カジュアルなTRPGプレイヤーの皆さんに、ビーストバインドトリニティをぜひお勧めしたいという話

皆さんは「ビーストバインドトリニティ」というTRPGをご存知だろうか。
TRPGというややマイナーな娯楽の中で、これまたやや(?)マイナーなタイトルのシステムである。

実は2021年5月20日、2010年9月に初版が発売されたこのTRPGのルールブックが長い時を経てめでたく(?)電子化された。
結構人に勧めたいシステムだったけれど、基本ルルブも拡張サプリも全部プレミアがついてしまって、「面白いんだけど売ってないんだよね……」としか言えない状況だったので、この電子化は非常に嬉しかった。嬉しかったので、布教の一助になればと思いこのnoteを書いた。

因みに各所で言われている気がするが、表紙が非常に手に取りづらいモノになっている。実際自分も、名前だけを頼りにボードゲームショップへ探しにいってその表紙を見た時は大層驚いた。(勧めてきた人が、あんまり「えっちなゲームとか好き!」みたいなタイプの人ではなかったので、こんなスケベな表紙のゲームを!?と思ったのを覚えている)
でも面白いので、あんまり気にしないで手に取って欲しいと思う。

スクリーンショット 2021-05-20 225750

表紙があまりにもエッチである。何故地球を守った女神様が尻を向けているのか……。

そもそもビーストバインドとは

電子書籍化について働きかけをしてくださった小太刀右京先生が書いているnote(ようこそ『ビーストバインド』の世界へ)がもう全てかなという感じがするので、そちらを見るのが一番手っ取り早いかと思う。

ビジュアル的な世界観、イメージはダブルブリッドとかアンダーナイトインバースとかが近いかもしれない。
現代日本で魔物でも人間でもない半端モノになって、ちょっとダークな感じに色々な事件に巻き込まれるゲーム。そんな感じ。

幅広いキャラクタークリエイト

このゲームの最推しポイントはとにかく幅広いキャラクターを作ることができることだ。
通常TRPGというと、ある程度テーマがあって、そのテーマに沿ったキャラクターが作れるように用意されているのが普通だと思う。ビーストバインドも、テーマである人間と魔物の間の存在(要するに人外モノだ)を作るためのエッセンスがルルブにたくさん用意されているのだが、この定義が結構ごった煮なので本当になんでも作れてしまう。

ライトノベルや、現代を舞台にしたゲーム、漫画のキャラクターの大抵は再現できてしまうと思うので、『性癖を詰めた自分の考えた最高のキャラ』を作るのにこれ以上適したシステムは無い(と思う)。
実際、BBTのルールブックには「参考作品」というページがあり「Fate」や「化物語」、「デュラララ」あたりが作品名として載っていたりするのだけど、パッと本棚見て、このキャラは絶対無理っていうのはあんまり浮かばないぐらい、何でも作ることができる。

因みに唯一、「ただの人間」というのは作れなかったが、モータルという無力な人間を作るためのデータが最近追加されて、本当に作れないものが何もなくなってしまった。
強いて言えば、本当に人間しか出てこない日常系アニメや漫画は無理かもしれない。「小林さんちのメイドラゴン」とか、「はたらく魔王さま!」とかは全然いける。

TRPGにヒロイックさとエモさを求める

そもそも僕はニコニコ動画などの動画サイトに投稿される面白いリプレイを見て「あーいいなこういうの、俺もやってみたいな」というキッカケでTRPGに手を出したクチで、元々は『クトゥルフの呼び声』、所謂クトゥルフばかりを遊んでいた。

僕がTRPGにハマってクトゥルフばかりやってた時期は、大体2013~2015年前後。丁度ゆっくり音声を使ったクトゥルフ神話TRPGの実況が隆盛を極めていた頃だ。
当時人気を誇った動画はいくつもあるけれど、クトゥルフ神話の本質(というと主語が大きすぎるかもしれないが…)である、『ジャパニーズホラーライクな後味の悪い未知なる恐怖とその犠牲者』よりも、キメのタイミングでのエモさとか、ヒロイックな展開とか、ちょっとしたお笑い要素(所謂シリアスブレイカー的な)をある程度重視していたように思える。

かくいう自分も、喀血卓(ファミキチさん)のリプレイ&シナリオブックである『羅生門』は楽しくプレイさせてもらったし、ニコニコ動画などで見る、”現代”、”崩れていく平穏な日常”、”巻き込まれるヒロインNPC”、”化け物に立ち向かう主人公たち”、”完全な救いではないがエモめのエンディング” みたいなクトゥルフリプレイはどれも大好きだった。

そしてそういうのが好きな人、ヒロイックでエモくて、ちょっぴり悲しい。異形のものと戦ったり、自分やヒロインが異形の力に巻き込まれたり…そこから救い出したり出されたり…みたいな展開が好きな人。
ビーストバインドトリニティはその欲求を全て満たしてくれる。

エモさを支える仕組み、罪と絆

前項を見て、まぁでも別にヒロイックでエモい奴ってクトゥルフでも、何なら他のシステムでも出来るしな~みたいに思った方、まぁちょっと待って欲しい。
ビーストバインドトリニティには、このエモさやヒロイックを支える仕組みが色々と備わっているのだ。それがエゴや罪、愛や絆、人間性といったシステムである。なんか一見クサそうに見えるネーミングだが、この仕組みによってカッコイイロールプレイが捗り、エモさやヒロイックを加速させるのだ。

BBTにおいて全てのプレイヤーキャラクターは、何らかの欲望(ゲーム内ではエゴと表現される)を持った半魔である。そして皆何らかの人知を超えた力(アーツという技能だ)を持ち、その力を振るえば人間性(CoCでいうSANみたいなもの)が減少する。シナリオ中であったNPCやPCには絆を結べ、そこからは愛(逆転の必殺技を撃つためのコスト)が発生する。これらがミソになっている。

絆や愛はNPCとの関係性を描くためのフックとして強く作用するし、エゴは欲望を発露するかどうかで揺れ動くことを表現するのに便利だ。
そして人間性が、本当は日常を取り戻そうとしていたはずなのに自分がその日常に戻れなくなってしまうという枷、ザ・エモいやつである。
(因みにエゴに従って動いた場合も必殺技を撃つためのコストである罪が貰える、ただし罪で撃てる必殺技は基本魔物としての必殺技だ)

物語のクライマックス、人間としての生活を守るために戦っていたはずが、いつしかそんな自分のことを省みず、絆を結んだヒロインや仲間のために自分が魔物としての欲望に飲まれてもう元に戻れなくなっても良いという覚悟と共に放つ必殺の一撃、そしてそれが強大な敵を討ち滅ぼす。これ以上のヒロイックがあるだろうか?

システムに沿って動いていると、いつの間にか異能バトルモノのカッコイイムーブが出来てしまう、それがビーストバインドなのである。

画像2

(知り合いのために適当に作ったよくわかるビーストバインドのシステム解説)

ビジュアルや雰囲気を整えるとより楽しい

ここから先は僕らが普段どんな感じで遊んでいるかの紹介に近い。
オンセでTRPGをやる時、立ち絵を用意する人は多いのではないかと思うが、もし絵を描ける方は普段の立ち絵と魔として覚醒した後の立ち絵、2枚を用意しておくと大変楽しく遊べると思う。

また、僕の周りではudonariumというセッションツールで箱庭を作って、そこにキャラクターを置いて遊んでいる。なんかゲームっぽくて楽しいのである。
(BBTはシーン制を採用しているTRPGで、ある程度行先はGMが最初から決めたものの中で回っていくのであらかじめマップを用意しておくことが難しくない。)

スクリーンショット 2021-05-20 232634

一部を除きほとんどがお手製なため、この素材どこで手に入りますか?!と言われても、答えられないのが辛いところだが、色々工夫してみんなでシネマティック・ユニバース的なものを作っていくとより楽しめると思う。
シナリオ作りもそんなに難しくない。

買おう、ビーストバインド


今、各種電子書籍サイトで基本ルルブとサプリ三種類が売られている。
もしクトゥルフ大好きな方は、2冊目のドミニオンズというものを買えば、コズミックホラーというクトゥルフ神話の神格や生物との混血キャラを作るためのデータが乗っている。(えっちなニャル子さんみたいな奴が表紙のやつです)

実はこのサプリ以外にも、ゲーマーズフィールドや各種リプレイにも追加データが乗っていて、それらも全部持っていると最高に楽しいのだが、リプレイは電子化されているものの、一部のGFもはや手に入らないものばかりなのでこの電子書籍化が成功して全部をまとめた新しいサプリが出てくれるといいなーなんて祈っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?