SHIRO 番外編✳︎絵本から出てきたお姫様✳︎
前編...
ある日しろとくろは、絵本から飛び出したお姫様に出会いました。
そのお姫様は絵本の上でなにやら大声で叫んでいるのでした。
しろとくろが近づくと、声がだんだんとはっきり聞こえてきました。
「だれか!だれかいないの?」
お姫様は誰かを探しているようでした。
しろが声をかけました。
「こんにちは、お姫様。
だれをさがしているの?」
お姫様はしろに気付くと
「家来を探しているのよ。当たり前じゃない。」
と言いました。
「なんか偉そうなお姫様だな。」
くろが小さくつぶやくと
「そこのねこ、なにか言った?」
お姫様がくろに声をかけ、くろはあわててしろの後ろに隠れました。
「お姫様の家来は、まだ絵本の中にいるんじゃない?」
しろが言うと
「だとしたら役に立たないわね、なぜこのわたしが出てきたというのになにもしないわけ?
家来、いるんでしょう?出てきなさい。」
お姫様は絵本に向かって大声を上げました。
しかし、いくら呼びかけても絵本からは動きはありませんでした。
「なんなのよ。」
お姫様は怒るとその場に座り込みました。
「あのー、」
しろがおそるおそる声をかけました。
「なに?」
「そこでなにをしているんですか?」
「何って、馬車を待っているに決まってるじゃない。」
「馬車が来るんですか?」
「え?あなたたちが手配してくれるんじゃないの?」
しろとくろが驚いて顔を見あわせると
「はぁー、なにしてるのよ。わたしが動きたいと言ってるのだから馬車を用意するのは当たり前じゃない。」
「ぼくたちはあなたの家来じゃないから、なにもしないよ。」
くろが冷たく言いました。
「な!ねこのくせになんて口の利き方なの。
じゃあいいわ、たったいまあなたたちを家来にしてあげる。決めました。
これでいいでしょう?さ、すぐに馬車を用意してもらえるかしら。」
くろは呆れたというようにため息を吐きました。
「お姫様の力になりたいのだけど、馬車なんてぼくたち持ってないんだ。それに家来なんて嫌だよ。」
しろが言うと、
「わたしの家来になるのが嫌ですって?みな、光栄だと言っているけどね。わたしが選んでいるのよ、断るなんて失礼だわ。」
お姫様が言いました。
しろは肩を落とし、くろに目で合図をしてから
「そしたらお姫様。馬車を探しに行ってくるよ。少し待っててもらえるかな?」
「いやよ、ひとりでなんて待っていたくないわ。時間がかかるなら、そうね。わたしも一緒に行くわ。ただしすぐに馬車を見つけること。姫である私が徒歩で歩くなんて恥ずかしいわ、いいわね。」
そう言ってお姫様は絵本から静かにおりました。
しろとくろは何も言わずお姫様と並び、馬車探しの旅に出かけるのでした。
積み木の国にやってきました。
小人たちが忙しそうに歩き回り、機関車がいつものように荷物を運んで走っています。
積み木の国になら運んでくれる乗り物がなにかあるかと思ったのです。
ひとりの小人がしろたちに近づいてきました。
「こんにちは、しろ、くろ。
遊びに来てくれたんだね。」
「やぁ、こんにちは。」
「えっと、そちらの方は?」
小人がお姫様の方を見て尋ねました。
しろとくろが答えるより先に、お姫様が答えました。
「わたくしの名は、エルゼレーヒ。花の王国の王女です。そして、このものたちはわたくしの家来です。」
それを聞いて小人は戸惑いながら、しろとくろの方を見ました。
しろとくろは苦笑いで返しました。
「エルザレーヒ姫、はじめまして。ぼくはここ積み木の国の小人です。名前はトッピー、よろしくお願いします。」
エルゼレーヒは小人の丁寧な挨拶に満足したのか、機嫌良く話し始めました。
「トッピー、ここはなんて国なの?」
「積み木の国です。」
「積み木の国、面白いわね。ここの王様、王女様はどちらかしら。」
トッピーはその問いに少し戸惑い、
「えーと、エルゼレーヒ姫。ここの国には王様も王女様もいないんです。」
と答えました。
それを聞いたエルゼレーヒは、飛び上がって驚きました。
「何ですって?王様も王女様もいないの?それで国となのっているなんて、変わった国ね。そうしたら、この国は誰が治めているの?」
「エルゼレーヒ姫、この国は誰も治めていないんです。僕たち小人が家を建てたり、機関車を整備したりして暮らしています。」
エルゼレーヒ姫が辺りを見渡しました。
話し声が気になったようで、いつのまにか小人たちが作業する手をとめて、ふたりの話に耳を傾けていました。
エルゼレーヒ姫は少し気まずそうに咳払いをしました。
「そう、だとしたらここを治める人が必要なのではなくて?ちょうどわたくし、馬車を探しにきたのですけれど、ここの国の王女になってもいいわよ。」
それを聞き、しろもくろも驚きました。
トッピーはどうしたらよいか困っているようで、しろとくろの顔を見たり、小人たちに視線を送っていました。
他の小人たちも驚いているようでした。
「そうと決まれば、さっそくわたくしの城が必要だわ。みなさん、このエルゼレーヒの城を建ててくださいな。それから馬車もひとつお願い。」
エルゼレーヒは周りの反応などまったく気にならない様子でそう言うと、小人たちに視線を送りました。
小人たちがどうしようと悩んでいた時です。
「さっきから聞いていれば、なんだ。」
ひとりのおじいさん小人が怒鳴りながら進みでました。
「ここの国にはここの国のルールってものがある。みな、それぞれ助け合って生きておる。現にこれまで治めるものがいなくても、やってこれた。それをなんだ、突然現れて何様だ。」
エルゼレーヒはそれを聞くと顔を真っ赤にさせました。
「なんなの?良かれと思って言っているのに!失礼だわ。」
エルゼレーヒは周りの小人たちを見回しました。小人たちはあわててみんな目を逸らしました。
「なによ。こんなところこなきゃよかったわ。」
エルゼレーヒはそう言うと、その場から立ち去り行ってしまいました。
「どうする?しろ。」
くろが尋ねました。
「うーん、放ってはおけないな。ぼく、追いかけてみるよ。」
「そうだね、そうしよう。」
しろとくろはエルゼレーヒの後を追いかけて行きました。
後編に続きます😌
✳︎ひとこと✳︎
こんにちは!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました💐
SHIROは一度完結しましたが、おりてきた物語があったので番外編として残しました。
わがまま王女のエルゼレーヒ。
これからどうなってしまうのでしょうか。
後編も楽しみにしていてくださいね🎵
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