#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年8月 第1回 スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド(愛称:対話の力) の月次レポートを読む 前編 テキスト版
スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンドの月次レポートをテーマにしたポッドキャスト・前編のテキスト版です。
renny:月次レポート研究所のポッドキャスト8月版です。今回は実際に月次レポート、特にアクティブファンドのレポートを取り上げてお話をしたいと思います。その際にフレームワークとしてですね5W1H、Why、What、When、Where、Howを折り混ぜながら話していきたいと思います、そもそも月次レポートって、なぜ必要なのかなっていうようなことがあると思いますが、吉田さんは、どんなふうにお考えになってますか?
吉田:普通に個別に企業の株を買っていたら、四半期の決算報告とかがあるように、ファンドもお金を出してくれる投資家に対して定期的に報告しなきゃいけないよね、っていうのはまずありますね。
renny:はい。そもそも中身が見えないというか、中身が明らかにされなかったら、いくらで買えるとか売ったらいくらかっていうのは毎日出るかもしれないですが、そこに何が入ってるのかを報告してもらわなかったら、まず一体このお金はどうなってるんだろう、というのはそもそも分からないですもんね。
吉田:そうですね。以前も話したんですけど、投資信託って文字通り解釈すると、「信じて託す投資」なので、何をもって信じるのかという情報が必要だから、こういうレポートをないと駄目ですよね。
renny:そうですよね。投資信託についてSNSで発信されてる方も非常に多いんですけれども、その価格がどうしたこうした、儲かった損したとか、って発信されてるような人は見受けられますが、なかなか投資対象というか自分はどういう会社と関わりを持っているのか、っていうことに対して、いまいち関心が盛り上がってないな、と常々感じています。もちろん月次レポートの発信内容がもうちょっと頑張ってよ、っていうのはそもそもこういう研究所を始めたきっかけでもありますが、やっぱり、なぜ存在してるのか、っていうのは投資家の方もよく腹に落ちてない人も多いのかなと思ったりしますね。
吉田:そうかもしれないですね。
renny:だから読みたくなるようなものを発信してもらうことも大事だと思うんですけれども、そもそも投資家が、月次レポート等がどうして必要なのかを考えてもらいたいなと思います。
renny:でですね、先ほど冒頭にお話しました通り今回は個別のファンドのレポートを取り上げてみようということで、スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド(愛称:対話の力)のレポートを取り上げたいと思います。取り上げた理由はこのポッドキャストで6月に2回に渡って、株主総会をテーマに吉田さんとお話していて、その際に投資信託の運用会社さんは、株主総会にどういうふうに関わっているんだろう?みたいな話をしたんですよね。そうしたら、このファンドの7月末基準のレポートで、実態がどうなのか説明されていたので取り上げてみます。
renny:こちらのファンドの月次レポート、1ページ目は運用実績、過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、3年、設定来で、参考指数のTOPIXの配当込みと比較してどうだったか、まずはパフォーマンスについて説明しています。そのすぐ下に、noteのURLとQRコードが貼り付けてあります。これは5W1Hでいくと、Whereに当たるような話ですね。投信会社さんの月次レポートは、その会社のウェブサイトであるとか、取り扱っている販売会社の証券会社の商品のページのところに、毎月の月次レポートが貼り付けてあるの普通ですが、スパークスさんは去年ぐらいからですかね、こういうふうに別のプラットフォームでも発信されています。吉田さんはここに関してはどんなふうに思われますか?
吉田:いきなり運用会社のホームページに見に行く人はめったにいないと思います。なので、すそ野を広げる意味ではnoteとかで書いて、タグとかで繋がってまれに見てくれる人がいる可能性はあるので、自社のウェブサイト以外にも載せるのはいいんじゃないかなと思います。
renny:そうですね。ただでさえリーチするところが少ないと思いますし、増えた減ったというところしか見てない人は、月次レポートを見ることもないと思います。もちろんアクティブファンドの場合は、さすがに読まれている方が多数であってほしいと願うんですけれども、毎月毎月僕みたいに必死で見るような人ばかりではないと思うんです。何かの機会に目に触れることを期待するんだったら、違うところに場所を作るのもありなのかなと思ったりしますね。
吉田:そうですね。
renny:月次レポートに戻ると、1ページ目の後半は設定された2014年の12月から現在に至る値動きが上に下にというのがグラフで載ってます。ここら辺はどのファンドも同じような発信してるかなと思います。2ページ目に入りますと、どんな投資をしてるかを説明しています。上の段は株式の比率がどれぐらいであるとか、中ほどには投資先の会社がどういう市場、このファンドの場合日本の会社に投資するファンドなので、東証のプライム市場なのかスタンダード市場なのかグロス仕様なのか、市場でそれぞれどういうふうな割合になっているのかと。右端に業種別の構成っていうのがあって、このファンドの投資先を業種別で見てみたら、こんなふうになってますというようなことが書かれてます。ここら辺って、吉田さんはこういうのをご覧になって気になるところってありますか?
吉田:いやあんまり興味ないかな。
renny:なるほど。僕は業種別の構成とかを見てて、これは7月末時点のものを出してますが、これが例えば3ヶ月前とか半年前、1年前、3年前とかって比べてみて、どれぐらい変わってるのかな、とかっていうようなことがあると、投資先の入れ替えが少ないよねと思ったりします。昔のレポートと比べないと、わからないのかなあと思います。一方で、ファンドの場合、参考指数をTOPIXにしてますが、そのTOPIXの上位の業種と比べてどうなのかというのを見ると多分だいぶ違うと思うんですよね。TOPIXは今だと電気機器が一番上なのか、ぱっと覚えてないんですけど、このファンドのようにガラス・土石製品がこんな上に来るってことは多分ないと思うんですよね。そこら辺の違いで特徴あるポートフォリオにしてるのかどうかがわかるんじゃないかなあと思ってます。
renny:2ページ目の後半部分には組み入れ上位5銘柄ということで、普通のファンドだと10社ぐらいとかもうちょっと載せてるところもあるんですけど、このファンドの場合は銘柄総数が14銘柄ということですね。14社のうち5社なんでもうこれで3分の1以上、具体的な会社が書いてありますので、ここらへんも過去どうだったのかを並べてみると、とっかえひっかえ入れ替えているのか、変えてないのかみたいなことが、見て取れるんじゃないかなあというふうに思ってます。
吉田:ここ空白があるので、14銘柄全部載せられるじゃん、って思うんですけど。
renny:確かに全部の会社を載せてるファンドなんかもありますし、空白のところに載せたっていいんじゃないのっていうのはおっしゃる通りかなあと思います。今回ファンドの場合は投資先のほとんどがいわゆる中小型の会社が多くて、このファンドがどうも投資してるらしい、と投資アイデアを探してる個人投資家の人に真似されちゃう、とかそういうような影響があったりするとを気にされているんじゃないかなと思います。その辺はどう思われます?
吉田:それは気にしすぎじゃないかな。14社全部見たいなって思ったのは、だいぶ前にこのファンドが帝国繊維と何かやりとりしていたのを覚えていて、その後どうなったのかな、今も持ってるのかな、って知りたかったんです。
renny:そうですよね。たとえば業種別のところで、繊維製品がうんと上にあったりすると、帝国繊維をまだ持ってんのかな、と思ったりもするんですね。確かに過去にこのファンドが関わりがあった会社に今も投資しているのかどうかっていうのは気になるところかと思いますね。
renny:3ページ目にいくと、株式市場の状況ということで、こちらでTOPIXがいくら上昇になりましたとか、株式市場全体の話が説明されて、その次にファンドの運用状況ということを報告されてます。「パフォーマンスに寄与した企業は、MARUWA、SHOEIなどでした」とそれぞれの会社について、株価が上がった理由はこうだろうというようなことを、推測というか、こういうことで株価が上がったんだろう、とかっていうようなことを説明されています。ただ以前にファンドマネージャーの方にお話を伺ったときに、どうして株価が上がったのかはよく分からないから、こういうのを書くのは困るんだ、っていうこと、おっしゃっていたのがあって、業績は数字が出てくるから分かるけど、株価がなぜ動いたなんてわかんないよね、みたいなことを言われてましたね。
吉田:その通りですよね。後付け解釈にしかならないんで。
renny:その次に「マイナスに影響した会社でFood & Life Companies、森永製菓。」Food & Life Companiesがスシローの件で最近いろいろネガティブな事実が報道されてたんで、これはさもありなんという話ですね。それを事細かに説明されてて、これで株価が落ちたんだろうなあとは思います。それに対してこのファンドとしては、説明を求めるレターを社長さんにお送りしましたと。今後の対応によって投資判断を慎重に見極める方針です、というようなことは書いています。要は売るんじゃなくて、対話するんだという方針とのことで、どういう行動をとったのかを報告されてるのは、いいことなんだろうなあと思ってます。「森永製菓は特に会社からのニュースはありませんでしたが、前日に株価が大きく上昇した反動で下落しているものと思われます」ということで、よく分からないとはっきり書かれています。
renny:最後にすごくシンプルに書かれていますが、当月の投資活動としてで、「全売却および新規投資はありませんでした」というようなことを書かれています。こちらのファンドの6月の月次レポートでは、同じ投資行動に関して「当⽉の投資活動として、マキタ、全国保証を全売却し、⻭科医療⽤機器メーカーのナカニシを新たに組み⼊れました。」というふうな報告をされてます。具体的にこの会社に投資しましたと書いてる投信会社は少数派かなと感じてます。たとえば日本で一番預かり残高が大きいファンドのレポートを見ると、「主な売買では輸送用機器株を買い付けし、半導体製造装置株を売却しました。また電子部品株の入れ替えも行いました。」みたいな書き方で、何のことやらわからない。ここら辺は改善の余地はあると思うんですよね。それと比較するとスパークスさんの「対話の力」は非常に具体的な報告をされてると思います。この辺はどうですか?と吉田さんにお聞きしたら、その通りとしか答えられない話だと思いますが。
吉田:そんな業種名だけあげられても、つまらなくて読む気がしなくなっちゃいますよね。
renny:そうですよね。投信会社によっては、もうちょっとその業種名の横に枕詞をつけて、何々をやってるあの精密機器株とかって書いてて、探せば分かるってヒントを与えてくれるようなレポートもあるんですけれども、とはいえちょっとね、っていうのはありますね。だからたとえば、すべての投資先が開示されていれば、それでもいいのかもしれないけど、開示されてないのに買いました、って言われても、要は量を増やしたのか、本当に新しく買ったのかが分からない。また売りましたっていうのも、量を減らしたのか、もう全部売っちゃったのかがわからない。こういうのは分かりにくいので、ぜひとも改善してもらいたい、というのは粘り強く訴えていきたいなと思ってます。
吉田:そうですね。それがないと、自分で企業を選ぶ方がいいじゃん、って感じになっちゃう。
renny:そうですよね。だからその辺はちゃんとやるべきことなんじゃないかなあ、というふうには思ってます。この後が今回取り上げた理由なんですけれども、株主総会について詳しく説明されてます。さっき吉田さんが帝国繊維のお話をされましたが、このファンドを数年前に帝国繊維に株主提案を突きつけてですね、結局それは通ることはなかったんですが、その時もレポートで何回か経緯を説明されてた時期があったと思うんですが、株主総会でてどうだったのかという話はなかったように記憶しています。出席できていたのかな?と当時から疑問に思っていました。今回このレポートで投信会社の皆さんが株主総会に出席されているか、できるのかっていうようなことに関して、今の現状と実際にどういうふうなことが6月の株主総会シーズンに起きていたのか、どういう行動されたのか、という報告がされていています。そこら辺をこのレポートで説明されていて、一番驚いたのは、投信会社の皆さんは実質的な株主ではありますが、会社法的には議決権株総会に出席して議決権を行使できるのは、名義株主である実際に株券を預かっている信託銀行が議決権行使できるってことに法律上はなっていて、その辺について様々な解釈があり法的には明確にされていません、というようなことを述べられています。吉田さんはご存知でしたか?
吉田:いや、これは知らなかったですね。
renny:このテーマは長年にわたり議論されてきましたが、いまだ明確な決着を見ないままの状況ですと書かれていて、長年にわたって議論されてたなんて僕は知らなかった。ここらでいったんブレイクを入れて、後半も引き続きここら辺についてお話をしていきたいと思います。
この収録の後に書いた記事はこちら。