
インドの「日常」を知る傑作【映画:Sir(あなたの名前を呼べたなら)】
気の合うインドの友人と出会ってからというものの、少しでもこの国について勉強したいと思い(今まで2回現地に行ったことがあるのに、いつの間にか私の興味は東南アジアへ・・・)オススメの映画をいくつか聞いていてみた。
・きっと、うまくいく(3 idiots)
・Like stars on Earth
・ダンガル きっと、強くなる
『きっと、うまくいく』という映画は、2009年に上映されたコメディ/ロマンス映画で、以前から知ってはいたものの、今回初めて観ることになった。3時間弱の、笑いあり涙あり、踊りあり歌いありの、Bolloywoodの代名詞ともいえる映画。その内容をまたインド人と語り合えるから面白い。
思えば、
・聖なる呼吸
・めぐり逢わせのお弁当
・スラムドック・ミリオネア
という映画を観たこともあったけれど、スラムドック・ミリオネアに関してはイギリス映画だからか(?)、友人も「あれは良かったけれど、インドのたった一面しか見せていない」と言っていた。
・ワナジャ
・きっと、またあえる
・Sanam Teri Kasam(スリランカの友人のオススメ映画)
も、また次回観てみようと思う。

私は、アクション映画はあまり好きじゃなく、恋愛映画にしても、恋愛以外の何か教養やデザイン美などを含めた物語を好むので、たぶん上記映画もそういったインドの生活と『教養』を得たい人にとってはオススメです(ただ、3時間は長い・・・w)。

インド、パキスタン、スリランカ・・・これらの国々の人々と出会って、興味を持って、どんどん惹かれていくのがわかる。今回は、私自身がインド映画とはそもそもどんなものなのか?という検索から始まり、いくつかを実際に観て、そういえば以前に観ていた映画も思い出しつつ、その中でも一番オススメの映画
・Sir あなたの名前を呼べたら

を紹介する。この映画は、インド・ムンバイ出身、アメリカで大学教育を受け、助監督や脚本家としてヨーロッパでも活躍する女性監督ロヘナ・ゲラ氏による恋愛映画で、国際的に高く評価され数多くの映画祭で賞を獲得した傑作。なぜか、インドでは上映されず、監督の旦那さんの出身国であるフランスと日本で上映されているらしい。
この映画が傑作だなと思ったのは、まず、とにかく複雑で壮大なインド社会を、「愛」という普遍的な心情を通して捉えようとしているところ。
インドの友人ですら、「インドは『一つの世界』では捉えられない。都会や田舎、南北、東西、地域、世代、家族によって全く異なる」というくらい、カースト制度や社会構造、ダウリー(結婚持参金)の受取など、意見や現実が全く違うのだろう。そういった複雑な社会を、メイド(農村育ちの未亡人)とその雇い主(NY帰りの資産家)の身分、カーストを越えた身分違いの「許されざる」格差恋愛を通して、私たちは学ぶことになる。
そして、雇い主の家にある家具、模様、本棚、窓からの景色、裁縫、高層ビル群と旧市街が共存する大都市ムンバイの情景、アラビア海、バイバス「シーリンク」・・・とにかく情景が美しい。
そして、監督が言っていたことが心に残る。
「『自分の愛する人をどのようにして愛するのか』、また、『私たちは、どのようにして人を愛する許可を自分に与えるのか』ということを、この作品を通して問いたかった。」
詳しい映画の内容は、様々なところで公開されているので、ここでは、印象に残った言葉や状況を紹介する。
メイドのラトナが生きていた村では、未亡人になれば「人生が終わる」と語っていた。再婚できず、家族に汚名をきせたとして村を追い出されて居場所もなくなる。妹の学費を4年間出し続けるラトナ、しかし妹は卒業前に教育よりも結婚を希望し、ムンバイへ。
「自分の生き方は自分で決める ここはムンバイよ」
「俺は十分に愛していなかった」
「プロポーズがせめてもの救いだと思った」
「俺は夢の邪魔はしたくない」
「旦那は病気だったことを隠していました」
「親は早く結婚させたがるんです 村でも」
「私は勉強したかったけれど 持参金は要らないと言われ 父は黙って承諾した 19歳で未亡人に」
「変な噂が立つ」「人は勝手なことを言うものよ」
「失うものは何もないから 踏み出そう 生きてみよう」
アメリカでライター 雑誌の記事、ブログ、小説の半分
兄の病気で帰国したから、それ以来書いていない
「我慢しすぎた」
「誰でも夢を叶える権利がある」
「妹には私とは違う自由な人生を送ってほしかった」
「最近の都会の若い男の好みは 自立した女性だ」
「未亡人は花嫁と会えない 村の習慣です」
インドという国を出なければ、ふたりの恋愛が実を結ぶことはない。
恋愛にしても、友人にしても、最近、パキスタン人の友人とインド人の友人と話していて、彼らは第三国では知り合い、友人、恋人となれるのだけれど、母国に戻ると、パキスタン人がインドへ、インド人がパキスタンに行くことは非常に難しいという。政治的な話はよく聞くし授業でも学んでいるけれど、こうして生の声で聞くことによって、自分事化してくる感じがする。

特に、パンジャーブ地方という場所は、パキスタンとインドの国境にまたがって広がる地域で、同じ文化、言語をもち、パキスタンのこの地域に住んでいる友人からすると、他のどのパキスタンの地域よりも、このパンジャーブ地方に住むインド人の人々に親しみを感じるのだそう。
「生きている実感を味わおう」
「信頼感は感じている」
「If you really like her, just let her be」
「何を感じようと関係ない 私は召使です」
毎月の4000ルピーの仕送り 名誉を汚す 死ぬまで未亡人
農村、建設会社、メイド、ファッションデザイナー、仕立て屋、裁縫教室、階級差、恋
インドの友人にも「マミ、めっちゃ良い映画選んだね」と言われるくらい、この映画はインド社会の「現実」を映し出しているのだそう。散々話しながら、映画について語りまくって、結局自分に出した結論は、
自分を裏切らないこと
これに尽きる。
このアップビートなテンポの曲が好き。インド映画でよくある歌と踊りの斬新さ。そして、バイクで街を駆け抜けるシーンは、ベトナムだ!笑
・・・と、これまた友人に言ったら、「いや、これはインドだ」と強調される。とにかくでかいインド、とりわけインド北東部の地域は、ベトナム北部の山岳地方を思い出させる風景と人々が住んでいて、結局、「国境」とは何なんだろうと思いを馳せる。
Official Trailer これを観ると、きっと映画を観たくなる。
ちなみに、大好きになったベトナムとインドの二国間の国際関係が知りたくなり、少し見てみた。友人は「通常、発展途上国は先進国との仲を優先するけれど、基本、インドは東南アジアのどの国とも仲が良いと思う」と言っていた。
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