
自由粒子のシュレーディンガー方程式の解
みなさんこんにちは、ずんだもん博士なのだ。みなさんは自由ですか?自分の意志で決めたと思っていたことでも、案外友達やSNSの流行に流されているだけかm緊急出動!緊急出動!緊急出動!
冒頭茶番は某電脳チャイナパトロールでお送りさせていただきましました。さて自由粒子というのは、なにも外力が加えられていない粒子をいいます。古典力学では、そのような粒子の運動は$${m\ddot{x}=F=0}$$であらわされますので、$${x=vt+x_0}$$と簡単に求まってしまい、(静止を含めた)等速直線運動をすると決まっています。
量子の世界で自由粒子はどんなものでしょうか?そもそも量子の世界では「粒子」ではなく、波動にちかい「量子」$${\psi}$$を相手取ります。これを統制している運動方程式はシュレーディンガー方程式
$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial \psi}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi}{\partial x^2}+V\psi
\end{align*}
$$
なのでした。自由粒子は古典力学のアナロジーで、ポテンシャル項$${V}$$がベタッと0になってるシュレーディンガー方程式に従うはずです。とはいえ古典力学の運動方程式とはずいぶん様子が違いますから、量子論の自由粒子ってものがどんなものになるのかわかりませんな。まあとにもかくにもシュレーディンガー方程式を解いて調べてみましょう!
自由粒子のシュレーディンガー方程式
以前の記事で(1次元)シュレーディンガー方程式の一般的な形を紹介しました。再掲すると
$$
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi+V\psi
$$
でした。自由粒子というのはどんな外力にもさらされていない状況をいうのですから、これに掛かってるポテンシャルは無き者のはず。つまり完全にペッタリと
$$
V(x,t)=0
$$
のはずです。つまり自由粒子は次の方程式に従うはずです。
$$
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi
$$
早速解いてみましょう。
変数分離による解
例によって波動関数が
$$
\psi(x,t)=X(x)T(t)
$$
というふうに分解すると仮定して解いてみましょう。前回も言ったと思いますが、必ずしもこうなるとは限らないのですが、まずは何でもいいから解いてみましょう。
前回同様、$${\dot{T}:=dT/dt}$$、$${X':=dX/dx}$$として整理すると
$$
\begin{align*}
&i\hbar X\dot{T}=-\frac{\hbar^2}{2m}X''T\\
\therefore\;\;&i\hbar\frac{\dot{T}}{T}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{X''}{X}
\end{align*}
$$
左辺は時刻$${t}$$のみに依存し、右辺は位置$${x}$$のみに依存してますから、これは定数のはずですので
$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\dot{T}}{T}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{X''}{X}=:E
\end{align*}
$$
とおきますと
$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\dot{T}}{T}&=E\\
-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{X''}{X}&=E
\end{align*}
$$
となります。一本目の方程式からは
$$
\begin{align*}
&i\hbar\frac{\dot{T}}{T}=E\\
\therefore\;\;&\frac{d}{dt}\log(T)=-\frac{iE}{\hbar}\\
\therefore\;\;&\log(T)=-\frac{iEt}{\hbar}+C\\
\therefore\;\;&T=A\exp\left(-\frac{iEt}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$
と書けるところまでは前回と一緒ですね。二本目の方程式も実質前回と同様ですが、改めて計算していきますと
$$
\begin{align*}
&-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{X''}{X}=E\\
\therefore\;\;&X''=-\frac{2mE}{\hbar^2}X\\
\therefore\;\;&X=D_1\exp\left(i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}x\right)+D_2\exp\left(-i\frac{\sqrt{2mE}}{\hbar}x\right)
\end{align*}
$$
のはずです。前回はここで井戸型ポテンシャルの物理的直観を用いて$${X(0)=X(L)=0}$$から$${D_1,D_2}$$が定まりましたが、今回はそれも無理ですね。いったん波動関数をまとめると
$$
\begin{align*}
\psi=A\exp\left(i\frac{\sqrt{2mE}x-Et}{\hbar}\right)+B\exp\left(i\frac{-\sqrt{2mE}x-Et}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$
と書けるでしょう。では、これはなんでしょう?…こういうときは古典力学という権威に擦り寄るべきです。古典力学では自由粒子について
$$
\begin{align*}
E=\frac{p^2}{2m}
\end{align*}
$$
が成り立っているので、$${\sqrt{2mE}=p}$$であって、ゆえに
$$
\begin{align*}
\psi=A\exp\left(i\frac{px-Et}{\hbar}\right)+B\exp\left(i\frac{-px-Et}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$
…最初に物質波をド・ブロイ波に基づいて「このように仮定した」の状態に戻ってしまっただけじゃね?…いやでも、それはそれで、シュレーディンガー方程式が確かめられた感があって、よきかも。でも何が何だかわかりません。僕たちは粒子のことを考えていたはずです。なのにこれは、振幅も変わらず、ずーっと複素数の範囲でゆらゆらしている、謎の平面波っぽい解です。
そこで確率解釈を採用するとしましょう。確率解釈によれば、波動関数の絶対値の二乗が、時刻$${t}$$において位置$${x}$$に粒子を見つける確率密度を与えているのでした。数式で書けば、
$$
|\psi(x,t)|^2dx
$$
が時刻$${t}$$において幅$${dx}$$の範囲に粒子を見出す確率を表していると考えるのです。ということは、これを$${x\in\mathbb{R}}$$にわたる積分を行えば1になってしかるべき!計算してみませう
$$
\begin{align*}
1&=\int_{-\infty}^\infty|\psi(x,t)|^2dx\\
&=\int_{-\infty}^\infty\left[A\exp\left(i\frac{px-Et}{\hbar}\right)+B\exp\left(i\frac{-px-Et}{\hbar}\right)\right]\left[A\exp\left(-i\frac{px-Et}{\hbar}\right)+B\exp\left(-i\frac{-px-Et}{\hbar}\right)\right]dx\\
&=\int_{-\infty}^\infty(A^2+AB(e^{2ipx/\hbar}+e^{-2ipx/\hbar})+B^2)dx\\
&=\int_{-\infty}^\infty(A^2+2AB\cos(2px/\hbar)+B^2)dx\\
&=\left[(A^2+B^2)x+\frac{AB\hbar}{p}\sin(2px/\hbar)\right]_{x=-\infty}^{x=\infty}
\end{align*}
$$
うーん…どうも収束する気配が全くない…。これは失敗かな?少なくとも、確率解釈を採用するなら自由粒子というのは扱えない…そう思っていた時期が僕にもありました。
解の重ね合わせ
ここまでをまとめると、方程式
$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi
\end{align*}
$$
これの解として
$$
\begin{align*}
\psi=A\exp\left(i\frac{px-Et}{\hbar}\right)+B\exp\left(i\frac{-px-Et}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$
を得たのでした。古典力学の$${E=\frac{p^2}{2m}}$$という関係式より、これは運動量$${p\in\mathbb{R}}$$を一つ決めるごとに決まる解なので、
$$
\begin{align*}
\psi_p:=A_p\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)+B_p\exp\left(i\frac{-px-p^2t/2m}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$
とでもおきましょう。ちなみに、べつにエネルギー$${E=p^2/2m}$$を基準にしてもいいのですが、そうすると$${\sqrt{2mE}}$$っていう、あきらかに今後の計算に支障をきたす虞のある係数が表れますのでやめておいてます。
さてこのとき、例えば二つの異なる運動量$${p,p'}$$に対して$${\psi:=\psi_p+\psi_{p'}}$$を考えても、これも自由粒子のシュレーディンガー方程式の解です。実際、$${\psi_p,\psi_{p'}}$$がそれぞれシュレーディンガー方程式を満たすことに注意すれば、
$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi&=i\hbar\frac{\partial}{\partial t}(\psi_p+\psi_{p'})\\
&=i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi_p+i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi_{p'}\\
&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi_p-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi_{p'}\\
&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}(\psi_p+\psi_{p'})\\
&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi
\end{align*}
$$
なのでね!この現象を、波動関数の重ね合わせといって、波動関数が実際に波のようにふるまうかのように見えます。実質的には、シュレーディンガー方程式が線形な微分方程式っていうだけなんですがね。
さて、この性質を使って次のようなことを考えてみましょう。つまり、任意の$${p\in\mathbb{R}}$$にわたって、波動関数$${\psi_p}$$を重ね合わせてみようではないかと!つまり、ザックリ言って
$$
\begin{align*}
\psi:&=\sum_{p=-\infty}^{\infty} \psi_p(x,t)\\
&=\sum_{p=-\infty}^{\infty}\left\{A_p\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)+B_p\exp\left(i\frac{-px-p^2t/2m}{\hbar}\right)\right\}
\end{align*}
$$
というものも解であるはずです。ただしこの式で使っている$${\sum}$$は整数全体を渡る、通常の総和記号ではなくて、実数全体を渡る、連続的な、数学では考えたことがない総和です。なので、もうひと解釈を入れましょう。
さっき$${|\psi|^2dx}$$が発散して困ったのは、個々の運動量に属する解
$$
\begin{align*}
\psi_p:=A_p\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)+B_p\exp\left(i\frac{-px-p^2t/2m}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$
を積分するとどうしても発散することでした。ではこれらすべてを重ね合わせた解$${\psi=\sum_p\psi_p}$$ではどうなっていてほしいかと考えますと、$${\int_{-\infty}^\infty|\psi|^2dx=1<+\infty}$$、したがって各解$${\psi_p}$$の絶対値の二乗$${|\psi_p|^2}$$は、ほとんど0と言ってもいいぐらい、ものすごく小さければいいでしょう。ただシュレーディンガー方程式の解というのは崩したくないので、どこを小さくできるかというと、積分定数$${A_p,B_p}$$だけでしょう。
また、どのように小さくするかですが、僕たちは結局$${\psi:=\sum_p\psi_p}$$という「連続的な和」を正当化したいので、ご都合主義的に考えるならば、各解$${\psi_p}$$の積分定数は
$$
\begin{align*}
A_p&:=a(p)dp\\
B_p&:=b(p)dp
\end{align*}
$$
と書かれるべきでしょう!するとさっきの$${\psi:=\sum_p\psi_p}$$というのは、積分として正当化されます!
$$
\begin{align*}
\psi(x,t):&=\int_{-\infty}^{+\infty}\left\{a(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)+b(p)\exp\left(i\frac{-px-p^2t/2m}{\hbar}\right)\right\}dp\\
&=\int_{-\infty}^{\infty}c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp
\end{align*}
$$
これを、平面波$${\exp(i(px-p^2t/m)/\hbar)}$$の重ね合わせといいます。ただし最後の等式では、どのみち$${p}$$は実数全体を亘る和をとるので、先に$${p}$$がマイナスの項をプラスにまとめておきました。ちゃんと書けば$${c(p):=a(p)+b(-p)}$$です。
この係数$${c(p)}$$を決めるために、色々工夫していきましょう。まずこの積分であらわされた解に期待するのは次の二つです:
$${|\psi(x,t)|^2}$$が粒子っぽい形になっている
$${\int_{-\infty}^{\infty}|\psi(x,t)|^2dx=1}$$
目指すは正規分布
粒子っぽい解で、積分が1になる関数…みなさんは思いつきますかね?今の高校生は数学で統計をやるそうなので、当然、次のような関数を知っていると思います(過剰な期待):
$$
\frac{1}{\sqrt{\pi}\sigma}\exp\left(-\frac{(x-\mu)^2}{\sigma^2}\right)
$$
これは平均$${\mu}$$、分散$${\sigma^2/2}$$に従う正規分布というやつです。これは$${x}$$による実数全域にわたる積分が1になっており、$${x=\mu}$$のところでポコンと盛り上がった形をしていますな:

もし$${\mu=vt}$$となっていれば、この山が「スーッ」て進んでいくイメージに近まりましょう。さらに$${\sigma}$$は小さくとれば、積分=1のまま山がギャンギャン高くなって、確率解釈的にも良い感じに粒子っぽいです!もし$${\sigma\rightarrow0}$$の極限で解が収束するなら、それを自由粒子の解です!…と言ってもよさそうなぐらいですが、黒体輻射に関するプランクの公式の例もありますので、そこまで期待しないでおきましょう。
以上より、目標としては、先ほど得られた重ね合わせ解
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp
\end{align*}
$$
この係数である関数$${c(p)}$$を適当に決めてやって、確率密度$${|\psi(x,t)|^2}$$が
$$
\begin{align*}
|\psi(x,t)|^2=\frac{1}{\sqrt{\pi}\sigma}\exp\left(-\frac{(x-vt)^2}{\sigma^2}\right)
\end{align*}
$$
これに近い形になるようにしたいのです!…できるでしょうか?
本題に近い余談:ガウス積分
$$
\begin{align*}
\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx=\sqrt{\pi}
\end{align*}
$$
この積分はガウス積分と呼ばれています。ちょっとしたルール違反を許容すれば、きっと高校生でも理解できると思うのでやってみようと思います。まず
$$
\begin{align*}
I:=\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx
\end{align*}
$$
とおきます。そこで$${I^2}$$を、変数を変えて次のように計算を進めていけます:
$$
\begin{align}
I^2&=\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx\int_{-\infty}^\infty e^{-y^2}dy\nonumber\\
&=\int_{-\infty}^\infty\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2-y^2}dxdy\\
&=\int_0^\infty \left[\int_0^{2\pi} e^{-r^2}rd\theta\right]dr\\
&=2\pi\int_0^\infty re^{-r^2}dr\\
&=-\pi\left[e^{-r^2}\right]_{r=0}^{r=\infty}=\pi
\end{align}
$$
一番ひどいズルは(1)でしょう。ただの積分の掛け算を、掛け算してから積分するに変えちゃってます。許して…。結果として平面全体にわたる重積分となります。
(2)は$${x=r\cos(\theta), y=r\sin(\theta)}$$という変換、つまり極座標変換を行いました。その際、微小矩形領域$${dxdy}$$に正しい比率(座標変換のヤコビアン)を掛けて$${dxdy=rdrd\theta}$$が成り立ちます。(そういえば今の高校数学って重積分やるよね?僕の時はバームクーヘン積分とかいう謎の手順を覚えさせられた記憶があります)
(3)は$${\theta}$$に関する積分を、(4)では$${r}$$に関する積分を通常通り行い、結果として$${I^2=\pi}$$を得ました。そして2乗を外す時の符号ですが、もともとの積分$${I=\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dx}$$の被積分関数は常に正ですので、正の値をとるべきです。結果として
$$
\begin{align*}
I=\sqrt{\pi}
\end{align*}
$$
が得られます。正規分布の積分は、普通に$${y=(x-\mu)/\sigma}$$という変数変換によって
$$
\begin{align*}
&\frac{1}{\sqrt{\pi}\sigma}\int_{-\infty}^\infty \exp\left(-\frac{(x-\mu)^2}{\sigma^2}\right)dx\\
=&\frac{1}{\sqrt{\pi}\sigma}\int_{-\infty}^\infty \exp\left(-y^2\right)\sigma dy\\
=&1
\end{align*}
$$
と求まります。なので正規分布というのは、$${|\psi(x,t)|^2}$$の積分を1にしたい&真ん中がポコッとしていてなんか粒子っぽい…っていう要件にピッタリなんですな。
フーリエ変換⇔逆変換
平面波の重ね合わせは、係数$${c(p)}$$のフーリエ逆変換という側面があります。実際オイラーの公式$${e^{i\theta}=\cos(\theta)+i\sin(\theta)}$$があるので、
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp
\end{align*}
$$
という等式から、関数を三角関数で分解しようというフーリエ展開との関連を、なんとなく見出すことができるでしょう(無理矢理)。というわけで、簡単にフーリエ変換を説明するとしましょう。
フーリエ逆変換
以前僕の記事でフーリエ展開というのをやりました。こんなんですよと:
$$
\begin{align*}
f(x)=a_0+\sum_{n=1}^\infty c_n\cos(2\pi nx)+\sum_{n=1}^\infty s_n\sin(2\pi nx)
\end{align*}
$$
これを一旦、今回使いやすい形に変形します。オイラーの公式から
$$
\begin{align*}
\cos(x)=\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2},\;\;\;\sin(x)=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}
\end{align*}
$$
が分るので、これをフーリエ展開の式に代入しましょう。ただ面倒なので、係数は$${c_n, s_n}$$に吸収させて
$$
\begin{align*}
f(x)&=a_0+\sum_{n=1}^\infty c_n\cos(2\pi nx)+\sum_{n=1}^\infty s_n\sin(2\pi nx)\\
&=a_0+\sum_{n=1}^\infty \alpha_n\exp(2\pi inx)+\sum_{n=1}^\infty \beta_n\exp(-2\pi inx)\\
&=\sum_{n=-\infty}^{\infty} \gamma_n\exp(2\pi inx)
\end{align*}
$$
こう書けるはずです。本当は無限和を気安く交換するのはダメなんですが、まあ気にしない気にしない…。最後の等式では、負べきの和をやはり係数にまとめてしまって、新しく$${\gamma_n:=\alpha_n+\beta_{-n}}$$とおいています。
これで十分じゃないか…と思ったそこのアナタ!さっきと同じ戦略で、連続的な和、つまり積分に変換します。$${n}$$という整数しか動かない値は、もはや$${\xi}$$などと書いて、実数を連続的に動く変数としましょう。そして係数$${\gamma_n}$$はもはや$${\gamma(\xi)d\xi}$$と書くべきごく微小な実数関数です。すると先ほどのフーリエ展開の和は
$$
\begin{align*}
f(x)=\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i\xi x)d\xi
\end{align*}
$$
となります。見覚えありますかね?$${2\pi\hbar\xi=p}$$として、$${\gamma(\xi)=c(p)\exp(-p^2t/2m)/2\pi\hbar}$$とおきなおせば、ほぼさっきの平面波の重ね合わせ解です。
実はこの式には、関数$${\gamma(x)}$$の逆フーリエ変換という名前が付いています。(なんか先に逆フーリエ変換が出てきてしまった…)
さて、フーリエ展開のときは$${\sin,\cos}$$などを掛けて積分することで、係数$${c_n,s_n}$$を決めることができたのでした。今回も$${\gamma(\xi)}$$に対して似たようなことができないでしょうか?
フーリエ変換
フーリエ展開のときに係数を求めるには、次の積分によって係数を決めることができたのでした:
$$
\begin{align*}
\int_0^1\cos(2\pi nx)\cos(2\pi mx)dx&=\left\{\begin{array}{cc} 1/2 & (m=n)\\ 0 & (m\neq n)\end{array}\right.\\
\int_0^1\cos(2\pi nx)\sin(2\pi mx)dx&=0\\
\int_0^1\sin(2\pi nx)\sin(2\pi mx)dx&=\left\{\begin{array}{cc} 1/2 & (m=n)\\ 0 & (m\neq n)\end{array}\right.\\
\end{align*}
$$
これを使って係数$${c_n,s_n}$$を決めたようなことと似たようなことを、フーリエ逆変換$${f(x)=\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i\xi x)d\xi}$$でも起こせるはずです。例えば
$$
\begin{align*}
\int e^{2\pi i\xi x}e^{-2\pi i\xi' x}dx&=\int\exp(2\pi i(\xi-\xi')x)dx
\end{align*}
$$
を計算してみましょう。…これが$${\xi=\xi'}$$なら有限の値、$${\xi\neq\xi'}$$のときに0になるように積分範囲を調整したいんです…が、う~ん?うまくいくか?ちょっと試行錯誤してみようかしら。まずいきなり広義積分にもっていくのは愚策と言えましょう。まずは積分範囲を$${[-k,k]}$$でとりましょう。えいやー!
$$
\begin{align*}
\int_{-k}^k e^{2\pi i\xi x}e^{-2\pi i\xi' x}dx&=\left[\frac{\exp(2\pi i(\xi-\xi')x)}{2\pi i(\xi-\xi')}\right]_{x=-k}^{x=k}\\
&=\frac{e^{2\pi i(\xi-\xi')k}-e^{-2\pi i(\xi-\xi')k}}{2\pi i(\xi-\xi')}\\
&=\frac{\sin(2\pi(\xi-\xi')k)}{\pi(\xi-\xi')}
\end{align*}
$$
最後にオイラーの公式を使いました。ふむ…僕は君のことを知っているよ。例えば$${y=2\pi(\xi-\xi')}$$とおけば、これは
$$
\begin{align*}
2\frac{\sin(ky)}{y}
\end{align*}
$$
なんですな。これは$${y=\xi-\xi'=0}$$の近傍、つまり$${\xi=\xi'}$$のときに$${2k}$$に収束してます。これは高校生でもできるはずです。$${\lim_{y\rightarrow 0}2\frac{\sin(ky)}{y}}$$と書けばわかりますでしょう。よくみるとおなじみの関数だったわけですね。すごく余談ですが$${\sin(x)/x}$$にはsinc関数という名前が付いています。
キレイな関数が出てきたので、いったん$${k}$$のことは保留して、これを使って$${\gamma(\xi')}$$を求められないか模索していきましょう。目論見としては、
$$
\begin{align*}
f(x)=\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i\xi x)d\xi
\end{align*}
$$
この両辺に$${\exp(-2\pi i\xi' x)}$$を掛けて、$${x}$$で積分すると$${\gamma(\xi')}$$がモロッと出てくれることを期待しているのです。ってことでその方針で計算するんですが、次の数式の雨あられは最初は脳みそ空っぽにして読み飛ばしてください。まーたルール無用の邪悪なことをしまくってます。式番号付けるので、あとで解説しますね。
$$
\begin{align}
&\int_{-k}^k \left[\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i \xi x)d\xi\right]e^{-2\pi i\xi' x}dx \nonumber\\
=&\int_{-k}^k dx\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i(\xi-\xi') x)d\xi\\
=&\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)d\xi \int_{-k}^k \exp(2\pi i(\xi-\xi') x)dx\\
=&\int_{-\infty}^\infty\gamma(\xi)\frac{\sin(2\pi(\xi-\xi')k)}{\pi(\xi-\xi')}d\xi\\
=&\int_{-\infty}^\infty\gamma(\xi''+\xi')\frac{\sin(2\pi\xi'' k)}{\pi\xi''}d\xi''\\
=&\int_{-\infty}^\infty\gamma\left(\frac{\xi'''}{2\pi k}+\xi'\right)\frac{\sin(\xi''' )}{\pi\xi'''}d\xi'''
\end{align}
$$
(1)の等式では実質何にもしてないんですが、二重以上の積分のとき、どの変数がどの積分範囲かをわかりやすくするために、よくこういう書き方に直すことがあります。最初はこの書き方違和感アリかもですが、慣れれば便利です。
(2)はおそらく最大のルール違反です。勝手に積分順序変更すな!ってことなんですよ。まあ、今回は許してつかぁさい…。気になってしまった人はフビニの定理で調べてください。
(3)は、そしたら先に$${x}$$で積分して、さっきの結果をぶち込んだだけですね。(4)は$${\xi''=\xi-\xi'}$$の変数変換、(5)は$${\xi'''=2\pi k\xi''}$$の変数変換です。
さあ$${k}$$の話に戻りましょうか。非常に幸運なことに、$${k}$$は$${\gamma}$$の引数だけに押し込まれています。じゃあ、もうやることは一つですね。$${k\rightarrow+\infty}$$の極限をとってやりましょうや:
$$
\begin{align*}
&\lim_{k\rightarrow+\infty}\int_{-k}^k \left[\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i \xi x)d\xi\right]e^{-2\pi i\xi' x}dx\\
=&\lim_{k\rightarrow+\infty}\int_{-\infty}^\infty\gamma\left(\frac{\xi'''}{2\pi k}+\xi'\right)\frac{\sin(\xi''' )}{\pi\xi'''}d\xi'''\\
=&\int_{-\infty}^\infty \lim_{k\rightarrow+\infty}\gamma\left(\frac{\xi'''}{2\pi k}+\xi'\right)\frac{\sin(\xi''' )}{\pi\xi'''}d\xi'''\\
\end{align*}
$$
はいルール違反~勝手に積分と極限の順序変更すな~…許せ!続けさせて…
$$
\begin{align*}
&\lim_{k\rightarrow+\infty}\int_{-k}^k \left[\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i \xi x)d\xi\right]e^{-2\pi i\xi' x}dx\\
=&\int_{-\infty}^\infty \gamma\left(\xi'\right)\frac{\sin(\xi''' )}{\pi\xi'''}d\xi'''\\
=&\frac{\gamma(\xi')}{\pi}\int_{-\infty}^\infty \frac{\sin(\xi''' )}{\xi'''}d\xi'''\\
\end{align*}
$$
さて皆さん、最後に出てきた、いかにも積分できそうな積分$${\int \sin(x)/xdx}$$、やったことありますか?この積分にはディリクレ積分という名前が付いています。おそらくディリクレさんが最初に考えたんでしょうね。一旦結論認めてもらうと、
$$
\begin{align*}
\int_{-\infty}^\infty \frac{\sin(\xi''' )}{\xi'''}d\xi'''=\pi
\end{align*}
$$
っていうのが分っています。となると、キレイに目論見が当たりましたな!結論こうです:
$$
\begin{align*}
\gamma(\xi')&=\int_{-\infty}^\infty \left[\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i \xi x)d\xi\right]e^{-2\pi i\xi' x}dx\\
&=\int_{-\infty}^\infty f(x)e^{-2\pi i \xi' x}dx
\end{align*}
$$
です!このようにして得られる関数$${\gamma(\xi')}$$は、$${f(x)}$$のフーリエ変換といいます。ちなみにディリクレ積分のやり方には多くの方法が知られていまして、正攻法は多分複素平面上のある経路で積分するとかですね。他にも$${1/\sin(x)}$$の部分分数分解を利用する方法を知っていますが、これはまず「$${1/\sin(x)}$$の部分分数分解ってなんぞ?」ってことを知らねばなりませんし…意外と難しいんですよ、この積分。オイラー積分のようなズルもしづらい。だからいったん認めてもろて…。
ということで、フーリエ変換とフーリエ逆変換の関係をまとめると次のようなことになっています:
$$
\begin{align*}
\text{フーリエ逆変換:}&f(x)=\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi)\exp(2\pi i\xi x)d\xi\\
\text{フーリエ変換:}&\gamma(\xi)=\int_{-\infty}^\infty f(x)\exp(-2\pi i \xi x)dx
\end{align*}
$$
余談:ディラックのデルタ関数
余談なんですが、さっき$${\gamma(\xi')}$$をあぶりだす積分を色々こねくりまわしたんですが、途中式すっ飛ばして結果だけまとめると
$$
\begin{align*}
\gamma(\xi')=\int_{-\infty}^\infty\gamma(\xi)\left[\int_{-\infty}^\infty\exp(2\pi i(\xi-\xi')x)dx\right]d\xi
\end{align*}
$$
となっています。この$${\gamma}$$の$${\xi'}$$での値をひりだす積分で計算される関数
$$
\begin{align*}
\delta(\xi-\xi')=\int_{-\infty}^\infty\exp(2\pi i(\xi-\xi')x)dx
\end{align*}
$$
これをディラックのデルタ関数といいます。本質的な機能としては「関数に掛けて積分すると、代入と同じ効果をもたらす」ってことです。つまり
$$
\begin{align*}
\int_{-\infty}^\infty \gamma(\xi) \delta(\xi-\xi')d\xi=\gamma(\xi')
\end{align*}
$$
ってことです。逆に言えばデルタ関数はこの機能でもって特徴づけられる関数でして、従っていろんな表現の仕方があります。気分としては
$$
\begin{align*}
\delta(\xi)=\left\{\begin{array}{cc} +\infty & (\xi=0) \\ 0 & (\xi\neq0) \end{array}\right.
\end{align*}
$$
なんですが、これをフーリエ変換を使って表現すると$${\delta(\xi)=\int_{-\infty}^\infty\exp(2\pi i\xi x)dx}$$とあらわすのが適している…ってことなんですな。多分ですけどデルタ関数は、フーリエ変換などの理論と相まって超関数論の火付け役の一人です。デルタ関数には本当にいろんな側面があって面白いです。興味ある人はシュワルツ超関数や佐藤超関数などで調べてみると楽しいでしょう。
重ね合わせて正規分布状にする
だいぶ脱線しました。話を自由粒子のシュレーディンガー方程式の解に戻しましょう。僕たちはシュレーディンガー方程式を一旦変数分離で解いて$${\psi_p(x,t)=c(p)\exp(ipx-ip^2t/2m)}$$という解を得ました。それを重ね合わせて、
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp
\end{align*}
$$
これも解ですよという話をしました。上式の係数である関数$${c(p)}$$を適当に決めてやって、
初期条件$${\psi(x,0)}$$で、粒子っぽい形になっている。
$${\int_{-\infty}^{\infty}|\psi(x,t)|^2dx=1}$$確率密度$${|\psi(x,t)|^2}$$
これを満たすようにしたくて、
$$
\begin{align*}
|\psi(x,t)|^2=\frac{1}{\sqrt{\pi}\sigma}\exp\left(-\frac{(x-vt)^2}{\sigma^2}\right)
\end{align*}
$$
これっぽくしたいのでした。
目標を定める:速度と分散と位相(phase)
$${\sigma,v}$$は$${x,t}$$の関数とすべきですが、気持ちとしては$${v}$$は自由粒子の速度を表したく、定数であってほしいもんです。
また、$${|\psi(x,t)|^2}$$の$${x}$$に関する積分が1になってほしいので、$${\sigma}$$が$${x}$$に依存してしまうとだいぶ都合が悪いです。なので$${\sigma}$$は時刻$${t}$$のみに依存するとしましょう。さらに2乗を取り去って
$$
\begin{align*}
|\psi(x,t)|=\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma}}\exp\left(-\frac{(x-vt)^2}{2\sigma^2}\right)
\end{align*}
$$
となりますが、$${\psi(x,t)}$$が複素数値関数なので、位相(phaseのほう)の違いを考慮して
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma}}\exp\left(-\frac{(x-vt)^2}{2\sigma^2}+i\theta\right)
\end{align*}
$$
とするべきでしょう。そしてさっき述べた通り、$${\sigma}$$は時刻のみに依存するべきでしょう。一方で$${\theta}$$は$${x,t}$$どちらかに依存しないという理由は見当たらないので$${\theta=\theta(x,t)}$$と思いましょう。ただし、あくまで波動関数の位相(phase)の違いを吸収する項なので、$${\theta=\theta(x,t)}$$は実数であるべきです。これらの$${\sigma=\sigma(t)}$$や$${\theta=\theta(x,t)}$$を、平面波のフーリエ(逆)変換として実現できるかどうかを模索することが、今後の作業となります。答えから逆算ってわけです。
波動関数のフーリエ変換
まずは重ね合わせた波動関数
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp
\end{align*}
$$
これをフーリエ逆変換の形にすり寄せていきましょう。$${p=2\pi\hbar\xi}$$の変数変換を行います:
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)&=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp\\
&=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(-i\frac{p^2t/2m}{\hbar}\right)\exp\left(i\frac{px}{\hbar}\right)dp\\
&=\int_{-\infty}^\infty 2\pi\hbar c(2\pi\hbar\xi)\exp\left(-i\frac{2\pi^2\hbar \xi^2t}{m}\right)\exp\left(2\pi i\xi x\right)d\xi
\end{align*}
$$
この被積分関数の前半の因子$${2\pi\hbar c(2\pi\hbar\xi)e^{-i2\pi^2\hbar \xi^2t/m}}$$を丸ごとフーリエ逆変換の$${\gamma(\xi)}$$だと思ってフーリエ変換してみましょう:
$$
\begin{align*}
&2\pi\hbar c(2\pi\hbar\xi)\exp\left(-i\frac{2\pi^2\hbar \xi^2t}{m}\right)=\int_{-\infty}^\infty \psi(x,t)\exp(-2\pi i\xi x)dx
\end{align*}
$$
$${\psi}$$が目指すは正規分布っぽい関数でしたから
$$
\begin{align*}
&2\pi\hbar c(2\pi\hbar\xi)\exp\left(-i\frac{2\pi^2\hbar \xi^2t}{m}\right)\\
=&\int_{-\infty}^\infty \frac{1}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma}}\exp\left(-\frac{(x-vt)^2}{2\sigma^2}+i\theta\right)\exp(-2\pi i\xi x)dx\\
=&\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma}}\int_{-\infty}^\infty\exp\left(-\frac{(x-vt)^2}{2\sigma^2}+i\theta-2\pi i\xi x\right)dx
\end{align*}
$$
係数$${c(2\pi\hbar\xi)}$$は時刻に依らないはずなので、簡単のために$${t=0}$$を代入しましょう:
$$
\begin{align*}
2\pi\hbar c(2\pi\hbar\xi)=\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma_0}}\int_{-\infty}^\infty\exp\left(-\frac{x^2}{2\sigma_0^2}+i\theta(x,0)-2\pi i\xi x\right)dx
\end{align*}
$$
ただし$${\sigma_0:=\sigma(0)}$$としました。さて、このままでは$${\theta(x,0)}$$という関数が決まってないので計算できません。
あてずっぽうに位相(phase)の形を決める
ぶっちゃけて言えば$${\theta}$$なんてあてずっぽうに決めて、波動関数が正規分布っぽくなればそれでいいってことを思い出してください。とにかくなんでもいいから、波動関数を重ね合わせて正規分布になりさえすればいい…そんな僕たちのご都合でテキトーに決めましょうか!
ここまでの知識でギリ上記の積分ができるような$${\theta(x,0)}$$は2次関数
$$
\begin{align*}
\theta(x,0)=a_2x^2+a_1x+a_0
\end{align*}
$$
でしょう。$${\theta}$$は実数値なので、$${a_0,a_1,a_2}$$も実数値でしかるべきですが、これらはもちろん時刻$${t}$$のみに依存する関数であるべきです。
もっと高次でも収束するかもしれませんが、僕のような一般人には$${\int_{-\infty}^\infty\exp(-x^3)dx}$$なんて計算できませんし(いや、わからんけど…)。とにかく僕の限界は、指数に$${-x^2}$$が乗ってる形のガウス積分しかありません。ってことで$${\theta(x,0)}$$は上記のように決めてかかりましょう。失敗したら、またその時ここに戻ればいいんです。
フーリエ変換の実行
ということで上記の$${\theta(x,0)=a_2x^2+a_1x+a_0}$$を代入して
$$
\begin{align*}
2\pi\hbar c(2\pi\hbar\xi)=\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma_0}}\int_{-\infty}^\infty\exp\left(-\frac{x^2}{2\sigma_0^2}+i\theta(x,0)-2\pi i\xi x\right)dx
\end{align*}
$$
を計算してゆきましょう。この計算がフーリエ変換なのかフーリエ逆変換なのかわかんなくなってきた…。もとい、まず指数部分をまとめていきます:
$$
\begin{align*}
&-\frac{x^2}{2\sigma_0^2}+i\theta(x,0)-2\pi i\xi x\\
=&-\frac{x^2}{2\sigma_0^2}+ia_2x^2+ia_1x+ia_0-2\pi i\xi x\\
=&-\left(\frac{1}{2\sigma_0^2}-ia_2\right)x^2+i(a_1-2\pi\xi)x+ia_0\\
=&-\left(\frac{1}{2\sigma_0^2}-ia_2\right)\left(x^2-i\frac{a_1-2\pi\xi}{1/2\sigma_0^2-ia_2}x\right)+ia_0\\
=&-\left(\frac{1}{2\sigma_0^2}-ia_2\right)\left(x^2-2i\sigma_0^2\frac{a_1-2\pi\xi}{1-2i\sigma_0^2a_2}x\right)+ia_0\\
=&-\left(\frac{1}{2\sigma_0^2}-ia_2\right)\left(x-i\sigma_0^2\frac{a_1-2\pi\xi}{1-2i\sigma_0^2a_2}\right)^2\\
&\;\;\;+\left(\frac{1}{2\sigma_0^2}-ia_2\right)\left(i\sigma_0^2\frac{a_1-2\pi\xi}{1-2i\sigma_0^2a_2}\right)^2+ia_0\\
=&-\left(\frac{1}{2\sigma_0^2}-ia_2\right)\left(x-i\sigma_0^2\frac{a_1-2\pi\xi}{1-2i\sigma_0^2a_2}\right)^2\\
&\;\;\;-\sigma_0^2\frac{\left(a_1-2\pi\xi\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0
\end{align*}
$$
はい、平方完成しただけです。ここに$${\exp}$$かけて$${x}$$で積分すると、だいたいガウス積分になります。それを目指していたのでした。$${x^2}$$の係数が複素数じゃんとか、$${x\mapsto x'+i\sigma_0^2\frac{a_1-2\pi\xi}{1-2i\sigma_0^2a_2}}$$って変数変換大丈夫そ?って思うかもですが、安心してください。実際には色んな議論が必要なんですが、結果、ガウス積分と全く同じ形になります。つまり、こうなります:
$$
\begin{align*}
&2\pi\hbar c(2\pi\hbar\xi)\\
=&\frac{\sqrt{\pi}}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma_0}\sqrt{1/2\sigma_0^2-ia_2}}\exp\left(-\sigma_0^2\frac{\left(a_1-2\pi\xi\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\right)\\
=&\frac{\sqrt{2\pi\sigma_0}}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{1-2i\sigma_0^2a_2}}\exp\left(-\sigma_0^2\frac{\left(a_1-2\pi\xi\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
両辺を$${2\pi\hbar}$$で割り、$${p=2\pi\hbar \xi}$$を戻してあげて、
$$
\begin{align*}
c(p)=\frac{\sqrt{\sigma_0}}{\hbar\sqrt[4]{\pi}\sqrt{2\pi(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\exp\left(-\sigma_0^2\frac{\left(a_1-p/\hbar\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
を得ます。これを
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp
\end{align*}
$$
にぶちこむという苦行を真正面から受けて立ちましょう。物理学に王道はありません。でもまあ安心してください。よく見れば指数部分を$${p}$$で平方完成すれば結局ガウス積分です。そう中学生でもできる計算です!平方完成をしよう平方完成を!
$$
\begin{align*}
&-\sigma_0^2\frac{\left(a_1-p/\hbar\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0+i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\\
=&-\left(\frac{\sigma_0^2}{2\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+\frac{it}{2m\hbar}\right)p^2+\left(\frac{\sigma_0^2a_1}{\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}+\frac{ix}{\hbar}\right)p\\
&-\frac{\sigma_0^2a_1^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\\
=&-\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}p^2+\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}p\\
&-\frac{\sigma_0^2a_1^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\\
=&-\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}\left(p^2-2m\hbar\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}p\right)\\
&-\frac{\sigma_0^2a_1^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\\
=&-\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}\left(p-m\hbar\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}\right)^2\\
&+\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}\left(m\hbar\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}\right)^2\\
&-\frac{\sigma_0^2a_1^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\\
=&-\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}\left(p-m\hbar\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}\right)^2\\
&+\frac{m\{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)\}^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}-\frac{\sigma_0^2a_1^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\\
=&-\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}\left(p-m\hbar\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}\right)^2\\
&+\frac{m\{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)\}^2-\sigma_0^2a_1^2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}+ia_0\\
=&-\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}\left(p-m\hbar\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}\right)^2\\
&+\frac{2im\sigma_0^2a_1x(1-2i\sigma_0^2a_2)-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)^2-\sigma_0^2a_1^2it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}\\
&+ia_0\\
=&-\frac{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}\left(p-m\hbar\frac{\sigma_0^2a_1+ix(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}\right)^2\\
&+\frac{2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}+ia_0
\end{align*}
$$
えー…何億回計算ミスったかわかりません。査読?やれるもんならやってみな(大和田常務)。とはいえ後半の2つの等式からして、これであってるだろうという手ごたえはありますね。これに$${\exp}$$かけて積分すると係数もまとまってきます:
$$
\begin{align*}
&\psi(x,t)\\
=&\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp\\
=&\frac{\sqrt{\sigma_0}\sqrt{\pi}}{\hbar\sqrt[4]{\pi}\sqrt{2\pi(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\sqrt{\frac{2m\hbar^2(1-2i\sigma_0^2a_2)}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\\
&\times\exp\left(\frac{2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}+ia_0\right)\\
=&\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}}\sqrt{\frac{\sigma_0m}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\\
&\times\exp\left(\frac{2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
解の分析 - a₁の確定
結局、今のところ言えているのは
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}\sqrt{\sigma}}\exp\left(-\frac{(x-vt)^2}{2\sigma^2}+i\theta\right)
\end{align*}
$$
に対してフーリエ逆変換をすれば、$${\theta=a_2x^2+a_1x+a_0}$$とおくことで、係数
$$
\begin{align*}
c(p):=\frac{\sqrt{\sigma_0}}{\hbar\sqrt[4]{\pi}\sqrt{2\pi(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\exp\left(-\sigma_0^2\frac{\left(a_1-p/\hbar\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
が定まり、これによってフーリエ変換を遂行することで
$$
\begin{align*}
&\psi(x,t)\\
=&\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}}\sqrt{\frac{\sigma_0m}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\\
&\times\exp\left(\frac{2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
が得られたのです。ただこの結果は、いかんともしがたい…正規分布っぽいようなそうでないような感じです。失敗したのでしょうか?
実はまだ可能性が残っていて、そういえば絶対値の二乗が正規分布になっていてほしいというのが絶対最小限の要件でした。というわけで絶対値の二乗を計算してみましょう:
$$
\begin{align*}
&|\psi(x,t)|^2\\
=&\frac{\sigma_0m}{\sqrt{\pi}}\frac{1}{\sqrt{\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}\{m\sigma_0^2-it\hbar(1+2i\sigma_0^2a_2)\}}}\\
&\times\exp\left(\frac{2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}
\right)\\
&\times\exp\left(\frac{-2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1+2i\sigma_0^2a_2)+\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2-it\hbar(1+2i\sigma_0^2a_2)\}}
\right)
\end{align*}
$$
…指数んところ抜き出して計算しますね。$${\exp}$$の一つ目の因子からいきましょう:
$$
\begin{align*}
&\frac{2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}\\
=&\frac{\{2im\sigma_0^2a_1x-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar\}\{m\sigma_0^2-it\hbar(1+2i\sigma_0^2a_2)\}}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}\{m\sigma_0^2-it\hbar(1+2i\sigma_0^2a_2)\}}\\
=&\frac{\{-mx^2+i(2m\sigma_0^2a_1x+2m\sigma_0^2a_2x^2-\sigma_0^2a_1^2t\hbar)\}(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2-it\hbar)}{2(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+2t^2\hbar^2}\\
=&\frac{-mx^2(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)+t\hbar(2m\sigma_0^2a_1x+2m\sigma_0^2a_2x^2-\sigma_0^2a_1^2t\hbar)}{2(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+2t^2\hbar^2}+\text{(Imaginary part)}\\
=&\frac{-m^2\sigma_0^2x^2+2\hbar m\sigma_0^2a_1tx-\sigma_0^2a_1^2t^2\hbar^2}{2(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+2t^2\hbar^2}+\text{(Imaginary part)}\\
=&\frac{-\sigma_0^2m^2(x-a_1t\hbar/m)^2}{2(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+2t^2\hbar^2}+\text{(Imaginary part)}
\end{align*}
$$
虚部はどうせ消えるので雑に計算しました。実部はあてずっぽうとは思えないほどキレイになりました!ゆえに
$$
\begin{align*}
&|\psi(x,t)|^2\\
=&\frac{\sigma_0m}{\sqrt{\pi}}\frac{1}{\sqrt{(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+t^2\hbar^2}}\\
&\times\exp\left(\frac{-\sigma_0^2m^2(x-a_1t\hbar/m)^2}{(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+t^2\hbar^2}\right)\\
\end{align*}
$$
ここまでの過激な計算をくぐり抜けた者たちには、これの$${x}$$の全域にわたる積分が1になることは一瞬でわかるでしょう・・・!さらにもっと良いことに、
$$
\begin{align*}
v=\frac{a_1\hbar}{m}\iff a_1=\frac{mv}{\hbar}
\end{align*}
$$
としてくれと言わんばかりの形です。その誘い、乗った!$${a_1}$$はこれにしよう!
まとめ
自由粒子のシュレーディンガー方程式
$$
\begin{align*}
i\hbar\frac{\partial \psi}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2}
\end{align*}
$$
を変数分離で解くと、平面波解
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=c_p\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)
\end{align*}
$$
が得られました。が、これは粒子の存在確率$${\int_{-\infty}^\infty|\psi(x,t)|^2dx}$$が収束しなくて困ったのでした。
それを何とかするために、解の重ね合わせ
$$
\begin{align*}
\psi(x,t)=\int_{-\infty}^\infty c(p)\exp\left(i\frac{px-p^2t/2m}{\hbar}\right)dp
\end{align*}
$$
によって、確率密度$${|\psi(x,t)|^2}$$が正規分布状の関数
$$
\begin{align*}
&|\psi(x,t)|^2\\
=&\frac{\sigma_0m}{\sqrt{\pi}}\frac{1}{\sqrt{(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+t^2\hbar^2}}\\
&\times\exp\left(\frac{-\sigma_0^2m^2(x-vt)^2}{(m\sigma_0^2+2t\hbar\sigma_0^2a_2)^2+t^2\hbar^2}\right)\\
\end{align*}
$$
となるような係数$${c(p)}$$を、以下のように見つけることができました:
$$
\begin{align*}
c(p):=\frac{\sqrt{\sigma_0}}{\hbar\sqrt[4]{\pi}\sqrt{2\pi(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\exp\left(-\sigma_0^2\frac{\left(mv/\hbar-p/\hbar\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
この時の解は、フーリエ変換によって
$$
\begin{align*}
&\psi(x,t)\\
=&\frac{1}{\sqrt[4]{\pi}}\sqrt{\frac{\sigma_0m}{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\\
&\times\exp\left(\frac{2im^2\sigma_0^2vx/\hbar-mx^2(1-2i\sigma_0^2a_2)-\sigma_0^2a_1^2it\hbar}{2\{m\sigma_0^2+it\hbar(1-2i\sigma_0^2a_2)\}}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
となったのでした。結局、係数$${a_0,a_2}$$は求まりませんでしたが、おそらく確率密度を正規分布状にしたいだけなら決めることはできない気がしています。ただし
$$
\begin{align*}
c(p):=\frac{\sqrt{\sigma_0}}{\hbar\sqrt[4]{\pi}\sqrt{2\pi(1-2i\sigma_0^2a_2)}}\exp\left(-\sigma_0^2\frac{\left(mv/\hbar-p/\hbar\right)^2}{2(1-2i\sigma_0^2a_2)}+ia_0\right)
\end{align*}
$$
は時間に依存しないはずですので、$${a_0,a_2}$$は定数である可能性が非常に高いです。
$${a_0,a_2}$$を決めるには、おそらく運動量保存則やエネルギー保存則などを考慮する必要があると思いますが、さすがにこれ以上模索するのは疲れたので、この辺にしておきます。
Wikipediaの解は、$${a_0,a_2}$$、そして$${\sigma}$$をうまく調整すれば出てきます。ただ、向こうでは運動量ベースではなく波数
$$
\begin{align*}
k=p/\hbar
\end{align*}
$$
をベースにしていることに注意してください。実のところ、場の量子論などでは波数ベースで考えることが多いです。
さて今回この重ね合わせによる解を得たことで何を一番伝えたかったかというと、まず自由粒子の解って言って平面波が出てきておしまい、っていうのはなんか納得いかなかったっていうのが一つ。もう一つが実は変数分離しない解もいっぱいあって、それを含めると微分方程式の解ってめちゃくちゃいっぱい作れるってことです。みなさんも、なにか面白い解を模索してみるのも一興だと思います。それではまた!