読書記録 『黄金の王 白銀の王』
『黄金の王 白銀の王』を読みました。作:沢村凜 出版社:幻冬舎
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「小事に目を奪われてはならない。でないと、旺厦や鳳穐が滅ぶ前に、この翠が滅ぶ」
この言葉はこの作品の中での核だ。
何度も色々な表現で繰り返されるこの警告のような言葉。
これが物語を動かしている。
敵対するふたつの一族——旺厦<おうか>と鳳穐<ほうしゅう>——どちらも初代王の末裔の一族。
絶対に交わることの無い、平行線のようなそのふたつを交わらせようとした、旺厦と鳳穐の2人の頭領の困難の物語だ。
途切れることのない争いの中で、疲弊しきった翠<すい>の国を、守り育むためにどうすればいいのか。大陸からやってくるという強大な敵に立ち向かうには内輪で揉めている暇はない。
言葉にするだけなら、現代に生きる私たちなら、客観的に見ている人間なら、簡単にわかりそうなことが、憎み合うその当事者にとっては難しい。百数十年にわたって繰り返されてきた殺し合いの歴史が、体に刻み込まれている。
その困難にどのように立ち向かうのか。
歴史書を紐解くかのように語られる、この話には、実在したのかと思わせるようなリアリティがあった。
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この物語での唯一の信仰のような存在「迪学(じゃくがく)」は、なすべきことをなすということを説く、迪く者のための学問だ。
私利を追ってはならない。小事に目を奪われて大事をおろそかにしてはならない。困難を理由に義務を怠ってはならない。
どれも、本当に難しいことだと思う。私には無理。うん、無理。
並みの人間にはなかなか実践しようとしても難しい、この厳しい迪学を信念として胸に抱えながら、それでも困難から逃げたくなる、私利にとらわれそうになる、小事に目を奪われそうになる。そのたびに自分を、そして相手を檄する姿が、人間味を感じて、好きだ。
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正直言うとこの本、読みながら「表紙詐欺だ!」と何度も思いました。
図書館の棚に、並んでいるその背表紙にどこか惹かれて手に取ると、見覚えのある絵の表紙でした。(今調べたところ、KADOKAWAの文庫版では絵が違うみたい)
村山早紀さんの『黄金旋律』の表紙と多分同じ。
あと、『うそつき、うそつき』の表紙とも同じ。
この本も見た瞬間に、あっこの絵は……ピコーン! ってなりました。
(まだ読んでないけど)
片山若子さんが好きなんやな……ってそれは置いといて。
背表紙、そして表紙に惹かれて手に取ったこの『黄金の王 白銀の王』は、「表紙詐欺だろ!」って叫びたくなるような話でした。同じことを言って締める、というね。笑