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コロナ禍ベトナムからの帰国直後、空港で出会った63歳の日本人女性の話

「2021年の出会い」と題して、リクルートさんからのnote投稿キャンペーンがあることを知り、2021年に出会った様々な人々や物事を思い返していた。2021年は、世間の状況に反して、たぶん、人生の中で一番多くの「一期一会」を経験した年だった。

リクルートさんのブランドメッセージは「まだ、ここにない、出会い。」とあるが、まだ、ここにない、出会いというものは、いつどこでどんな場面で出会うのか、全くわからないものだなぁとつくづく思う。そして、そのたった一度の出会いで自分の世界は変わる。もしくは、自分の世界を見る目が変わる、といったほうが良いのかもしれない。

コロナ禍での、人の気配が全くない静まり返った国際空港での帰国直前のあの瞬間。機内での喪失感。もし、話しかけられなかったら、私の社会に対する違和感も、あの喪失感も、拭い去れないものになっていたのかもしれない。

ベトナムの賑やかなバイク音と人々の活気が戻った市内から国際空港に降り立った瞬間、この国の国境は本当に閉じてしまっているのだ、と痛感した。自分以外には、空港職員が数名。ほとんどの電気が切られ、使える空港トイレも限られ、出発ゲート付近で開いているお店が1店舗しかなく、途方に暮れながら、ただひたすら、本を読んでいた。

あの時、私は通常の荷物の準備以上に、数多くの書類準備やアプリのダウンロード、PCR検査など、以前の移動時と比べられない物事に疲労困憊しており、本を読むことで、あらゆる感情から逃れようとしていたと思う。

機内には、自分を含めて10名以下の乗客。自分の感情とは裏腹に、飛行は今までに無い程スムーズで、まるで空に自分だけが浮いているような、そんな感覚だった。

そして、着陸。静かだと思ったベトナムの空港以上に、日本の空港は閑散としていた。何よりも、人々の表情がとてつもなく暗かった。この雰囲気。何かに締め付けられるような気がした。

そんな空港で出会ったのが、63歳の日本人女性だった。

「いろいろ、大変よねー」

最初は、独り言なのか話し掛けられているのか、よくわからなかった。超絶ブルーになっていた私は、笑顔をつくることで精一杯で、それでもこの日本人の女性は、そんなこともお構いなしに、ベトナム人並みに神経が図太く、勇敢に話し掛けてきた。

「どこから?私はフロリダから日本に一時帰国して、隔離して、また大使館でビザ取得して、フロリダに戻るの」

移動距離の差に驚きながら、また女性の心の身軽さを尊敬しながら、私は何て返事をしようかと考えていたとき、それまたお構いなしに、女性は続けた。

・58歳で初めて海外に出たこと。オーストラリア・シドニーで仕事を始め、5年勤務した後、2020年12月娘に呼ばれてフロリダに移住。移住したとき、ESTAしか取得していなかった為、今回日本に一時帰国して2週間の隔離期間の後、大使館でビザ取得してから再度フロリダに戻り仕事を再開予定だということ。

・企業からは、日本国内線の予約手配もされていたが、当然ながら今の日本の水際対策では移動不可。そもそも空港のPCR検査やアプリ登録で所要時間3時間程かかり、予定していたフライト離陸。

・フロリダでは企業が用意している隔離ホテルがあり、隔離者専用の庭で運動しろと言われたこと。食事は部屋で、2週間、部屋と庭の行き来をしていたこと。英語はほとんど話せない為、企業から隔離期間の「英語学習レポート」の提出が毎日求められているらしく、Amazon Prime見まくって英語力向上を図る予定(笑)だということ。

・オーストラリアのキュランダ村で飲んだコーヒーが人生で一番美味しかった(笑)こと

・国際線のフライトはビジネスクラスだったのに、食事代の提供は少ないから隔離ホテルで自炊する予定だということ

・オーストラリアの人は「軽い」、フロリダの人は「もっと軽い」、日本の人は「重い」と思うということ(←たぶん、わかる人にはわかる感覚)

そして、最後に、

「私ね、弟とは仲が悪くて、でも今回会社のカウンセラーから日本一時帰国中にその課題を解決してこいと言われてきたの。家族の課題は、仕事にも影響するからってね」と、思い出したかのように、突然、見ず知らずの人(私)に話しかけてくれるこの「軽さ」。そして、やはり人間の心理をついている米国企業。

思った。「私は、もう年だから」と言いながら、たぶん、年齢が若かったとしても、きっと誰もがどこかで妥協したり諦めていることを、この方は、自走して運を見方につけ、生きているんだということ。

そんな人だった。これは、あの瞬間に起こった、たった10分足らずの会話だった。たった一人の、たった10分で、世界はこうも変わるものなのか。

間違いなく、私の人生に大きな影響を与えてくれた出会いだった。

#2021年の出会い

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mami@Chennai
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