How are you today?
「情報に流されずに自分の正しさに忠実であることって、すごく難しい」
「やっぱり、本質的に正しいと思えることを自分で判断して行動できる人が少なくなっている」
そういう、自分で判断する能力:人間性が社会から失われていると危惧するからこそ、企業のビジョンにも「人間性の回復」を掲げているsnowpeak代表の山井氏。実際に本社に訪れて以来、自分にとっての「人間性の回復」ってなんだろうと考えていた。
環境がとても大事だからこそ、その環境の選択肢をどんどん与えなければななくて、きっとそれがこの社会に生まれ育った大人たちの責任だとも考えていて、極論、今、国際政治や国際協力に関わっていても、一番守らなければならないのは、子どもたちの笑顔だと思っている。そう思ったら、私の中での「(大人たちの)人間性の回復」の理由付けができて、納得ができた。
「みんなと同じ」を良しとする教育制度、規律、規則は、とにかく窮屈だった。海外に逃げた私は、まさに英語に助けられたし、だからこそ言語を学ぶ必要があると思った。
今、そういう海外からの留学生と毎日連絡をとりあっていて思うことがある。
私自身は、身の回りのことで忙しくなると、連絡も疎かになる。オンラインでの連絡が増えたので、効率が良くなるかと思っていたら、より一層忙しいのはなぜだろう。かといって、何でも思いついたときに急に情報を共有することもある。
理不尽なことがあると、聞いてほしいあまり
「ちょっと聞いて!」
と会話を始めてしまう。
そういうときに、至って私の周りの友人達は、
”Hello Mami, How are you today?”
で、会話を始める。
私はきっと、この資本主義社会の効率性や生産性にすごく影響を受けていると思っていて(影響を受けているということを自覚するのも嫌だけれど)、なるべくどんどん会話を短く、端的にしようとしている自分がいて、それでも、友人達は本当に会ったときのように”How are you?”と会話を始めてくれる。それは、慌ただしい私の心に向かって"slow it down"と言ってくれているようにも聞こえた。
本当に小さなことかもしれない。
これが、人間性の回復というものに直接つながっているのかはわからない。でも、私にとっては、この毎日繰り返す会話の中に、少しの幸せが眠っている気がする。
「お世話になります」じゃなくて、「今日はお元気ですか」と始められる人間関係の中に、私の居場所がある気がする。
snowpeakの山井氏の会話の中にもあったように、自然への畏怖の感情は、今日、明日、何が起きるかわからない、全ては永遠には続かない、だからこそ今を大切にする、今日の相手の健康を気にかける、そんな心が宿っているのではないかなと思う。