私は本屋が好きでした あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏
"ヘイト本についてすらなにも考えないということは、ほかの本についてもなにも考えないということです。魅力のない本屋です。売れている本は並んでいるけれども、つまらない本屋です。つまらない本屋は滅びます。"2019年発刊の本書は、ヘイト本を巡る出版や本屋の舞台裏を明らかにした【これからを考える】為の一冊。
個人的には、本好きの間では著名なベテラン"本屋好き"ライターである著者が【どういった想いでタイトル及び本書を書いたのか?】に関心があって本書を手にとったのですが。愛情の裏返しとはわかっているものの『出版業界はアイヒマンなのか』など、なかなか手厳しくて驚かされました。
そんな本書は、ヴィレッジヴァンガード創業者の"本屋という仕事は、ただそこにあるだけで、まわりの社会に影響を与えることができるものだ"を胸に本屋の取材を30年余り続けてきた著者が、2015年から丸4年かけて【不愉快な気持ちを抑えながら】町の本屋、チェーン書店、出版取次、出版社、編集者、ライターとインタビューを重ねて【ヘイト本が本屋に並ぶ事情】を明らかにしながら、それぞれについて著者なりの提言を行っているのですが。自身【ちょっと特殊な形で本を扱う1人】として、やっぱりか。と【目新しさこそなかったものの再確認させられる】読後感でした。
また、そういった出版裏事情とは別に『ヘイト本の読者はネット右翼ではない』『本屋大賞は(良書ではなく)すでに売れている本を、もっと売るための賞』および、そもそも本屋大賞自体『2〜4%の店舗、書店員が選んでいて"すべての書店員"が選んだわけではない』など。2重3重の【一般の人が誤解する本や本に対するカラクリや幻想】について、あらためて容赦なく指摘していて、著者の抱く危機感の深さを感じさせられました。
出版や本屋の現状や裏事情を知りたい誰かへ。また、最近【街の本屋がつまらない】と内心ため息をついている本好き、本屋好きな人にもオススメ。