ARでの優れたUI実現に向けて。フォントワークスと東大が共同研究を実施
フォントの開発・販売を行っているフォントワークス株式会社は、東京大学大学院情報工学系研究科 廣瀬・谷川・鳴海研究室と共同で、「AR環境下での文字情報提示手法の研究」の実施を発表しました。
この研究は文字情報をAR表示する際に、どのような観点からフォントを選ぶことが適切かを検証したもので、2017年10月から開始され2020年3月まで行われる予定となっています。
研究実験の概要
<文字情報の認識不可に関する分類>
文字情報認知負荷とは、人が文字情報を認知する際に生じる負荷のことで、以下のようなものが考えられます。
・Readability(可読性)… 文章内容を理解する際に単語を認識する能力
・Legibility(判別性)… 文字としての認識のしやすさ
この負荷に影響を与える要素としては以下のようなものが考えられます。
・フォントタイプ
・フォントウェイト
・フォントサイズ
・フォントカラー
・文字情報のレイアウト
・背景
・文字情報の動き
・表示メディア
・ユーザの動作
・周囲の環境
また、この情報認知負荷が高い場合以下の要素に影響を及ぼすと考えられます。
・文章を読むスピード
・文章内容の理解度
・記憶への定着度
・文字情報を見つけるスピード
<情報分類>
この研究実験ではAR空間内に設置する情報を「方法」と「目的」で4つに分類しています。
◆情報提示目的による分類
・発見型
「発見型」は、提示されていることに気が付いてもらうことを主目的とする情報です。例えばメニューバーや通知等のユーザインタフェース、広告や標識、注意喚起などがあげられます。
・理解型
「理解型」は、情報の内容を精査してもらうことを主目的とする情報です。例えばネット記事やマニュアル、メールの本文などがあげられます。
◆情報提示方法による分類
・ユーザ追従
「ユーザ追従」はユーザの視界の動きに追従し、常にユーザの視界に提示されるものとして分類されています。
・空間固定
「空間固定」は、特定の場所に固定された状態で提示される情報です。モノや場所と紐づいた情報提示に適しており、商品情報のアノテーション、経路ナビゲーション、観光情報の表示があげられます。
実験結果
HoloLensを使用し、実際にユーザに見てもらい実験を行いました。
実験結果から、AR空間における見やすいフォント表示の条件として以下の事がわかりました。
(1)濃度が高いものほど発見型の情報提示に有利である
(2)セリフ体よりもサンセリフ体の方が発見型の情報提示に有利である
(3)明朝体よりもゴシック体の方が理解型の情報提示に有利である
(4)ゴシック体よりも明朝体の方がユーザ追従時における発見型の情報提示に有利である
まとめ
・特定の場所に表示される場合、濃度の高い(太字)サンセリフ体がユーザに認識されやすく効果的です。また、ユーザの理解を深めたいテキスト情報である場合は、ゴシック体の情報提示が効果的です。
・常にユーザの視界に入る文字提示では、明朝体がユーザ気付きやすいため、ポップアップ通知などに効果的です。
こうした実験に基づくデータや、人間工学の研究データなどはデジタルツインのUI設計に非常に有益です。
出典:https://fontworks.co.jp/fonts/ar/