「仕事を変える」というより「カスタマーを変える」という考え方
日本で営業職に就いていたとき、1週間程前にまずは電話かメールで連絡して、訪問理由を伝えて、日にちと時間を指定してアポイントメントを取って、カレンダーのスケジュールを埋めて、1日中、車で周っていた。昼食は車の中で。それも次の訪問先の資料を読みながら。
いつの間にか、「スケジュールを埋める」ことが目的と化していたのかもしれないと、今になって思うけれど、その時はそれが私の日常だった。
そして、そんな事前スケジュール調整、前日に再度訪問の電話連絡など、「必死な努力」をしながら、当日は車を運転させて約束の5分前に到着するように時間調整。少し早く着いてしまったときは、車内で時間をつぶす。スーツを整える。
「〇時に〇〇様とお会いする約束を・・・」
「あぁ、畑へ出てるよ」
「おたく、どなた?」
「あぁ、時間無いから、資料だけ置いてって」
「必死な努力」をした自分に、こんな言葉が飛び交うこともあった。当時、私は目の前で起こっている出来事に対して、茫然としていた。
「え?事前に連絡したのに。約束したのに。」
次の訪問先へ訪れる際、遠いと車で40分程離れているところもあったので、電話で訪問時間を伝えると、
「あぁ、忘れてたわ。忙しいから、また次にして!」
もう、次なんて無いんだから。と、空いた時間を埋めるべく、どこか近くで新規訪問できる場所は無いかと探す。
日本の田舎を周ることも多かった。何よりも村社会。下手に出ると、一気に噂が広がり、何もできない。もしくは、村長やリーダー格の人々主催の飲み会に参加し、人間関係を構築する。(でも、ずいぶん後になって気づくけれど、ただひたすら飲む「飲み会」で得られる人間関係なんて、私には必要無かった。飲んで酔ったときにしか出ないコミュニケーション力なんて、弱いものだ。)
「君が誰かは知らんが、あの人が言っているんなら時間つくるわ」
「え、あなたが弊社の担当者?」
と、典型的なトップダウン組織、男性社会の構図を見ているかのような、狭い、くだらない、偏見に満ちた社会。
あ。「くらだらない」と言ってしまったけれど、くだらないのは、社会じゃなくて、そういう人々を相手にしていた自分なのかもしれない。
もちろん、この件は、私の仕事の経験のごく一部にしか過ぎない。「会社」という組織の枠組みを超えて、お互いの「夢」や「目指したい社会像」、「ビジョン」がとてつもなくマッチして、今でも頻繁に連絡している人々がいる。そういう人々とは、またどこかで一緒にプロジェクトに関わるかもしれないし、同じ会社に勤めるかもしれないし、まだ存在しない仕事を創り出せるかもしれない。
それは特に、今、このベトナムでも地域のお店やホテル、観光地、レストラン等を周り、自己紹介から始まる瞬間から思う。そして、昔の出会いが今に繋がっている。
「カスタマーを変える」というのは、つまるところ、自分の周りのコミュニティを自分が自分らしく生きられるものに調整していくこと。そのとき、仕事自体を変えたいと思うのであれば、それはそれで私はその人を応援したいと思うけれど、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就く」※と言われていたくらい、好きなことで生きていけるだけのプラットフォームは充実しているのだから、あとは「誰に対して」のサービスとか「誰と一緒に」働くのか、というWHO?にもっと愚直に向き合ってよいと思う。
「今は存在していない職業に就く」というのは、どれだけ楽しいことだろう。私は、むしろ今存在していない仕事を創り出せる人になりたい。
案外、あらゆる情報で、不安になったり焦ったりしているのは大人で、子供たちは大人たちが焦っている間に世界中からいろいろ学んで、自分の生活に活用して、柔軟に対応していっている気がする。
めっちゃ事前調整して、「約束」して、スケジュール埋めて、「努力」しても、合わない相手は、合わないんだと思う。「努力の方向性」を見誤ると、悲惨だ。当然、会社は存続の為に利益を追求しなければならなくて、「私、この人と合わないからパートナー企業にしたくないです」とか言わないけれど、完全に「そんなこと」で悩んでいる時間は無かった。合わないなら、合わない。次。幸い自分の所属する会社は、利益追求以前に「社会の在り方」「世界が目指していく方向性」を強くビジョンとして語っていた。
時代錯誤、環境、社名、政治、国いろいろ理不尽なことや文句を言いたくなるとき、自分の努力不足だと後悔するとき、うまく結果が残せないとき、世界は残酷だと思うときもあるかもしれないけれど、「誰のために働いているのか」や「解決したい社会課題」「自分の信念」がはっきりすると、「カスタマーを変える」という行動も、能動的に行えるようになるはず。
「あぁ、忘れてたわ。忙しいから、また次にして!」
そういわれたとき、
「あぁ、私からは連絡しませんが、もし必要があればご連絡ください」
・・・とまでは言わないかもしれないけれど、強かに、それでいて冷静に、自分のコミュニティから離していく。ちっちゃな人間関係で悩んでいる時間は無いほど、世界はとてもはやいスピードで動いている。私は、そのスピード感を共有できる人々のために、そういう人々と一緒に働きたいし、生きていたい。
※米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が、2011年8月のニューヨークタイムズ紙インタビューで語った言葉
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