中島みゆき 歌詞考察1 ヘッドライト・テールライト
私の愛してやまない中島みゆきさんの『ヘッドライト・テールライト』の
歌詞について、私なりの解釈です。
中島みゆきさんの歌詞は、とても奥深かったり、難しい言葉ばかりではなく、わかりやすい言葉をつなぎ合わせて、まさに!と思うような比喩を紡ぎ出しています。私は、中島みゆきさんの曲を聴くたび、すごい!と感じ入ってしまいます。
そこで、中島みゆきさんの歌詞の私なりの考察を記事にしていきたいと考えました。良かったら、読み流してください。(笑)
この曲を解釈する上での大前提としてNHK『プロジェクトX』のエンディングソングだということがあります。
『プロジェクトX』は、名前を取り上げられ世間一般に有名になったわけではないが、企業などで人知れず努力し功績を残した人たちの物語です。
そういう人たちの生きざまを描いた歌詞が『ヘッドライト・テールライト』です。
しかも、この『ヘッドライト・テールライト』で歌われているのは、まだ功績を残していない人たちのことも含んでいます。
そういう前提で解釈を進めます。
『星の名』
企業で働き画期的な開発をしたサラリーマンたち。公務員として大きなプロジェクトに貢献した人たち。無名で、テレビや新聞などに取り上げられることのなかった人々がいます。成果を上げたとしても世に出されるのは社名・メーカー、プロジェクトのみ。一個人の名が世に出ることはありません。
そんな、画期的な開発を行ったり、社会に大きく貢献したけれど有名になることはない者たちが星に喩えられています。
また、大きな成果を上げていなかったとしても、日々、自分のなすべき仕事に真摯に向き合い努力している人々がいます。そんな人たちも、星に喩えられています。
『語り継ぐ人もなく』
仮に、企業で成果を上げたり、あるプロジェクトで命の危険を冒しながら大きな役割を果たしたとしても、世間一般には個人として賞賛されることはないケースが多くあります。個人名や一人の功績が、取り上げられない結果、当然のごとく語り継がれることもなく、語り継ぐ人もいません。
『吹きすさぶ風の中へ
紛れ散らばる星の名は
忘れられても』
すごく激しい風のイメージです。吹き荒れるような毎日、日々の激しい激動は、日常のこまごましたことが激しい風に吹き飛ばされるかのようです。そして、そんな激しい風にかき混ぜられているうちに、星の名(貢献した人々・猛者たちの名前)や功績の記憶は、どこかへ吹っ飛んでしまいます。
『忘れられても』
忘れられて「も」です。
成果を出したとしても、貢献したとしても、そのことは、日々の暮らしの中で忘れられる運命にあるのかもしれません。けれど、そのように忘れられる運命にあっても、です。
『ヘッドライト・テールライト』
道路に連なる自動車のイメージと重なります。
明るく白いヘッドライトが光り連なっています。
赤いテールランプが灯りつながっています。
無名ではあるけれど、走り続けている人々の数多くの車が列をなして進んでいます。
『旅はまだ終わらない』
夢や目標、プロジェクトを叶えるための努力の歩みを『旅』に喩えられています。
忘れられる運命にあって「も」、決して自分の、一個人の名誉にならないことはわかっていても、夢や目標、プロジェクトを叶えるために進む旅はまだ終わらない、終えられないのです。そういう強い決意を感じ取れます。
『足跡』
貢献してきた道のり、過程を『足跡』に喩えられています。
『降る雨と降る時の中へ消えて』
雨が降ると土に残した足跡も消えてしまいます。
同じように、時間がたつことを『降る時』と表現しています。
時とともに努力の足跡は、みんなの記憶から消えていってしまいます。
企業の一社員としてがんばってきた努力のあとは時間とともに消え失せてしまいます。
『称える歌は英雄のために過ぎても』
凱旋パレードのイメージが浮かびます。
称賛の声、華やかに褒め称えられる歌は、偉大な功績を残した特別な英雄にのみ向けられます。英雄を称える賑やかな音楽や絶賛する歌はパレードの移動とともに通り過ぎていきます。
その影で、ひっそりと、華やかではないかもしれないけれど、実直に自分のすべきことを成し遂げようとしている人がいます。
たとえ、英雄のような称賛は受けられなくても『旅はまだ終わらない』のです。
『行く先を照らす』のは自動車のヘッドライトです。
進むべき道の方向を示し、明るく照らしています。
そこに見えるのは、自分が抱いた夢。花に喩えられた、まだ咲いていない夢です。
『見果てぬ夢』とは実現不可能な夢。実現不可能と思われる夢。けれど夢の実現を信じて、前を照らして進み続けます。
『遥か後ろを照らす』のは自動車のテールライト。
遥か後ろ、遥か昔に、自分が進む原動力になったのは、自分が抱いた夢。
かつて自分が進もうと思い立ったのは、今思うと、あどけない、若くて青くさい夢だったのかもしれない。けれど、そのとき抱いた夢が今、前に進む推進力になっている。
振り返れば、あの時のあの、あどけない夢が、全ての始まりで、その夢、当時の思いに支えられて今、前進している。
そんな思いでいる人たちのことが偲ばれます。
以上、中島みゆきさんの『ヘッドライト・テールライト』の考察でした。