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「ベトナム・ナウ 安全と笑顔の国」国内観光需要回復への道と防疫対策

2020年5月27日現在、新型コロナウイルスの感染による死亡者を0人に抑え、※米国の政治専門誌の新型コロナ対策ランキング調査で世界一、観光業の「復活」に向けた動きが活発になっているベトナムの現状とこの数か月の主な防疫対策をまとめた。

ベトナムの今

5月27日現在、ベトナム国内における新型コロナウイルスの感染者数は326人、死者0名(参考:台湾の感染者数は441名、死者7名、タイの感染者数は3045名、死者57名)。もともと、SARSや鳥インフルエンザ、そして、新型コロナが発生する以前からデング熱への防疫対策の経験もあり、全ての対策が的確で迅速であった。ITを駆使する台湾や韓国とはまた異なり、「今、必要な対策」に集中し、時にはオンライン会議すら優先順位をつけ、必要のないものはやらないことを決断。同時に、感染を抑制するとすぐにグエン・スアン・フック首相は観光復興、経済回復策を討議するビデオ会議を開催し、ベトナム各省の政府機関関係者、行政機関、民間企業等からの意見を踏まえたベトナム観光の方向性として「安心安全な旅行先」を示した。

4月中旬以降、制限措置の緩和が進み、幼稚園や学校が再開、4月23日、宿泊業を含めた観光関連企業の営業が再開、交通省による旅客航空便(Vietnam Airline、Vietjet、Bamboo Airline)や列車本数の増便(乗客数制限あり)と割引セールが実施され、国が管理する博物館や観光地などの入場料を割引(省により異なる:カントー市では、もともと博物館や歴史資料館の入場料は無料)、観光業に対する付加価値税(VAT)を10%から5%に、法人税を22%から15%に引き下げ等が実施されている。観光局では、グループ旅行への割引セールも行い、出張需要の強化や観光業の「デジタル化」促進の為のスマート・ツーリズム・センターの設立も行う。今後、国内とアジア諸国、とりわけ訪越旅行者数の多い中国、韓国、日本などに向けて「Vietnam NOW – Safety and Smiling(ベトナム・ナウー安全と笑顔の国)」という優待セール、キャンペーンを行う。文化スポーツ観光局では、同僚たちがバドミントンの試合を予定しており、大人数の会議の光景が当たり前になった。

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ベトナム観光総局(VNAT:Viet Nam National Administration of Tourism)は、もし5月中に国内の新型コロナウイルスの感染を完全に抑えられたら、国内観光需要は年内に回復すると予測している。VNATは同時に、ベトナム観光業界が今回の新型コロナで受ける被害は約8,250億円になるとしており、政府機関では観光業者へ向けた12か月から18か月の救済パッケージが急務だとしている。

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世界遺産のハロン湾は、約77億円の被害額。

旅行会社(特に主要なSaigontourist, Hanoitourist, Vietravel)では、オペレーションの変更や中国や韓国といった特定の国々の観光需要に頼り過ぎないインバウンド需要の再構築も検討されている。NHKのインタビューでフック首相は「感染を抑え込むことが、海外の投資家や観光客がベトナムに来る前提になる」と述べていた。

https://vietnamnews.vn/economy/715863/ministry-prepares-plans-on-recovery-of-tourism-market.html

ベトナムの観光業

ベトナムの人口は約9600万人。観光業は国のGDPのうち6%を占めている。観光局によると、2019年にベトナムを訪れた外国人旅行者は1800万人を超え、2018年から16.2%増加。その内の30%以上を中国人が占める。

ちなみに、日本の観光庁によると訪越日本人数は95万人、訪日ベトナム人数は50万人であり、2019年の訪日ベトナム人は、対前年27%の増加で、訪日市場上位20市場の中で成長率が第1位という結果。

ILO(世界労働機関)のレポートによると、今回のコロナウイルスの影響で、2020年の第2四半期までに少なくとも1000万人が仕事を失うか減給に直面するとの予測。ホーチミン市観光局は、第1四半期でホーチミン市内の宿泊施設で働く従業員約2万8000人のうち、1万9587人が無給休暇、830人が離職を余儀なくされたと伝えていた。(全体の70%以上)またIMF(国際観光基金)によると2020年度のベトナムのGDPは+2.7%(2019年は約7%)と予測されている。

ベトナムの2020年1月から5月までの数か月間の道のり

1月11日:コロナ感染者、中国の武漢で確認
1月23日から29日:ベトナムのテト旧暦正月休暇
1月22日:ベトナム初の感染者
→COVID-19の予防と制御に関する全国運営委員会設立

2月1日:全ての中国、台湾、香港の国際線停止、中国との国境封鎖
2月3日から2月14日:観光局より自宅待機指示される
(私がテト休暇中に国際空港を利用していた為)
※国内感染者数16名
2月13日:ベトナム北部ビンスエン郡ソンロイ村「集団感染」(11名)地区を20日間封鎖。現金支給、村内で移動販売店を稼働。
2月15日:カントー市国際空港にて来訪者にマスクと防疫ガイダンス無料配布
2月16日:観光局で消毒液とマスクの無料配布
2月21日:カントー市保健局・観光局合同の「カントー市の防疫対策と安全」宣言 フランス語、英語、日本語、ドイツ語などに翻訳して観光局ウェブサイト、SNS共有
3月1日:公式マラソン大会がすべてキャンセル&延期になり、代わりに非公式駅伝大会を8グループのみで開催
※国内感染者数16名(この頃、韓国での感染者数が3736名、死者18名に達しており、コロナ=韓国のイメージがベトナム国内にあったように感じる)
3月7日:3月8日「国際女性の日」を記念した、Vietravel市内無料観光ツアー
3月13日:ベトナム保健省「アパートでのCOVID-19感染予防と制御に関する17のガイドライン」を公表(詳細は本記事最後に掲載)
3月13日から15日:カントー市観光局と人民委員会、Vietnam Jungle Marathon主催者と共に新たなトレランコース企画の為、アンザン省視察
※国内感染者数53名
(新たな感染者数0が数日続いた後、「コロナ撲滅」を宣言する直前に、西欧人の新たな感染が発覚し、主に都市部での差別やバス乗車拒否等の話をちらほら聞くようになった)
3月18日:午前0時より、ベトナムに入国する者に対するビザ発給を停止
3月18日:政府「外国人観光客の差別に対する処罰」文化スポーツ観光省に、保健当局の指示に沿って地域を指揮するように割り当て、外国人観光客の安全を保持する措置を実施
3月21日:交通運輸省よりベトナム各省を越える際の医療電子申告を実施(通知当日の12時から適応)。オンライン申告可能だった為、フォーム入力、QRコード出力(→これは結局どこかでチェックされるということは無かった)
3月21日:午前0時から、ベトナムに入国するすべての国、地域の者に対して、集団隔離実施
3月21日:午後12時から、日本に対するビザ免除措置が停止
3月22日:全ての外国人へのビザ発給を停止し、海外からの入国制限措置(外国人の入国禁止)
(この1週間でベトナム発の国際線航空便の本数が毎日減っていく:私自身は予約済みのベトナム航空が飛ばなくなり、JALへ航空便変更(ベトナム航空は3月23日から日本便を停止、また3月25日から全ての国際線の運行を停止))
3月末:全ての国際線停止
4月1日から4月19日:国全土のロックダウン(宿泊施設の新規宿泊者受付停止)※国内感染者数212名
4月9日:ベトナム政府、米国や欧州の国々にマスク、保護服など送付
4月20日から4月26日:地域別に段階的ロックダウン解除
4月23日:宿泊業を含めた観光関連企業、お店の営業が徐々に再開
4月29日:ASEAN観光連携オンライン会議
4月30日から5月3日:ベトナム国内の連休
5月10日:ベトナム文化スポーツ観光省の観光復興プログラム「ベトナム人によるベトナム観光」(“Người Việt Nam đi du lịch Việt Nam” )全国一斉割引セール
5月10日:首相及びベトナム全国経営陣による「経済回復施策」オンライン会議(Youtubeでもライブ中継)

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5月17日:カントー市にてベトナム観光協会主催「観光復興プログラム」式典開催

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ベトナムの防疫対策の成果がようやく世界で報道されるようになったのは5月だが、1月末の時点から政府機関の瞬時の対応は、驚異的なものだった。(時として、それは国民一人一人の迅速な対応と寛容さが求められるものだが)この解放された社会主義国の政府に対する国民の信頼も非常に高い。

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YouGovの調査によると、実にベトナム国民の97%以上が政府の防疫対策を信頼、評価している。「外国人」として、その場に居合わせたときに感じたベトナム政府や各省庁の取り組みで、心に残っているものをまとめた。キーワードは「デザインの力」「迅速かつ徹底的な対応」「マイノリティーに対する配慮」。


・「デザイン」の力を駆使した情報提供と公衆衛生メッセージ

“to stay at home is to love your country” もともとベトナム国民にとって、プロパガンダ・スタイルは身近にあり、愛国精神を高めるのに重要な役割を担っている。3月29日、保健省と切手会社が連携して切手を制作し国民への周知に使用。

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デザイナー:「医療従事者のように最前線に立てなくても、全てのアーティストは絵を通して情報やメッセージを伝えることはできる」。

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「感染が広がらないように、社会全体を隔離するという命令を厳守してください。家族全員の平和を願い、毎日家でヨガを練習し、よく食べ、定期的に水を飲み、前向きに考えて。」

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ソーシャル・ディスタンスを保ったフード・デリバリー。この写真がSNSで拡散されていた。コミカルでクリエイティブ。

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「病気を予防するための対策を徹底的に実施する為に、カントー市の祭典、観光、スポーツ活動を一時(3月28日から4月15日)停止します」

これは、観光局の局長がFacebookに投稿していたメッセージ。局長の子供たちが「ベトナム人として誇りです」というメッセージを持ちながら。

・迅速で徹底的な追跡と隔離措置
2月1日に全ての中国、台湾、香港の国際線停止、中国との国境封鎖を行い、2月13日に北部ビンスエン郡ソンロイ村「集団感染」(11名)地区を20日間封鎖を決めた。3月4日から市内の各ルートに人員を配置して、不要不急の外出を取り締まり、実際に罰金が科された例も。TVでもマスクをせずにハノイのホアンキエム湖周辺をバイク運転していた人々が警察により止められている様子が放送されていた。3月13日にはベトナム保健省が「アパートでのCOVID-19感染予防と制御に関する17のガイドライン」を公表。ハノイのマンションで1名感染者が出た際は、そのマンションに住む住民全員が強制隔離。ベトナム入国後、すぐにミニバンで隔離地域へ送られ、徹底的な14日間の隔離。3月31日「『コロナ拡大防止対策に集中する為に』政府と地方とのオンライン会議の開催を停止する」と。的確な場所にリソースを投入すること、社会保障を保つために主観的にならないようにすることと資源のバランスを保つよう首相が各都市、省に求めた。初期の頃から、「この感染は誰にでも起こりえることだ」と通告、周知に努めた。陸路の省を越える移動の際も、医療申告を必要とし、国内航空便やバスの乗車率の制限を50%以下にした。また、フェイク・ニュースをオンライン上で書きこんだ人々を追跡し、処罰を与えた。(最大1500万ドン(約7万5000円))

・マイノリティーに対する配慮
前途の観光客への差別に対する罰金制度の実施や、子供たちにわかりやすい情報提供を行っていたこと、お米無料ATMの設置、「安心安全」を伝える寛容な心がとても印象的だった。私自身は、街中や店頭での「差別」を感じたことは一切なく、いつも通りの日常を過ごしていた。(ハノイやホーチミンなどの大都市ではまた状況は少し異なっていたのかもしれない)

ベトナム保健省傘下の労働環境衛生研究所が制作した「ghen cô vy」というコロナウイルス対策の歌。2017年にリリースされた人気曲「嫉妬(Ghen)」の替え歌で、テンポの良い曲に公衆衛生メッセージが含まれた内容。ベトナム全土にわたってみんなカバー曲や振り付けをつけて踊るというクリエイティブな側面が見られた。(その後、英・日・中・韓国語などにも訳され、世界中に広まる)この時期、子供たちもみんな踊っていて、手洗いやマスクの着用をこの歌から楽しく学んでいた。先生が一方的にコロナの危険性を教える授業よりも、なんて創造的でポジティブにメッセージを送れる手法なのだろうか。

ベトナム全土に渡って感じるのは、何よりも「家族」がコミュニティーの最上級としていつも身近にあり、ある意味「監視社会」がうまく働いた結果ともいえるのかもしれない。

※米国の政治専門誌の新型コロナ対策ランキング調査で世界一

・3月13日に公表された、アパートでのCOVID-19感染予防と制御に関する17のガイドライン

(1)家に帰ったら,すぐに石鹸ときれいな水で手をよく洗う。
(2)袖,タオル,ハンカチ,ティッシュで咳やくしゃみをするときは,鼻と口を覆う。 使用後はタオルを洗うか,すぐにティッシュをゴミ箱に入れる。ごみは所定の場所で処分する。
(3)手で目,鼻,口に触らない。唾を無差別に吐き出さない。
(4)塩水又はうがい薬で良くうがいする。
(5)体を暖かく保ち,運動習慣をつけ,熱を通したものを飲食し,栄養のバランスを確保する。
(6)仕事,外出,人混みからの帰宅後,すぐに着替えてその衣類を洗濯する。
(7)エレベーターや階段を使用する場合,それぞれの表面との直接接触及び人々との会話を制限することを推奨。
(8)人混みへ行くのを制限し,人混みの中ではマスクを着用する。
(9)咳,発熱,息切れの症状がある人との接触を制限する。接触する場合は,2メートル以上の距離を保ち,マスクを着用する。
(10)通常の洗浄液で毎日自宅の環境を掃除する。 特にドアノブ,階段の手すり,スイッチなどを定期的に消毒する。
(11)家の換気を行う。ドアや窓を定期的に開ける。エアコンの使用を制限する。
(12)ゴミを毎日収集し,指定された場所に処分する。
(13)自己健康管理及び毎日の体温測定を行う。 発熱,咳,のどの痛み,息切れの兆候が見られる場合は,マスクを着用し,人との接触を制限する。 ホットラインへ電話し,アドバイスを受けて,検査と治療のために最寄りの医療施設を受診する。
(14)健康管理又は隔離の必要がある疑い事例があれば,直ちにアパート管理者に通知する。
(15)保健省の公式ウェブサイト(https://ncov.moh.gov.vn,https://suckhoedoisong.vn),地元の保健当局のCOVID-19感染流行に関する情報を常に更新する。感染症の状況についての不正な情報を宣伝しない。
(16)地元の保健機関,マンション,アパートにおけるCOVID-19感染予防と制御に関する規制を厳守する。
(17)感染症例,疑わしい症例,自宅での隔離の事例がある場合は,マンション,アパートの管理者の指示に従う

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mami@Chennai
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