VRによる産業革命への期待
HTCやOculus、PSVRなど様々なメーカーが初代HMDを発表し、VR元年といわれた2016年。当時国内ではメーカーのほとんどが一般消費者をターゲットに注視しており、各メディアもそれに便乗するような形で盛り上げていた。
昨今のVRブームは一般消費者向けのゲーム用途としての使われ方から大きく変わり、産業応用へ期待が高まっている。なぜ一般消費者から業務向けへと市場の動きが移っていったのか、最新動向をみていこう。
アメリカの調査会社「Superdata」が2018年末に発表したデータによると、企業のVRへの投資は増大しており、トレーニング用途を中心に導入している。
「Oculus Rift」の登場がVR機器の一般化に大きな影響を投じている。
発売当初から「次世代のゲーミング機」として注目を浴びていたOculus Rift。発売当時、他のHMDは「安くても10万円」という価格帯のなか、Oculus Riftは数万円で購入することが出来た。
一般家庭でも手軽に没入感の高いVR体験を可能にし、普及が一気に現実的なものになった。
また、コンテンツを作る開発側への影響も大きかった。
スマートフォンの大量生産によって急激に安価になったディスプレイやセンサーなど既存のパーツを組み合わせ、ソフトウェアで補正をかけることで視野角の広いVRが体験できるようになった。
また、ソフトウェア面でもUnityやUnreal Engineのような無料でも開発できるソフトが普及したため、開発のハードルが大きくさがる技術的なブレイクスルーとなった。
この流れをうけて産業でも徐々に変化が始まる。
これまでも、企業が大規模なシミュレーターなどのVR環境を導入しようとする動きはあったが、コスト面が課題となり大手企業が莫大な資金を賭して行っていた。
しかし、ここ数年で安価に高品質なVR体験が可能となった。
コスト面での障壁がなくなったことで中小企業の導入や、店舗・エリアごとの導入などが出来るようになったのだ。
2016年時点では一般消費者がメインターゲットとされていたVRがここにきて「産業応用」という新たなニーズが拓かれ、顕在化しているのである。
もちろん、産業応用への拡大は2016年(もちろんそれ以前からもある)先行企業が繰り返してきたトライアンドエラーに支えられてる。
2019年前半時点でもっとも注目が集まっているVR用途はトレーニングである。
調査会社「Superdata」の統計でもVRに取り組んでいる企業全体の約7割がトレーニング用途に使っているのだ。
企業におけるトレーニングといっても、新人研修のためのOJTや安全教育、機器の取り扱いやマニュアル業務の徹底など多岐にわたるが、VRHMDのコストから逆算し、相互作用の伴わないようなトレーニングに多く使われている。
大量導入のモデルケースとして、アメリカの小売大手ウォルマートが17,000台のHMDを導入した事例は記憶に新しいのではないだろうか。
ワープロやPCは業務用から普及が始まっている。
ポケベルも、普及のきっかけは営業や医療関係者など、外出の多いビジネスマンのサポートツールとしてだった。
産業応用から始まり、投資による業界の拡大、そして一般普及。
これまでの流れを見れば、今後もさらにVRが拡大を続けていくことは必然だろう。
参考:http://www.superdataresearch.com/xr-training/