投資家同士でJリーグクラブの決算書を読んでみた 2024 / 投資家の日常は、いとをかし。 #13 2024年7月 前編 テキスト版
こちらのポッドキャストのテキスト版です。
renny:「投資家の日常は、いとをかし」2024年7月エピソードをお届けしたいと思います。投資信託で20年ほど投資を続けてきた僕rennyと個別企業への株式投資を20年以上続けてこられた吉田さんと、投資家の日常で「いとをかし」、興味深く思ったことをお話するポッドキャストです。
日経平均42,000円超えの今週、なにかした?
renny:今日は7月13日。今週は日経平均が4万2000円を超えて史上最高値を更新した週になったんですけれども、吉田さんは何か投資で行動される、ってことはあんまりなさそうな感じがするんですけど、いかがでしたか?
吉田:もう今年の初めからずっと同じなんですけど、今年はもう外貨預金と米国債でいいや、って思ってます。
renny:株式を買う時期ではないというふうな感じですかね。
吉田:今持っている株式が増えていくから、それでいいかな。どんどん株価が上がっていっちゃうから、さらに株式に投資するのではなく、債券の割合を増やしていって、安全運転する感じですね。
renny:僕は以前から持ってた日本株の投資信託を少し解約しました。さすがに上がりすぎてるかもしれないなと思って、もう追加投資しないファンドを解約して、ここから仮に株価が下落したときに、相場に関係なく資金が入ってきてるファンドの方にお金を移し替えるのがいいのかなと。これだけ株価が上がっちゃったんで、下がるときは利益確定なり、そういうような解約が多くなって、そういうときこそ買いに向かってくれるようなファンドがどれかな、っていうのを考えて移し替えようと思ってます。
吉田:日本株も細かく見ていくと、高配当銘柄がちょっとおかしな株価の動きをしている。たとえば、日本たばこ産業。ずっと右肩上がりで株価が上がっていて、この会社は将来性ないのになぜ? たぶん配当目当ての人たちが群がっていて、おかしなことになってるんだろうな、みたいな企業が結構あるので、そういうところから株価が下落しそうだなとは思っています。
renny:NISAだと配当が出ても税金がかからないから、高配当株式が人気になってるっていうのは、そういう会社を集めたファンドがすごく人気だとかって見ましたし、みんなそんなに配当が好きなんだなっていうのを改めて思いますよね。
吉田:昔からですよね。なんか債券のファンドがすごい流行ったときありましたよね。何とかソブリン…
renny:グローバル・ソブリン・オープンですよね。現金が安定的に入るのがお好きな人は多いかとは思うんですけれども。今ちょっと心配だなというか、大丈夫なのかと思うのは、アメリカの大統領さんですよね。選挙どうこう以前に、昨日なんか言い間違えたとかっていうような話があって。
吉田:ひどい言い間違いでしたよね。(※バイデン大統領がNATOの会合でゼレンスキー大統領を誤ってプーチン大統領と紹介してしまう事件発生)
renny:あれは笑ってられることなのかな。だってあの人、核のボタンというかスイッチを持って歩いてるんですよね。あんな状態の人が持ってるのはちょっと怖い。この先なにがどうなるのか分からないですが、アメリカの大統領選挙を含めて、何かちょっとしばらくやだなっていう感じがしますね。
吉田:そうですね。
Jリーグクラブの決算を読む
renny:本日は去年も取り上げたJリーグのクラブの決算を取り上げたいと思います。前回からその経過を含めてですね、おかしいというか興味深く思われたクラブってありましたか?
吉田:去年取り上げた中だと鹿島アントラーズ。メルカリの傘下に入ってすぐコロナがやってきて、まだ経営手腕を判断できないよね、と去年お話しましたが、今季もまた赤字だったっていうことで、なかなか難しいなと。
renny:Jリーグのすべてのクラブの決算を見てると、営業赤字だから営業利益段階で赤字のクラブが結構目立つなと。鹿島は3億円ぐらい営業赤字。売上高は64億円で、Jリーグのクラブの中では上位グループではあるんですけれどもね。売上高トップは浦和レッズ。100億円を突破している。
吉田:たぶんJリーグのクラブの中で初めての100億円突破だと思います。
renny:それでも営業利益では3億6700万。営業赤字のクラブが多い中で黒字というのは立派なところなのかな。売上高で浦和に続くのは川崎フロンターレの80億円ぐらいで、その次がヴィッセル神戸。神戸は売上は70億あるけれども、12億円以上の営業赤字。
吉田:この原因は去年もお話しましたが、収入に対して人件費が高すぎて。結構、人件費を引き下げてきたんですけど、まだ浦和と同じぐらい人件費の水準ですね。
renny:僕の応援してるFC東京についてブログに書かれていましたよね。
吉田:FC東京が4期連続赤字になっていて、中身がわからない特別損失が3期続いているのがちょっと気になるなと。
renny:そうですよね。特別損失っていうぐらいですから、固定資産の処理処分じゃないかなと推測するんですけど、その割にバランスシートを見ているとFC東京は極端に固定資産が小さいですね。他のクラブは億単位のなのに、2024年1月期の期末だと、FC東京の固定資産は1800万円。
吉田:そうか。2022年の決算の特別損失は固定資産の処分ですね。そこで固定資産がガクッと減ってます。
renny:不良資産だったのかちょっとわからないですけどね。Jリーグのクラブは選手の保有権が大きな資産ではあるけれど、バランスシートに認識されないと思うんで、この固定資産って何なのかな。たとえば川崎フロンターレは総資産の58億に対して42億円が固定資産なんですよ。川崎のバランスシートはちょっといびつ。流動資産が16億円に対して流動負債が30億円。一時的なものなのかもしれないんですけれども。
吉田:クラブハウスでも建てたりしたんですかね。なかなかクラブのホームページで、IRというかちゃんと決算報告をしてるチームって少ないんで、中身がわかんないんですよね。
renny:貸借対照表、バランスシートを見てみると、クラブでかなりバラツキがありますよね。一番資産規模が大きいのは、今お話した川崎ですが、一番小さいアビスパ福岡は10億にも満たない。ちなみに福岡は債務超過ですね。サガン鳥栖も。クラブとしての経営基盤、持続性の面で大丈夫なの、って考えちゃいますよね。
吉田:そうですね。債務超過だとライセンスを剥奪されちゃう規約が、2026年の決算期から復活するので、それまでに何とかしないといけない。
renny:福岡や鳥栖は株主として増資してくれるような資金の出し手がいないと、債務超過を解消するのは結構難しいですよね。他に何か吉田さん、今回ご覧になってお気づきになったことってありましたか。
田崎健太「横浜フリューゲルスはなぜ消滅しなければならなかったのか」
吉田:この関連で横浜フリューゲルスの本を読みました。田崎健太さんの「横浜フリューゲルスはなぜ消滅しなければならなかったのか」。とにかく親会社の全日空、ANAがやばい会社だっていうのがよくわかるっていう内容でしたね。
renny:具体的にどんなところが?
吉田:Jリーグ発足以前からの話が書かれていて、元々横浜にあった市民クラブが社会人リーグから勝ち上がってきたところをANAが目をつけて、半ば乗っとるみたいな感じ始まったのが、フリューゲルスの原型。その時点で元々所属していた選手が試合をボイコットするとかっていう問題も起きていて、実はそのときにチームを離れてた人が、後にサッカークラブ経営に詳しくなって、他のクラブを助けたりするんですが、その後ANAから出向してきた人たちは何にも経営のことが分からない人で、Jリーグ開幕以降、めちゃくちゃな経費の使い方をして、もうどんどん赤字が膨らんで、最後はANAからの支援も打ち切られて、どうにもならなくなったっていうような歴史なんですよね。
renny:最終的にはお金で消滅したんでしょうけれども、その根源をたどれば、そこに携わってた人の問題だった。人災だったところもあるんですかね。
吉田:これを読んでると確実に人災だなっていう感じはありますね。最後に天皇杯優勝してチームがなくなるんですけど、当時は日本代表の選手やブラジル代表の選手もチーム内にいたんで、その選手たちを移籍させて移籍金をもらって、チームに残ってる若手だけでやり直せば…そういう道もあったはずなんですけど。なぜかあのブラジル代表だったサンパイオを移籍金ゼロでブラジルに移籍させてたりするんですよね。最終局面で全くサッカークラブの経営がわかんない人たちが、ぐちゃぐちゃにしてしまったんです。
renny:そういう経緯があって横浜フリューゲルスはなくなっちゃったっていうことなんですね。
吉田:そういう経緯もあって、Jリーグでは3期連続最終赤字だったり債務超過になったら、Jリーグのクラブライセンス剥奪しますよっていうような規定ができて、剥奪されるとJ3の下のJFLまで落ちちゃうんだったかな。ちゃんと身の丈に合った経営をしなさいよ、っていう規定ができた。そのきっかけになった事件だったんです。
renny:今はこういうことって世の中の会社一般では起きないような気もしてはいるんですけど、いつ頃の話でしたっけ?
吉田:1995年頃ですね。
renny:バブルがはじけて、たしかに世の中だいぶ良くなくなってきた頃ですね。一番心配なのはね、航空業界はANAもJALも良くなったと思ったら、また落ちるみたいに、その繰り返しから抜け出せないという印象がありますよね。
吉田:そうですね。もうなんか企業の風土みたいになっちゃってるのかな。
renny:それなりに競争環境が激しいのに、LCCみたいなのが出てきて、さらに競争環境が厳しくなったりしていることも影響してるとは思うんですけどね。
UEFA EURO 2024
renny:Jリーグからちょっと視点をドイツに向けるとですね、EURO2024がやってまして、決勝の組み合わせが決まるところまで進んだんですよね。
吉田:スペインとイングランド。
renny:スペインには16歳の選手がいるとかっていうような。
吉田:バルセロナの選手で、やっとメッシの次が出てきたかなという。
renny:全部の試合をご覧になってないと思うんですけれども、サッカーそのものだけじゃなくて、スタジアムの様子を見てて気づかれたことがあったそうですね。
吉田:なんか中国企業の宣伝が増えたなと思って調べてみると、今回の大会のメインスポンサー13社あるんですけど、そのうち5社がもう中国の会社。家電のハイセンスに、電気自動車のBYD、アリババとかアントグループが出てて、ヨーロッパに中国って進出してる感じあるので、その象徴的な出来事なのかな。
renny:以前は日本の企業も入ってたと思うんですけど、あんまり存在感がない感じなんですかね。
吉田:チャンピオンズ・リーグだとソニーが入ってたかな。もうそれだけかもしれないですね。
renny:中国の企業にとっては、露出して認知度を上げる場所として、UEROが価値あるって認識されてるってことなんでしょうね。
吉田:そうですね。認知が広がると意外と現地の人たちは、この企業がどこの国の企業かっていうのを考えないものみたいなんで。一昔前だとアメリカの人の大半が、ソニーはアメリカの会社だと思ってたみたいな話があったりするぐらいなんで。
renny:僕はEUROを見れてないんですね。我が家に受験生はいまして、彼がサッカーはそれなりに好きだというのはわかっていて、それを横目にして、サッカーを見るのはちょっと申し訳ないなと。本人はスマホで見てるのかもしれないんですけど。サッカーの内容をご覧になってて、あの国が一最先端みたい面をお感じになってるようなことってありましたか?
吉田:そういうのはないんですけど、強豪国とそうじゃない国との間の実力差が広がってきたなっていう印象はありますね。昔だと、思いもよらない国が勝ち上がって、ギリシャが優勝したこともありますよね。チェコが決勝まで勝ち上がってきたり。そういうのがなくて、今回は準決勝の4チームはスペイン、フランス、イングランド、オランダ。
renny:たしかに決勝の組み合わせがスペインとイングランド、要はリーガ・エスパニョーラとプレミアリーグで、最高峰って言われてるようなリーグを持っているようなところが結局当たるわけですしね。今回強豪国って言われるようなところで、早々にいなくなったのはイタリアぐらいでしょう?
吉田:そうですね。やっぱりセリエAの状態があんまり良くないのと連動してるような感じですね。
renny:決勝の予想としてはどちらが勝ちそうですか。
吉田:スペインのほうが面白いサッカーをしているので、スペインが勝つといいなぁ。
後編に続く