書いた本だと【細かすぎたり、作品に敬意を払いすぎたりといった偏り】が気になってしまったり、読後に不明瞭さを残すことがあるのですが。本書では全くそういった部分がなく【洗練された文章、歯切れの良い論調】がひたすらに気持ちよく、かつ、わかりやすかった。
日本文学史を学ぶ人はもちろん、文豪たちや作品の魅力を俯瞰的に知りたい方にもオススメ。