【不動産鑑定士】不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(平成26年5月1日一部改正)

不動産鑑定評価基準運用上の留意事項
平成14年7月3日全部改正
平成19年4月2日一部改正
平成21年8月28日一部改正
平成22年3月31日一部改正
平成26年5月1日一部改正
国土交通省

目次
Ⅰ「総論第2章 不動産の種別及び類型」について
Ⅱ「総論第3章 不動産の価格を形成する要因」について
 1.土地に関する個別的要因について
 2.建物に関する個別的要因について
 3.建物及びその敷地に関する個別的要因について
Ⅲ「総論第5章 鑑定評価の基本的事項」について
 1.対象不動産の確定について
 2.価格時点の確定について.
 3.鑑定評価によって求める価格の確定について
Ⅳ「総論第6章 地域分析及び個別分析」について
 1.地域分析の適用について
 2.個別分析の適用について
Ⅴ「総論第7章 鑑定評価の方式」について
 1.価格を求める鑑定評価の手法について
 2.賃料を求める鑑定評価の手法について
Ⅵ「総論第8章 鑑定評価の手順」について
 1.依頼者、提出先等及び利害関係等の確認について
 2.処理計画の策定について
 3.対象不動産の確認について
 4.資料の検討及び価格形成要因の分析について
 5.鑑定評価の手法の適用について
Ⅶ「総論第9章 鑑定評価報告書」について
 1.依頼者、提出先等及び利害関係等の確認について
 2.対象不動産の確認について
 3.鑑定評価の手法の適用について
Ⅷ「各論第1章 価格に関する鑑定評価」について
 1.宅地について
 2.建物及びその敷地について
 3.建物について
Ⅸ「各論第2章 賃料に関する鑑定評価」について
 1.宅地について
 2.建物及びその敷地について
Ⅹ「各論第3章 証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価」について
 1.証券化対象不動産の鑑定評価の基本的姿勢について
 2.処理計画の策定について
 3.証券化対象不動産の個別的要因の調査について
 4.DCF法の適用等について
附則

 不動産鑑定評価基準総論(以下「総論」という。)及び同基準各論(以下「各論」という。)運用上の留意事項は以下のとおり。

Ⅰ「総論第2章 不動産の種別及び類型」について

 不動産の種別の分類は、不動産の鑑定評価における地域分析、個別分析、鑑定評価の手法の適用等の各手順を通じて重要な事項となっており、これらを的確に分類、整理することは鑑定評価の精密さを一段と高めることとなるものである。鑑定評価において代表的な宅地地域である住宅地域及び商業地域について、さらに細分化すると次のような分類が考えられる。
(1)住宅地域
①敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質の高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な地域であり、従来から名声の高い住宅地域
②敷地の規模及び建築の施工の質が標準的な住宅を中心として形成される居住環境の良好な住宅地域
③比較的狭小な戸建住宅及び共同住宅が密集する住宅地域又は住宅を主として店舗、事務所、小工場等が混在する住宅地域
④都市の通勤圏の内外にかかわらず、在来の農家住宅等を主とする集落地域及び市街地的形態を形成するに至らない住宅地域
(2)商業地域
①高度商業地域
 高度商業地域は、例えば、大都市(東京23区、政令指定都市等)の都心又は副都心にあって、広域的商圏を有し、比較的大規模な中高層の店舗、事務所等が高密度に集積している地域であり、高度商業地域の性格に応じて、さらに、次のような細分類が考えられる。
ア一般高度商業地域
 主として繁華性、収益性等が極めて高い店舗が高度に集積している地域
イ業務高度商業地域
 主として行政機関、企業、金融機関等の事務所が高度に集積している地域
ウ複合高度商業地域
 店舗と事務所が複合して高度に集積している地域
②準高度商業地域
 高度商業地域に次ぐ商業地域であって、広域的な商圏を有し、店舗、事務所等が連たんし、商業地としての集積の程度が高い地域
③普通商業地域
 高度商業地域、準高度商業地域、近隣商業地域及び郊外路線商業地域以外の商業地域であって、都市の中心商業地域及びこれに準ずる商業地域で、店舗、事務所等が連たんし、多様な用途に供されている地域
④近隣商業地域
 主として近隣の居住者に対する日用品等の販売を行う店舗等が連たんしている地域
⑤郊外路線商業地域
 
都市の郊外の幹線道路(国道、都道府県道等)沿いにおいて、店舗、営業所等が連たんしている地域

Ⅱ「総論第3章 不動産の価格を形成する要因」について

 総論第3章で例示された土地、建物並びに建物及びその敷地に係る個別的要因に関しては、特に次のような観点に留意すべきである。

1.土地に関する個別的要因について

(1)埋蔵文化財の有無及びその状態について
 文化財保護法で規定された埋蔵文化財については、同法に基づく発掘調査、現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止、設計変更に伴う費用負担、土地利用上の制約等により、価格形成に重大な影響を与える場合がある。
 埋蔵文化財の有無及びその状態に関しては、対象不動産の状況と文化財保護法に基づく手続きに応じて次に掲げる事項に特に留意する必要がある。
①対象不動産が文化財保護法に規定する周知の埋蔵文化財包蔵地に含まれるか否か。
②埋蔵文化財の記録作成のための発掘調査、試掘調査等の措置が指示されているか否か。
③埋蔵文化財が現に存することが既に判明しているか否か(過去に発掘調査等が行われている場合にはその履歴及び措置の状況)。
④重要な遺跡が発見され、保護のための調査が行われる場合には、土木工事等の停止又は禁止の期間、設計変更の要否等。
(2)土壌汚染の有無及びその状態について
 土壌汚染が存する場合には、当該汚染の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置(以下「汚染の除去等の措置」という。)に要する費用の発生や土地利用上の制約により、価格形成に重大な影響を与えることがある。
 土壌汚染対策法に規定する土壌の特定有害物質による汚染に関して、同法に基づく手続に応じて次に掲げる事項に特に留意する必要がある。
①対象不動産が、土壌汚染対策法に規定する有害物質使用特定施設に係る工場若しくは事業場の敷地又はこれらの敷地であった履歴を有する土地を含むか否か。
 なお、これらの土地に該当しないものであっても、土壌汚染対策法に規定する土壌の特定有害物質による汚染が存する可能性があることに留意する必要がある。
②対象不動産について、土壌汚染対策法の規定による土壌汚染状況調査を行う義務が発生している土地を含むか否か。
③対象不動産について、土壌汚染対策法の規定による要措置区域の指定若しくは形質変更時要届出区域の指定がなされている土地を含むか否か(要措置区域の指定がなされている土地を含む場合にあっては、講ずべき汚染の除去等の措置の内容を含む。)、又は過去においてこれらの指定若しくは土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成21年法律第23号)による改正前の土壌汚染対策法の規定による指定区域の指定の解除がなされた履歴がある土地を含むか否か。

2.建物に関する個別的要因について

(1)建物の各用途に共通する個別的要因
①設計、設備等の機能性

 各階の床面積、天井高、床荷重、情報通信対応設備の状況、空調設備の状況、エレベーターの状況、電気容量、自家発電設備・警備用機器の有無、省エネルギー対策の状況、建物利用における汎用性等に特に留意する必要がある。
②建物の性能
 建物の耐震性については、建築基準法に基づく耐震基準との関係及び建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づく耐震診断の結果について特に留意する必要がある。
③維持管理の状態
 屋根、外壁、床、内装、電気設備、給排水設備、衛生設備、防災設備等に関する破損・老朽化等の状況及び保全の状態について特に留意する必要がある。
④有害な物質の使用の有無及びその状態
 建設資材としてのアスベストの使用の有無及び飛散防止等の措置の実施状況並びにポリ塩化ビフェニル(PCB)の使用状況及び保管状況に特に留意する必要がある。
⑤公法上及び私法上の規制、制約等
 増改築等、用途変更等が行われている場合には、法令の遵守の状況に特に留意する必要がある。
(2)建物の用途毎に特に留意すべき個別的要因
 建物の用途毎に特に留意すべき個別的要因を例示すれば、次のとおりである。
①住宅
 屋根、外壁、基礎、床、内装、間取り、台所・浴室・便所等の給排水設備・衛生設備の状況等に留意する必要がある。また、区分所有建物の場合は、このほか各論第1章第2節Ⅳ.1.及び本留意事項Ⅷ2.(2)に掲げる事項についても留意する必要がある。
 また、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく日本住宅性能表示基準による性能表示、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づき認定を受けた長期優良住宅建築等計画等にも留意する必要がある。
②事務所ビル
 基準階床面積、天井高、床荷重、情報通信対応設備・空調設備・電気設備等の状況及び共用施設の状態等に留意する必要がある。特に、大規模な高層事務所ビルの場合は、エレベーターの台数・配置、建物内に店舗等の区画が存する場合における面積・配置等にも留意する必要がある。
③商業施設
 各階の床面積、天井高等に留意する必要がある。特に、多数のテナントが入居するショッピングセンター等の大規模な商業施設については、多数の顧客等が利用することを前提とした集客施設としての安全性を確保しつつ収益性の向上を図ることが重要であるとの観点から、売場面積、客動線、商品の搬入動線、防災設備の状況、バリアフリー化の状況、施設立地・規模等に関する法令等に留意する必要がある。
④物流施設
 階数、各階の床面積、天井高、柱間隔、床荷重、空調設備、エレベーター等に留意する必要がある。特に、大規模で機能性が高い物流施設の場合は、保管機能のほか、梱包、仕分け、流通加工、配送等の機能を担うことから、これらの機能に応じた設備や、各階への乗入を可能とする自走式車路の有無等に留意する必要がある。

3.建物及びその敷地に関する個別的要因について

(1)修繕計画及び管理計画の良否並びにその実施の状態
 大規模修繕に係る修繕計画の有無及び修繕履歴の内容、管理規則の有無、管理委託先、管理サービスの内容等に特に留意する必要がある。
(2)賃借人の状況及び賃貸借契約の内容
 賃料の滞納の有無及びその他契約内容の履行状況、賃借人の属性(業種、企業規模等)、総賃貸可能床面積に占める主たる賃借人の賃貸面積の割合及び賃貸借契約の形態等に特に留意する必要がある。

Ⅲ「総論第5章鑑定評価の基本的事項」について

1.対象不動産の確定について

(1)鑑定評価の条件設定の意義
 鑑定評価に際しては、現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めることのみでは多様な不動産取引の実態に即応することができず、社会的な需要に応ずることができない場合があるので、条件設定の必要性が生じてくる。
 条件の設定は、依頼目的に応じて対象不動産の内容を確定し(対象確定条件)、設定する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件を明確にし、又は不動産鑑定士の通常の調査では事実の確認が困難な特定の価格形成要因について調査の範囲を明確にするもの(調査範囲等条件)である。したがって、条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士の責任の範囲を示すという意義を持つものである。
(2)鑑定評価の条件設定の手順
 鑑定評価の条件は、依頼内容に応じて設定するもので、不動産鑑定士は不動産鑑定業者の受付という行為を通じてこれを間接的に確認することとなる。しかし、同一不動産であっても設定された条件の如何によっては鑑定評価額に差異が生ずるものであるから、不動産鑑定士は直接、依頼内容の確認を行うべきである。
①対象確定条件について
ア未竣工建物等鑑定評価は、価格時点において、当該建物等の工事が完了し、その使用収益が可能な状態であることを前提として鑑定評価を行うものであることに留意する。
イ「鑑定評価書の利用者」とは、依頼者及び提出先等(総論第8章第2節で規定されるものをいう。)のほか、法令等に基づく不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ販売される金融商品の購入者等をいう。
ウ対象確定条件を設定する場合において、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがある場合とは、鑑定評価の対象とする不動産の現実の利用状況と異なる対象確定条件を設定した場合に、現実の利用状況との相違が対象不動産の価格に与える影響の程度等について、鑑定評価書の利用者が自ら判断することが困難であると判断される場合をいう。
②地域要因又は個別的要因についての想定上の条件の設定について
ア想定上の条件を設定する場合において、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがある場合とは、地域要因又は個別的要因についての想定上の条件を設定した価格形成要因が対象不動産の価格に与える影響の程度等について、鑑定評価書の利用者が自ら判断をすることが困難であると判断される場合をいう。
イ実現性とは、設定された想定上の条件を実現するための行為を行う者の事業遂行能力等を勘案した上で当該条件が実現する確実性が認められることをいう。なお、地域要因についての想定上の条件を設定する場合には、その実現に係る権能を持つ公的機関の担当部局から当該条件が実現する確実性について直接確認すべきことに留意すべきである。
ウ合法性とは、公法上及び私法上の諸規制に反しないことをいう。
③調査範囲等条件の設定について
ア不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因を例示すれば、次のとおりである。
(ア)土壌汚染の有無及びその状態
(イ)建物に関する有害な物質の使用の有無及びその状態
(ウ)埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
(エ)隣接不動産との境界が不分明な部分が存する場合における対象不動産の範囲
イ特定の価格形成要因について調査範囲等条件を設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合を例示すれば、次のとおりである。
(ア)依頼者等による当該価格形成要因に係る調査、査定又は考慮した結果に基づき、鑑定評価書の利用者が不動産の価格形成に係る影響の判断を自ら行う場合
(イ)不動産の売買契約等において、当該価格形成要因に係る契約当事者間での取扱いが約定される場合
(ウ)担保権者が当該価格形成要因が存する場合における取扱いについての指針を有し、その判断に資するための調査が実施される場合
(エ)当該価格形成要因が存する場合における損失等が保険等で担保される場合
(オ)財務諸表の作成のための鑑定評価において、当該価格形成要因が存する場合における引当金が計上される場合、財務諸表に当該要因の存否や財務会計上の取扱いに係る注記がなされる場合その他財務会計上、当該価格形成要因に係る影響の程度について別途考慮される場合
ウ調査範囲等条件を設定する価格形成要因については、当該価格形成要因の取扱いを明確にする必要がある。

2.価格時点の確定について

(1)継続賃料の価格時点について
 借地借家法第11条第1項又は第32条第1項に基づき賃料の増減が請求される場合における価格時点は、賃料増減請求に係る賃料改定の基準日となることに留意する必要がある。
(2)過去時点の鑑定評価について
 過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができる。また、時の経過により対象不動産及びその近隣地域等が価格時点から鑑定評価を行う時点までの間に変化している場合もあるので、このような事情変更のある場合の価格時点における対象不動産の確認等については、価格時点に近い時点の確認資料等をできる限り収集し、それを基礎に判断すべきである。
(3)将来時点の鑑定評価について
 将来時点の鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握、分析及び最有効使用の判定についてすべて想定し、又は予測することとなり、また、収集する資料についても鑑定評価を行う時点までのものに限られ、不確実にならざるを得ないので、原則として、このような鑑定評価は行うべきではない。ただし、特に必要がある場合において、鑑定評価上妥当性を欠くことがないと認められるときは将来の価格時点を設定することができるものとする。

3.鑑定評価によって求める価格の確定について

(1)正常価格について
現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件について
①買主が通常の資金調達能力を有していることについて
 通常の資金調達能力とは、買主が対象不動産の取得に当たって、市場における標準的な借入条件(借入比率、金利、借入期間等)の下での借り入れと自己資金とによって資金調達を行うことができる能力をいう。
②対象不動産が相当の期間市場に公開されていることについて
 相当の期間とは、対象不動産の取得に際し必要となる情報が公開され、需要者層に十分浸透するまでの期間をいう。なお、相当の期間とは、価格時点における不動産市場の需給動向、対象不動産の種類、性格等によって異なることに留意すべきである。
 また、公開されていることとは、価格時点において既に市場で公開されていた状況を想定することをいう(価格時点以降売買成立時まで公開されることではないことに留意すべきである。)。
(2)特定価格について
①法令等について

 法令等とは、法律、政令、内閣府令、省令、その他国の行政機関の規則、告示、訓令、通達等のほか、最高裁判所規則、条例、地方公共団体の規則、不動産鑑定士等の団体が定める指針(不動産の鑑定評価に関する法律第48条の規定により国土交通大臣に届出をした社団又は財団が定める指針であって国土交通省との協議を経て当該団体において合意形成がなされたものをいう。以下同じ。)、企業会計の基準、監査基準をいう。
②特定価格を求める場合の例について
 特定価格を求める場合の例として掲げられているものについて、それぞれの場合ごとに特定価格を求める理由は次のとおりである。
ア各論第3章第1節に規定する証券化対象不動産に係る鑑定評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合
 この場合は、投資法人、投資信託又は特定目的会社等(以下「投資法人等」という。)の投資対象となる資産(以下「投資対象資産」という。)としての不動産の取得時又は保有期間中の価格として投資家に開示することを目的に、投資家保護の観点から対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいた投資採算価値を求める必要がある。
 投資対象資産としての不動産の取得時又は保有期間中の価格を求める鑑定評価については、上記鑑定評価目的の下で、資産流動化計画等により投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とするが、その運用方法による使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には特定価格として求めなければならない。なお、投資法人等が投資対象資産を譲渡するときに依頼される鑑定評価で求める価格は正常価格として求めることに留意する必要がある。
イ民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合
 この場合は、民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、財産を処分するものとしての価格を求めるものであり、対象不動産の種類、性格、所在地域の実情に応じ、早期の処分可能性を考慮した適正な処分価格として求める必要がある。
 鑑定評価に際しては、通常の市場公開期間より短い期間で売却されることを前提とするものであるため、早期売却による減価が生じないと判断される特段の事情がない限り特定価格として求めなければならない。
ウ会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合
 この場合は、会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、現状の事業が継続されるものとして当該事業の拘束下にあることを前提とする価格を求めるものである。
 鑑定評価に際しては、上記鑑定評価目的の下で、対象不動産の利用現況を所与とすることにより、前提とする使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には特定価格として求めなければならない。

Ⅳ「総論第6章地域分析及び個別分析」について

1.地域分析の適用について

(1)近隣地域の地域分析について
①近隣地域の地域分析は、まず対象不動産の存する近隣地域を明確化し、次いでその近隣地域がどのような特性を有するかを把握することである。
 この対象不動産の存する近隣地域の明確化及びその近隣地域の特性の把握に当たっては、対象不動産を中心に外延的に広がる地域について、対象不動産に係る市場の特性を踏まえて地域要因をくり返し調査分析し、その異同を明らかにしなければならない。
 これはまた、地域の構成分子である不動産について、最終的に地域要因を共通にする地域を抽出することとなるため、近隣地域となる地域及びその周辺の他の地域を併せて広域的に分析することが必要である。
②近隣地域の相対的位置の把握に当たっては、対象不動産に係る市場の特性を踏まえて同一需給圏内の類似地域の地域要因と近隣地域の地域要因を比較して相対的な地域要因の格差の判定を行うものとする。さらに、近隣地域の地域要因とその周辺の他の地域の地域要因との比較検討も有用である。
③近隣地域の地域分析においては、対象不動産の存する近隣地域に係る要因資料についての分析を行うこととなるが、この分析の前提として、対象不動産に係る市場の特性や近隣地域を含むより広域的な地域に係る地域要因を把握し、分析しなければならない。このためには、日常から広域的な地域に係る要因資料の収集、分析に努めなければならない。
④近隣地域の地域分析における地域要因の分析に当たっては、近隣地域の地域要因についてその変化の過程における推移、動向を時系列的に分析するとともに、近隣地域の周辺の他の地域の地域要因の推移、動向及びそれらの近隣地域への波及の程度等について分析することが必要である。この場合において、対象不動産に係る市場の特性が近隣地域内の土地の利用形態及び価格形成に与える影響の程度を的確に把握することが必要である。
 なお、見込地及び移行地については、特に周辺地域の地域要因の変化の推移、動向がそれらの土地の変化の動向予測に当たって有効な資料となるものである。
(2)近隣地域の範囲の判定について
 近隣地域の範囲の判定に当たっては、基本的な土地利用形態や土地利用上の利便性等に影響を及ぼす次に掲げるような事項に留意することが必要である。
①自然的状態に係るもの
ア河川

 川幅が広い河川等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合があること。
イ山岳及び丘陵
 山岳及び丘陵は、河川と同様、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断するほか、日照、通風、乾湿等に影響を及ぼす場合があること。
ウ地勢、地質、地盤等
 地勢、地質、地盤等は、日照、通風、乾湿等に影響を及ぼすとともに、居住、商業活動等の土地利用形態に影響を及ぼすこと。
②人文的状態に係るもの
ア行政区域

 行政区域の違いによる道路、水道その他の公共施設及び学校その他の公益的施設の整備水準並びに公租公課等の負担の差異が土地利用上の利便性等に影響を及ぼすこと。
イ公法上の規制等
 都市計画法等による土地利用の規制内容が土地利用形態に影響を及ぼすこと。
ウ鉄道、公園等
 鉄道、公園等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合があること。
エ道路
 広幅員の道路等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合があること。
(3)対象不動産に係る市場の特性について
①把握の観点

ア同一需給圏における市場参加者の属性及び行動
 同一需給圏における市場参加者の属性及び行動を把握するに当たっては、特に次の事項に留意すべきである。
(ア)市場参加者の属性については、業務用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲。
 また、居住用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲
(イ)(ア)で把握した属性を持つ市場参加者が取引の可否、取引価格、取引条件等について意思決定する際に重視する価格形成要因の内容
イ同一需給圏における市場の需給動向
 同一需給圏における市場の需給動向を把握するに当たっては、特に次に掲げる事項に留意すべきである。
(ア)同一需給圏内に存し、用途、規模、品等等が対象不動産と類似する不動産に係る需給の推移及び動向
(イ)(ア)で把握した需給の推移及び動向が対象不動産の価格形成に与える影響の内容及びその程度
②把握のための資料
 対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、平素から、不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって取引等の情報(取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等)を収集しておく必要がある。あわせて公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等による地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く収集し、分析することが重要である。

2.個別分析の適用について

(1)個別的要因の分析上の留意点について
 対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度を把握するに当たっては、次の点に留意すべきである。
①同一用途の不動産の需要の中心となっている価格帯及び主たる需要者の属性
②対象不動産の立地、規模、機能、周辺環境等に係る需要者の選好
③対象不動産に係る引き合いの多寡
(2)最有効使用の判定上の留意点について
①地域要因が変動する予測を前提とした最有効使用の判定に当たっての留意点地域要因の変動の予測に当たっては、予測の限界を踏まえ、鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いことが認められなければならない。
②建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たっての留意点
最有効使用の観点から現実の建物の取壊しや用途変更等を想定する場合において、それらに要する費用等を勘案した経済価値と当該建物の用途等を継続する場合の経済価値とを比較考量するに当たっては、特に下記の内容に留意すべきである。
ア物理的、法的にみた当該建物の取壊し、用途変更等の実現可能性
イ建物の取壊し、用途変更等を行った後における対象不動産の競争力の程度等を踏まえた収益の変動予測の不確実性及び取壊し、用途変更に要する期間中の逸失利益の程度

Ⅴ「総論第7章鑑定評価の方式」について

1.価格を求める鑑定評価の手法について

(1)試算価格を求める場合の一般的留意事項について
①取引事例等の選択について
ア必要やむを得ない場合に近隣地域の周辺地域に存する不動産に係るものを選択する場合について

 この場合における必要やむを得ない場合とは、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例等の大部分が特殊な事情による影響を著しく受けていることその他の特別な事情により当該取引事例等のみによっては鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合をいう。
イ対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等において同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合について
 この場合における対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等とは、次のような場合として例示される対象不動産の個別性のために近隣地域の制約の程度が著しく小さいと認められるものをいう。
(ア)戸建住宅地域において、近辺で大規模なマンションの開発がみられるとともに、立地に優れ高度利用が可能なことから、マンション適地と認められる大規模な画地が存する場合
(イ)中高層事務所として用途が純化された地域において、交通利便性に優れ広域的な集客力を有するホテルが存する場合
(ウ)住宅地域において、幹線道路に近接して、広域的な商圏を持つ郊外型の大規模小売店舗が存する場合
(エ)中小規模の事務所ビルが集積する地域において、敷地の集約化により完成した卓越した競争力を有する大規模事務所ビルが存する場合
ウ代替、競争等の関係を判定する際の留意点について
 イの場合において選択する同一需給圏内の代替競争不動産に係る取引事例等は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。
(ア)対象不動産との間に用途、規模、品等等からみた類似性が明確に認められること。
(イ)対象不動産の価格形成に関して直接に影響を与えていることが明確に認められること。
②地域要因の比較及び個別的要因の比較について
 取引事例等として同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合において、価格形成要因に係る対象不動産との比較を行う際には、個別的要因の比較だけでなく市場の特性に影響を与えている地域要因の比較もあわせて行うべきことに留意すべきである。
(2)原価法について
①再調達原価を求める方法について

ア建物の増改築・修繕・模様替等は、その内容を踏まえ、再調達原価の査定に適切に反映させなければならない。
イ資金調達費用とは、建築費及び発注者が負担すべき費用に相当する資金について、建物引渡しまでの期間に対応する調達費用をいう。
ウ開発リスク相当額とは、開発を伴う不動産について、当該開発に係る工事が終了し、不動産の効用が十分に発揮されるに至るまでの不確実性に関し、事業者(発注者)が通常負担する危険負担率を金額で表示したものである。
②減価修正の方法について
ア対象不動産が建物及びその敷地である場合において、土地及び建物の再調達原価についてそれぞれ減価修正を行った上で、さらにそれらを加算した額について減価修正を行う場合があるが、それらの減価修正の過程を通じて同一の減価の要因について重複して考慮することのないよう留意するべきである。
イ耐用年数に基づく方法及び観察減価法を適用する場合においては、対象不動産が有する市場性を踏まえ、特に、建物の増改築・修繕・模様替等の実施が耐用年数及び減価の要因に与える影響の程度について留意しなければならない。
(3)取引事例比較法について
 この手法の適用に当たっては、多数の取引事例を収集し、価格の指標となり得る事例の選択を行わなければならないが、その有効性を高めるため、取引事例はもとより、売り希望価格、買い希望価格、精通者意見等の資料を幅広く収集するよう努めるものとする。
 なお、これらの資料は、近隣地域等の価格水準及び地価の動向を知る上で十分活用し得るものである。
①事例の収集について
 豊富に収集された取引事例の分析検討は、個別の取引に内在する特殊な事情を排除し、時点修正率を把握し、及び価格形成要因の対象不動産の価格への影響の程度を知る上で欠くことのできないものである。特に、選択された取引事例は、取引事例比較法を適用して比準価格を求める場合の基礎資料となるものであり、収集された取引事例の信頼度は比準価格の精度を左右するものである。
 取引事例は、不動産の利用目的、不動産に関する価値観の多様性、取引の動機による売主及び買主の取引事情等により各々の取引について考慮されるべき視点が異なってくる。したがって、取引事例に係る取引事情を始め取引当事者の属性(本留意事項の「Ⅳ「総論第6章地域分析及び個別分析」について」に掲げる市場参加者の属性に同じ。)及び取引価格の水準の変動の推移を慎重に分析しなければならない。
②事情補正について
 事情補正の必要性の有無及び程度の判定に当たっては、多数の取引事例等を総合的に比較対照の上、検討されるべきものであり、事情補正を要すると判定したときは、取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して適切に補正を行わなければならない。
 事情補正を要する特殊な事情を例示すれば、次のとおりである。
ア補正に当たり減額すべき特殊な事情
(ア)営業上の場所的限定等特殊な使用方法を前提として取引が行われたとき。
(イ)極端な供給不足、先行きに対する過度に楽観的な見通し等特異な市場条件の下に取引が行われたとき。
(ウ)業者又は系列会社間における中間利益の取得を目的として取引が行われたとき。
(エ)買手が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において過大な額で取引が行われたとき。
(オ)取引価格に売買代金の割賦払いによる金利相当額、立退料、離作料等の土地の対価以外のものが含まれて取引が行われたとき。
イ補正に当たり増額すべき特殊な事情
(ア)売主が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において、過少な額で取引が行われたとき。
(イ)相続、転勤等により売り急いで取引が行われたとき。
ウ補正に当たり減額又は増額すべき特殊な事情
(ア)金融逼迫、倒産時における法人間の恩恵的な取引又は知人、親族間等人間関係による恩恵的な取引が行われたとき。
(イ)不相応な造成費、修繕費等を考慮して取引が行われたとき。
(ウ)調停、清算、競売、公売等において価格が成立したとき。
③時点修正について
ア時点修正率は、価格時点以前に発生した多数の取引事例について時系列的な分析を行い、さらに国民所得の動向、財政事情及び金融情勢、公共投資の動向、建築着工の動向、不動産取引の推移等の社会的及び経済的要因の変化、土地利用の規制、税制等の行政的要因の変化等の一般的要因の動向を総合的に勘案して求めるべきである。
イ時点修正率は原則として前記アにより求めるが、地価公示、都道府県地価調査等の資料を活用するとともに、適切な取引事例が乏しい場合には、売り希望価格、買い希望価格等の動向及び市場の需給の動向等に関する諸資料を参考として用いることができるものとする。
(4)収益還元法について
①直接還元法の適用について
ア一期間の純収益の算定について

 直接還元法の適用において還元対象となる一期間の純収益と、それに対応して採用される還元利回りは、その把握の仕方において整合がとれたものでなければならない。
 すなわち、還元対象となる一期間の純収益として、ある一定期間の標準化されたものを採用する場合には、還元利回りもそれに対応したものを採用することが必要である。また、建物その他の償却資産(以下「建物等」という。)を含む不動産の純収益の算定においては、基本的に減価償却費を控除しない償却前の純収益を用いるべきであり、それに対応した還元利回りで還元する必要がある。
P=a/R
P:建物等の収益価格
a:建物等の償却前の純収益
R:償却前の純収益に対応する還元利回り
 一方、減価償却費を控除した償却後の純収益を用いる場合には、還元利回りも償却後の純収益に対応するものを用いなければならない。
 減価償却費の算定方法には定額法、償還基金率を用いる方法等があり、適切に用いることが必要である。
P=a'/R'
P:建物等の収益価格
a':建物等の償却後の純収益
R':償却後の純収益に対応する還元利回り
 なお、減価償却費と償却前の純収益に対応する還元利回りを用いて償却後の純収益に対応する還元利回りを求める式は以下のとおりである。
R'={a'/(a'+d)}×R
R':償却後の純収益に対応する還元利回り
R:償却前の純収益に対応する還元利回り
a':償却後の純収益
d:減価償却費
イ土地残余法
 対象不動産が更地である場合において、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定し、収益還元法以外の手法によって想定建物等の価格を求めることができるときは、当該想定建物及びその敷地に基づく純収益から想定建物等に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(土地残余法という。)を適用することができる。
 また、不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合において、収益還元法以外の手法によって建物等の価格を求めることができるときは、土地残余法を適用することができるが、建物等が古い場合には複合不動産の生み出す純収益から土地に帰属する純収益が的確に求められないことが多いので、建物等は新築か築後間もないものでなければならない。
 土地残余法は、土地と建物等から構成される複合不動産が生み出す純収益を土地及び建物等に適正に配分することができる場合に有効である。
 土地残余法を適用して土地の収益価格を求める場合は、基本的に次の式により表される。
PL=(a-B×RB)/RL
PL:土地の収益価格
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益
B:建物等の価格
RB:償却前の純収益に対応する建物等の還元利回り
RL:土地の還元利回り
 なお、土地残余法の適用に当たっては、賃貸事業におけるライフサイクルの観点を踏まえて、複合不動産が生み出す純収益及び土地に帰属する純収益を適切に求める必要がある。
ウ建物残余法
 不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合において、収益還元法以外の手法によって敷地の価格を求めることができるときは、当該不動産に基づく純収益から敷地に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(建物残余法という。)を適用することができる。
 建物残余法は、土地と建物等から構成される複合不動産が生み出す純収益を土地及び建物等に適正に配分することができる場合に有効である。
 建物残余法を適用して建物等の収益価格を求める場合は、基本的に次の式により表される。
PB=(a-L×RL)/RB
PB:建物等の収益価格
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益
L:土地の価格
RL:土地の還元利回り
RB:償却前の純収益に対応する建物等の還元利回り
エ有期還元法
 不動産が敷地と建物等との結合により構成されている場合において、その収益価格を、不動産賃貸又は賃貸以外の事業の用に供する不動産経営に基づく償却前の純収益に割引率と有限の収益期間とを基礎とした複利年金現価率を乗じて求める方法があり、基本的に次の式により表される。
P=a×[{(1+Y)N乗-1}/Y(1+Y)N乗]
P:建物等及びその敷地の収益価格
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益
Y:割引率
N:収益期間(収益が得られると予測する期間であり、ここでは建物等の経済的残存耐用年数と一致する場合を指す。)
{(1+Y)N乗-1}/Y(1+Y)N乗:複利年金現価率
 なお、複利年金現価率を用い、収益期間満了時における土地の価格、及び建物等の残存価格又は建物等の撤去費をそれぞれ現在価値に換算した額を加減する方法(インウッド式)がある。この方法の考え方に基づき、割引率を用いた式を示すと次のようになる。
P=a×[{(1+Y)n乗-1}/Y(1+Y)n乗]+(PLn+PBn)/(1+Y)n乗又は
P=a×[{(1+Y)N乗-1}/Y(1+Y)N乗]+(PLN-E)/(1+Y)N乗
P:建物等及びその敷地の収益価格
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益
Y:割引率
N,n:収益期間(収益が得られると予測する期間であり、ここでは建物等の経済的残存耐用年数と一致する場合にはN、建物等の経済的残存耐用年数より短い期間である場合はnとする。)
PLn:n年後の土地価格
PBn:n年後の建物等の価格
PLN:N年後の土地価格
E:建物等の撒去費
 また、上記複利年金現価率の代わりに蓄積利回り等を基礎とした償還基金率と割引率とを用いる方法(ホスコルド式)がある。
 この方法の考え方に基づき、割引率を用いた式を示すと次のようになる。
(数式省略)又は
(数式省略)
P:建物等及びその敷地の収益価格
a:建物等及びその敷地の償却前の純収益
Y:割引率
i:蓄積利回り
N,n:収益期間(収益が得られると予測する期間であり、ここでは建物等の経済的残存耐用年数と一致する場合にはN、建物等の経済的残存耐用年数より短い期間である場合はnとする。)
(数式省略):償還基金率
PLn:n年後の土地価格
PBn:n年後の建物等の価格
PLN:N年後の土地価格
E:建物等の撒去費
オ還元利回りの求め方
 還元利回りは、市場の実勢を反映した利回りとして求める必要があり、還元対象となる純収益の変動予測を含むものであることから、それらの予測を的確に行い、還元利回りに反映させる必要がある。還元利回りを求める方法を例示すれば次のとおりであるが、適用に当たっては、次の方法から一つの方法を採用する場合又は複数の方法を組み合わせて採用する場合がある。また、必要に応じ、投資家等の意見や整備された不動産インデックス等を参考として活用する。
(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
 取引事例の収集及び選択については、総論第7章に定める取引事例比較法の適用方法に準ずる。
 取引事例から得られる利回り(以下「取引利回り」という。)については、償却前後のいずれの純収益に対応するものであるかに留意する必要がある。あわせて純収益について特殊な要因(新築、建替え直後で稼働率が不安定である等)があり、適切に補正ができない取引事例は採用すべきでないことに留意する必要がある。
 この方法は、対象不動産と類似性の高い取引事例に係る取引利回りが豊富に収集可能な場合には特に有効である。
(イ)借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法
 この方法は、不動産の取得に際し標準的な資金調達能力を有する需要者の資金調達の要素に着目した方法であり、不動産投資に係る利回り及び資金調達に際する金融市場の動向を反映させることに優れている。
 上記による求め方は基本的に次の式により表される。
R=RM×WM+RE×WE
R:還元利回り
RM:借入金還元利回り
WM:借入金割合
RE:自己資金還元利回り
WE:自己資金割合
(ウ)土地と建物等に係る還元利回りから求める方法
 この方法は、対象不動産が土地及び建物等により構成されている場合に、土地及び建物等に係る利回りが異なるものとして把握される市場においてそれらの動向を反映させることに優れている。
 上記による求め方は基本的に次の式により表される。
R=RL×WL+RB×WB
R:還元利回り
RL:土地の還元利回り
WL:土地の価格割合
RB:建物等の還元利回り
WB:建物等の価格割合
(エ)割引率との関係から求める方法
 この方法は、純収益が永続的に得られる場合で、かつ純収益が一定の趨勢を有すると想定される場合に有効である。
 還元利回りと割引率との関係を表す式の例は、次のように表される。
R=Y-g
R:還元利回り
Y:割引率
g:純収益の変動率
(オ)借入金償還余裕率の活用による方法
 この方法は、借入金還元利回りと借入金割合をもとに、借入金償還余裕率(ある期間の純収益を同期間の借入金元利返済額で除した値をいう。)を用いて対象不動産に係る純収益からみた借入金償還の安全性を加味して還元利回りを求めるものである。
 この場合において用いられる借入金償還余裕率は、借入期間の平均純収益をもとに算定すべきことに留意する必要がある。この方法は、不動産の購入者の資金調達に着目し、対象不動産から得られる収益のみを借入金の返済原資とする場合に有効である。
 上記による求め方は基本的に次の式により表される。
R=RM×WM×DSCR
R:還元利回り
RM:借入金還元利回り
WM:借入金割合
DSCR:借入金償還余裕率(通常は1.0以上であることが必要。)
②DCF法の適用について
 DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を予測しそれらを明示することから、収益価格を求める過程について説明性に優れたものである。
 なお、対象不動産が更地である場合においても、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定することによりこの方法を適用することができる。
ア毎期の純収益の算定について
 建物等の純収益の算定においては、基本的には減価償却費を控除しない償却前の純収益を用いるものとし、建物等の償却については復帰価格において考慮される。
(ア)総収益の算定
 一時金のうち預り金的性格を有する保証金等については、全額を返還準備金として預託することを想定しその運用益を発生時に計上する方法と全額を受渡時の収入又は支出として計上する方法とがある。
(イ)総費用の算定
 大規模修繕費等の費用については、当該費用を毎期の積み立てとして計上する方法と、実際に支出される時期に計上する方法がある。実際に支出される時期の予測は、対象不動産の実態に応じて適切に行う必要がある。
イ割引率の求め方について
 割引率は、市場の実勢を反映した利回りとして求める必要があり、一般に1年を単位として求める。また、割引率は収益見通しにおいて考慮されなかった収益予測の不確実性の程度に応じて異なることに留意する。
 割引率を求める方法を例示すれば次のとおりであるが、適用に当たっては、下記の方法から一つの方法を採用する場合又は複数の方法を組み合わせて採用する場合がある。また、必要に応じ、投資家等の意見や整備された不動産インデックス等を参考として活用する。
(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
 取引事例の収集及び選択については、総論第7章に定める取引事例比較法に係る適用方法に準ずる。
 取引事例に係る割引率は、基本的に取引利回りをもとに算定される内部収益率(Internal Rate of Return(IRR)。将来収益の現在価値と当初投資元本とを等しくする割引率をいう。)として求める。適用に当たっては、取引事例について毎期の純収益が予測可能であることが必要である。
 この方法は、対象不動産と類似性を有する取引事例に係る利回りが豊富に収集可能な場合には特に有効である。
(イ)借入金と自己資金に係る割引率から求める方法
 この方法は、不動産の取得に際し標準的な資金調達能力を有する需要者の資金調達の要素に着目した方法であり、不動産投資に係る利回り及び資金調達に際する金融市場の動向を反映させることに優れている。適用に当たっては、不動産投資において典型的な投資家が想定する借入金割合及び自己資金割合を基本とすることが必要である。
 上記による求め方は基本的に次の式により表される。
Y=YM×WM+YE×WE
Y:割引率
YM:借入金割引率
WM:借入金割合
YE:自己資金割引率
WE:自己資金割合
(ウ)金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める方法
 比較の対象となる金融資産の利回りとしては、一般に10年物国債の利回りが用いられる。また、株式や社債の利回り等が比較対象として用いられることもある。
 不動産の個別性として加味されるものには、投資対象としての危険性、非流動性、管理の困難性、資産としての安全性があり、それらは自然災害等の発生や土地利用に関する計画及び規制の変更によってその価値が変動する可能性が高いこと、希望する時期に必ずしも適切な買い手が見つかるとは限らないこと、賃貸経営管理について専門的な知識と経験を必要とするものであり管理の良否によっては得られる収益が異なること、特に土地については一般に滅失することがないことなどをいう。
 この方法は、対象不動産から生ずる収益予測の不確実性が金融資産との比較において把握可能な場合に有効である。
ウ保有期間(売却を想定しない場合には分析期間)について
 保有期間は、毎期の純収益及び復帰価格について精度の高い予測が可能な期間として決定する必要があり、不動産投資における典型的な投資家が保有する期間を標準とし、典型的な投資家が一般に想定しないような長期にわたる期間を設定してはならない。
エ復帰価格の求め方について
 保有期間満了時点において売却を想定する場合には、売却に要する費用を控除することが必要である。
 復帰価格を求める際に、n+1期の純収益を最終還元利回りで還元して求める場合においては、n+1期以降の純収益の変動予測及び予測に伴う不確実性をn+1期の純収益及び最終還元利回りに的確に反映させることが必要である。
 なお、保有期間満了時点以降において、建物の取壊しや用途変更が既に計画されている場合又は建物が老朽化していること等により取壊し等が見込まれる場合においては、それらに要する費用を考慮して復帰価格を求めることが必要である。
オ最終還元利回りの求め方について
 最終還元利回りは、価格時点の還元利回りをもとに、保有期間満了時点における市場動向並びにそれ以降の収益の変動予測及び予測に伴う不確実性を反映させて求めることが必要である。
③事業用不動産について
ア賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産のうち、その収益性が当該事業(賃貸用不動産にあっては賃借人による事業)の経営の動向に強く影響を受けるもの(以下「事業用不動産」という。)を例示すれば、次のとおりである。
(ア)ホテル等の宿泊施設
(イ)ゴルフ場等のレジャー施設
(ウ)病院、有料老人ホーム等の医療・福祉施設
(エ)百貨店や多数の店舗により構成されるショッピングセンター等の商業施設
イ事業用不動産の特性
(ア)運営形態の多様性

 事業用不動産に係る事業の運営形態については、その所有者の直営による場合、外部に運営が委託される場合、当該事業用不動産が賃貸される場合等多様であり、こうした運営形態の違いにより、純収益の把握の仕方や、当該純収益の実現性の程度が異なる場合があることに留意すべきである。
(イ)事業用不動産に係る収益性の分析
 事業用不動産に係る収益性の分析に当たっては、事業経営に影響を及ぼす社会経済情勢、当該不動産の存する地域において代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度等について中長期的な観点から行うことが重要である。
 また、依頼者等から提出された事業実績や事業計画等は、上記の分析における資料として有用であるが、当該資料のみに依拠するのではなく、当該事業の運営主体として通常想定される事業者(以下「運営事業者」という。)の視点から、当該実績・計画等の持続性・実現性について十分に検討しなければならない。
ウ事業用不動産に係る総収益の把握における留意点
 事業用不動産については、その利用方法において個別性が高く、賃貸借の市場が相対的に成熟していないため、賃貸借の事例をもとに適正な賃料を把握することが困難な場合が多い。したがって、当該事業による売上高をもとに支払賃料等相当額を算定する場合には、その事業採算性の観点から、適正な賃料水準を把握する必要がある。
 また、事業用不動産が現に賃貸借に供されている場合においても、現行の賃貸借契約における賃料と、事業採算性の観点から把握した適正な賃料水準との関係について分析を行うことが有用である。
 これらの場合においては、将来における事業経営の動向を中長期的な観点から分析し、当該賃料等が、相当の期間、安定的に収受可能な水準であるかについて検討する必要がある。
 なお、運営事業者が通常よりも優れた能力を有することによって生じる超過収益は、本来、運営事業者の経営等に帰属するものであるが、賃貸借契約において当該超過収益の一部が不動産の所有者に安定的に帰属することについて合意があるときには、当該超過収益の一部が当該事業用不動産に帰属する場合があることに留意すべきである。

2.賃料を求める鑑定評価の手法について

(1)積算法について
 基礎価格を求めるに当たっては、次に掲げる事項に留意する必要がある。
①宅地の賃料(いわゆる地代)を求める場合
ア最有効使用が可能な場合は、更地の経済価値に即応した価格である。
イ建物の所有を目的とする賃貸借等の場合で契約により敷地の最有効使用が見込めないときは、当該契約条件を前提とする建付地としての経済価値に即応した価格である。
②建物及びその敷地の賃料(いわゆる家賃)を求める場合
 建物及びその敷地の現状に基づく利用を前提として成り立つ当該建物及びその敷地の経済価値に即応した価格である。
(2)賃貸事例比較法について
①事例の選択について

ア賃貸借等の事例の選択に当たっては、新規賃料、継続賃料の別又は建物の用途の別により賃料水準が異なるのが一般的であることに留意して、できる限り対象不動産に類似した事例を選択すべきである。
イ契約内容の類似性を判断する際の留意事項を例示すれば、次のとおりである。
(ア)賃貸形式
(イ)賃貸面積
(ウ)契約期間並びに経過期間及び残存期間
(エ)一時金の授受に基づく賃料内容
(オ)賃料の算定の期間及びその支払方法
(カ)修理及び現状変更に関する事項
(キ)賃貸借等に供される範囲及びその使用方法
②地域要因の比較及び個別的要因の比較について
 賃料を求める場合の地域要因の比較に当たっては、賃料固有の価格形成要因が存すること等により、価格を求める場合の地域と賃料を求める場合の地域とでは、それぞれの地域の範囲及び地域の格差を異にすることに留意することが必要である。
 賃料を求める場合の個別的要因の比較に当たっては、契約内容、土地及び建物に関する個別的要因等に留意することが必要である。

Ⅵ「総論第8章鑑定評価の手順」について

1.依頼者、提出先等及び利害関係等の確認について

(1)鑑定評価書が依頼者以外の者へ提出される場合における当該提出先及び鑑定評価額が依頼者以外の者へ開示される場合における当該開示の相手方について
 鑑定評価書が依頼者以外の者へ提出される場合における当該提出先及び鑑定評価額が依頼者以外の者へ開示される場合における当該開示の相手方の確認については、依頼目的に応じ、必ずしも個別具体的な名称等による必要はなく、提出等の目的、提出先等の属性等利用目的の把握に資するものでも足りる。このため、個別具体の名称等が明らかでない場合であっても、これら利用目的の把握に資する情報を把握することが必要であることに留意しなければならない。
(2)関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者に係る利害関係等について
①関与不動産鑑定士について

 関与不動産鑑定士とは、当該不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士の全員をいい、当該不動産の鑑定評価に関する業務の全部又は一部を再委託した場合の当該再委託先である不動産鑑定業者において当該不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士を含むものとする。
②関与不動産鑑定業者について
 関与不動産鑑定業者とは、当該不動産の鑑定評価に関与不動産鑑定士を従事させている不動産鑑定業者のすべてをいう。
③依頼者と関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者との関係について
 依頼者と関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者との関係に関し明らかにすべき特別の関係及びその内容は、最低限、次に掲げるものとする。ただし、依頼目的や、依頼者、提出先等のほか関係者の判断に与える大きさ等にかんがみ必要な特別の関係についても明らかにするものとする。
ア明らかにすべき依頼者と関与不動産鑑定士との間の特別の資本的関係とは、当該依頼者の議決権につきその2割以上を当該不動産鑑定士が保有している場合その他これと同等以上の資本的関係がある場合の当該関係であり、これらの場合において明らかにすべき内容は、議決権の割合その他当該関係に該当することとなった事項とする。
イ明らかにすべき依頼者と関与不動産鑑定士との間の特別の人的関係とは、当該依頼者又は当該依頼者を代表する者が当該不動産鑑定士である場合その他これらと同等以上の人的関係がある場合の当該関係であり、これらの場合において明らかにすべき内容は、当該関係に該当することとなった事項とする。
ウ明らかにすべき依頼者と関与不動産鑑定業者(②に規定する不動産鑑定業者をいう。以下同じ。)との間の特別の資本的関係とは、前事業年度(財務諸表等が未調製のときは、前々事業年度。オにおいて同じ。)において、当該依頼者又は当該不動産鑑定業者のいずれか一方が他方の子会社(連結財務諸表原則にいう子会社をいう。)又は関連会社(連結財務諸表原則にいう関連会社をいう。)である場合その他これらと同等以上の資本的関係がある場合の当該関係であり、これらの場合において明らかにすべき内容は、出資割合その他当該関係に該当することとなった事項とする。
エ明らかにすべき依頼者と関与不動産鑑定業者との間の特別の人的関係とは、当該依頼者又は当該依頼者を代表する者が当該不動産鑑定業者又は当該不動産鑑定業者を代表する者である場合その他これらと同等以上の人的関係がある場合の当該関係であり、これらの場合において明らかにすべき内容は、当該関係に該当することとなった事項とする。
オ明らかにすべき依頼者と関与不動産鑑定業者との間の特別の取引関係とは、当該不動産鑑定業者の前事業年度において、当該依頼者からの借入れが当該不動産鑑定業者の負債の過半を占める場合、当該不動産鑑定業者の売上げ(鑑定評価等業務に係る売上げ以外のものを含む。)において当該依頼者からの売上げが過半を占める場合、当該依頼者と当該不動産鑑定業者の取引額が当該不動産鑑定業者の鑑定評価等業務における受注額の半分に相当する額を超える場合その他これらと同等以上の取引関係がある場合の当該関係であり、これらの場合において明らかにすべき内容は、当該負債、売上げ又は取引額の割合その他当該関係に該当することとなった事項とする。
④提出先等と関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者との関係について
 ③の規定は、明らかにすべき提出先等と関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者との関係について準用する。この場合において、「依頼者」とあるのは「提出先等」と、「当該依頼者」とあるのは「当該提出先等」と読み替えるものとする。

2.処理計画の策定について

 処理計画の策定に当たっては、総論第8章第1節及び第2節に定める事項のほか、依頼者に対し、次の事項を明瞭に確認しなければならない。この際に確認された事項については、処理計画に反映するとともに、当該事項に変更があった場合にあっては、処理計画を変更するものとする。
(1)対象不動産の実地調査の範囲(内覧の実施の有無を含む。)
(2)他の専門家による調査結果等の活用の要否
(3)その他処理計画の策定のために必要な事項

3.対象不動産の確認について

(1)対象不動産の物的確認について
 対象不動産の確認に当たっては、原則として内覧の実施を含めた実地調査を行うものとする。
 なお、同一の不動産の再評価を行う場合において、過去に自ら内覧の実施を含めた実地調査を行ったことがあり、かつ、当該不動産の個別的要因について、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化がないと客観的に認められる場合は、内覧の全部又は一部の実施について省略することができる。
(2)権利の態様の確認について
 賃貸借契約等に係る権利の態様の確認に当たっては、原則として次に掲げる事項を確認しなければならない。
①契約の目的
②契約当事者
③契約期間
④契約数量
⑤月額支払賃料
⑥一時金の有無とその内容
⑦賃貸条件等に係る特約

4.資料の検討及び価格形成要因の分析について

(1)不動産鑑定士の調査分析能力の範囲内で合理的な推定を行うことができる場合について
 不動産鑑定士の調査分析能力の範囲内で合理的な推定を行うことができる場合とは、ある要因について対象不動産と比較可能な類似の事例が存在し、かつ当該要因が存することによる減価の程度等を客観的に予測することにより鑑定評価額への反映が可能であると認められる場合をいう。
(2)価格形成要因から除外して鑑定評価を行うことが可能な場合について
 価格形成に影響があるであろうといわれている事項について、一般的な社会通念や科学的知見に照らし原因や因果関係が明確でない場合又は不動産鑑定士の通常の調査において当該事項の存否の端緒すら確認できない場合において、当該事項が対象不動産の価格形成に大きな影響を与えることがないと判断されるときには、価格形成要因から除外して鑑定評価を行うことができるものとする。
 また、調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行う場合は、当該条件を設定した価格形成要因を除外して鑑定評価を行うことができる。

5.鑑定評価の手法の適用について

 対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類並びに市場の特性等に対応した鑑定評価の手法の適用に関し必要な事項は、各論各章に定めるもののほか、不動産鑑定士等の団体が定める指針(鑑定評価の手法の適用について具体的に記述された指針であって、国土交通省との協議を経て当該団体において合意形成がなされたものをいう。)で定める。
 なお、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価方式の考え方が適切に反映された一つの鑑定評価の手法を適用した場合には、当該鑑定評価でそれらの鑑定評価方式に即した複数の鑑定評価の手法を適用したものとみなすことができる。

Ⅶ「総論第9章鑑定評価報告書」について

1.依頼者、提出先等及び利害関係等の確認について

 総論第9章第2節ⅨからXIまでに定める事項を鑑定評価報告書に記載する場合においては、本留意事項Ⅵ1(1)及び(2)に定めるところによるものとする。

2.対象不動産の確認について

(1)確認方法について
 総論第8章により確認した事項については、後日疑義が生じることのないように、当該事項とともに確認方法(書面によるものか、口頭によるものかの別等をいう。)及び確認資料について記載する。
(2)実地調査について
 同一の不動産の再評価を行う場合において内覧の全部又は一部の実施を省略した場合には、当該不動産の個別的要因に重要な変化がないと判断した根拠について記載する。

3.鑑定評価の手法の適用について

 対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論第1章から第3章に規定する鑑定評価の手法の適用ができない場合には、対象不動産の市場の特性に係る分析結果等に照らし、その合理的な理由を記載する。

Ⅷ「各論第1章価格に関する鑑定評価」について

1.宅地について

(1)更地について
 開発法によって求める価格は、建築を想定したマンション等又は細区分を想定した宅地の販売総額を価格時点に割り戻した額から建物の建築費及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用又は土地の造成費及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を価格時点に割り戻した額をそれぞれ控除して求めるものとする。この場合において、マンション等の敷地又は細区分を想定した宅地は一般に法令上許容される用途、容積率等の如何によって土地価格が異なるので、敷地の形状、道路との位置関係等の条件のほか、マンション等の敷地については建築基準法等に適合した建物の概略設計、配棟等に関する開発計画を、細区分を想定した宅地については細区分した宅地の規模及び配置等に関する開発計画をそれぞれ想定し、これに応じた事業実施計画を策定することが必要である。
 開発法の基本式を示すと次のようになる。
P={S/(1+r)n1乗}-{B/(1+r)n2乗}-{M/(1+r)n3乗}
P:開発法による試算価格
S:販売総額
B:建物の建築費又は土地の造成費
M:付帯費用
r:投下資本収益率
n1:価格時点から販売時点までの期間
n2:価格時点から建築代金の支払い時点までの期間
n3:価格時点から付帯費用の支払い時点までの期間
(2)建付地について
 複合不動産価格をもとに敷地に帰属する額を配分する方法には主として次の二つの方法があり、対象不動産の特性に応じて適切に適用しなければならない。
①割合法
 割合法とは、複合不動産価格に占める敷地の構成割合を求めることができる場合において、複合不動産価格に当該構成割合を乗じて求める方法である。
②控除法
 控除法とは、複合不動産価格を前提とした建物等の価格を直接的に求めることができる場合において、複合不動産価格から建物等の価格を控除して求める方法である。
(3)借地権及び底地について
 借地権及び底地の鑑定評価に当たって留意すべき事項は次のとおりである。
①借地権単独では取引の対象とされないものの、建物の取引に随伴して取引の対象となり、借地上の建物と一体となった場合に借地権の価格が顕在化する場合がある。
②宅地の賃貸借契約等に関連して、借地権者から借地権設定者へ支払われる一時金には、一般に、(ア)預り金的性格を有し、通常、保証金と呼ばれているもの、(イ)借地権の設定の対価とみなされ、通常、権利金と呼ばれているもの、(ウ)借地権の譲渡等の承諾を得るための一時金に分類することができる。これらのほか、定期借地権に係る賃貸借契約等においては、賃料の前払的性格を有し、通常、前払地代と呼ばれているものがある。
 これらの一時金が借地権価格又は底地価格を構成するか否かはその名称の如何を問わず、一時金の性格、社会的慣行等を考察して個別に判定することが必要である。
③定期借地権及び定期借地権が付着した底地の鑑定評価に当たって留意すべき事項は次のとおりである。
(ア)定期借地権は、契約期間の満了に伴う更新がなされないこと
(イ)契約期間満了時において、借地権設定者に対し、更地として返還される場合又は借地上の建物の譲渡が行われる場合があること
④借地権及び底地の鑑定評価においては、預り金的性格を有する一時金についてはその運用益を、前払地代に相当する一時金については各期の前払地代及び運用益を、それぞれ考慮するものとする。
(4)区分地上権について
 区分地上権の鑑定評価に当たって留意すべき事項は次のとおりである。
①区分地上権の特性に基づく経済価値
 区分地上権の鑑定評価においては、特に次に掲げる区分地上権の特性に基づく経済価値に留意することが必要である。
ア区分地上権設定地の経済価値は、当該設定地の最有効使用に係る階層等に基づいて生ずる上下空間の効用の集積である。したがって、区分地上権の経済価値は、その設定地全体の効用との関数関係に着目して、その設定地全体の経済価値に占める割合として把握される。
イ区分地上権は、他人の土地の地下又は空間の一部に工作物を設置することを目的として設定する権利であり、その工作物の構造、用途、使用目的、権利の設定期間等により、その経済価値が特定される。
②区分地上権の設定事例等に基づく比準価格
 区分地上権の設定事例等に基づく比準価格は、近隣地域及び同一需給圏内の類似地域等において設定形態が類似している区分地上権の設定事例等を収集して、適切な事例を選択し、必要に応じ事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因及び個別的要因の比較を行って求めた価格を比較考量して決定するものとする。
 この手法の適用に当たっては、特に次に掲げる事項に留意しなければならない。
ア区分地上権設定地に係る区分地上権の経済価値には、当該区分地上権に係る工作物の保全のため必要な他の空間の使用制限に係る経済価値を含むことが多いので、区分地上権の態様、設定期間等設定事例等の内容を的確に把握すべきである。
イ時点修正において採用する変動率は、事例に係る不動産の存する用途的地域又は当該地域と相似の価格変動過程を経たと認められる類似の地域における土地の変動率を援用することができるものとする。
ウ地域要因及び個別的要因の比較においては、次に掲げる区分地上権に特有な諸要因について留意する必要がある。
(ア)地域要因については、近隣地域の地域要因にとどまらず、一般に当該区分地上権の効用に寄与する他の不動産(例えば、地下鉄の区分地上権の設定事例の場合における連たんする一団の土地のように、一般に広域にわたって存在することが多い。)の存する類似地域等との均衡を考慮する必要がある。
(イ)個別的要因については、区分地上権に係る地下又は空間の部分についての立体的及び平面的位置、規模、形状等が特に重要であり、区分地上権設定地全体との関連において平面的及び立体的分割の状態を判断しその影響の程度を考慮する必要がある。
③区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求める価格
 近隣地域及び同一需給圏内の類似地域等において設定形態が類似している区分地上権の設定事例等を収集して、適切な事例を選択し、これらに係る設定時又は譲渡時における区分地上権の価格が区分地上権設定地の更地としての価格に占める割合をそれぞれ求め、これらを総合的に比較考量の上適正な割合を判定し、価格時点における当該区分地上権設定地の更地としての価格にその割合を乗じて求めるものとする。
 なお、この手法の適用に当たっては、特に、前記②のウに掲げる事項に留意する必要がある。
④土地残余法に準じて求める収益価格
 土地残余法に準じて求める収益価格は、区分地上権設定地について、当該区分地上権の設定がないものとして、最有効使用を想定して求めた当該設定地全体に帰属する純収益から、当該区分地上権設定後の状態を所与として最有効使用を想定して求めた当該設定地に帰属する純収益を控除して得た差額純収益を還元利回りで還元して得た額について、さらに当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものとする。
⑤区分地上権の立体利用率により求める価格
 区分地上権の立体利用率により求める価格は、区分地上権設定地の更地としての価格に、最有効使用を想定して求めた当該区分地上権設定地全体の立体利用率を基準として求めた当該区分地上権に係る立体利用率(当該区分地上権設定地の最有効使用を前提とした経済価値に対する区分地上権の設定部分の経済価値及び当該設定部分の効用を保持するため他の空間部分の利用を制限することに相応する経済価値の合計の割合をいう。)を乗じて得た額について、さらに当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものとする。
 なお、この手法の適用に当たっては、特に、前記②のウに掲げる事項に留意する必要がある。
(5)対象不動産について土壌汚染が存することが判明している場合等の鑑定評価について
 土壌汚染が存することが判明している不動産については、原則として汚染の分布状況、汚染の除去等の措置に要する費用等を他の専門家が行った調査結果等を活用して把握し鑑定評価を行うものとする。ただし、この場合でも総論第5章第1節及び本留意事項Ⅲに定める条件設定に係る一定の要件を満たすときは、依頼者の同意を得て、汚染の除去等の措置がなされるものとする想定上の条件を設定し、又は調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行うことができる。また、総論第8章第6節及び本留意事項Ⅵに定める客観的な推定ができると認められるときは、土壌汚染が存することによる価格形成上の影響の程度を推定して鑑定評価を行うことができる。
 なお、汚染の除去等の措置が行われた後でも、心理的嫌悪感等による価格形成への影響を考慮しなければならない場合があることに留意する。

2.建物及びその敷地について

(1)削除
(2)区分所有建物及びその敷地について

 区分所有建物及びその敷地の確認に当たっては、登記事項証明書、建物図面(さらに詳細な図面が必要な場合は、設計図書等)、管理規約、課税台帳、実測図等に基づき物的確認と権利の態様の確認を行う。
 また、確認に当たって留意すべき主な事項は、次のとおりである。
①専有部分
ア建物全体の位置、形状、規模、構造及び用途
イ専有部分の一棟の建物における位置、形状、規模及び用途
ウ専有部分に係る建物の附属物の範囲
②共用部分
ア共用部分の範囲及び共有持分
イ一部の区分所有者のみに属する共用部分
③建物の敷地
ア敷地の位置、形状及び規模
イ敷地に関する権利の態様
ウ対象不動産が存する一棟の建物に係る規約敷地の範囲
エ敷地の共有持分
④管理費等
管理費及び修繕積立金の額

3.建物について

 複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分する方法は、「1.(2)建付地について」で述べる方法に準ずるものとする。

Ⅸ「各論第2章賃料に関する鑑定評価」について

1.宅地について

 宅地の新規賃料を求める場合において留意すべき事項は、次のとおりである。
(1)積算賃料を求めるに当たっての基礎価格は、賃貸借等の契約において、賃貸人等の事情によって使用方法が制約されている場合等で最有効使用の状態を確保できない場合には、最有効使用が制約されている程度に応じた経済価値の減分を考慮して求めるものとする。
 また、期待利回りの判定に当たっては、地価水準の変動に対する賃料の遅行性及び地価との相関関係の程度を考慮する必要がある。
(2)比準賃料は、価格時点に近い時点に新規に締結された賃貸借等の事例から比準する必要があり、立地条件その他の賃料の価格形成要因が類似するものでなければならない。
(3)配分法に準ずる方法に基づく比準賃料は、宅地を含む複合不動産の賃貸借等の契約内容が類似している賃貸借等の事例に係る実際実質賃料から宅地以外の部分に対応する実際実質賃料相当額を控除する等により求めた比準賃料をいうものであるが、宅地の正常賃料を求める場合における事例資料の選択に当たっては、賃貸借等の契約内容の類似性及び敷地の最有効使用の程度に留意すべきである。
(4)賃貸事業分析法の適用に当たっては、新たに締結される土地の賃貸借等の契約内容に基づく予定建物を前提として土地に帰属する純収益を求めるものとする。

2.建物及びその敷地について

 店舗用ビルの場合には、賃貸人は躯体及び一部の建物設備を施工するのみで賃貸し(スケルトン貸し)、内装、外装及び建物設備の一部は賃借人が施工することがあるので、積算賃料を求めるときの基礎価格の判定及び比準賃料を求めるときの事例の選択に当たっては、これに留意すべきである。

Ⅹ「各論第3章証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価」について

1.証券化対象不動産の鑑定評価の基本的姿勢について

 各論第3章第1節に規定する証券化対象不動産については、従前に鑑定評価が行われたものを再評価する場合にあっても、各論第3章に従って鑑定評価を行わなければならないものであることに留意する必要がある。

2.処理計画の策定について

(1)処理計画の策定に当たっての確認については、対象不動産の鑑定評価を担当する不動産鑑定士以外の者が行う場合もあり得るが、当該不動産鑑定士が鑑定評価の一環として責任を有するものであることに留意しなければならない。
(2)処理計画の策定に当たっての確認において、依頼者から鑑定評価を適切に行うための資料の提出等について依頼者と交渉を行った場合には、その経緯を確認事項として記録しなければならない。また、確認事項の記録を鑑定評価報告書の附属資料として添付することとしているが、鑑定評価書への添付までを求めるものではないが、同記録は不動産の鑑定評価に関する法律施行規則第38条第2項に定める資料として保管されなければならないことに留意する必要がある。
(3)エンジニアリング・レポート及びDCF法等を適用するために必要となる資料等の入手が複数回行われる場合並びに対象不動産の実地調査が複数回行われる場合にあっては、各段階ごとの確認及び記録が必要であることに留意しなければならない。
(4)各論第3章第3節Ⅲに、依頼者の証券化関係者との関係について記載する旨定めているが、不動産鑑定士の対象不動産に関する利害関係又は対象不動産に関し利害関係を有する者との縁故若しくは特別の利害関係の有無及び内容については、総論第9章第2節により記載する必要があることに留意しなければならない。

3.証券化対象不動産の個別的要因の調査について

 証券化対象不動産の個別的要因の調査に当たっては、次に掲げる事項に留意する必要がある。
(1)同一の証券化対象不動産の再評価を行う場合における物的確認については、本留意事項Ⅵ3.(1)に定めるところにより、内覧の全部又は一部の実施について省略することができる。この場合においては、各論第3章第4節Ⅲ(3)の表に掲げる専門性の高い個別的要因についても、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化がないと認められることが必要であるほか、各論第3章第4節Ⅱに定める、実地調査に関する鑑定評価報告書への記載事項に加え、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して当該不動産の個別的要因に重要な変化がないと判断した理由について記載する。
(2)エンジニアリング・レポートの活用に当たっては、不動産鑑定士が主体的に責任を持ってその活用の有無について判断を行うものであることに留意する必要がある。また、エンジニアリング・レポートの内容の適切さや正確さ等の判断に当たっては、必要に応じて、建築士等他の専門家の意見も踏まえつつ検証するよう努めなければならないことに留意する必要がある。
 既存のエンジニアリング・レポートの活用で対応できる場合がある一方、エンジニアリング・レポートが形式的に項目を満たしていても、鑑定評価にとって不十分で不動産鑑定士の調査が必要となる場合もある。
(3)鑑定評価に必要な対象不動産の物的確認、法的確認等に当たっては、各論第3章第4節Ⅲ(3)の表に掲げる内容や別表1の項目に掲げる内容が必要最小限度のものを定めたものであり、必要に応じて項目・内容を追加し、確認しなければならないことに留意する必要がある。
(4)できる限り依頼者からエンジニアリング・レポートの全部の提供を受けるとともに、エンジニアリング・レポートの作成者からの説明を直接受ける機会を求めることが必要である。
(5)なお、エンジニアリング・レポートの作成は委託される場合が多いが、この場合には、エンジニアリング・レポートの作成者は調査の受託者を指すことに留意しなければならない。また、この場合においては、エンジニアリング・レポートの作成者を鑑定評価報告書に記載する際、調査の委託者の名称も記載する必要がある。

4.DCF法の適用等について

 DCF法の適用等に当たっては、次に掲げる事項に留意する必要がある。
(1)収益費用項目及びその定義を依頼者に説明するに当たって、各項目ごとの具体的な積算内訳など不動産の出納管理に関するデータ等と収益費用項目の対応関係を示すなどの工夫により、依頼者が不動産鑑定士に提供する資料の正確性の向上に十分配慮しなければならない。
(2)収益費用項目においては、信託報酬、特別目的会社・投資法人・ファンド等に係る事務費用、アセットマネジメントフィー(個別の不動産に関する費用は除く)等の証券化関連費用は含まないこと。「純収益」は償却前のものとして求めることとしていることから減価償却費は計上しないことに留意する必要がある。また、各論第3章第5節Ⅱ(1)の表に定める「運営純収益」と証券化対象不動産に係る一般の開示書類等で見られるいわゆる「NOI(ネット・オペレーティング・インカム)」はその内訳が異なる場合があることに留意する必要がある。
(3)各論第3章第5節Ⅱ(1)の表の収益費用項目のうち「運営純収益」と「純収益」の差額を構成する「一時金の運用益」と「資本的支出」の算出について、「一時金の運用益」の利回りの考え方を付記するとともに、「資本的支出」と「修繕費」の区分については、税務上の整理等との整合性に十分配慮する必要があることに留意しなければならない。
(4)収益費用項目については、DCF法を適用した場合の検証として適用する直接還元法においても、同様に用いる必要がある。

附則

附則(平成14年7月3日全部改正)
 この不動産鑑定評価基準運用上の留意事項は、平成15年1月1日から施行する。

附則(平成19年4月2日一部改正)
1.この留意事項は、平成19年7月1日から施行する。
2.不動産鑑定士補は、改正後の留意事項の適用については、不動産鑑定士とみなす。

附則(平成21年8月28日一部改正)
 この改正は、平成22年1月1日から施行し、改正後の不動産鑑定評価基準運用上の留意事項は、同日以後に契約を締結する鑑定評価から適用する。

附則(平成22年3月31日一部改正)
 この改正は、土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成21年法律第23号)の施行の日(平成22年4月1日)から施行する。

附則(平成26年5月1日一部改正)
 この改正は、平成26年11月1日から施行し、改正後の不動産鑑定評価基準運用上の留意事項は、同日以後に契約を締結する鑑定評価から適用する。

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