爽快で、色彩豊かで、伝統と誇りが渦巻く【映画:サイゴン・クチュール】
20代になった頃に初めてベトナムに訪れ、今を生きている同世代の人々に魅了され、特に女性の強かさに感嘆した。でも、日本に戻ると圧倒的多数の人々のベトナムの印象は「ベトナム戦争」で止まっているのに気がついた。
この国は、日本にいたら追いつけないスピードで、変化し続けている。
「爽快で、色彩豊かで、伝統と誇りが渦巻く」そんなベトナムは、日本人の私にとっての多彩な「最新」に包まれていて、それ以来、ずっと独創的なセンスに魅了され続けている。
今回の映画は、1969年のサイゴンを舞台とする。主人公は、ベトナムの伝統衣装"アオザイ"の仕立て屋の娘ニュイ。
でも彼女は、アオザイが大嫌いだった。
ふとしたことがきっかけで、1969年から2017年にタイムスリップしたニュイが、「自分」に出会い、アオザイに対する感情が変わっていく様子が描かれている。
「伝統のアオザイを守りたい」というグエン・ケイ監督。彼女は、ゴ・タイン・バン主演のアクション映画『ハイ・フォン』でも活躍された。性別でどうこうというわけじゃないけれど、男性の作り手がどうしても戦闘ものやビジネスを考えがちなクリエイティブな映画の分野で、女性の感性は、こうも斬新でポップで、それでいて心に響くのか、と、改めてベトナムの女性の力を感じたものでもある。
監督いわく、「母親との確執を盛り込んだのは、現代社会でみんなが悩んでいることだと思ったから」とのこと。こういった娘と母親の関係も、女性ならではの視点だと思った。
他の方が、以下のようにコメントで書いていた。
世界が今もベトナム戦争を引きずっているのを尻目に、ベトナムは既にそんなもの意識の端にも上らないような映画をヒットさせているのが、いっそ爽快です。
そうなんだよね。ベトナムは、今を生きているんだよ。
コロニアル建築、フランス植民地のデザインへの影響、熱帯気候のベトナム、トロピカルカラー。見終わったあとに、とても爽快な気分にさせてくれるのは、やはり現代のベトナム映画ならでは!