ベトナム・カントー　この地域の魅力を「体感」できる形に

国際協力キャリアガイドに、国際協力機構（JICA）が手掛ける事業の撮影のため、アフリカのジンバブエに降り立った男性の話が掲載されていた。

この記事は、私自身がベトナム・カントーの魅力を「体感」できる形にするため、具体的に今後どうしていくかを考えるきっかけにもなった。「コミュニティーベースドツーリズム」という概念を唱えることは簡単だけど、実際に現場にいると、地道な、骨の折れる作業の繰り返しであり、本当に毎日ちょっとずつ、という感じなのだ。

ジンバブエを含めた南部アフリカを訪れる観光客は世界全体から見てわずか2％で、世界有数の観光資源を十分に生かしきれていないのだという。これに対し、地域が持つ伝統や文化、維持してきた自然環境など、「いま、その社会にあるもの」を観光資源として見直し、それを生かした観光産業を振興することによって、収益を地域社会のさらなる発展に還元するというアプローチが「コミュニティー・ベースド・ツーリズム」だ。地域の収入向上を目的とし、自分たちが築き守ってきた土地や文化の再評価につなげるために、観光サービスの運営から資源の管理まで一貫して地元住民自身が担うことに特徴がある。

ジンバブエには、グレートジンバブエ遺跡や世界三大瀑布の一つヴィクトリアの滝など五つの世界遺産を擁するこの国は、観光産業を振興するにはうってつけの条件を備えているのだが、2000年以降の経済崩壊が影響して、それどころではなくなっていた。

経済の立て直しと貧困改善の起爆剤の一つとして、この国に眠る豊富な観光資源を生かし活性化したいと考える同国観光省に対し、日本も支援を行う。技術協力プロジェクトによる人材育成や、観光・プロモーションに関する事前調査を元に、全国の観光地からパイロットサイトを選定し、各サイトにおける試験的な観光プログラムの展開などがその内容だ。国レベルでのマスタープランを策定するのが最終目標である。観光省やパイロットサイトではJICAから派遣された専門家がプログラムの考案や実施のアドバイスを行っている。

市内のガイドが案内するプログラムに参加した著者。

ガイド役の青年は一つ一つ丁寧に説明し、ブラワヨの今日までの歩みを一通り学ぶことができた。これだけしっかりと説明するには、かなりの準備が必要だったろう。

案内付きの市内見学は、観光分野で特に個性的な取り組みではない。それでも、案内や解説のおかげで既存の歴史的建築物の観光資源としての価値が高まるのは間違いない。この町の観光がジンバブエのモデルケースとしてさらなる発展を遂げれば、地域収入と雇用促進につながるのは間違いない。そのためには、官産学の連携と、ブラワヨの街を挙げた取り組みがこれまで以上に重要になってくるのではないだろうか。

テンゲネンデでは、首都ハラレから車で北に２時間ほどの場所にある。彫刻アーティスト・コミュニティーがあり、大勢の農民がここで彫刻を学び、農作業の合間に作った作品を販売することで現金収入を得ているのだそう。村にはインフォメーションセンター、食堂、宿泊可能なコテージなど、観光に必要な施設が整っており、地域の文化を体験するCBTの振興に向けて機能しているようだ。

私は、観光の醍醐味は単に遊覧するだけでなく、その土地に暮らす人間と触れ合うことにあると考えている。残された課題は少なくないとは思うが、地域の豊かな観光資源とそこに住む人々の行動が融合した２つのプロジェクトを見学して、ジンバブエ観光産業の未来に明るい希望を感じた。

例として、地元の主婦たちが作ってくれた素朴な伝統料理を、彼女たちの住まいの前で一緒に食べたランチが最も印象的だったという。自分自身も、この路面店や家庭の味、そして人々と過ごす時間の価値は偉大だと思う。

観光ガイドの育成は、このカントーの街にも大事だと考えている。なんせ、これだけ宿泊施設や観光地、飲食施設、インフォメーションセンター等が発達しているエリアだ。あとは、いかに訪問者を回遊させるかなのだ。そして、しかるべきものに対価を支払って頂くこと。まずは欧米人が参加する英語のツアーに参加したい。彼らの需要、動向、懸念、アンケートが取りたい。そして、「体感」してもらうための導線デザインが急務だ。