木村拓哉の親戚なんだよ
銭湯で働いとると会話する相手のほとんどが
おじいちゃんとおばあちゃんなわけで
したがって内容のほとんどが天気のことになる。
「寒いね」「そうですね寒いですね」
「今日は暖かいね」「そうですね今日はあったかいですね」
笑っていいとも!でのテレフォンショッキングの観覧客ばりにパターンが少ない。
あとは、競馬の話。
歳とると人より馬の方が気になるらしい。
常連のおじいちゃんたちは週末になると脱衣場で
あーだこーだ話しとる。
勝った人はみかんとか季節の果物を差し入れしてくれるけど
負けた人は黙々と番台で鍵をもらいお風呂に入る。
変なおじいちゃんもおる。
「俺は木村拓哉の親戚なんだよ」
と毎回言うおじいちゃんが持っている
高齢者の方が無料でお風呂に入れる入浴証に
「稲垣」と書いてあるのは毎度微笑ましい。
コロナ禍のため黙浴の協力をしてもらってはいるが下町の銭湯はお客さんどうしの会話がBGMのようなもので内容は理解できずとも何でか耳に心地よい。
何十年後か先は自分が番台の反対側に立ち
天気の話をして
お決まりのロッカー番号を使って
それまで関わりもなかった近所の人たちと
大した歳の差を気にせず競馬の話をして
湯に浸かるのだろう。
この先もずっと廃らないでほしい日本の文化だと思う。
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