停電の夜に
"どういう具合か、はっきり言ったわけではないが、決まりごとのようになった。双方から打ち明け話をするのだ。"デビュー作の本書でピュリツアー賞を受賞した著者が端麗な文体で描き出す表題作を含む9編のインド系移民の物語は移民政策を実質的に解禁した今年。あらためて読んでみたい。
個人的には、前述の移民政策解禁はもちろん、大阪を襲った大型台風による停電で、ロウソクで過ごさざるを得なかった夜に本書の存在を思い出し再読したのですが。久しぶりに読んで浮かんだのは【(文章が)うまい】【(著者が)やっぱりきれい】という何とも語彙に乏しくて申し訳なくなる言葉でした。
さておき、日本版表題作である【停電の夜に】より【病気の通訳】【三度目で最後の大陸】の方が、今回の再読では、より私的には好みだと感じましたが。平易な、されど選びぬかれた言葉による表現は本当に素晴らしいですね。あらためて著者の才能の豊かさに感心しました。
洗練された短編好きな誰かに、また移民側の視点からの物語に感心がある誰かにオススメ。