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月光握りの朝


ゆるんでいることを知りつつ使いづらいなあと思ってそのままにしていた鍋の蓋がいつの間にか直っていた。
台所で鍋の蓋を直す夫の背中が思い浮かび、胸がキュ〜っとした。
こうして何度もまんまと好きにさせられる。
夫は出張中なので、「もしかして鍋の蓋直してくれたの?」とメッセージを入れたら「なおしたよん」と返事がきた。
いつもありがとうすぎる。

私はすぐ人を好きになったり嫌いになったりするので、夫のこともけんかなどするとめちゃくちゃ嫌いになってしまうこともある。
でもやっぱりどうしても大好きのほうがたくさんやってくるなあ。顔が好きだからかなあ。


この前の日曜日、二人でのんびり起きて近所の喫茶店へモーニングを食べに行った。
起きたときから無性に喫茶店のコーヒーが飲みたかった。家のコーヒーも大好きだけど、コーヒー屋さんとかコンビニのやつでもなくて、喫茶店のコーヒー。あつ〜くてすっきりしてる方のやつ。ホットサンドとかとすごい合うやつ。
一度行ったことのある全席喫煙可で20歳未満は入れないという貴重な店へ行った。
私はもう煙草をやめてずいぶん経つけれど、全席喫煙可の店は相変わらず大好きだ。
なんだか寛大にも感じるし、秘密基地みたくも感じるし、とにかく佇まいがいい。

モーニングセットを二つ頼んで、ムシャムシャ食べているとあまりのおいしさにすぐにコーヒーがなくなった。
プレートのパンやサラダはまだ半分以上残っていて、まだ私にはコーヒーが必要だったのでおかわりを頼んだ。
セットのなかからはみ出すときって、なんとなくちょっぴりドキドキする。ラーメンのトッピングとかもそう。私はメンマとか海苔が好きです。
そんなドキドキした気持ちが夫にも伝わったのか、夫も自分のカフェオレを飲み終えると追加でロイヤルミルクティーを頼んでいた。
ミルクづくしでバブちゃんみたいだね、と言ったら満更でもなさそうだった。

この喫茶店、コーヒーはもちろんロイヤルミルクティーもめちゃくちゃ美味しくて最高だった。(夫が美味しいから飲んで、とわけてくれた)
表面にミルクの泡ができていて、そこに静かにお砂糖を振りかけて泡だけ甘くして飲むと夢みたいに素敵な味がした。
夫は君は本当にセンスいいねえ、と気に入ってくれたようで砂糖でキラキラしている泡をすすっていた。
外は雪が本降りになってて、それを見ながら飲んでいると一層美味しく感じた。

今年の初めに名古屋へ旅行し、二回モーニングを食べた。
名古屋ってモーニング文化のパイオニアだからかいっぱい喫茶店あって選ぶの楽しかったな。
どちらも煙草の吸える店で、私はごきげんで卵を食べていた。
旅行のときって朝ごはんのことをよく覚えてる気がする。
テーブルにあった赤いキャップのコショーとか、黄身が潰れた目玉焼きとか、サラダに入ってたりんごのこととか。そんなこと。


朝ごはんの特別なところって、本当に親しかったり近しい間柄でないと発生しない時間なんだよな。
ランチとか、夜に飲みに行くとかって誰とでもやりやすいけど、案外朝ごはんはそうはいかない。
家族以外相手なら、お泊まりしたりとか、早起きして待ち合わせするってしないと一緒に朝ごはん食べるなんてならないから、うん、かなり仲良しな感じする。

むかし、いつか自分のためのおうちを建てるなら絶対朝食部屋がほしいな〜と思っていた時期があった。
東向きで窓が大きくて、庭がよく見える小さな部屋。
朝ごはんを食べるためだけの部屋。
うわ思い出したらいまでも全然ほしいや。家ほし〜。家ってか城ほし〜。
そんでたっぷりのフルーツやらパンケーキやらで朝ごはんパーティーがしたい。



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