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投資家同士で「読書」を語ってみた 前編(2023年6月)テキスト版
renny: 月次レポート研究所のポッドキャスト2023年6月のテーマは読書です。過去、吉田さんと月次レポートのお話をしながら、これまでどんな投資をしてきたかとか、という話をしてくる中で、何度も読書に関する話題が出てきています。そこで一度、読書をテーマにしたポッドキャストを作ってみたいと思います。
月にどれくらい本を読む?
renny:吉田さんのブログを拝見していると、非常にたくさん本を読みになっていますが、月にどれぐらい本をお読みになってるのですか?
吉田: 図書館から借りてくるのは月に20冊ぐらい。その半分ぐらいはちゃんと読んでいるかな。あと何冊か買って読んだりもしています。
renny: 電子書籍やKindleではなく基本、紙の本なんですか?
吉田: 図書館で借りちゃうんで紙ですね。読んでみてどうしても手元に置いておきたかったら、自分でも買うみたいな感じです。電子書籍でも買いますが、やはり読んでみて本当に良かったら、やっぱり紙の本も買っちゃいます。
renny: なるほどね。電子書籍もご利用になっているんですね。電子書籍を選ばれる基準はありますか?
吉田: 図解が少ないとかですかね。図が入ってくると電子書籍は結構読みにくいんですよ。
renny: たしかにそうですね。画像のページに飛んで戻らなきゃいけないとかありますよね。僕もKindleを併用していて確たる基準はないんですけど、ページ数が多くて分厚い本を持ち歩くのは大変、っていうようなところがあります。月10冊強ぐらいをお読みになってるということですが、どういうジャンルをお読みになるのですか? たとえば小説とかフィクション系とかもお読みになるのか、あと本にカウントするという意味でいくと、漫画もお読みになるのか、そこらへんはいかがですか?
吉田: 漫画はほとんど読まなくて、小説は最近はほとんどSFですね。
renny: それは海外の作家さんですか?
吉田: 海外、日本を問わずっていう感じです。SFは5,6年前ぐらいから読むようになって、意外と投資に役立つイメージです。
最近読んだ本でおもしろかったのは?
renny: そうなんですね。そのあたりを今日お聞きしていきたいと思うんですけれども、まずは最近読んだ本で、これは印象的だったなというか面白かったなとかっていう本はありますか?
吉田: SF小説つなりでいくと、冬木糸一さんの「SF超入門」。有名なSFをあらすじとともに紹介してくれてる本があって、読みたい本を探すのに便利でした。
renny: ガイドブック的な本ですね。それはSFの古典みたいなものを含まれているのですか?
吉田: はい。古典も含めてSFってどんな本があるのか、いまいち全貌がつかめないので。
renny: そうですよね。どこからSFで、どこまでがSFなのかが、結構微妙かなと思ったりしますね。「SF超入門」をお読みになって、どんな発見がありましたか?
吉田: そこで紹介されていた本を少しずつ読んでいる途中ですが、太陽フレアを題材にしたSFが興味深かったです。太陽フレアの影響で電力が停止しちゃったっていう設定で書かれていて、いつか来ると言われてるじゃないですか。衛星が故障してGPS使えなくなり、送電網も壊れちゃって電力が作れなくなると、その送電網の修理もできなくて復旧に何年かかるか分からない。そうするとどういうことが起きるか、という内容なんです。
renny: それっていつ頃書かれた本なんですか?
吉田: これ最近の本じゃないかな。(2017年出版でした)「赤いオーロラの街で」というタイトルで、日本人が書いた本です。日本でオーロラが見えるとしたら、赤くて、縦に立つようなオーロラが出るらしいんですよ。江戸時代の絵には火の柱がたっているようなものが残っているんですよ。
renny: それオーロラなんですか。オーロラってどういう理屈でしたっけ?
吉田: 普通のオーロラは、北半球の緯度の高い地域で見えますよね。
renny: 北極圏の方に近づけば近づくほど出やすいっていう感じですね。
吉田: 太陽風が強いと磁気が北海道ぐらいまで降りてくると、日本でもオーロラが見られるそうです。
renny: そういうことが江戸時代にはあったんですか?
吉田: 江戸時代には絵が描かれていて。もっと昔だとたしか古事記とかの記述にも出てくんだったかな(訂正;日本書紀でした)。
renny: それは初耳でした。そんなことがあるんですね。さっきSF小説も投資に生かせるようなところがあるんじゃないか、というお話でしたが、どんなところが生かせそうですか?
吉田: 実は値上がり前のNVIDIAに投資したきっかけがSF小説なんですよ。
renny: そうなんですか。
吉田: SF小説が原作のアニメなんですが、2017年に「ソードアート・オンライン」というVRゲームを題材にしたアニメと出会ったんです。VRや人工知能が普及したらどういう事件が起きるかみたいな内容で、遠い未来じゃなくて、5年、10年後の近未来の世界が描かれていました。そういう時代が来るとしたら、どんな会社が注目されるかな?と考えたときに、GPUのNVIDIAだと。そこから投資してから5倍ぐらいにはなってくれました。その2匹目のドジョウを狙って、SF小説への関心が高まったんです。
renny: フィクションが現実になっていくようなネタがないかなみたいな、そういう感じですか。
吉田: そうですね。将来考えるヒントが転がってるんじゃないかなと。
renny: 僕も最近ある人からすすめられて、ミステリー作家の伊坂幸太郎さんのデビュー作「オーデュボンの祈り」を読みました。これがなかなか奇想天外なストーリーでして、これも物によってはSFなのかなと思えるぐらいの、なかなか面白い設定の話でした。最終的に種明かしみたいなのがあるわけですけれども、いろんな人がその犯罪というか殺人に関わってたみたいな、エラリー・クイーンやアガサ・クリスティにも似た感じで。ミステリーをたまに読むと、何がきっかけでというか、何がそういうその事件を引き起こしたのかとか、あるいはそのどうやってその事件が起きたのか、というような伏線が散りばめられてるのを見てると、投資とかにも繋がるんじゃないかなと。フィクションを読むとそういうのを鍛えられるところはあるかなと思いました。以前にお話をお聞きしたとき、吉田さんも推理小説はかなりお読みになってましたよね。
吉田: はい。大学生の時は推理小説しか読んでないぐらいで。
renny: 吉田さんにとって、推理小説でこれを読んだら面白いんじゃないかとかっていうのありますか?
吉田: 一番好きだったのはエラリー・クイーン。解決編の前に「読者への挑戦状」が入っていて、もう全ての情報は提供したからここまでで犯人がわかるはずだよ、当ててみな、みたいな。そういう系統のミステリーが好きでしたね。
renny: あと僕の最近読んだ本で中身もさることながら、18年ぐらい前に読んだ「貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント」の著者、北村慶さんの本名に驚いたということがありました。この「貧乏人のトレイ 金持ちのインベストメント」が長期投資とパッシブ運用を強調してたんですよね。だから僕は資産形成をはじめて初期の段階でパッシブ運用を目していたのは、この本の影響が結構大きかったんです。その著者の北村慶さんはペンネームで、本名で先ごろ「CFO思考」という本を出されたんです。本名は徳成旨亮さん。今はニコンのCFOで、その前は三菱UFJフィナンシャル・グループのCFO。それを知ってかなり驚きました。今回出された「CFO思考」は資産運用ではなく日本の企業のは実現したいことをやるためには、リスクを積極的に取らなきゃいけないよねみたいなトーンで書かれてました。そんな驚きがあったのですが、本のどういった中身だけじゃなくて、この人がこんなことを書いてたのか!と驚いたことって吉田さんはありますか?
吉田: そういうのはあんまりないかもしれないですね。
高校時代の現代文の学び直し
renny: こういう本にまつわる驚きがあったのも、今回、読書をテーマにさせていただいた理由のひとつだったんです。ちょっと話を変えて、先日吉田さんがブログで、高校生の頃の現代文をやり直すのがいいんじゃないかというような趣旨の記事をお書きになってましたよね。そのあたりについて教えていただきたいなと思ったんですけれども。
吉田: 高校生の参考書が役に立つのは理解していて、たとえば日本史の図録とか世界史の図録も改訂されるたびに買い換えてんですよ。それは高校生のときから歴史が元々好きだったからそういう習慣があったけど、現代文は大っ嫌いだったんで、見向きもしてなかったんですよ。でも、東大の入試に選ばれている文章を集めた本「東大現代文で思考力を鍛える」という学習参考書ではなく、一般向けに出された本に出会ってビックリして。問題文に選んでる本の内容もいいし、問題の作り方、文章がちゃんと理解できてるかとかも、確認できる問題になっていて、過去問を解いていくと、世の中を考えるための必要な教養が、自然と身に付いていくようにできてることに気づかされたんです。いろんな分野の本を片っ端から読んで、やっと何か世の中のことわかってきたなって思った頃に、現代文の入試問題ちゃんと見てみたら、なんだここにほとんどあったじゃないかと。そんなことを数年前に気が付いて、うちは子供いないですけど、もしいたら、こんなに役立つからちゃんと勉強しろと説得できる自信ありますね。
renny: 現代文の問題が教養に繋がるというようなお話だったんですけど、何か具体的に例をあげていただくことってできますか。
吉田: そうですね。たとえば日本の特徴。自分でいろんな日本文化の本読んできたけれども、ちゃんと筋道立てて、解説できるような文章をちゃんと選んであるっていうようなところがあって。日本語だと一人称をその時々によってコロコロ使い分けたりするじゃないですか。
renny: そうですね。そういう意味では英語とは全く違いますよね。
吉田: だから日本語は自分は何者かというのを、相手が誰かということに依存する言語構造になってるというような話とか。
renny: たしかに一人称が変わるっていうのは、ある種その場の空気というか、そこに自分が置かれてる立場とかで変えますもんね。なるほど、それは日本的だと言われればそうですよね。現代文はやった記憶はあるんですけど、全く覚えてないっすね。
吉田: 今やってみると結構解けなかったりして。ということは、普段読んでいる文章もちゃんと理解できてないっていうことがあるんじゃないかと反省させられるんですよね。意味を取り違えてることが、ちょくちょく起きてると思うんですね。そういう確認や反省にもなりますかね。
renny: なるほどな。ブログの記事の中で、読解力を鍛えると書かれたんですけれども、誤解しないための読解力みたいなところなんですかね。
吉田: そうですね。たぶんSNSとかで変な炎上の仕方をするのって、「しかし」「でも」「だが」といった接続詞がちゃんと読み取れないで、ある一部分はちぎって怒ってる事例が結構あるんじゃないかと。文章が読めないのはヤバイことだと思うので、自分がちゃんと文章を読めてるのかを確認するためには問題解いてみるしかない。
読書を通じて遠回りに気が付いたこと
renny: あとさっき「すごく遠回りをしちゃってたな」というようなお話をされてましたが、そこから若干飛躍はあると思うんですが、例えば投資について、読書を通じて遠回りしたな、と気づかされるようなことってありますか?
吉田: この1冊で、というのではないですが、物理学、宇宙物理学とか量子力学とかあっちの方面の本を読んでみると、投資や金融で研究されてることは、古い理論に基づいているのかなと思わされたことがありました。たとえばインデックス投資が正しいとされる基になっている投資理論に、効率的市場仮説っていうのがありますよね。うまく伝わるかどうか分からないですが、物理学でいうとニュートン力学の時代の感覚で、今の物理学はもっと先に行ってるので、何百年か遅れた理論に基づいているようなイメージなんですよ。今の価格が一番正しい価格である、って言われてもなんか納得いかないのがあるので。それはすごく古い考えがベースにつくられているからなのかなと。
renny: 効率的市場仮説はあくまで仮説だと思うし、もう個人的にはもはや仮説ですらないんじゃないかなとかって思ったりもします。人間、誰しも合理的に行動するとかっていうような前提も、たぶん効率的市場仮説の中に含まれてると思いますが、そもそも合理的とは何かという定義も変わると思うんですよね。とにかく自分の得られる利益を最大化するのが合理的ということなんでしょうが、昔は効率よくたくさんお金が増えるが合理的だと思ってる人が大多数のときと、今は必ずしもそうじゃなくなってきてると思うので、そういう意味でもう仮設ですすらなくなってきてるんじゃないかなとかって思いますよね。
吉田: そうですね。
renny: 僕もこんなに遠回りしたのか、って最近思い返すことが多くてですね。やっぱり投資でも最初に何どんな本読むのかで全然違うなと思うようなことがあって。たとえば来年に向けてNISAの話で盛り上がってますけれども、NISAを学ぶ前に学ぶべきことが他にもいっぱいあると思うんですが。ただそれでいくと、効率よく儲けたいという人がまだまだいっぱいいるというエビデンスなのかもしれないですが。でも、どういう本を最初に読むかで変わってくるというか、徹底的に変わる部分もあるんじゃないかなと思ってるんですけどね。
吉田: でも私、最初に読んだ投資の本は、3万円を1億にするみたいな本でした。(補足;1999年11月出版の仁科剛平「インターネットのミニ株取引から始めて株で1億円作る!」でした)
renny: たしかに最初にあった本だけで決まるかって言ったらそうでもないのかな。でも順番ってありますよね。この順番で読んでいれば良かったな、というようなあるんじゃないかと思ったりはするんですけれども。
吉田: そうですね。
renny: 今から振り返ってみれば、この順番で読んでおいたらよかったのに、と思えるところはありますが、その場にいたときは絶対そうならなかったでしょうからね。
後編に続く